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新宿の伊勢丹デパートの地下食品売り場で、わりと目立ってるFika。ショーケースをのぞくと、いかにも北欧風のクッキーが並んでいる。箱のデザインも北欧風でカワイイ。てっきり北欧のお菓子屋が日本に進出したのかと思いきや、実は北欧をコンセプトにした伊勢丹オリジナルブランドだった。そのせいかのか、デザインはいかにも日本人がイメージする北欧だが、味はきっちり日本人好みになっている。パッケージのデザインもこじゃれているので、お土産にも良さげ。クッキーの種類ごとに写真手前のようなモダンでカラフルなデザインの箱がつく。詰め合わせも用意されていて(上の写真の向こう側の細長い箱)…中身はこんな感じ。左側の馬形クッキーは、封をあけるとふわっとバターの香りが漂うしっとり系。右のパウンドケーキは…シナモンがこれでもかってぐらい効いている、案外に大人の味。こちらの箱詰めクッキーは、ハッロングロットルという名前らしい。へー、何語だ? 知らなかった。この名前自体は知らなかったが、この手のクッキーはよくある。生っぽい生地にジャムを詰めたモノ。こういうクッキーが好きな人には美味しい。逆に嫌いな人には、やっぱり受けないだろうなと思う(まったくもって意外性のない感想だ)。ちなみに、Mizumizuは大好き。生地はバター感ほのかで、甘さも控えめ。口に運ぶとほろほろと崩れる。写真のジャムはアプリコット。このほかにストロベリーもあるが、個人的にはアプリコットジャムが好き。この手のクッキーはよくあるが、その中でも素材の良さが光る。リピート確定。上の写真右は、ストロベリージャムのハッロングロットル。ジャムがあまりに甘くてフツー過ぎた(だから、こちらのリピートは、ないな、多分)。左はシナモンとジンジャーを効かせたハード系のクッキー「ペッパルカーコル」で、ハッロングロットルのようなふにゃっとしたクッキーは苦手、でもスパイスを使った硬めのクッキーは好きという人には受けるだろう。ちなみに、Mizumizuはどっちも好き。ペッパルカーコルは、明らかに大人の味。子供向けかと思いきや、案外に大人向けのクッキーだった。しかも、様々な嗜好に応えられるようにラインナップが幅広い。幅広いから、誰に贈っても、1つは好みのものがありそうだ。その意味でとても無難なお土産だと思う。クッキーは日持ちもするし、見た目も味も高レベル、実家へのお土産にしようかな――と、思ったら、同じようなことを考える人が多いのか、新宿伊勢丹のFika売り場、2018年の年末は凄いことになっていた。見よ! この「中間地点」のプラカード。行列が長すぎて、他の売り場の迷惑になるので、行列をいったん区切っているのだ。「最後尾」はさらに遠い。これじゃ、いつになったら買えるか分からない。もちろん、こんなことになっていたのは年末の帰省シーズンだけ。クリスマスの頃もそれなりに行列だったが、これほどではなかった。いやいや、人気店なのね、Fika。だが、人気店はたいてい、凋落も早い。それこそ毎週末「中間地点」のプラカードが掲げられてた、東京進出当時の堂島ロールも、いまや行列どころか、買い手すらまばらな状況。そのうち東京から撤退するかもしれない。つくづく、ブームというのは続かない。帰省シーズンのFikaの人気も、いつまで続くだろう? とりあえずMizumizuは、混む時期を外して買う、ことに決めた。
2019.01.18
ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベのお菓子は、クセになる味のものが多い。一口食べてインパクトがある派手なスイーツとは一線を画す、どこか懐かしい正統派の味。こちら↓のマルガレーテクーヘンも、いろんな意味でドイツっぽさ満開。マルガレーテ=マーガレット、クーヘン=ケーキという、工夫も何にもない、見たまんまのストレートなネーミング。満開のマーガレットの花一輪を、ケーキの上に咲かせたベタすぎるデザイン。かわいいと言えば、かわいいが、小学生の描く絵みたいだ。切り分けてみると…それなりにかわいい。そして型崩れしないのが素人にはありがたい。味はといえば… しっとり・さっくりした、少しだけサバラン寄りのパウンドケーキといったところ。ラズベリーで爽やかさをプラスしたアンズジャムが、そこはかとなく効いている。この「効き目」、最初はそれほど意識されないが、何度も食べるうちに、クセになってきて、「また食べたいなー」という願望を時限爆弾のように、あとから呼び起こす。不思議だ、ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ。花の材料はマジパンだそうで、それだけで食べるより、生地と一緒に味わったほうがいい。花の部分だけだと、あまり美味しくはないのだが、生地の風味にしっとり感をプラスし、アーモンドの風味を加える。ここにあまり主張しすぎないフルーツの甘酸っぱさが忍び込み、なんとも言えない独特な味になる。ふんだんに使われているバニラビーンズの甘やかな香りもいい。単純なようでいて、奥深い味。奇をてらうことのない正統派の、洗練されたドイツ菓子。いいなぁ、ドイツ。フランスやイタリアとは違う美意識とこだわりがお菓子にも息づいている。
2019.01.09
2017年7月の記事(こちら)で紹介したホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ。あの当時は、値段設定も高めだし、もしや数年内に撤退してしまうかな…と危惧していたのだが、なんのなんの。店舗を増やし、快進撃を続けている。一番のオススメは何といってもバウムシュピッツ。その他にも様々なラインナップがあり、それぞれにファンがついているようだ。クリスマスの時期に新宿伊勢丹の店舗に行ったら、それなりに混んでいた。「ま~、そんなものかな。クリスマス過ぎればすくでしょう」と思い、年末に銀座三越の店舗を覗いてみたらびっくり!なんとなんと長蛇の列ができているではないか。こんな感じで、店のショーケースに近寄ることもできない混雑ぶり。「最後尾」のプラカードを持った人がお客の整理に当たっていた。これじゃ、買うまでに小一時間はかかりそうだ。こんなに混むことはめったにないので、もちろんこの日は何も買わず。想像するに、年末の帰省にあわせ、ちょっとオシャレなドイツ菓子をお土産に買いたい人が多かったのだろう。確かに、ありそうでなかなかない味だし、日持ちするものも多い。それにしても、こんな行列になるほど人気沸騰(?)してるとは思わなかった。で、明けて1月5日、土曜日。同じく銀座三越店の同店舗を覗くと…コレ↑、年末とほぼ同じ方向から撮ってるのだ。年末は人が多すぎて近づけなかっただけ。1月5日になると、あの行列は夢か幻かってぐらい、ショーケースが遠くからも丸見え。この落差に二度びっくりした。結論:「ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベは年末は避けるべし」。バウムシュピッツがイチオシであることは変わりないが、もちろんそれだけではない。こちらは王道のバウムクーヘンのチョコレートがけ、その名も「クラシックバウム」。材料を比べると、バウムシュピッツに使われているアンズのジャムがこちらには入っていない。素材の違いはそれだけのよう。バウムシュピッツにアンズが使われているとはいっても、真ん中に薄いジャムの層がサンドしてあるだけなのだが、Mizumizuはほのかなアンズの風味が漂うバウムシュピッツのほうが好み。逆に、ジャムの風味は邪魔だと思う人にはクラシックバウムのほうが好まれるかもしれない。あとは、チョコレートの量の違い。バウムシュピッツは細かく切ったバウムクーヘンをそれぞれチョコレートでコーティングしているので、チョコ量が多い。このバランスの違いも好き嫌いの分かれ目だろう。もちろん、Mizumizuはチョコレート量が多いバウムシュピッツに軍配。その他のオススメのアイテムについては、また次回のエントリーで。
2019.01.08
休日ともなれば行列の絶えないピエール・マルコリーニ銀座。パフェが目玉商品だが、さすがに何度も通ううちに、別メニューを試すようになった。そんな中、スイーツは全体としてあまり好きではないが、チョコレートには贅沢な嗜好の持ち主のMizumizu連れ合いが、ことのほか気に入ったのが、こちら。甘くない生クリームが添えられている。味は濃厚、そして厚みのある分、しっとりとさっくりの食感の違いも楽しめる。生チョコを食べているようでもあり、ホロホロ感の残るケーキを食べているようでもある。その「混在感」が魅力。まさに「チョコレート」「ガトー」だ。カカオに並々ならぬこだわりを持つピエール・マルコリーニならではの逸品だ。実はコレ、お持ち帰り用にホールのものも売られている。さっそく、生クリームを砂糖なしで泡立てて…たっぷり添えていただく。一口目は大いに感動。だが、さすがにホールとなると、濃厚すぎて2人には量が多い。賞味期限も長いものではないから、最後はMizumizu、Mizumizu連れ合いで譲り合いになった。甘みもかなり強いので、インパクトはあるが、その分、飽きが早かったということだ。ならば、自家製でもうちょっと甘みをおさえたチョコレートブラウニーを作ってみようと思い、実行してみたら、これがMizumizu連れ合いにはことのほか好評だった。それについては、また次のエントリーで。
2018.05.24
2017年の大みそかは新宿高島屋へ。地下の食料品売り場は押すな押すなの大混雑だった。2017年はそこそこ景気の良い年だったのかな、と思う。個人的に、仕事の面ではたいしたことはなかったが、といってマックラな不景気でもなかった。そこそこ。世の中を見渡すと、株価も上がり、土地も一部で暴騰している。バブル感を孕みつつ1年が終わったという印象。午後4時から航空便で運んできたという京都の和菓子が店頭へ。あっという間に行列ができていて、たまたま通りかかったMizumizuも威勢の良い掛け声につられて並んでしまった。「こちらお年賀用で、明日までのお日保ちです」という正真正銘の生上菓子を購入。明けて、新年。抹茶はまさしくジャパニーズ・エスプレッソだろう。茶道の心得など何もないのだが、抹茶の味は好きなので、家では自己流で抹茶を点てている。このごろはYou tubeで「抹茶の点て方」を検索すれば動画が出てくる。お湯の量・適温・点て方のコツなどすぐに分かるので、自己流でもそこそこ楽しめる。京都から飛行機で運ばれてきた生菓子は、文字通り「はんなり」していて、甘すぎず、素材の持ち味が舌の上でほのかに溶けた。抹茶のほうは点て方が自己流なら、いただき方も完全に自己流。抹茶をまず一口、それから和菓子、また抹茶と、コーヒーにスイーツ感覚でやっている。静かな新年の朝。
2018.01.01
定期的に必ずリピートしているアイスがある。ラ・メゾン・ドゥ・ショコラのショコラグラース&フランボワーズソルベ(チョコレートアイスとラズベリーシャーベットの組み合わせ)。ラ・メゾン・ドゥ・ショコラのチョコレートアイスは、「重くない」のが特徴。だが、カカオの風味や深みは軽さの中にしっかりと。口当たりもしっとりと滑らかで、食べたあと変に喉が渇かないのがいい。そしてラズベリーのシャーベットは、酸っぱい果実味をストレートに出していて、それでいて香料臭くなく、ラズベリー好きにはたまらない逸品。サロン(カフェ)で食す場合には、チョコレートアイスとバニーユとの組み合わせも可能なのだが、断然フランボワーズ(ラズベリー)とショコラ(チョコレート)のコンビのほうがお互いの個性を引き立てあって、素敵だ。上の写真ではチョコレートアイスが隠れてしまっているが、下のほうにちゃんと入っている。上にトッピングされているのは甘くない生クリームとナッツ、そして薄い一口サイズの板チョコ。アイスとシャーベットはカップのものもお持ち帰りで買えるのだが、このトッピングはサロン(カフェ)ならでは。しっかり冷やしたガラスの器に、硬すぎず柔らかすぎずのアイスとシャーベット。値段は高いが、他では味わえない個性を求めて、定期的に通っている。しかし、行きつけだった銀座松屋店のサロンが閉鎖になってしまったのは残念な限り。この逸品が味わえるのは今は丸の内店だけのよう。
