今回も素敵なお話を堪能させていただきました。プライベートと重なる部分があり、泣きながら読ませていただいていました。先生が自身にだぶって感じたり、莉花さんが娘に重なったりと、思いを巡らせながら読むお話は、とても深かったです。

命をテーマにしたお話は、軽い気持ちでは書けませんね。苦しくて。(経験者)

美莉ちゃんが、たくさんの想いを叶える為に産まれ、多くの愛情を受けて、そして今は素敵な恋人が彼女を守ってくれている。彼女が笑顔でいることが、亡き莉花さんが、一番嬉しいことなのでしょうね!

素敵なお話、ありがとうございました! (2008.07.22 18:48:31)

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2008.07.22
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カテゴリ: takasaki
「あっ」
昼食を食べに行こうと並んで歩いていた新谷くんが、小さく叫ぶ。
「どうした?」
「ケータイ、白衣にいれたままで、忘れてきちゃいました。すぐに取ってきますから、ちょっとだけ待っててもらえますか?」
「いいよ。出たとこにいる。急がなくていいから」
「すいません」
頭を下げ、足早に去る、若い医師を見送ってから、僕は先に庭にでる。庭に出るといつも目は、莉花がよく座っていたベンチのあった場所を見る。今そこにあるのは、あの頃とは違うベンチだけれど、いつもそこに莉花がいるような気がして、つい、目がいってしまうんだ。

「先生」
そして不意に後ろから呼ばれる声に、僕は心底、驚く。

その声に、恐る恐る振り返った僕の目の前にいるのは、ニコニコ笑う美莉、だった。
「なあに?幽霊でも見るみたいな顔して」
屈託なく笑う美莉に僕は言う。
「美莉か。びっくりした。先生なんて、呼ぶなよ」
「どうして?いけない?だってお父さん、ここでは先生じゃない」
「いつもは先生なんて呼ばないだろ?」
「はいはい、お父さん。ちょっとふさけただけだよ。そんな怒んなくたって」
「怒ってないよ。驚いただけだ」
「驚いた?」
「ああ。莉花に、、お母さんにそっくりだったから」
「そうなんだ。。お母さんは、お父さんのこと先生って呼んでたの?」

美莉は軽いため息をついて、言う。
「相変わらずお母さんのこと好きなのね~。死んでからも、そんなに想ってもらえるなんて幸せね、お母さんて」
そう言ってから、自分も何かを思い出したように、少し視線を下げる美莉。自分だって、今もヒロト君のことを想ってるんじゃないか?・・・口に出そうとして、やめる。辛いだろうから。美莉はすぐに気を取り直したように、
「そういえば、ケースケが、また一緒にご飯食べたいって」
ケースケというのは、美莉の恋人だ。かつて女グセの悪さを耳にしたことのある男だから、どうにも心底信用しにくいんだが、紘人の弟であり、彼の死後、美莉を必死でささえてきてくれたし、何よりも美莉が彼を選んだのなら、、今のところ、反対のしようもない。

「分かった。ふたりとも忙しいから、大変だよ」
嬉しそうにぼやく美莉に、
「・・・美莉、お前いくつになった?」
「21だよ。ひとり娘の歳くらい覚えといてよ」
21歳。
そう、あれはもう、21年も前のことなんだ。

