1月22日、横浜みなとみらいホールで、金聖響&神奈川フィルのマーラー4番をききました。「マーラーを聴いた!」という充実感を十分に味わえた演奏会でした。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第268回定期演奏会
指揮:金聖響モーツァルト ピアノ協奏曲第27番 (ピアノ 菊池洋子)
マーラー 交響曲第4番 (ソプラノ 大岩千穂)
モーツァルトは、菊池さんの優しくきれいな音色が素敵でしたし、オケも、(弦は10-10-8-6-4の両翼配置)、とても良い音を出していて、チャーミングなモーツァルトを楽しめました。
休憩後のマーラーは、弦は12-10-8-8-6の両翼配置で、舞台の上手にハープでした。
これまで聴いてきた金さんのマーラーは、ときどき勇ましさが目だって歌心がちょっと後ろに引っ込んでしまうような感じになることが、僕にはひっかかっていました。しかし今回は違いました。第一楽章には勇ましすぎる傾向をわずかながら感じましたが、それがあまり気にならないくらい、魅力的な歌が充分感じられました。チェロ、フルート、クラリネット、ホルンなどなど、みな素敵です。木管のベルアップもはっきりしっかりやっていて、見ていて気持ちよく、あっぱれです。あぁマーラーを聴いているなぁ、と実感しながら楽しく聴けました。
第二楽章から一段と魅力的になりました。コンマスの石田さんのソロヴァイオリンはとても丁寧で、神経にさわるような刺激的な音作りよりも美しさを重視する方向の演奏で、こういうのもあり、と思わせる説得力が充分あり、すばらしかったです。そしてトリオ、金さんはテンポを落としてじっくりと歌い、うっとりと聴きほれました。第二トリオなどあまりにも美しくて、あれもう第三楽章だったっけ?と一瞬頭がまごついてしまいました。考え直すとまだ第二楽章、それなのにもうこんなに美しく濃厚でいいの?と思うくらいでした。
第三楽章も、ゆったりとしたテンポで、歌心充分、実にいいです。第二主題がオーボエに出てくるところではさらに一段とテンポを落とし、たっぷりと歌っていました。2007年に聴いたエッティンガー&東京フィルの4番で、遅いテンポでじっくりとした足取りの耽美的な音楽に酔ったことが思い出されます。今回もそれと同じ方向の、ゆったりと美しいマーラーでした。やはりマーラーは両翼配置がいい、としっかり認識させてくれるような金さんの的確な指示でしたし、それにこたえて弦の各セクションがそれぞれいい音を奏でていました。チェロの美音と対比的なヴィオラのくすみかげん、良かったです。
第三楽章の終わり近くの音量的なクライマックスのところで、舞台下手のドアが開き、独唱者がゆっくりしずしずと登場してきました。演奏がすすむなか、独唱者はゆっくりと指揮者のすぐ横の位置につき、第三楽章が静かに終わり、そのままアタッカで第四楽章が開始されました。この独唱者の演奏途中入場方式、4番ではわりと良く見かけます。3番では演奏中の独唱者の入場はすごく気になる僕ですが、この曲の場合は、なぜか特に気になりません。ここの音楽が、(3番のように)上昇していくというものでなく、天のほうから降りてくる、という感じがするからかもしれません。
第四楽章も、オケは刺激的になりすぎることなく、控えめに美しい音楽を奏でてくれました。すばらしいです。そしていよいよ最後のコントラバスの持続音が消えていくとき、金さんは左手をコントラバスのほうに向けて伸ばし、音が消えてもしばしそのままでした。会場は完璧に静寂が保たれています。やがてゆっくりと金さんの手がさがっていき、完全にさがりきったその後から、はじめて拍手が始まりました。充実した演奏にふさわしい、理想的な余韻のひとときを味わえました。そしてクレッシェンドしていく拍手に、満場が包まれていきました。
今回オケは皆ふくよかに歌っていて、良かったです。とりわけコンマスがすばらしかったのと、美音のチェロ、はつらつとしたフルート、きっちりと役どころを果たしていたクラリネット、この曲にふさわしいあたたかい音色で美しく聴かせてくれたホルン首席のソロなどが、特に印象的でした。
僕が聴く金さんのマーラーは、2007年のN響との1番、 2010年の神奈川フィルとの3番 、2番に次いで、今回が4回目でした。回を重ねるごとにどんどんと充実し進化して来ている感じがします。今回は、マーラーを聴いたという手ごたえを充分に味わうことができました。このあと今シーズンの定期演奏会では、2月5番、3月6番とやって、今シーズンで3、2、4、5、6番!そして4月からの次のシーズンでは、7、9、1番。ということで神奈川フィルと2シーズンで、8番と大地の歌と10番以外のマーラーをやってしまうことになります。この大胆スケジュール、1番と3番を聴いた時点では、先がちょっと思いやられるかもなどと不遜にも思ってしまいましたが(汗)、今日の4番を聴いて、この先がかなり楽しみになりました。金マーラー皆金、じゃなかった皆勤めざして聴きに来ようと思います。
2011年マーラー演奏会を振り返って:その2 2011.12.31 コメント(2)
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