2017.08.18
あのエルメスに、「強いて言えばわが社のライバルは、とらや」と言わしめた日本を代表する和菓子の老舗。とらやの凄いところは、日本人ならほとんど誰でも1つは、「とらやの●●は美味しい」と言わせるモノを出すところだと思う。羊羹が一番有名だが、羊羹は好きでなくても、最中が、その手の和菓子に興味がなくても、生菓子が、あるいはあの季節の和菓子が、という具合。伝統的な定番だけでなく、季節ごとのラインナップも実は豊富なのだ。この夏、店頭のディスプレイでその佇まいの美しさに惚れて買った「水の宿」。清々しい透明な水色につぶつぶ感のある白の取り合わせが、夏の涼を漂わせる。手ごろなサイズの紙包装のものがあったので、それを買うことに。和菓子は見た目に惹かれて買うと、味で期待を裏切られることもあるのだが、この「水の宿」は絶品だった。水色はクチナシ青色素で染めた寒天。白は道明寺粉。寒天の滑らかな舌触りと、関西風桜餅を思わせる道明寺粉のつぶ感のある食感の取り合わせがシンプルながら、至高。甘さも、さほど強くなく、といって控えめすぎず、日本茶とよく合う。夏なので、水出しにした煎茶と一緒に楽しんでいる。夏の思い出のひとこまになる、涼やかな感動。こうした和菓子は立派な「作品」。食べているときに、デザインや素材の組み合わせなど、試行錯誤している作り手の姿が浮かんでくる。
2017.08.08
「ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベのバウムシュピッツ」。この長ったらしいカタカナをすらすら言える人はドイツ語の分かる人だ。この「もろデルフト焼き」を想像させる袋の絵柄を見ると、一瞬オランダのお菓子かと勘違いする。だが、スペルを見れば完全にドイツ語。この店はドイツ(ハノーファー)にある。ホレンディッシェ→オランダ風の、カカオシュトゥーベ→カカオの部屋(カカオパーラー)。シュトゥーベを「お菓子屋」と意訳して説明しているサイトも多く見かけるが、直接的には。シュトゥーベは人をもてなす「部屋」のこと。「もともとは、オランダのココア(カカオ)の試飲店だった」というネットの説明を読んだが、店のネーミングからその話は非常に納得できる。このオランダ風カカオ部屋で作るバウムシュピッツ(一口バウムクーヘン)は、非常にドイツ的で、しかも繊細な逸品だ。日本人はとにかく、「しっとり」とか「ふわふわ」のお菓子をやたらと評価するが、時々、なんでもかんでも「唾液が必要ないほどしっとり」とか、「食べてる気がしないほどふわふわ」とかになってしまう傾向にウンザリすることがある。ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベのバウムシュピッツは、しっとり系ではあるが、やたら「しっとり」ではない。そこがいい。素朴な粉のさっくり感もちゃんと残っている。カカオの名が店の名前になってるだけあって、チョコレートももちろん最高級の味。サンドしてあるのは、アンズのジャム。チョコレートにしのばせたほのかなアンズの風味がまた、ドイツ風でとてもいい。定番のバウムシュピッツにはトッピングはないのだが、ときどき限定でこの写真のようにナッツを散らしたバージョンが出る。深入りナッツが大人のアクセントでこれまた非常にいい。定番にしてほしいくらい。こちらはホワイトデーのころに出る限定品。ホワイトチョコにラズベリーのアクセント。箱も限定バージョンがある。カラフルな色の取り合わせが、ややちぐはぐなのがドイツ風で、そこがまたカワイイ。こういうものが時々出るから、常連でも飽きない。日持ちもするし、パッケージのデザイン性も高い。そしてどこまでも「ドイツ」な個性が光る美味なお菓子。手土産に迷った時なども、これなら間違いない。店舗も徐々にだが、増えてきている。一度お試しあれ。
2017.07.20
丸の内に行くとかなりの高確率で立ち寄る「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」。パティスリーでもあるが、Mizumizuはもっぱらブランジュリーとして利用。その中でも寒い季節の定番なのが…と上は紅玉リンゴの酸っぱさがきちんと生きている、そこに「フランス」を感じる。この薄さもいい。下はダークチョコレート、ミルクチョコレートになんとバターをはさんだ恐るべき高カロリーバゲットなのだが、バターがあっさりと軽く、その柔らかな食感が硬い板チョコの歯ごたえと2種類の味に、コクと深みを与える役割を果たしている。チョコレートもさすがにいいモノを使っている。ただ、やっぱり「バイトが板チョコはさんで作ってるのね」と思うような雑さが出てきているのは気になるところ。板チョコの量がバラバラだったり、挟み方が統一されていないのが、付いてるプライスに見合わない。…なので、できるだけキレイなものを選んでトレイにのせているのだが(笑)。ロブションのショップは、いつの間にか都内に増殖して、以前のようなレア感がなくなった。中には買って、「あちゃーー」と思うようなモノもあるが、期待値をはるかに上回るものもある。Mizumizuにとっては、この2つがまさにそれ。
2015.03.07
Mizumizuがベネズエラ産カカオとリヨンのチョコレート職人の関係についてエントリーにあげたのは、2007年11月のこと(記事はこちら)。それから7年。あのとき取り上げたパレドオールが日経新聞の「専門家お薦め 職人技のチョコレート、ベスト10 」(2015年2月8日付け)で、2位に選ばれたよう。パレドオールはMizumizuも、ときどきリピートしている。Mizumizuの好むカカオの風味をシンプルかつ最大限生かすタイプのチョコレートだ。2007年当時、ベネズエラ産カカオの酸味がどうの、なんて熱っぽく語る日本の一般人はMizumizuぐらいだったが、今は原産地に注目したチョコレートがちょっとしたブームになっている。さすがに、素材にはうるさい日本人。このトレンドは素直に嬉しい。そういえば、日経新聞のランキングの1位のパティシエ・エス・コヤマ「アンノウン! カカオナンバー4」(兵庫県三田市)も、ベネズエラ産カカオにこだわったチョコレートらしい。やっぱり最高ですね、ベネズエラ産。リヨンの血を引く「ショコラティエ パレドオール」でも、以前はなかったベネズエラ産カカオのクリオロ種、しかもその中でも希少価値の高いチュアオを使った「パレドオール チュアオ」がお目見えしたのだが、残念ながら売り切れが多く、「いつ入荷しますか?」と店員に訊いても、「未定です」のそっけない答え。「ラクテ」と「ノアール」ならたいていいつでも買える。ひどいピンボケ写真だが…こちらはノアール、つまりカカオ成分の多いダークチョコレート。硬めの表面のコーティングに、ねっとりと柔らかいフィリング。余計な味が入らず、あくまでもカカオが主役。これがMizumizuの最も愛するチョコレートで、次がナッツ類と合わせたもの。蜂蜜もモノによっては好き…だが、ラズベリーだのオレンジだの、果物類をチョコレートと合わせるのは基本あまり好まない(例外もあるが、ごくわずか)。ショコラティエ パレドオールも、「ひょっとしてつぶれるのでは?」と不安に思ったこともあったのだが、どうしてどうして、逆に年月とともにしっかりと評価を高め、ブランドとしての地歩を固めてきたようだ。この店が好きなのは、なんといってもリヨンで修業した日本人のショコラティエが開いた店だということ。リヨンでたまたま出会った、ベネズエラ産カカオを使った極薄の円盤形チョコレートに衝撃を受けてから、長い月日が過ぎた。そのリヨンにつながりがあると一目で直感したこの店に出会ったのも、たまたまだった。フランスの同じ街で、おそらくは同じような衝撃を受けたのであろう日本人のチョコレート職人が、今東京でこうして活躍し、多くの人々が認め始めている。良いものは、わかる人にはわかる――パレドオールIN JAPANの成功で、Mizumizuにとって一番うれしいのは、そう確信できたこと。
2015.03.02
フィギュアスケートの名演技を彩った名曲たち~ミュージック・オン・アイス 羽生結弦 パリの散歩道 浅田真央日本橋高島屋にほど近いマンダリンオリエンタルホテル東京。ここのグルメショップがリニューアルして、カジュアルなカフェになっていた。基本セルフサービスで、飲み物はスタバを彷彿させる紙コップ。全体的なコンセプトは、丸の内のロブションカフェに似ている。こうやってどんどん高級店がカジュアル展開していくのは、日本特有の風潮にも思える。それでも、一応はマンダリンオリエンタル。ショーケースに並んだスクエアな形のケーキは、宝石めいた魅力があった。いくつか食べた中で、傑作だったのが、柚子風味のレモンタルト。きっちりとしたスクエアなデザインに、メレンゲが行儀よくふくらんで並んでいる。フォルムはシンプルだが、味はなかなか複雑。さっくりした下地のタルトに、ふんわりとのったレモンのしっかりした酸味。ホワイトチョコの甘さも隠れているようだ。柚子はほとんど主張しない。レモンといえば、エズ(南仏)の星付きレストランで食した、独創的なレモンのデザートを思い出す。マンダリンオリエンタルのケーキも十分に個性的。チョコレート系はその個性が好みと微妙にずれたが、柑橘系はぴったりとはまった。リピートしたい逸品。
2014.04.18
夏は水密桃。白桃も黄桃も好きだ。そして、京橋千疋屋の桃のパフェも。瑞々しい白桃が器からこぼれんばかり。その下にはクリームに包まった小さな桃片が隠れている。夏を告げる京橋千疋屋の洗練パフェ。 京橋千疋屋 「旬果糖蜜」フルーツコンポート白桃【お中元2011】【楽ギフ_のし】京橋千疋屋 「旬果糖蜜」フルーツコンポート桜桃(さくらんぼ)【お中元2011】【楽ギフ_のし】
2011.08.09
銀座の三越の裏手にあるOSUYA GINZAの「酢フトクリーム」。最初聞いたときは、ネーミングのインパクトだけを狙った上っ面商品だと思った。ところが食べてみてビックリ! ヨーグルトのようなフレッシュチーズのような、しっとり&さっぱりした摩訶不思議な絶品ソフトクリームではないか、これは。一度は食べてみる価値あり。まだあまり知られていないせいか、休日にいってもすぐに食べられるが、ちょうど夏だし、評判が高まれば行列ができてもおかしくない味だ。このOSUYA GINZAの経営は、明治9年創業だという内堀醸造。老舗の名に恥じない、しかもまったく新しい味を開発した企業努力には心底感動させられた。看板商品だという北海道産の菩提樹の蜂蜜を自然発酵させたお酢。菩提樹の蜂蜜の野性的な力強さにまろやかでナチュラルなビネガーの風味。炭酸水で割って飲むと、夏においしい素晴らしいドリンクになる。小さな店だが、まさにホンモノを置く店。こういう店が散在しているのが、東京という街の魅力だ。
2011.07.11
