翌年、彼の初期の代表作である2枚目の作品「雪の世界」(原題High Wnd White Sky)が日本でも発売された。このアルバムはジャケットからして凄かったが(レコジャケのページを参照)、唄もサウンドもあまりにピュアすぎると言うかバリエーションが無くて僕は「夜の幻想」の方が好きだった。 「雪の世界」の方が色でいうならまさに白、透明の世界だったのに比べて「夜の幻想」はダークグレーという感じだった。そしてその翌年でた「太陽と塩と時」は色で言うなら青、緑、季節で言うなら夏という感じの作品であった。
後に「変化に恋する」と言われたブルースの音楽性はこの頃から微妙に変化していく。ロック的要素の上にジャズ的要素が加わって、唄う世界も次第に内面的な物から、自分の外の世界へと変わってきている。70年代から80年代の移行期に出た2枚組ライブアルバム「波紋」(原題Circle In The Stream)では、ギターのシンプルな弾き語りから、バンドサウンド、ピアノトリオをバックにしたジャージーなサウンドなど、その頃の集大成としてのブルースを聞く事が出来る。
80年代の代表作「Stearling Fire」に収録された「If I had a Rocket Launcher」がU2にカバーされた事で彼もミュージシャンズミュージシャンとしても脚光を浴びる王になった。 しかし、この80年代のブルースの諸作は、当時全てが日本で発売されたわけでない(僕は全作未発売と思っていたが、日本で発売された作品もあったらしい。このあたり、コブラクロー様からご教示を頂いた)。当時日本ではフュージョンブームが世間を席巻していたのだ。僕はフュージョンから、大学の先輩の影響でモダンジャズを中心に聴いていた。ラジオ番組でロックやフォークも聞いていたが、そこでもブルースのニュースは聞くことが出来ずに、僕の頭からブルースコバーンと言うのは過去の人になってしまっていた。
そしてこのラパポート氏の記事の影響か、90年代に入ってから、また彼の作品は日本でも発売されるようになってきた。以後数年おきに僕らのところへ素晴らしい作品を届けてくれている。決して駄作が無いという彼の作品は、マンネリに陥ることもなく、いつも新鮮な輝きに満ちている。27作目となる最新作の「You've never seen Everything」でも、その1曲目のギターのピッキングから背筋がぞくそくするような快感に浸らせてくれる。