僕は今も医師を続けている。
柚子と莉花、ふたりの命を奪った病も、長年の研究の結果、今では、原因らしきものが徐々に解明され、手術による延命もある程度の確率で可能になってきた。しかし、その手術を行う腕のある医師は、少ない。
幸い、美莉の心臓には、いまのところ問題はないようだ。ただ、遺伝による発病のリスクは30歳前後までは高い。なんとしても、それまでは現役を続けなくてはと思っている。そして、頼りになる後継者を。新谷は、僕にとっては、やっと現れた希望の星だった。
「・・・お父さん?」
ぼんやりする僕を美莉が呼ぶ。
「ん?」
「今からお昼行くんでしょう?ごちそうしてよね?」
「ん~~」
渋る声に、
「ええっ。だめなの?」
「いや、先約があるんだ」
「先約?」
「ああ」
「誰?」
「うちに新しく入った先生だよ。一緒に行くのはかまわんが、、、カツ丼だぞ、食えるか?」
「カツ丼?・・まさか、東邦軒の??」
「ああ。新谷くんに、いろいろここの周りのおいしいお店教えようと思って」
「東邦軒かあ。。それは、、・・・無理だよ~。食べきれないって」
「だよな。でも、もう約束しちゃったからなあ」
と悩んでいると、
「お待たせしました」
と新谷が戻ってきた。
「ああ、新谷くん。ちょうどいい、紹介しておこう。これ、うちの娘の美莉だ」
美莉は、にっこり笑って、
「はじめまして、、、じゃ、、ないですね」
という。新谷も、
「あ、そうですね。さきほどはどうも」
「すいませんでした」
と後を引き取る美莉に、
「なんだ?知り合いか?」
「ううん。ついさっき、廊下でぶつかっちゃったの」
「・・・また、ぼんやり歩いてたんだろ?」
全く、いつも、危なっかしいんだ、ミリは。
「ほっといて」
「お嬢さんと昼食を取られるなら、僕、・・遠慮しましょうか?」
気を回していう新谷に、首を振って、
「いや、君が美莉と一緒でもよければ、、ただ、カツ丼だけ、延期にしてもいいか?」
新谷は笑って、
「もちろんです。」
ミリは、まだ何も聞いていないのに、
「やった。じゃあ、ひよこ亭のランチいこ」
という。
「分かったよ。お前はあそこがお気に入りだもんな」
「新谷先生も、気に入ると思いますよ」
にっこり笑う美莉に、新谷も頬を緩めた。
「よし、決まり。早く、いこ~」

美莉に腕をとられ歩き出す。

新谷と言葉を交わしながら、歩く美莉を横目で眺めながら思う。

莉花の言いつけどおり、自由に、奔放に生きてこさせた。
ただ、その分、しっかりと辛い目にもあってきた美莉。

でも、いつでも、どこまでも、伸びやかで、前向きで明るい美莉。

僕は、莉花の死後、結局誰も愛せなかった。

美莉以外の誰も。

美莉がいなければ、莉花、君を失った現実に耐え切れず、
医師も辞め、孤独な人生を歩んでいただろう。

・・・莉花、美莉はいい子だよ。
声、姿、仕種、
どんどん君に似てくる。

今なら分かる。
莉花は、やっぱり、僕の為に、美莉を産んでくれたんだと。

君は、最後まで僕に、「ありがとう」を繰り返したけれど、
それをいうのは、僕のほうだよ、莉花。

ありがとう、莉花。

君に出会えて、

僕は幸せだった。


僕たちの子供に出会えて、

僕は、、、今も、

間違いなく、幸せなんだ。


<了>


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最終更新日  2008.07.22 00:06:45
コメント(17) | コメントを書く
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お疲れ様でした  
緋褪色  さん

Re:takasaki 30(完)  
ケ。 さん
今日は割と一緒にいたから書くヒマなかったけどサぁがシャワー浴びてる間に書いとこう。最終回だし。なんかケースケ、この扱い?コメントしづらいわ☆あくまでもフィクションということで流すか☆☆人の命は繋いでいくもの。どんな命も尊い。消すことなんてできない。だからサぁも胸張って生きてけばイんだよ。周りが何て言ったって兄貴は絶対喜んでる。だろ? ケ。 (2008.07.22 21:28:40)

Re:takasaki 30(完)(07/22)  
koori さん
お疲れ様でした~☆

穏やかな気持ちで見詰められるようになるまではきっと凄く時間が掛かったんだろうけど、それでも、
いつまでも消えず、未来に繋いでいける愛を持っている事。
それは幸せな事だよね。 (2008.07.23 02:28:46)

Re:お疲れ様でした(07/22)  
緋褪色さんへ。

コメントありがとうございました。
緋褪色さんのお嬢さんのことを伺って、さらに身の引き締まる思いで書いていました。素敵なコメントいただけてとても嬉しいです。
美莉が、幸せな人生を歩んでいけること、生まれてよかったと思えるような人生を送れること、それは境遇や環境に恵まれなかったとしても、美莉自身が心の中で思えるだけで、莉花としては、十分なんだろうなと思います。高崎くんもきっと。