アトリエ・タントマリーと言えば、ベストセラーはノルマンディーAOCカマンベールを贅沢に使ったカマンベールチーズケーキ。それについては、すでにこちらで記事にした。「食べる人を選ぶ」チーズケーキだが、このアトリエは他にもピタリとこちらの嗜好にハマる創作ケーキを作ってくれる。いつも・・・ではない。微妙にストライクゾーンを外れることもあるが、「人を選ぶ」食べ物というのは、常にそういうものだ。マスカルポーネチーズを使ったこちらのルーロ(ロールケーキ)は、Mizumizuの中では、シンプルながらも極上の逸品。フロマージュ・ブランも好きだが、イタリアのマスカルポーネも大好きなのだ。ちなみに、カマンベールチーズ自体は、目がないというほどでもない。このルーロは、マスカルポーネを上質の生クリームとマリアージュさせ、軽さとコクの最高のハーモニーを醸し出している。これはマスカルポーネ? と思う。マスカルポーネの味を舌の上で探す。確かにどこかマスカルポーネだ。だが生クリームでもある。しかも、ただの生クリームではない。確かに、マスカルポーネを含んだ生クリームで、その配合が絶妙なのだ。チョコレートの生地も最高と言っていい。チョコレートの質の高さは、誰にでも理解できると思う。押し付けがましくない上品さでしっかりとカカオの風味を主張する。生地があまりふわふわでないもいい。大人の食感なのだ。シンプルだからこそ好みが分れ、人を選ぶロールケーキ。タントマリーのチョコレートとマスカルポーネのルーロは、間違いなくそうした作品のなかの最高峰に位置する。
2011.06.30
子どものころ父親がよくドイツ菓子をお土産に買ってきてくれたせいか、一番初めに覚えた洋菓子の名前が「バウムクーヘン」だった気がする。子どものころは周囲の砂糖層が好きで、生地の部分はさほどでもなかった。今は、違う。バウムクーヘンは、日本のカステラのようなポジションのドイツ菓子というイメージがある。味も店によって、劇的にではないが、微妙に違う。Mizumizuにとって、日本で一番、ドイツを感じさせてくれるバウムクーヘンを作っているのが、世田谷区桜新町にあるヴィヨン。香料の使い方が「ドイツ」なのだ。ヴィヨンのバウムクーヘンの強めの香料を嗅ぐと、ドイツで食べたお菓子に記憶がつながっていく。特定のお菓子ではない。「ドイツ」と聞いて思い出すお菓子の香りというものがあり、それがヴィヨンのバウムクーヘンから漂ってくる。生地のしっとりした口当たりも好みだ。素朴なお菓子ゆえ、生地の風合いや甘さの具合といった微妙なところで好みが決まってくるところも、カステラに似ている気がする。ヴィヨンのバウムクーヘンの決め手は、なんといってもこの香料。たぶん、慣れない人には鼻につくかもしれない。だが、慣れるにしたがってやみつきになり、しばらくするとまた食べたくなる。そんな魅力がある。「ヴィヨネット」という、立体的なデザインのバウムクーヘンに果物のゼリーを入れたオリジナル商品もあるが、Mizumizuはオーソドックスなバウムクーヘンを好んでいる。桜新町はMizumizuの家から近くはないのだが、しばらくすると食べたくなって、わざわざクルマで出かけて行く。ドイツのお菓子の香りを嗅ぐために。
2011.04.26
カステラといえば長崎。長崎に行った折に、めがね橋のたもとで、鼈甲屋のご主人に聞いて連れて行ってもらった、「天皇家に献上している長崎で唯一のカステラ専門店」。それが匠寛堂だった。ゆかしげな暖簾をくぐると、すぐに席を奨められ、お茶と一緒に、さっそくカステラが運ばれてきて試食させてもらう。こうなると買わないわけにはいかなくなる(笑)。お奨めはと聞くと、悠仁親王殿下ご誕生の際に献上した「天地悠々」だという。いわゆる五三焼き(卵黄と卵白の割合が5:3)カステラの部類に入るが、材料をさらに厳選して謹製したのだとか。このときの長崎旅行では、テレビタレントが絶賛したという別のメーカーのカステラも買ってみたのだが、比べてみると、逆に「天地悠々」の美味しさがくっきりと意識できた。あえていうなら・・・パンを思わせるような風味。それじゃ、褒め言葉にならない感じだが、立派な褒め言葉のつもりだ。さっくりとして、重くなく、甘すぎず、しつこくないのに食べ応えがある。正直に、「こんな美味しいカステラは初めて食べた」と思った。五三焼きカステラは卵の風味が強すぎて、やや重たく感じられ、実は必ずしも好きではないのだが、「材料をさらに厳選した」と胸を張るだけあって、風味の上等さはそこらの五三焼きの比ではない。匠寛堂は東京には出店していないので、長崎まで行くかネットで注文するしかない。ネットで注文すればすぐに届けてくれるだろうが、あのめがね橋のそば、和服の女性が立って迎えてくれる小粋な店の暖簾をくぐって、おっとりとして感じのよい店の人と少し世間話などしながら献上カステラを包んでもらう時間もまた格別だった。買おうと思えばネットでいつもで買えるけれど、あえてそうはせず、長崎を再び訪ねたときの楽しみにとっておこう。
2011.04.25
言わずと知れた和菓子の老舗・虎屋。羊羹が有名だが、Mizumizu母はここの最中を大いに好んでいる。[とらや]虎屋最中9個入(763721/286)Mizumizuが楽しみにしているのは、季節の和菓子。草餡餅は大好物なのだが、これは販売期間が非常に短く、東京地区ではすでに終了してしまった(御殿場店では4月30日まで販売)。そこで柏餅を購入。たぶん日本で一番上品な柏餅かと。つるんとしたカタチの端整さがいい。つややかな餅に包まれた餡は、しっとりときめ細かく、滑らかで、天女のような口当たり。味も甘すぎず、どこに入ったかわからないうちに終わってしまう(苦笑)。こちらは「岩根の錦」。くっきりとした模様が、口に運ぶときりりとした舌触りに変わる。感動的に滑らかで、かつ味わいは密度が濃いのに、味にはしつこさが皆無で、白餡もひたすら爽やか。見た目といい、味といい、すべての面で日本的な上品さを極めた逸品。【送料無料】老舗ブランド「虎屋」の伝統と革新【送料無料】虎屋和菓子と歩んだ五百年
2011.04.24
毎日のように地震を感じる東京。それでも桜が咲き、気温があがるにつれ、人々の活気も戻ってきたようだ。大震災のあと、紙類や水、カップ麺などの商品が買い占められ、スーパーから消えたパニックも今は嘘のようにおさまっている。そんななか、久々に日本橋三越に行ってみた。店内の一部は照明を落として暗かったのだが、大震災前の週末より逆に人出が多い気がした。地震、津波、原発事故の悲惨な現実を目の前にして打ちひしがれてきた東京の人々も、ようやく元来の経済的活発さを取り戻しつつあるのかもしれない。それでこそ東京だと思う。まだまだ放射能汚染の不安は去らないが、毎日閉じこもって心配していては、放射能でガンになるより前に、ノイローゼになって生きる意味を見失ってしまう。さて、日本橋三越の催事場では、イタリアフェアをやっていた。行ってみて、あまりの人の多さと活気に圧倒された。ワインやチーズやドルチェといった食べ物から、洋服やアクセサリーや小物まで、さまざまなブースが並び、押すな押すなの人だかりになっている。人気のあるショップの前は通り抜けることさえままならない。日本橋三越の催事にはよく行くのだが、これほどの人出を見たのは久しぶりだ。自粛解禁ムードの時期に、陽気のよさが重なったせいかもしれない。こちらは、アマルフィからやってきたサル・デ・リゾの「デリツィア・アル・リモーネ」。イタリア最優秀菓子職人による人気のドルチェだそうだ。食べてみた印象は・・・・・・・・・・・・・・・日本で作ったモノが、オリジナルと同じかどうかわからないからなあ・・・・・・まあ、美味しいかどうかは人それぞれだとして(笑)、口あたりの滑らかさには驚かされたが、Mizumizuには少し香料がきつかった。これが「イタリアを代表する名作ドルチェ」だと言われたら、イタリアにあまたある、めちゃうまドルチェにやや失礼かと。イタリアの本当に美味しいモノは、やはりイタリアにあるということか。それでも、その一端を、飛行機代を出さずに味わえると思えば、こうしたフェアにも――ちょっと宣伝のほうが質より勝っているというのが気になるが――それなりの価値はある。
2011.04.16
三菱一号館は、三菱地所の前身である三菱合資会社の不動産部門が、1894年にイギリス人建築家を招聘して丸の内に初めて建設した赤レンガの洋風建築。老朽化のため1968年にいったん解体されたのだが、丸の内エリア再開発の目玉として三菱地所が2010年に再建した。この再開発事業には三菱のプライドを強く感じるのだが、中でも再建された三菱一号館は外装といい内装といい、部材といい意匠といい、素晴らしいの一言。現在三菱一号館は主に美術館として使われている。その一階の角に、元は銀行窓口だったというフロアをカフェに改装したCafe 1894があり、いつも人で賑わっている。こちらが入り口。堂々とした石の階段は一段一段が高い。赤レンガの風格ある外観は、今となっては貴重な19世紀のクイーン・アン様式。重厚な扉をくぐって中に入ると、二層が吹き抜けになった大空間に驚かされる。ギリシア式の柱、窓枠、天井の羽目板などがすべて木製なのが、いかにも日本の洋風建築。装飾部材が多用されているのにも目が行く。こうしたディテールの過剰さは、近代的な建築空間からは消えてしまっている。窓ガラスもちゃんとアンティークガラスを使っているので、外の景色が微妙に揺らいで見える。天井からここまで長く下げたシャンデリアも珍しい。灯りとしてのデザインはシンプルだが、贅沢な空間演出だ。明治時代に貪欲に欧米の技術や文化を吸収しようとした日本人の意気込みが感じられる。こうしたカフェは、往々にして内装「だけ」が素晴らしく、味はイマイチなことが多いが、Cafe1894ではそうした心配はご無用。コーヒーはオーガニックの豆を使っているとかで、香りの高さに驚いた。こちらはマロン・アラモード。ネーミングも見かけもクラシックだが、案外(失礼!)アイスクリームがフレッシュでさっぱりと美味しいのにまたまた驚いた。なるほど、この味なら客も入るはずだ。食器はニッコーのWhite Crownシリーズ。コーヒーが透けて見えるほど薄い。雰囲気といい味といい、丸の内エリアでは一番のお奨めカフェ。クルマを利用される方なら、丸ビルの地下1階で年会費無料のポイントカードを作れば、丸の内エリアに17ヶ所ある駐車場に1時間まで無料で駐車できる(ただし無料で置けるのは1日1ヶ所)ので便利(こちらを参照)。カードはその場で発行してくれる。一店舗で3000円以上買い物をすればさらに1時間駐車がタダ。三菱一号館に隣接する丸の内パークビルも、地下の駐車場へ通じるスペースまで凝ったインテリアを施している。細部に至るまで個性的だ。これはエレベーターの昇降ライト。左右がエレベーターが来たことを知らせる昇降ライト。その間にバラの花が閉じ込められている。壁面のライトの脇にまで、曲線の可愛らしいデザインが。三菱一号館と丸の内パークビルに挟まれた一号館広場に出ると、木々に囲まれたベンチで人々がくつろいでいる。この2つのビルを擁するブロックは、ブリックスクエアという名前がついており、その雰囲気はアメリカのボストンの街角を思わせる。ブリックスクエアから馬場先通りに出て、ブランド店の立ち並ぶ丸の内仲通りに抜けるのもいい。このあたりは、東京でも、いや、恐らく世界の有名都市の中でも、最も洗練され、最も清潔で、最も平和で、最も裕福そうな場所だ(ただ、衣類や鞄を扱うブランド店にはあまり人が入っていない。あれで経営は大丈夫なんだろうか)。Mizumizuが仲通りに出たら、ちょうどメルセデスのCLSが道の脇に停まっていた。石畳と並木の洒落たこの道には、流麗なデザインのCLSがいかにも似つかわしかった。巴里も倫敦も紐育も何度も行ったが、今の東京ほど手ごろな価格の美味しいもの、可愛いものが溢れている都市はない。若者が海外に興味をもたなくなったのも、これだけ快適で清潔で秩序正しく、しかもなんでも手に入る国に住んでいれば、ある意味で当然のことかもしれない。
2010.09.25
