じゃくの音楽日記帳

じゃくの音楽日記帳

2010.09.23
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またまたマーラー3番を聴きに遠征してしまいました。今回は札幌です!

9月17&18日
第531回札幌交響楽団定期演奏会
指揮:尾高忠明
メゾソプラノ:手嶋眞佐子
女声合唱:札響合唱団
児童合唱:HBC少年少女合唱団
合唱指揮:長内勲
管弦楽:札幌交響楽団



キタラを訪れるのは、今回が2回目です。数年前、ルイジがPMFを振ったマーラー6番を聴いたのが、はじめてでした。そのときこのホールの響きの良さが強く印象づけられたので、そのキタラで3番が聴けるのが楽しみでした。

もうひとつの大きな楽しみは、札響の首席トランペット奏者の福田善亮氏でした。北海道ご出身の福田さんは、以前都響在籍時代に、ベルティーニとのマーラー3番でポストホルンの名奏を聴かせてくれた方です。今回ふたたび福田さんの演奏でこの曲を聴けるということがとても楽しみでした。

まずは初日、17日のレポートです。

この日は19時から開演でした。余裕を持って昼過ぎには札幌入りしました。良い天気で陽射しは強いですが、空気がかわいていて、さらっとした風が肌にとても心地よいです。タイミング良くこの日から、市中央の大通り公園で秋の味覚フェスタが始まっていたので、そこで北海道の名物料理を、(演奏会前ですので)ちょびっとおなかに入れ、(演奏会前ですので)ノンアルコールビールで喉を潤し、ホテルで一休みして、良い体調で会場に足を運ぶことができました。

この日の僕の座席は2階右のRAブロックの中程、やや後方寄りです。サントリーで言えばRAブロックのRB寄りあたり、ほぼ指揮者の真横くらいでした。いつもは座る前にステージ上の打楽器などを視認するのですが、この日は慣れないホールで緊張していたためか、特にステージを眺めずに座ってしまいました。座ってから気が付いたのは、このホールはサイドの席だと比較的死角が大きいということです。僕の席からだと、ステージの上手側(向かって右側)の1/3位は見えませんでした。

3番の場合、鐘の位置が気になりますが、僕の席から見えるステージの範囲には、鐘が置いてありません。また合唱団がはいると思われるPブロック(ステージとオルガンの間の客席)やその周辺にも、見える範囲には鐘が置いてありません。ですので、鐘はおそらく大きな死角になっているステージの上手側に置いてあるのだろうと推測しました。

尾高さんの簡単なプレトークがあり、そのあと少ししてから、オケの入場に先立って、Pブロックに女声合唱と児童合唱が入場してきました。曲の最初から児童合唱も含めた全合唱団を入場させるという気合の入った方法は、比較的少なく、2002年のシャイー/コンセルトヘボウの来日公演、2005年のチョンミョンフン/東フィル(オーチャードホール)、同じく2005年の大植/大フィル、そして今年のインバル/都響の3月30日公演があげられます。(シャイー以前は、そこまで細かくチェックしていなかったので、わかりません。)

しかも今回嬉しいことに、児童合唱の配置にひと工夫があったんです。この曲では、女声合唱と児童合唱の位置関係は、児童合唱が前方になり、その後ろに女性合唱となることが普通です。しかし今回は、前方に女声合唱、その後方に児童合唱という配置でした。

ここから先は、ご興味ある方はキタラ大ホールの座席表
http://www.kitara-sapporo.or.jp/seat/index.html
を見ながら読んでいただけると、よりわかりやすいと思います。

まず女声合唱が、Pブロックの前寄りの2列(第3列と第4列)に着席しました。続いて児童合唱が入場しはじめ、女声合唱の後方に並んでいきました。このとき、最初児童合唱は、女声合唱のすぐ後ろの2列(第5列と第6列)に並びはじめました。確かに、このように間をあけずに並ぶのが普通の並び方です。



このホールのPブロックのセンター部分の最後列は、第7列です。(座席表をみていただくとわかりますが、Pブロックの左右よりの部分には、さらに後方の第8~第11列がありますが、そこは今回客席として使用され、お客さんがはいっていました。)すなわち尾高さんは、Pブロックのセンター部分のなかで、できるだけ児童合唱を高いところに配置しようとする意図があったわけです!(そうでなければ第5列と第6列に並ばせたはずです。)

これまでの3番の記事で繰り返し書いているように、この曲のスコアには児童合唱と鐘を高い位置に置くように指定されています。しかしそれを実行しようとする指揮者は数少ないのが現状です。今回、スコアの指定に従って児童合唱を少しでも高い配置にしたという尾高さんのこだわりが嬉しくて、演奏への期待が増しました。

もっとも、鐘はステージ上かと推測していたので、「鐘も高いところに置いてくれたらさらに良いのになぁ。」と思っていました。しかし実は、鐘はステージ上ではなく、驚くべきところに設置されていたということが、あとになってわかりました!!このことは後述します。