「素敵な恋人」ですかね、ケースケは(笑)そういっていただけると、ケースケも喜ぶんじゃないでしょうか。あれ、でも、リアルじゃないほうのケースケですね。(^^)

え~っと、また、がんばります。ありがとうございました。 (2008.07.23 04:53:01)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
ケ。へ。

コメントありがとう。
てか、なんか、最近、ケ。の方が、私の目を盗んで、コソコソとコメント書いてる。。挙動不審じゃない?(笑)
「ケースケ」に対するコメントは、あくまでもあくまでもあくまでもフィクションという事で。(多分)(^^)
胸張って生きてくよ。生きれてるっしょ?私だって強くなったよ。(これも多分)

サ。 (2008.07.23 04:57:47)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
kooriさんへ。

いつもありがと~。

>きっと凄く時間が掛かったんだろうけど、

ですね。
少しずつゆっくりと、迷うことも後悔することもあっただろうけど、
でも、今は幸せ。
言葉にできない長い時間が確実に存在しています。

>いつまでも消えず、未来に繋いでいける愛を持っている事。
>それは幸せな事だよね。

ほんとだよね~。
一瞬を切り取ると、ケンカしてたり、迷ったりもするけど、
振り返ればずっと繋がっていた愛。
親子だって恋人だって、幸せなことだよね~。。

kooriさんは、夫さんとそういう愛ですか??
ひろ。は、そういう愛に出会えてるのかなあ。。

ひろ。 (2008.07.23 05:03:20)

Re:takasaki 30(完)  
ケ。 さん
kooriさん、はじめましてですみませんが横から失礼させてもらいます。
出会ってるよ!!!!!(`へ´)
朝から本気で怒るぞ ケ。 (2008.07.23 07:40:24)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
koori さん
わ~い!
ケ。さんだぁ~~~っっ!!
怒ってる~。愛だ~。素敵~~~(笑)
テンション上がります!(←バカ)

そうだよ!出会っているじゃないか~~!
幸せだよね~。うんうん。
途中からケ。さんのコメントもlet~の続きのような感じで楽しんでおりました~(笑)
ドッキドキです。うしし♪
(2008.07.23 13:05:13)

Re:takasaki 30(完)  
ケ。 さん
kooriさんウケてもらって嬉しいです(^_-)☆毎回楽しいコメント書いてやってくれてますよね。ありがとうございます。let~も含めて毎日ずいぶん読み返しています。彼女の書いてる小説読んだらちゃんと俺の気持ちも分かってるはずだと思んだけど実際はまだまだ手応えないんです。たしかにいろいろ事情があるんです。だから焦る気はないんですけど今朝のはちょっとなあ。そこまで戻るのかよと。俺としては相手は俺だろ?と言いたいわけですよ、て、つい愚痴ってました。すみません。
なあ、サぁ、分かってる? ケ。 (2008.07.23 20:31:19)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
ケ。&kooriさんへ。

コホンっ。ご歓談中のところ、失礼します。
ひろ。もしゃべっていいでしょうか?(笑)

え~っと、まずは、ケ。ゴメンなさい。そんな怒んないで。
そういうつもりじゃなかったんだけど。。。
出会ってるのかな、っていうよりは、ケースケとが、そういう愛なのかなって書けばよかったのかなあ。同じ?
(それでもダメだしされそう・・)(^^;)

kooriさん。
ですね。ひろ。は今、幸せです。
これは、ケースケがここを読むと分かっていても、ちゃんと書きます。
でも、、なんか、、まだ迷います。
自分のことよりも、ケースケは、いいのかな、、、とか、書くとまた叱られるので、やめときますけど。。(><)
let~の続き、そういえばそうですね。
小説はハッピーエンドでも、ほんとはそこで終わりじゃないからな~。
ケースケとの、実生活は、ぼちぼちとまったりと続いております。
あぁ、なんで名前ケースケにしちゃったんだろな~。
こんな展開予想してなかったからな~。。。
ヤヤコシイ!