マンダリオン・オリエンタルは好きなホテルだ。タイでは必ずといっていいほどここの系列ホテルに泊まっている。東京のマンダリン・オリエンタルもずいぶんと評判がいいらしい。ここのアフタヌーンティーは、週末は予約がいっぱい。ふらっと行って入れるものではなくなっているとか。・・・たかだか、アフタヌーンティーで?信じられない。バンコクのオリエンタル・ホテルのアフタヌーンティーも、ガイドブックなどでは盛んに宣伝していたし、実際に人気もあり、混んでいたのだが、ハッキリ言って、「宿泊できない人たちのためのサービス」という雰囲気がアリアリで、場所や内装も(写真ではよく見えるが)ヘルスセンターまがいで、宿泊客用のサービスとは一段も二段も落ちる感じだった。東京のマンダリン・オリエンタルのアフタヌーンティーはどうかしらん?というワケで、わざわざ予約をして行ってみた。天井のバカ高いラウンジに、大きな窓ガラス。なので眺望バツグン・・・と言いたいところなのだが、南西向きのせいで、直射日光がきつい。シェードを降ろさずをえず、シェードを降ろせば眺望はほとんどなくなり、しかもシェードは太陽を全部遮ってくれるわけではない。折りしも歴史的(?)猛暑の東京。シェード越しの太陽に照らされて、もともと太陽アレルギー気味のMizumizuにはつらかった。せっかく窓際を予約したのが完全に裏目に・・・このラウンジは、明らかに午前中のほうが光の加減で眺めがいいはずだ。ということは、朝食会場にしているのだろうか? 午前中は宿泊客向けの空間にして、午後の直射日光攻撃が始まったころに、外部客用のアフタヌーンティー会場にしている・・・のかもしれない。アフタヌーンティーの定番サンドイッチの代用。フォアグラ、サーモン、かぼちゃ・・・といった材料をパンやトルテと組み合わせている。一見お寿司のようにも見えるのが、そこはかとなくジャパニーズ。味は・・・まあ、可もなく不可もなく。サンドイッチ(のスシ風代用品)のあとはスコーン。えらく小さい(苦笑)。ジャム2種とクロテッドクリーム。ジャムは確かに美味しいが、最近は美味しい(そして高い)ジャムはいくらでも東京に出回っているので・・・ここのアフタヌーンティーの売りは、まさに「ティー」にあるよう。オリジナルのブレンドティーを含め、メニュー1枚分にぎっしりかかれたドリンクが、いわゆる「飲み放題」(というか、注文し放題というべきか?)。ブレンドティーはどれもかなりのレベルで、これだけ種類の豊富なお茶が飲めるなら、場所代も含めて、3800円(だったかな?)は高くないように思う。オリエンタルなディスプレイが際立つスイーツ群。グラスに入っているのはマンゴープリンとココナッツクリームのよくある組み合わせ・・・なのだが、マンゴーのスイーツは、さすがに相当なレベルだった。東南アジアを拠点にしているアジア資本のホテルって、たいがい洋風のスイーツはだめだが、マンゴープリンだけは最高だ(笑)。他のスイーツは・・・味はいいものもあるのだが、とにかく甘すぎる。これも日本以外のアジアの特徴。お茶は確かに美味しかったので、1度なら行ってみる価値はあると思う。ただ、真夏は避けたほうがいいかもしれない。客層は圧倒的に若い女性。これはタイの有名ホテルのアフタヌーンティーラウンジもそうだった。突然日本の若い女の子ばかりになり、物腰の丁寧なウエイターがサービスしている。そんなに人気になる理由・・・イマイチよくわからないのだが、恐らく、憧れのホテルの宿泊は無理にしろ、その雰囲気を味わってみたいという願望にアピールするのだろう。アフタヌーンティーラウンジとは逆方向にある、トイレからの眺めのほうがずっとよかった(爆)。巷で話題のスカイツリーも見える。地上階に下りてショップをのぞいたら、な~んだ、今出されたジャムだとかお茶だとかがさかんに売られている。ナルホド、オリジナル商品の宣伝も兼ねているというわけね。うまい商売だ。とまれ・・・マンダリン・オリエンタルの魅力は、やはり宿泊してみなければ、本当にはわからない。
2010.09.01
ダイナースカード所有者は、銀座のグッチカフェでウェルカムドリンクがタダ・・・という情報を聞いて、さっそく出かけるMizumizu+Mizumizu連れ合い。タダでくれるドリンクなんて、さぞやシャビーだろう・・・と思っていたのだが、どうしてどうして。チョコレート付きエスプレッソや新鮮なフルーツ生ジュースや、選択肢はかなりのものだった。ゴールドとダークブラウンを基調とした内装も、モダンで豪華。竹をモチーフにした壁画には金箔と螺鈿がふんだんに使われている・・・と、思う。あれが金箔でもなく、螺鈿でもないとしたら、それはそれで驚異だ。もうひとつここのカフェの特徴は、ウエイターがほぼ・・・というか、100%男性で、かつイケメン&準イケメンで統一(笑)されていること。このイケメンウエイターは、物凄く礼儀正しく、異常なまでに腰が低い。こちらが席につくと、うやうやしくひざまずいて、ダークブラウンのコットンクロスを膝に広げてかけてくれる。このクロスもコットンながら、一瞬リネンと見まごう上質さ。歩き回っているイケメンウエイターは、目が合うとニコッとする。イタリアではよくあることだが、ニッポン男児で目が合ったとたんニッコリする人種は、ここ以外ではあまりお目にかからない。もっとも笑顔の炸裂ぶりはラテン系のイタ公・・・いや失礼、イタリア男性にはかなわないが。エスプレッソが運ばれてくると、お盆の上からいい香りが漂ってくる。味もイタリアの、それも「上質な」エスプレッソそのもの。おまけにボンボンショコラも世界最高水準といっていい。フレッシュなのがよくわかる。見た目も素晴らしい。グッチのロゴが刻まれて、きらきら光っているさまは、宝石のごとし。南仏の星つきレストランも、このくらいのものを出してくれればよかったのだが・・・チョコレートは大いに気に入ったので、買って帰ろうと値段を見たら・・・1粒500円たけーよ、いくらなんでも。こんな高いチョコレートをタダでつけてくるなんて、さすがにダイナースカードのやるサービス。なかなか太っ腹だ。宣伝のつもりなのだろうが、いかんせん、ちょっと値段が高すぎる。値段をまったく気にしない人になら(今の日本にそんな人がどのくらいいるのか知らないが)、間違いなくお奨め。タダのドリンクとチョコレートだけいただいて帰るのも悪いので、スイーツを注文したのだが・・・1600円のババ。ババというのは、いわゆるサバランに同じと考えてください。ナポリのお菓子で、生地から染み出てくる強烈なラム酒の風味が、Mizumizuは大好き。なのだが・・・ ここのババは、ハッキリ言ってマズイ。「値段のわりには・・・」ではなく、正直言って、ダメです。ババなんて、難しいお菓子じゃないのに、使っているお酒が悪いのか? あるいは生地の作り方なのか。はたまた、その両方か・・・ ま、両方ダメなら、最初っからババなんて作らないほうがいい。もう1つ、1500円のズッパイングレーゼも頼んでみたのだが、これまたマズかった。グッチカラーの緑と赤をあしらったお菓子に仕上げていたのだが、緑に使ったバジリコにクセがありすぎ、他の風味と合わない。スイーツがこのド低いレベルというのはかなり致命的だが、雰囲気とイケメンによるうやうやしいサービスは女性には受けること間違いなし。実際、お客のほとんどは女性で、男性はムリヤリ連れてこられたか、カードをもっている人がたまたま紛れ込んでしまったか・・・ 積極的に来てる雰囲気の人はゼロ。それにしても、よく女性客が入っていた。「イケメン&準イケメンのよる膝つきのおもてなし」戦略が功を奏しているのだろう。このイケメン君たち、賞味期限が来たら、どこに回されるのだろう。人目につかない倉庫かしらん。
2010.08.19
夏と言えば水羊羹。水羊羹と言えば一炉庵。根津神社のそば。創業明治36年というから、老舗の多い文京区の中でも屈指の老舗。シンプルな和菓子ゆえに、ごまかしは効かない。陶製の器で型を取るというこの店の水羊羹は、表面が鏡のようにつややかで、口当たりはシルクのように滑らか。本当に「水っぽい羊羹」で、この場合「水っぽい」というのは最大の賛辞だ。市販の水羊羹は「水」を感じられないと思う。一炉庵は違う。餡の味はどこまでも上品で均等なのに、「水」を食している実感があるのだ。そして、餡の洗練された風味とともに、信じられないくらいしっとりと舌に馴染む極上の滑らかさ。その秘密は、小豆の皮の濾し方にあるのだとか。保存料は一切使われていない。「(買ってから)1時間以内に冷蔵庫に入れて、本日中にお召し上がりください」と言われる。賞味期限、なんと1日! 保冷剤の類いも入れてくれないので、遠くから来る人は注意が必要かもしれない。本当に美味しいものは命が短い。考えてみれば、それが本来なのだ。地方発送も、「品質が保証できなくなるから」とやっていない。ここまで頑として商売っ気がないのが、いかにも江戸っ子らしくていいじゃないですか。売れ始めるとさらに数を売ろうとし、長く持たせるために保存料を使い、少しずつ手を抜き始め、その結果評判が落ちる。そうやって売れなくなると、今度はあせって値段を下げて買ってもらおうとする。「味」で食べていこうとする人たちの多くがが、ほとんど必ずと言っていいほど陥ることになる悪循環だが、そこにはまりこんで「廃業」というゴールに向かうことなく、伝統の美味を守り続けている数少ない店。こちらはおしるこ。缶入りなので、これだけは持ちがいい。最中の皮で作った、遊び心たっぷりの水鳥を浮かべて。一炉庵のお菓子はとにかく、どれもこれもめちゃくちゃ甘い。「甘いこと=贅沢」だった時代のお菓子ということか。このおしるこは、一炉庵のなかでは「甘さ控えめ」なのだそうだが、Mizumizuからすると、もっと控えてもらってもいいくらい。いかにも涼しげな、美しい上生菓子。底の白は東京でそう呼ぶのかどうか定かではないのだが、いわゆる「あわ雪」。卵白をあわ立てて寒天で固めたお菓子で、山口や広島では、これだけで売っている(のだが、東京で「あわ雪」を見たことがない。ネットで調べたら愛知にも売っている店があるようだ)。味は・・・ とにかくひたすら甘い。卵白のふわっとした食感と硬めに仕上げた寒天の食感の違いが楽しいが、Mizumizuは「あわ雪」は「あわ雪」だけで食べたい人間なので・・・一炉庵の上生菓子は、とにかく目で見て楽しい。そうして味はといえば、滑らかで、ひたすら甘い(笑)。やはりここは、Mizumizuにとっては水羊羹で始まり、水羊羹で終わる店。餡好きな方は、一生に一度は食べるべき。追記:「あわ雪」について、九州(大分)の方より情報をいただきました。あちらでは、スーパーのパン売り場の横で団子や饅頭と一緒に売られているような、極めてポピュラーなお菓子だそうです。特に、お正月のおせち料理に添えるお菓子の一品として、時期になると大量に売られるのだとか。東京と全然違う・・・ びっくり。みかんさん、貴重な情報をありがとうございました。
2010.08.18
妙に気に入って、何度もリピートしてしまうモノがある。Mizumizu+Mizumizu連れ合いにとっては、サンドイッチハウス「メルヘン」の甘夏クリームサンドがその典型。首都圏各地の有名デパートに入っていて、近くを通りかかるとついつい買ってしまう。クリームに果物をはさんだものは、ほかにも定番の苺やブルーベリーなど種類も豊富なのだが、酸っぱいなかに苦味のある甘夏とクリームの、一見ミスマッチな組み合わせが妙に気に入ってしまった。パンが素晴らしく美味だとか、クリームが上質だとか、特別な甘夏を使っているとか、そういった面倒な話は一切なし。ただ、薄切りの柔らかいパンに、噛み締めると苦味がじわっと広がるな甘夏と、そのフレッシュな酸っぱさを和らげてくれるクリームが挟んであるだけだ。シンプルだが、ほかのサンドイッチ屋ではあまり見ない組み合わせ。この商品を開発してくれた人に感謝したいくらい。
2010.07.16