続いてオケが入場し、そして尾高さんがはいってきて、演奏がはじまりました。
冒頭のホルンの斉奏が、すごく力強く立派なひびきでした。そしてその後の第一楽章は、終始やや遅めのテンポで、とても丁寧に、慎重にと言っても良い感じで、進められていきます。



第一楽章が終わったところでオケはチューニング。そしてチューニングが終わって会場が静まったあと、独唱者がしずしずと登場し、指揮者のすぐ左横に着席しました。会場からは拍手が起こってしまいました。(尾高さんはここで拍手が起こることにはこだわらなかったようです。)それにしてもこのタイミングの独唱者入場というのは割合に早いタイミングです。合唱団の早い入場とあわせて、後半の楽章のアタッカの扱いに関して相当考えての判断であろう、と期待が高まります。

第二、第三楽章も、同じように丁寧に丁寧に進められていきます。第三楽章の途中、ポストホルンのパートが近づいてきたあたりで、それまでステージ上で1番トランペットを吹いていた福田さんが、ポストホルンパートを吹くために、ステージ下手側に退場していきました。

そしてポストホルンの部分が始まりました。さすがは福田さん、音程や歌い回しは本当に完璧です。ただその音色からは、ポストホルンではなく、トランペット系の楽器を使っていると思われます。また今回のポストホルンパートで特筆すべきは、その距離感です。充分に遠くからきこえてくるかのようで、広い空間を感じられ、とても魅力的でした。またこのとき、ステージ上のオケの出す音も素晴らしく、とくに弦楽器の弱音が、非常に繊細で美しい音で、素晴らしかったです。

ポストホルンの部分が終わると、福田さんはステージ上の元の席に戻ってきて、また1番トランペットを吹き始めました。

さて第三楽章が終わったあと、第四楽章が始まる前に、独唱者が立つのに合わせて合唱団が起立しました!これはすごい方法です。第四楽章が終わったあとすぐ静寂のまま第五楽章がそのまま始められるように、あらかじめ第四楽章の始まる前に立たせておくというこの周到な方法を、僕がはじめて見た(意識した)のはシャイー/コンセルトヘボウのときでした。そして大植/大フィルもそうでした。しかしそれ以外には見たことがありません。この周到な方法を、尾高さんは採用したのです。

そしてその効果は充分にあり、第四楽章が静寂のなかに終わった直後、あざやかに第五楽章が始まりました。このとき驚いたことに、鐘の音が、ステージのある下の方向からではなく、かなり高いところからきこえてきたのです!鐘は一体、どこで叩いているんだろう?しかしやはり、僕の席から鐘は見えません。それでこのときは、おそらく僕の席からは死角になっているPブロックかその近くに配置したのだろう、と思いました。

それにしても、児童合唱と鐘が高いところから響いてくると、本当に素敵です。そのように指定したマーラーはすごいなと思う一方で、その指定をきちんとこだわって実行する指揮者が本当に少ないのは、残念な限りです。尾高さん良くぞやってくださいました。(何度も書きますが、三河/小田原フィルはこの点で最高にすばらしかったです。)なお女声合唱45名と児童合唱48名の歌唱自体も、かなり高い水準で、素晴らしかったです。児童合唱はやはりこれくらいの人数がいると、余裕を持ってきこえてきます。

今回の演奏、第一楽章から第四楽章まで、とても丁寧で、魅力的な演奏ではありましたが、この第五楽章で、一段ぐっと魅力を増したように感じました。

そして合唱団の座るタイミングも、僕が理想的と考える「シャイー方式」でした。つまり第五楽章の一番終わりにビムバムを歌うその直前、練習番号10の頭の2小節ちょっとの休みの間に合唱団は素早く着席し、その後の部分は座って歌う、という方式でした。三河/小田原フィルでも採用していた方式です。このシャイー方式でうまく演奏されると、第五楽章と第六楽章がこのうえない静寂と緊張のうちにアタッカで続くので、効果が絶大です。

ただし今回は、独唱者はここでは座らず、第六楽章が始まってすぐに静かにゆっくりと座りました。充分に気を使っていた座り方で、音楽の妨げにはなりませんでしたが、どうせなら、合唱団と同時に座れば、さらに良かったかと思います。

そして終楽章の音楽は、素晴らしかったです。非常におそいテンポで、じくりと歌いあげられました。特にチェロは美音でした。また最後近くの金管コラールでは、福田さんが、申し分ない美音と安定感で、すばらしい歌を聴かせてくれました。大感動の終楽章でした。(プレトークで尾高さんが、演奏に1時間45分くらいかかるかもしれない、とおっしゃっていましたが、確かにこのテンポなら、そのくらいかかっていたかもしれません。)

(長々とした駄文になってしまい、ひとつの記事に載せられないので、続きは次の記事にわけて書きました。そちらもごらんください。)





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Last updated  2010.09.24 01:37:05
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