あぁ、、帰ってきたら怒られるんだろな。(ショボン)
寝ちゃおっかな。。(笑)
ねえ、寝ちゃってても、、反省してるからね。(←ウソツケ) (2008.07.24 00:06:53)

Re:takasaki 30(完)  
ケ。 さん
今帰ってる。サぁ、怒んないから起きてて。だって今日全然話してないじゃん、明日も早いし、て俺って、てんで弱いな、情けねぇー(笑) (2008.07.24 00:35:04)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
koori さん
萌え・・・・・("▽"*)
あなたたち・・・私を萌え殺す気ですか・・・(笑)

とか、言いつつ、もっとやれ~♪

小説含めて、私はそんな二人が、
大好きだぁぁぁぁぁっ!!! (2008.07.24 02:11:06)

Re:takasaki 30(完)  
ケ。 さん
kooriさんにウケてるのが嬉しいですよ☆ただバカップル寸前ですよね(+_+)☆☆
さてと、コメント欄長くなってきたのであとがきの方に移動しますよ。 ケ。 (2008.07.24 19:18:09)

Re[2]:takasaki 30(完)(07/22)  
kooriさんへ。

にゃはは、kooriさん、「萌え殺す」て。
やってみたい~。(^^)(でも。。ドうヤんダろ?)
大好きなんていってもらえて、嬉しいですね~。
ひろ。も、kooriさん、大好きです。

ほんと、作品だけでなく、
ばかっぷる(ホントダヨ!)にまでお付き合いありがと~ございます。

ひろ。 (2008.07.24 22:43:16)

Re[1]:takasaki 30(完)(07/22)  
ケ。へ。
>バカップル寸前ですよね(+_+)☆☆

もうきっと十分バカップルだよ~。(恥)
あぁ、綺麗(?)に作りあげてきた(??)「let~」の世界が。。(笑)

ひろ。 (2008.07.24 22:45:44)

送ればせながらお疲れ様でした♪  
あやこ さん
大変遅れてしまいましたが、お疲れ様でした!

どんな困難な状況でも、確実に時は経つし、
だからこそ、とっても時間はかかるだろうけど必ず
穏やかに見守れる『淡い、でも絶対に色あせない思い出』になるのが、『愛情』なんだろうなぁと思う。

そんな『愛情』に出会えた高崎先生は幸せモノですね。

もちろん、ひろ。さんも出会えてるんだから
めっちゃ幸せモノだと思う♪

バカップルくらいが丁度良いかもね♪

ケ。さんのコメント、私も好きですよ♪
let~が現実化してるのがいい♪

あ、let~の時はちょぴっと出演(エピソードのみ)させていただいて、改めてありがとうございました♪(笑)


(2008.07.30 16:05:51)

Re:送ればせながらお疲れ様でした♪(07/22)  
あやこさんへ。
>大変遅れてしまいましたが、お疲れ様でした!

ありがと~ございます。
最近ほんとケースケのコメントに翻弄されていて、
小説書いてたこと忘れてました。(オイ)
>穏やかに見守れる『淡い、でも絶対に色あせない思い出』になるのが、『愛情』なんだろうなぁと思う。

そっかー、絶対色あせない思い出。。
対象はもちろん人だけじゃなくて、愛しい時、瞬間、集まり、空間ってありますもんね。
確かにそれが「愛情」かもしれない~。
いいこと聞きました。

>もちろん、ひろ。さんも出会えてるんだから

この点にはもう言及しません。(^^;)

>バカップルくらいが丁度良いかもね♪
>ケ。さんのコメント、私も好きですよ♪
>let~が現実化してるのがいい♪

ですか?
ケースケはほんと「見た目」(強調)かっこいいんですよ。
コメントだけ読んでると、、ほんとの「バカ」みたくないですか。。?

>改めてありがとうございました♪(笑)

いいえ。こちらこそ本当にありがとうございました。
またいいネタあったら(コッソリ)教えてください。

ひろ。 (2008.07.30 22:42:11)

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