銀座の松屋デパートの地下で、なにげなく入ったコーヒーショップは意外にも相当のアタリだった。「ギンザキャフェ」というレトロなネーミング。場所はうっかりすると通り過ぎてしまうようなデパ地下の隅。豆を売る店の奥にあり、カウンターだけでテーブル席はない。カウンターの向こうの壁際に、なんとかスペースを見つけて置いた・・・というふうな水出しコーヒーの器具を見て、頼んでみた。苦いのにさっぱりした水出しコーヒーは、Mizumizu+Mizumizu連れ合いの好物。水出しコーヒーを売り物にしているカフェは、東京ならわりあいどこにでもあるが、水出しならすべからく一定に美味しいというわけではもちろんなく、好みに合うものと合わないものがやはり明確に分かれる。ギンザ・キャフェの水出しコーヒーはMizumizu+Mizumizu連れ合いの嗜好にピタリ。おのぼりさん相手で、高いばかりでダメダメなカフェも多い銀座だが、ここは意外にも本格派だ。さらに驚いたのは、コーヒー風味のソフトクリームが、相当の高レベルだったこと。札幌に長期滞在したことのある身からすると、東京のソフトクリームのレベルは絶望的だ。どうしてどこもここも、ああもアメっぽく、しつこい甘さのべっとりしたソフトクリームしか出さないのか。札幌近郊なら、江別の「まちむら農場」のソフトクリームが最高だった。ところが、この「まちむら」、千歳空港にも東京の新丸ビルにも店を構えてソフトクリームを出しているのに、味ときたら、江別の農場の牛舎のそばで出すソフトクリームとは雲泥の差。同じ農場が作ってるソフトクリームなのに、なんでこんなに違うのか、理由を教えてほしいくらいだ。江別の「まちむら」のソフトクリームは一言で言うと、「水っぽい」。水っぽいというのは普通は褒め言葉ではないと思うが、ソフトクリームに関しては、それだけフレッシュでみずみずしいという意味。不純な甘さが舌の上にまとわりつくことなく、さっぱりと爽やか。その味は、まさにフレッシュミルクの恵みそのものだ。その分、非常に溶けやすいのが難点。風にちょっと当たると、もうスルスルと溶けていく。あの「もち」の悪さが、まちむらのソフトクリームの美味しさを江別限定にしているのかもしれない。ギンザキャフェのコーヒー風味のソフトクリーム(店での正式名称は、ブルーマウンテンブレンドソフトというらしい)は、あの江別の「まちむら」のソフトに一番近いのではないか。新丸ビルの「まちむら」のソフト以上に(苦笑)。非常に溶けやすく、水っぽい。立って食べることを前提としたスタンドショップでは提供しにくいかもしれない。味がブルーマウンテンかどうかはよくわかないのだが、コーヒーショップの出すソフトらしく、コーヒー風味が邪魔にならず、非常によく甘さと調和している。これは、ヒットだ。ヒットと言えば、同じ松屋・銀座に入っている「タントマリー」。湯島にある小さなお菓子工房だ。こちらの記事ですでに紹介したが、ノルマンディのAOCカマンベールを贅沢に使った、「カマンベールチーズケーキ」が最大のヒット商品で、松屋でも売られている。まったく甘くないチーズケーキ。ホールで買うと、1日目は確かにチーズ臭く(チーズの香り、ではなくチーズの臭いが確かにあるのだ)、2日目には少し落ち着く。その変化もチーズ好きにはたまらない。タントマリーはやはりこれが最高だが、他のケーキも素材のよさが光る。こちらのケーキは、フランボワーズ・レッドとホワイトチョコレートの色彩のコントラストが鮮やか。販売書籍のご案内南イタリア旅行記:「イタリア・プーリア州二人旅」(1,500円、消費税・送料込み)紹介されている名所:アルベロベッロ、マテーラ、カステル・デル・モンテ、グロッテ・デ・カステラーナ、レッチェ詳しくは、こちらのエントリー参照。 修士論文・博士論文 卒業論文の書き方(800円、消費税・送料込み)詳しくは、こちらのエントリー参照。
2010.07.13
ブルターニュのガレット、ガレット・ブルトンヌには目のないMizumizu。ブルターニュのメーカーでも、「パレット」や「サブレ」、「クッキー」といった名称で売られているものではなく、断然「ガレット」が好きだ。メーカーによって味が少しずつ違うのも楽しい。最近気に入ったのは、ラ・メール・プーラーの塩キャラメルガレット。日本で見つけたのだが、本来Mizumizuが苦手なキャラメルのねっとりした感じがなく、サクッとした食感が気に入った。ラ・メール・プーラーはチョコレート入りのガレットも好きだ。フランスに行ったら探そうと思っていたのだが、行く先々で立ち寄ったスーパーやデパートの食品売り場で見つけることはできなかった。ラ・メール・プーラーのものだと、今回はやたらとサブレが目についた。南仏ではサブレが売れ筋なのか?そのかわりと言っては何なのだが、TGVで売られていたガレット・ブルトンヌに美味しいものを発見。ブルターニュのポンタヴァン(Pont-Aven)のガレット。ガレットはもともと薄手だが、そのガレットの中でもかなり薄いほうだと思う。味はベーシックなバター風味ふんだんで、塩が少し効いている。バターにアクセントの塩、まさにブルターニュだ。パリッとした食感で、Mizumizu母も大いに気に入る。こちらはスーパーで見つかったので、大量に買ってお土産にも活用した。ガレットはシャルル・ドゴール空港にも、有名メーカーのおしゃれな缶入りのものが売られているが、そういうガレットは逆に案外平凡な味。ポンタヴァンのガレット、日本で探してみたが、見つからない。輸入されていないのか・・・残念。フランス モンサンミッシェル島♪老舗のレストランのお菓子◆ラ・メール・プーラー(ガレット)100g 【あす楽対応_東北】【あす楽対応_関東】【あす楽対応_甲信越】【あす楽対応_北陸】【あす楽対応_東海】【あす楽対応_近畿】【あす楽対応_中国】【あす楽対応_四国】 ★kitchen0628★
2010.06.29
東京で最中の美味しい店といえば、皇室御用達の虎屋、銀座の空也、吉祥寺の小さざ・・・などが思い浮かぶが、本郷の壷屋もはずせない。寛永年間に町民が開いた最初の江戸根元菓子店で、明治維新の折、お世話になった徳川家の終焉とともに一度は暖簾を下ろす決意をしたものの、勝海舟から、「市民が食べたいと言っているから続けるように」と言われて、店を再開したのだという。保存料の類が一切入っていないので、日もちは3~4日。一口食べて、「美味しい~!」と叫ぶようなインパクトはないが、餡の柔らかな甘さがクセになり、何度でもまた食べたくなる味。こちらが名物の「壷最中」。薄手の皮の中に、はみださんばかりの(というか、実際にはみだしている)餡が入っている。白が漉し餡で、茶色がつぶ餡。茶色の皮のほうは、かすかにおこげの風味があって、何と言うか野性的な最中だ。亡父もここの最中が好きで、亡くなる2ヶ月前だったか、オランダ人相手のパーティに持参していた。同行しなかったので、オランダ人の反応は知らないのだが(父によれば、「好評だった」というのだが・・・ホントかなぁ・・・)、昔はガイジンが苦手な日本の甘味といえば、餡子が相場だった。今はみな少しは食べられるようになったのだろうか。普通の円い最中もある。皮は壷形の最中より厚めで、餡の量も少ない。普通はつぶ餡を好むMizumizuなのだが、壷屋の最中に関しては、上品な漉し餡のほうが気に入っている。こちらはどっしりした壷最中と対照的に、とても小さな「壷壷最中」。創業当時の品物を再現したのだとか。皮と餡のバランスで言ったら、個人的にはMizumizuはこれが一番好きかもしれない。サイズが小さいのもいい。本場・上方の洗練された色とりどりの和菓子に比べると、上菓子(東京の和菓子)はどうしても見劣りするように思う。壷屋の上菓子も、一見ルックスが素朴すぎて、「大丈夫か?」と思わないでもないのだが、実際に口にしてみると、あまりに自然でとてもやさしい味。写真は「鶴」だそうな・・・ うさぎかと思った(笑)。中の白餡の風味は、何度でもリピートしたくなる。これぞ手作り。きんとん(と店の人は言っている)の下に餡入りの求肥餅が隠れている、凝った上菓子。これもMizumizuお気に入り。この本郷の壷屋は、かなり「知る人ぞ知る」店だと思っていたので、ちょくちょくフランスの美味しいものネタを仕入れに(仕入れているだけでいっこうに行けないのだが)伺っているPARIS+ANTIQUEさんのブログに突然、ここの最中の写真が現れたときは、心から驚いた。もともとこちらのブログと縁が出来たのは、「タルトタタン発祥の町ラモット・ブーヴロン」を個人で訪ねたあと、「こんなフランスのド田舎までわざわざ来る物好きって、きっと私だけだろうなぁ・・・」と思ってブログ検索してみたところ、パリから電車を乗り継いで訪ねただけでなく、タルトタタンの食べ歩きまでしたというド根性エントリーを見てビックリしたのがきっかけ。Mizumizuがホールでタルトタタンを買った、「Jack Lejarre(ジャック・ルジャル)」というお菓子屋も売り子のおば様つきで写真が載っていた。なぜか不思議と嗜好が合い、「ヴェネチア一のレストランを紹介します」とあって、どこを選んだのかな? と思ったら、なんとMizumizuが一番贔屓にしている「マドンナ」だった。ヴェネチアには他にも高級レストランがあるのだが、値段がお手ごろで美味しいこのトラットリアが気に入って、いつもヴェネチアを訪ねると入り浸りになる。ヴァポレットを降りたらリアルト橋をわたって、左へ。そして最初の角を右へ(ここの路地をふさぐように他店がテーブルを出していて、マドンナを探してウロウロしている観光客を強引に座らせ、ぼったくるらしい)。薄暗い路地の左にある、いつも混んでるマドンナ。しばらく行っていないが、贔屓だった店が相変わらず美味しいと聞いて、嬉しい気分になった。本郷の壷屋にしろ、ラモット・ブーヴロンのジャック・ルジャルにせよ、ヴェネチアのマドンナにせよ、店の規模は小さいが、時代の荒波を超えていけるだけの「強い翼」を持っている。グローバル化が進む世界の中で、小さくしぶとく生き残るための知恵。奇をてらうのではなく基本に忠実に、「美味しい」と言われた味を落とさずに続けていく努力だ。壷屋は本当に小さい店だ。知らなければ(いや、知っていても)うっかりしていたら通り過ぎてしまいそう。店の中も薄暗く、古っぽく、雑然としている。あえて店のしつらいにお金をかけないというのも、品質勝負の店ではいい選択かもしれない。
2010.01.08
パークハイアット東京のペストリー・ブティックは、いつ行っても客足が途絶えることがない。どれを買ってもハズレた印象はないが、秋冬のお楽しみは、やはりモンブラン。ここのモンブランは、まさしく栗が主役。茨城県の岩間産と、栗の産地まで表示されている。たっぷりかかったマロンクリームは、和栗の濃厚な甘さを十二分に味わわせてくれる。一見、「台」がないように見えるが、メレンゲの生地がマロンクリームの底に隠れていて(量はかなり少ない)、歯ごたえのアクセントを加えている。ただ・・・メレンゲの底生地を型に接着させるために、チョコレートが使われているのが、個人的にはいただけない。少量だが、甘く濃厚なチョコレートなので、返って栗の風味を損ねている。こちらはクレームダンジュ。マスカルポーネチーズに生クリームを合わせた純白のルックスが魅力のスイーツ。中にラズベリーソースとスポンジ生地が仕込んである。ぐちゃっとした柔らかいスイーツで、マスカルポーネの濃厚さとラスベリーの甘酸っぱさは、一緒に食すとなんともお似合い。Mizumizuの場合、大好きなチーズを、脈略なく思いつくままに挙げてみると・・・フランス・・・シェーブル、ブリー、フローマジュブランイタリア・・・マスカルポーネ、ブッラータと、かなりクリーミー系(という分類はないと思うが)に偏っている。フロマージュブランは果物のソース、マスカルポーネは蜂蜜や黒蜜、あるいはエスプレッソ風味の甘いソースなどと一緒に食べる。ブッラータだけは、日本で食べたことがない。一度買ったら、明らかに腐っていた(その顛末についてはこちらをどうぞ)。これだけは、やはりイタリアのプーリアで食べなければ、と思う。日本でも最近美味しいチーズが食べられるようになった――以前の日本は、チーズといえば、プロセスチーズという国だった――が、そうはいっても、値段は高いし、味はもうひとつ。輸入品は保存が悪いのか、味が別モノになってしまっているものも多い。フレッシュチーズを食べに、またイタリアに行きましょか(←かけ声ばかりで、全然実現できない)。
2009.12.24
上野の辺鄙な場所に店を構えるパティシエ・イナムラシュウゾウが「現代の名工」に選ばれたというニュースには、少し驚いた(ニュース記事はこちら)。記事には、「最近は、週末になると30分以上の行列ができる」とあるが、「最近」ではなく、もう何年もその状態だ。その意味では人気店だし、Mizumizuもわざわざクルマで1時間以上かけて買いに行く、贔屓にしているケーキ屋の1つ。なのだが・・・確かに週末は行列だが、それは店舗が小さいせいもある。中でみなじっくり選ぶので、1人当たりにかかる時間が長い。電車で来る客には恐ろしく不便な場所だが、駐車場があるのでクルマで来るには便利。ただ、平日はそんなに混んでいない。正直に言うと、人気だったら、平日から大賑わいのアテスウェイのほうがあるのではないかと思う。そもそもなんでこんな墓だらけの不便な場所に店を構えたのだろうかと思う。店の前は、どっしりした桜の並木道なので、一見感じよく思うかもしれないが、むしろ「桜の下には死体が埋まっている」という言葉が浮かぶような道。学生時代をこのあたりで過ごした人間からすれば、かなりもの好きな場所としかいいようがない。たぶん地元の住人も同じように思っているのではないか。モチロン、周囲に店なんてない。住宅も少ない。あるのは、お墓ばかりなり。いや、死体と亡霊に囲まれた場所で、オシャレで個性的なケーキをあえて作ろうと考えたとしたら、それはそれでかなりイケてる人だ。味のほうは、「大変に美味しいものもある」とは言えるが、他の人気パティシエに比べてそれほど抜きん出た存在かと聞かれると、答えにくい。「現代の名工」って、なんなんだろうね。別にケチをつける気はないが、どういう基準で選ばれるのか。Mizumizuのお気に入りは、「特製苺ロール」。渦巻きの間隔の狭さが印象的なケーキ。世に数あるロールケーキの中でも、最も気に入っているといっても過言ではない。だが、実は、最初に食べたときは、「なんだ、中の苺ジャムは、本当にタダの苺ジャムじゃないの」「生クリームが少なくない?」と、さほど気に入らないと思ったのだ。だが、その「タダの苺ジャム」の味にだんだんとはまり、自分の中でベストの地位を占めるようになった。どこにでもある苺ジャム。正真正銘の苺ジャム。ある意味、誰でも作れるハズの苺ジャムが飛び切りなのだ。これは確かに名工と言えるかもしれない。少ないと思った生クリームも、慣れてみるとこのくらいが程よい。保湿性を保つために、焼きたてのスポンジに自家製の苺ジャムをすばやく敷きこむことがポイントだという話だが、確かにスポンジの「濡れ」具合が実に絶妙なのだ。考えてみれば、これほどシンプルで懐古的なケーキも珍しい。なのに、ハマってしまうと、抜けられない魅力がある。2番目に好きなのは、紅玉リンゴのタルト。これもひたすらシンプルで、隅から隅までひたすら美味しい。パイ生地は何度も噛んで味わい尽くしたくなる。リンゴを使ったスイーツに関しては、個人的には東京よりパリのほうが断然優れている、と思っている。リンゴの切り方からしてパリの名店は美しいし、香りもいい。リンゴそのものの味が違う。日本は生で食べて美味しいリンゴはあるが、こうやってケーキにして酸味を楽しむ伝統がまだ短い。なので、リンゴを使ったお菓子は全般に低調なのだが、イナムラシュウゾウは、その中ではかなり頑張っている。こちらは、人気ナンバーワンの「上野の山のモンブラン」。上野の杜がこんなふうなドーム型をしているかどうかは定かではないが、イメージとしてはピッタリ。最近は和栗を前面に出したモンブランも多いが、ここで使っているのはフランス産のマロンだという。下のスポンジはアーモンド入りで、平べったいマロンクリームを巻いた山の中は、カスタードクリームと生クリームが仲良く鎮座している。それだけではなく、スポンジも巻き込んであり、かつ細かく刻んだマロングラッセが散りばめてあるという凝りよう。もちろん、美味しい。そして、とてもインパクトのある味。なのだが・・・実は、これ、1個食べ切る前に飽きる。使っているバターが、Mizumizuには多少重い気がするのだ。そうは言っても、ちょっと量が多いというだけの話で、しばらくすると、また食べたくなる味であることは確か。この3つ以外だと、季節によって中身が変わるミルフィーユもボリュームがあって好きなのだが、そのほかは個人的にはあまり・・・もちろん、それぞれのアイテムにファンがいるとは思う。こちらは、オマケでもらったマカロン。ヘーゼルナッツ味なのだが、やはりアーモンドの風味を忍ばせているところがイナムラシュウゾウ風。とはいえ・・・これもバターがちょっと重い。ラデュレ派のMizumizuにはちょいヘビーすぎるマカロンだった。
2009.11.23
仕事が忙しくなって、都心に出かけられないので、ちょっとご無沙汰しているラデュレのマカロン。10月に行ったときには、新しく「ショコラ・アメー(ビターチョコレート)」が入荷していた。ラデュレのマカロンで、さほど好みに合わないのがチョコレート&キャラメル(甘すぎるから)、カシスヴィオレット&フランボワーズ(これは酸っぱさが尖りすぎ。でもなぜか柑橘系のフレーバーのほうは大好き)、それにミント(マント)。元来ミントは好きで、日本人に大不評のミントチョコもパクパクなのだが、ラデュレのマカロンに関しては、ミント(マント)は香りがダメなのだ。なので、ショコラ・アメーもはずれるかしらん、と思いつつ買ってみたら、なんのなんの。これは大いに気に入る。ただし、「どこがビター?」とは、思う。相当甘いじゃん(苦笑)。とは言え、チョコレートの味に濃淡があり、アクセントが効いている。そこがいい。だが・・・!レグリス(甘草)が入ってないのに気づきましたか?秋になってから見かけなくなった。ヤッパリ、不人気でなくなったのかしら、グスグス・・・ と思いつつ店員さんに聞くと、「11月半ばに入荷の予定です」とのこと。ヨカッタ。ラデュレのマカロンは、ブログで宣伝しまくった(もちろんMizumizuはラデュレとは縁もゆかりもない。親族が働いてる、なんてこともない)おかげで、読者の方もだいぶ試されたよう(笑)。だいたい皆さん「美味しい」とはおっしゃる。ただし、「高すぎる」とも。そうですよね~。高すぎますよね~。重量換算したら、1グラム当たりいくらになるんだろう?・・・って、そんなことを考えてるのは、Mizumizuぐらいだろうか。そこへ行くと、どこにでもあるローソンで買える「プレミアムロールケーキ」は頑張っていると思う。明らかに堂島ロールのマネッコ・・・もとい、堂島ロールにインスパイヤーされた商品とお見受けするが、値段も150円と、「どこがプレミアム?」と突っ込みたくなるような庶民価格だし、値段のわりにはクリームが美味しい。こちらは、同じローソンで買える「プレミアムシュークリーム」。「なんでもプレミアムってつければいいんかい?」と、心から叫びたくなるような、「プレミアム安売り」だが、見かけはかなり美味しそうにできてる。この2つのプレミアム(苦笑)商品、個人的には、シンプル&リッチな味わいのロールケーキのほうが断然美味しいと思ったのだが、ネットでこの商品を取り上げてる(皆さん、たいていこの2つを比べるよう・笑)ブログを周ってみたら、案外「シュークリームのほうが好き♪」と言う方も多く、2派が激しいつばぜり合いを演じているようだ(←ウソ)。とまれ、セブンイレブンに押されがちなローソンにしては、このスイーツはかなりのヒットだと思う。ただ・・・コンビニのスイーツって、最初は「おお~、これはかなりイケるじゃん」と感動しても、飽きが来るのが早いと思いませんか? なんでなんだろう。
2009.11.13
パティスリーだけでなく、ショコラティエにも巷でささやかれる話――パリの名店の東京店は味がよくない。その店のスペシャリテは、パリから空輸でもってきてるハズなのに、「やっぱりパリで買うもののほうが美味しい」。同感なのだ。原因はよくわからない。輸送中の温度管理がうまくいっていないのか、あるいはバンバン売れるようなものではないし、長持ちするものでもないので、店頭に置いておく間にいたむのか。なので、最近はなるたけ日本人ショコラティエの店に行くようにしている。新丸ビルにある「パレドオール」はお気に入りの店の1つ。以前「リヨンの血をひくショコラティエ」というエントリーで紹介したが、パリの有名店ではなくリヨンの天才・ベルナションの薫陶を受けたというのに惹かれて買ったのだ。ベルナションは、他のチョコレートメーカーからクーベルチュール(製菓用チョコレート)を仕入れてブレンドするのではなく、自社でカカオ豆を輸入し、クーベルチュールを自社製作するところからやっている。昔ながらの伝統にこだわるショコラティエだ。インターナショナルな都市パリが日本の東京なら、リヨンは京都。良くも悪くも、フランスらしい頑固さのある街。三菱地所開発の新丸の内ビルディング(新丸ビル)は、よく三井不動産開発の東京ミッドタウンと比較されるのだが、和のテイストにこだわった東京ミッドタウンの内装より・・・ヨーロッパ風でありながら、モダンジャパニーズの洗練をさりげなく忍び込ませている新丸ビルの内装のほうが好き。高い天井にアーチというのはいかにもヨーロッパ風なのだが、天井の化粧ボードは曲線的な装飾ではなく、スクエアなデザインが施されている。吊り下がっている照明器具は重々しいシャンデリアではなく、すっきりとしたシンプルな形の小さなペンダント。それをいくつも長々と吊るし、地震がきても照明の傘が動かないように補助線で留めてある(写真では見にくいが)。そのラインもデザインになっているのが、洒落ていると思うのだ。アーチは重々しい石ではなく、半透明のプレキシガラスを中から乳白色に照らしている。三辺アーチでないところが、返ってモダン。このアーチをくぐって「パッサージュ」と呼ばれる細い通路に入り、両脇の店舗をひやかして歩く。床はチークカラーのヘリンボーンフローリング。ヘリンボーンで張るというのはカネかかるのですよ(急に業者みたいなこと言うMizumizu)。しかし、この素晴らしい内装のビルの宣伝文句が・・・「ヨーロッパの街並み、素敵な時間、」って・・・いつまでたっても、脱亜入欧・・・(苦笑)。コピーライターの感覚が古すぎる。新丸ビルのパッサージュは確かにヨーロッパ風だが、それ以上に強烈なモダンジャパニーズだ。「間」を大切にし、極力すっきりとまとめた空間は、デコラティブなヨーロッパの美意識とは明確な境界を描いている。無理に、というかやや強引に「和」を取り入れなくても、十分すぎるくらい「日本」なのだ。「ショコラティエ バレドオール」の店内も、直線的な日本風のインテリアと、シャンデリアに代表されるようなデコラティブなアイテムがモダンに共存している。まあ・・・ 最近よくある内装といえば、そう。週末の午後だというのに、客が少ない・・・(心配)。実は近くの丸の内ブリックススクエアに「カカオ・サンパカ」というスペイン王室御用達ショコラテリアがこの9月にオープンした。そちらは連日行列ができてる。チョコレート目当ての客を奪われているのかもしれない(本当に、新しモノ好きの日本人)。縦に区切られた窓から、並木の道を眺める。こういう風景に、たまらなく今のトーキョーを感じる。パレドオールは、最初のうちは純粋に創作チョコだけでやって行こうとしていた感があったのだが、なかなかそれだけでは大変だったのか、イートインのカフェコーナーを設け、戸外にもテーブルと椅子を並べて飲み物(野外席はドリンクのみ)を出している。室内席で、チョコレートモンブランを注文。一番上にマロン風味のチョコレート、その下はヘーゼルナッツ(ノワゼット)の香り高いミルクチョコレート。そして薄い板チョコで区切った(食べていくと出てくる)下にはヘーゼルナッツがざくざく。とてもリッチで、食べ応えバッチリ。味も絶品とまでは言わないが、これぞ正統なチョコレートケーキという感じ。上に添えられているカールした極薄チョコレートも、パリッとはじける食感がいい。ランチタイムには、1000円でコーンスープとパニーニ、コーヒーとチョコレートがつくセットメニューが食べられる。しかし、またここで一言。なぜに、これがパニーニ(Panini)!?パニーニとはパニーノというイタリア語の複数形。日本語では「サンドイッチ」と訳されることが多いが、ふつうイタリアでパニーニと聞いたら、こちらのサイトののIl Paniniの写真のようなモノをイメージする。パレドオールで出してる、四角い食パンを焼いて中にチーズやらハムやらはさんだものは、イタリアでは単に「トースト」と言う。たぶん・・・ トーストというと、日本では食パン焼いて、バターやらジャムやらつけて食べるイメージなので避けたのか・・・な?あ、ちなみに肝心の味は、注文して食べた連れ合いによれば、たいしたことなし(苦笑)だそう。カラメルノアール(キャラメル風味のガナッシュにビターチョコレート)のボンボンショコラにコーヒーがついてくる。この場所で1000円で、パニーニ(トースト)と野菜、スープ、チョコレート添えコーヒーがついてくるというのは安いと思う。しかし、やはりパレドオールのイチオシは・・・ベルナションのスペシャリテそのまんまの「パレドオール」2種と秋のスペシャリテ「和栗」(写真一番手前)。パレドオールはノワール(ビターチョコ)とラクテ(ミルクチョコ)の2種類がある。いずれもガナッシュをチョコレートでコーティングしたもの。和栗も和栗を使ったガナッシュをチョコレートでコーティングした派生商品。1つ300円ほどで、日持ちは1週間ほど。しかし、このチョコレートは本当に繊細だ。「20度以上になるときは、冷蔵庫の野菜室に」と言われるが、たとえ野菜室でも冷蔵庫はやめたほうがいい。あっという間に香りが飛んでしまう。といって、ヒートアイランド東京。秋でも日中の室温は、平気で20度を越える。すると、柔らかくなってしまい、風味が落ちる。一番美味しく味わう方法は、「すぐ食べること」。
2009.10.23
ここでちょっとコーヒーブレイク・・・トリノで最初のチョコレート企業と言われるカファレル。日本では神戸に支店を構えている。東京では、東京駅の構内(改札の中)地下1階グランスタにショップがある。生ケーキは基本的に当日が賞味期限なので、あまり遠くには持っていけないが、地方から東京へ来た人、あるいは東京から地方へ行く人もお土産に購入可能だというのが便利。写真はジャンドゥーヤケーキ。ジャンドゥーヤというより、ダース・ベイダーの後姿みたいなんですが・・・(苦笑)。濃厚なチョコレートコーティングの中は口当たりも味も違う2層のチョコレートムースがたっぷり。酸味を効かせたラズベリーが下に隠れているのが、いかにもヨーロッパ風。フォークを入れると赤い果実のソースがとろりと流れてくる。底はサクサクのパイ生地で、ミルクチョコレートの風味付け。兜の飾りのような2種の硬いナッツもアクセントになっている。考案したのは日本人パスティッチェーレ(パティシエのこと)らしい。特段、トリノのお菓子という感じはしない(爆)。フランス風といえばフランス風だし、濃厚なチョコレートを使いながら、ムースで全体を軽めに仕上げてあるのは日本風といえば日本風。チョコレートの味には、かなり上質感あり。要はチョコレートムースのバリエーション菓子なので、その手のスイーツが好きな人にはお奨め。こちらはロールケーキ。チョコレートの風味と香り、生地のふわふわ感とフレッシュさ、クリームの軽さと美味しさ。すべてがかなり高い次元で融合している。お土産にはこれがイチオシかな。でも、賞味期限がやはり当日と短い。保冷剤は入れてくれるが、クリームが極端なほど柔らかいので、持ち歩きの時間が長いと流れ出してしまうかもしれない。
2009.09.19
ルネサンスの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが38歳のときに書いた日記に、以下のような記述がある。「1490年マッダーレナの日(7月22日)、ジャコモ来たりて我とともに住む。10歳である」(『レオナルド・ダ・ヴィンチ』 田中英道著 講談社学術文庫)ジャコモは輝くような金髪の巻き毛をもつ美少年だったという。レオナルドはこの10歳の少年に、ルイジ・プルチの叙事詩『モルガンテ』に由来する、悪魔と同義の「サライ」とあだ名をつけ、少年の素行の悪さに手を焼きながら、結局死ぬまでそばに置き、面倒を見ている。サライとレオナルドのエピソードについては、「快楽と苦痛の寓意」のエントリー参照。サライをモデルにしたといわれるデッサンは、こちらを参照。そのサライが好んで食べたといわれるのが、「アニスの実の砂糖菓子」。アニスの実はイタリアでは、非常に好まれるフレーバー。アニス酒やアニゼット酒もポピュラーだし(アニスのお酒については、こちらのブログが詳しい)、アニスで風味付けしたスイーツも好んで食べられている。Mizumizuも大好き。こちらのサイトによれば、アニスの実の芳香は、甘草に似ているという。確かに、クセのある一種クスリめいた強烈な風味は共通しているかもしれない。そして、ヨーロッパ(特に地中海沿岸地方)では好まれるのに、日本ではあまり見ないという点でも共通している。だが、そこは何でも売ってる21世紀のトーキョー。見つけました、サライが好んだ「アニスの実の砂糖菓子」に現在一番近いと思われるスイーツを。イタリア、トリノのメーカーLeoneのアニスのPastiglie。Pastiglieはいわゆる「ドロップ」のこと。ただ日本語ではドロップというと、フルーツフレーバーの半透明のお菓子を思い浮かべるせいか、「アニスのラムネ」と紹介されていた。ドロップと呼ぼうとラムネと呼ぼうと、要するに、砂糖を固めたもので、風味付けにアニスを使っているということだ。で、このイタリア式アニス風ラムネ・・・うまぁ~い!口に2つも放り込めば、強烈な甘い芳香がいっぱいに広がる。歯磨き粉のような「清涼感」もあり、薬草のような苦味もある。口臭防止にもなりそう。この小さな砂糖菓子にここまでアニスの風味を付けるというのが、実にヨーロッパ的。この手の味に慣れていない「昔ながらの」日本人だと、「うわ~」「ゲ~」と言って吐き出すかもしれない。そのくらい、クセが強い。ところで、アニスについて、ウィキペディアを読んでいたら、意外なことがわかった。アニスはセリ科の植物で地中海東岸が原産。スターアニス(八角)はシキミ科で中国(南部)原産。日本でアニスと言ったら普通、スターアニスを指すと思うのだが、アニスとスターアニスは、「植物学上の類縁関係にはない」そうだ。ただ、成分のほとんどがアネトールであることが共通しており、スターアニス(八角)のほうが安価ゆえ、アニスの代用品として使用されることがあるのだとか。へ~へ~へ~我が家では、午後にミルクティーを飲む習慣がある。スパイスの効いたチャイにすることもあるが、たいていは煮出したスターアニスもしくはシナモンスティックで風味付けしている。Leoneのアニスの砂糖菓子の風味は、ウチで使ってるスターアニスと基本的にまったく違いは感じられない。ただ砂糖菓子のほうが、断然香りが強い。アニスの原産地に近いイタリアの老舗メーカーが、スターアニスをアニスの代用に使っているということはないと思うが、どうだろう。レオナルドがサライと出会ったのはミラノ。Leoneはミラノと地理的にも比較的近いトリノの老舗メーカー。ルネサンス時代の北イタリアのお菓子の伝統を受け継ぐには適役だ。レオナルドのメモによれば、サライはレオナルドが他人から贈られたトルコ革(靴をつくるための革)を盗んで売り払い、それでアニスの実の砂糖菓子を買って食べたという。この不良少年は、だが、レオナルドの生活に混乱をもたらしただけではなかった。サライを得てからのレオナルドは、あたかも「子供を授かった男性」がそうであるように、仕事により邁進し、宮廷画家として確固たる地位を築く一方で、さまざまな分野の研究で成果を挙げていく。当初レオナルドを怒らせたサライの盗みグセも、少年が大人になるにつれて、落ち着いたのではないかと思う。レオナルドの28歳年下のサライに対する愛情は、ちょうどジャン・コクトーの24歳年下のジャン・マレーに対する愛情が、息子に対するそれと恋人に対するそれと混じり合ったものだったのと似ているかもしれない。17歳になったサライに、レオナルドは緑のビロードの付いた銀色のマントを贈っているが、コクトーも戦争中、出征中のマレーに「手元にもうお金はほとんどないけれど、君が晴れの場に出たときに着る服をあつらえるための費用だけは残しておきたい」と手紙を書いている。レオナルドに愛された美少年を虜にしたこのスイーツ、東京では日本橋の三越で買える。ダルジュロスのマカロン(←勝手に命名)も同じデバートで購入可能。予告どおり(?)週末にゲットしました。ローズのマカロンも今回はあった。どれもこれも麻薬めいた魅力があるが、伝統的な日本人の味覚には合わないかもしれない。そういうものでもちゃんと売っている、さすが世界都市・東京。
2009.09.06
飛ぶ鳥落とす勢いのラデュレに対し、「どこでも閑古鳥」なのが、パリの帝王ピエール・エルメ。最初に東京に上陸したときは、エルメのスイーツは某ホテルのブティックでしか買えなかった。小さな真四角のガラスケースをいくつか並べ、まるで美術品を展示するが如く。とんでもない高級感を醸し出していた。今では同じホテルのブティックの隅に追いやられているエルメ。隣の日本の店のほうが威張っている。その分デパートへの出店はやたら積極的だ。気がつくと、新宿の伊勢丹にも、渋谷の西武にも、日本橋の三越にも入っている。そして、そのどこも、「大丈夫なの?」ってぐらい客がいない。伊勢丹には、Sadaharu AOKIも近くにあるが、こちらのほうが圧倒的に人気がある。Sadaharu AOKIはパリで成功したあと日本に逆輸入された感があるが、それだって、パリでエルメ以上に人気があるとは想像できない。日本橋の三越エルメ店なんて、それなりにスペース取ってるのに、むしろそこだけ客が避けてるみたい。マカロンも、買ってる人をほとんど見たことない。バカ売れラデュレのマカロンとでは、比較にもならない。パリのピエール・エルメの人気ぶりについては、過去のエントリーでも触れたが、最近は、エルメの東京での不人気ぶりに妙に胸が痛い。なので、久々に応援する意味で買ってみた。こちらがコーヒー味のスイーツ。エルメは同系統の味を少し変えて組み合わせ、精緻で新鮮なハーモニーを作り上げるのが非常に巧い。これも、甘めのコーヒー、苦めのコーヒー、ふんわりとした口当たり、硬めのしっとりとした口当たり――1つのスイーツで違ったコーヒーの味わいと食感が楽しめるようになっている。ボリューム感もある。しかし・・・美味しいは美味しいが、やはり、ちょっと値段が高いと思う。ボリュームも、ここまでなくても日本人には十分。大ハズレだったのが、このサントノーレ。見かけは文句なく綺麗だが、食べてみて、「えっ? これいつ作ったの?」キャラメリゼがもうパリパリ感がなく、パイ生地もサクサク感がない。つまり、湿気ってしまっているのだ。こんな「古くなった」サントノーレ、売っちゃいけないでしょう。これじゃ、ますます客足が遠のく。売れないんじゃ、返って値段も下げられないだろう。味がこれで値段がこれじゃ、どうにもならない。ピエール・エルメの名を返って落とすだけじゃないだろうか。
2009.09.05
2月、厳冬のパリ。シャンゼリゼのラデュレで、「異様な色」を見た。それは、黒いマカロン。ラデュレの店内は暗い。とにかく照明を落とすことが高級だと思ってるヨーロッパの根暗なセンスにかなった、足元も見えないような鬱な店内で、マカロンはスポットライト的な照明を受けて、宝石のように浮きだって見えるように計算されている。その灯りを全部吸い込んでしまうような、真っ黒な円いお菓子。印象派の画家のパレットを思わせるカラフルな色が多いマカロンの中で、それは、一種禍々しい存在感を放っていた。なになになに、この黒いマカロン。ゴマ? まさかイカスミじゃないよね。フランス語で聞いたって、わからないだろうなぁ・・・と思いつつ、一応、「この黒いのは何?」と聞いてみたのだ。「○▲△■」案の定、何のことやらわからなかった。買ってみればよかったのだと、後から思うのは簡単。そのときは躊躇して、どんな味か想像もつかないマカロンを選ぶ気になれなかった。日本に帰ってきてからも、あの黒く円いお菓子の残像が胸の底に沈殿して、シブのように残っていた。銀座のラデュレに行ってみたが、ブラックカラーのマカロンは見当たらない。何だったんだろう、あのマカロン・・・それが4月、初夏のある日、思いがけず正体が判明した。ちょくちょくお邪魔してるパリ在住の方のブログ。そこにヨダレの出そうな写真入りで、ラデュレの黒のマカロンが紹介されていたのだ(こちらの記事)。真っ黒なマカロン、それはなんと「レグリス(甘草)」だった。甘草ですか!甘草には思い出がある。中学校ぐらいのときに読んだジャン・コクトーの小説『恐るべき子供たち』。主人公のポールを破滅へと導く、邪悪な美少年ダルジュロスが好んで口にしていたのが甘草なのだ。ポールはダルジュロスの投げつけた「白い雪の球」に胸を受けて、日常生活からの離反を余儀なくされる。そして、孤立した自分たちだけの世界に閉じこもった末、ダルジュロスから託された「黒い毒の球」を飲んで死に至る。主人公を破滅から死へ導く白と黒のイメージの間に入り込んでくるのが、ダルジュロスが甘草をしゃぶるシーンなのだ。甘草と毒球――この2つに共通する色が黒であり、その禍々しい色を口から体内に取り込むことで、ポールは死と引き換えに、愛するダルジュロスと同化しようとしたようにも読める。読んでいて不思議だったのは、小説の中では甘草がごくありふれたものとして書かれているにも拘わらず、Mizumizuの周囲には、つまり日本には、甘草を使ったお菓子なんてものがまったくなかったことだ。わずかに見つけたのは、カンロ飴の原材料表示の中。それも脇役だ。甘味料の1つとして、「甘草」と端っこのほうに書いてある。コクトーは後年、俳優のジャン・マレーに、甘草で育てられたダルジュロス魅力ある詐欺師トマスゆっくり進むことを知らなかったこの2人ぼくはゆっくり滑り込む、君のドアの下わが最愛の刑罰の執行人たるこのぼくが。(訳:石沢秀二)という詩を捧げている。この詩からも、コクトーにとって、ダルジュロス=甘草だったことがわかる。百合が聖母マリアの、バラがヴィーナスのアトリビュートであるように、コクトーは甘草を、邪悪な美少年の姿を借りた死の天使のアトリビュートとして描いたのだ。甘草のマカロンを食べ損ねたのが、ますます残念に感じられた。フランスにはよく行くが、あまり意識していないせいか、甘草のお菓子というものは食べたことがない。上で紹介したブログによれば、やはり甘草は、「フランスに限らずヨーロッパでは広くお菓子に使われている」そう。だが、ラデュレの甘草のマカロンは、日本人には不評だとか。そうか、日本人にウケない味だから、銀座に置いてないんだな。ところが8月、真夏のある日。日本橋の三越に行くと、銀座にしかないはずのラデュレの店ができているではないか。しかも、マカロンのショーケースをひょいと覗くと、あの真っ黒な、強烈な存在感を放つマカロンが・・・!一瞬で、ブラックホールに吸い寄せられる星と化すMizumizu。ショーケースのガラスにはりつき、しげしげ…どう見ても、真っ黒。ショコラの茶色とは一線を画す、まごうことなき黒。「お客様?」店員にうながされて、いきなり黒のマカロンのことを聞くのも少しはばかられる気がして、「えっと、ローズとぉ・・・」もっとも好きなマカロンをとりあえず指定した。「あ、ローズは今売切れてしまって・・・」「え、そうなんですか」単純にガッカリするMizumizu。「じゃあ・・・ セドラと、フルール・オランジェと、ヴァニーユと・・・」セドラとは地中海沿岸でとれる巨大なレモンの一種。日本のラデュレでは「シトロン」(文字通り普通のレモン)と区別するために、「柑橘系の一種」とだけ説明することも多い。フルール・オランジェはオレンジの花のフレーバー。ヴァニーユは甘さの際立つバニラ風味。このあたりはMizumizuの定番(改めて見ると、わりと偏っている)。「・・・で、この黒いのは何ですか?」「レグリスです。日本語では、甘い草と書いて甘草と申しまして・・・」おお、やっぱり! ついに日本に上陸したか。「あ~、レグリスですかぁ。日本人にはあまり受けないって聞いたけど・・・」聞いたけど、販売することにしたとはエライ! という意味で言ったつもりなのだが、どう考えたって、いきなり失礼なことを言い放ってるMizumizu。でも、そこはさすが1つ230円もするお菓子を売る高級店の店員。「ええ、かなりクセがあります。向こうでは子供のころからよく食べてるんですが、日本ではあまり馴染みがないので・・・ ただハマる方はハマるんですよ。お客様は、ローズがお好きということですので、たぶん大丈夫じゃないかと」と、完璧な受け答え。甘草についての知識も、そう言えと訓練されているのか、個人的に知っているのか不明だが、ちゃんとしてる。バラのフレーバーのお菓子も、考えてみればあまり日本人好みではないかもしれない。それが好きだと言ってる客なら、たぶん甘草も気に入るんじゃないか・・・「ちなみに、私は・・・かなり、ハマってます」最後は笑顔で商品の宣伝。どうやら彼女も、「ふつう日本人があまり好まないフレーバー」がイケる口らしい。丁寧で礼儀正しく、商品に対する愛着が感じられる態度は、非の打ち所がない。外国人が日本に来て、「店の売り子」の態度を褒め称える気持ちもよくわかる。こういう日本人の一般労働者の能力の高さは、確かに世界でも群を抜いている。レグリス(甘草)のマカロンは8月から販売開始になったという。同じく新しく入ったというココナッツのマカロンも入れてもらい、ついでにピスタチオやらシトロンやら、好みのフレーバーをどんどん追加するMizumizu。ネットでは、「ショコラが好き」「キャラメルが好き」という意見も多いが、ラデュレのマカロンのフレーバーに関しては、本当に好き好きだなぁと思う。Mizumizuは、ラデュレのショコラは単に甘すぎるとしか思えないし(フランスのチョコレートは基本的に大好きなのだが)、キャラメルもねっとりした甘さがしつこすぎる。さて、では、レグリス(甘草)のマカロンは・・・?これが、めちゃウマでした!これはまさに嗜好にピッタリ。確かにクセがある。そしてかなり強烈に甘い。甘いは甘いが、タダの甘さではない――このただならぬ甘さ、大好きだ。写真の一番左から、レグリス(甘草)、オランジェ、ピスタチオ、ココナッツ、シトロン、ヴァニーユ本当にそんなに日本人の皆さんはお嫌いなので?個人的にはローズに次ぐマスト・アイテムとなることは必至。また週末に買いに行こうっと♪早くしないと、「不評」でなくなっちゃうかも。ちなみに、ココナッツもシャキシャキした隠れた歯ごたえと独特の風味がいい。ココナッツはもともと好きなので、これは予想通りの味といえばそう。とはいえ、次回からココナッツも入れてもらうことは間違いない。銀座のラデュレがあまりに当たりすぎたためか、日本橋の三越にはご丁寧に3階と地下1階の2箇所にラデュレのマカロン売り場がある。3階で買って地下1階に下りてきて、ラデュレのそばを通りかかったら・・・「これは?」「甘い草と書いて、甘草・・・」というやり取りが聞こえてきた。「甘い草と書いて」というのは、ラデュレ日本が店として、そう説明するように徹底しているというわけだ。カンゾウといきなり言われて、甘草だとわかる日本人は小数派だろう。肝臓、つまりレバーだと思いかねない。ダルジュロスのアトリビュート「甘草」のマカロン、この強烈な黒が気になる人は、一度お試しあれ。ちなみにラデュレは、羽田空港にも出店したらしい。南ウィングの2階というから、JALの出発ロビーかな。ちょっと前まで銀座の三越でしか買えないというのが、ステータスだったラデュレのマカロン。羽田の東京土産になったら、東京ばな奈と変わらないじゃん。恐るべき子供たち【古本】萩尾望都作品集(第2期) 7 恐るべき子どもたち/萩尾望都
2009.09.01
近ごろ銀座三越で流行るモノ――ラデュレのマカロンとモンシュシュの堂島ロール。いや、「近ごろ」ではないかもしれない。この2つのスイーツの人気はずいぶん長く続いているように思う。特に、堂島ロールの人気ぶりには目を見張る。銀座三越では、いつ行っても午前中から長い行列ができていて、プラカード(!)をもった店員が行列を整理してる。午後になると「堂島ロールは売り切れました」の張り紙が。あの張り紙をショーケースに出すのも、宣伝になっているのかもしれない。「あ、もう売り切れているんだ」ということを通過客も否応なしに意識する。クリームたっぷりのシンプルなロールケーキ。銀座三越には、類似品がけっこうあるのだが、マカロンがラデュレの一人勝ちであるように、このタイプのロールケーキもモンシュシュの完全なる一人勝ち状態。堂島ロールは日本橋の三越でも売られていて、こちらの行列は銀座店よりは短い気がする。ねらい目はお昼前ぐらい。むしろ開店直後のほうが行列が長い。行列というのは、商品の最高の宣伝だ。とはいえ、「並んでまで欲しくないな~」と思っていたのだが、たまたま行った日本橋三越で、それほど待たずにすみそうだったときがあり、買ってみた。おかしいのは、銀座三越でしか売っていないラデュレの袋を提げて、日本橋三越のモンシュシュに来てる人がいること。銀座三越の堂島ロール行列の長さを見て、日本橋三越に回っているんだろう。それにしても、どちらも賞味期限の短いラデュレのマカロン(袋の中身はまずそれ以外考えられない)と堂島ロールの2本立てとは、ずいぶん情熱的な甘党だ。堂島ロールの値段は1本1300円。以前はもっと安かったという話だが、あのサイズ、あのクリームの量でこの値段なら、ずいぶんお手ごろだと思う。逆に「この値段で、そんなに上質なクリームは使えないでしょ」という先入観もあった。食べてみての正直な感想は…最初食べたとき、ちょっと胃が疲れていたのか、案の定クリームが少しアブラっぽい気がした。全体的に強烈ではないが、やさしい甘さが印象的で、「お子様向きかな?」とも。次に食べたときは、あ~ら、不思議。味に慣れたのか、体調が戻ったのか、最初よりずいぶん美味しく、クリームも軽く感じた。スポンジはしっかり感のある素朴な味わい。値段と味のバランスがとてもいい、庶民派スイーツという印象。「すぐまた食べたいか」と聞かれたら、「しばらくはいいです」と答えるかな。あるいは、「あれほど行列がないなら、また買ってもいいけど、長々と並んでもう1度というほどでは…」というのが落ち着きどころだろうか。ラデュレのマカロンのように高くないし、味もいいから、特に若い人にはお奨めだけれど、やはり銀座三越であそこまで並んでまで…となると、推奨するのはちょっと気が引ける。
2009.05.21
ラデュレのマカロンの値段には、知らない方なら驚いたと思うが、値段だけだとラデュレ以上の設定にしてるマカロンがある。それは、パリのスイーツの「帝王」ピエール・エルメ。ここのマカロンは、240円とか280円といった価格設定で、明らかに意図的にラデュレより少し格上にしてる。そのぶん、「1個で2度おいしい」2色マカロンなど、ラデュレにはない工夫もある。でも、一番大事なのは、味。ラデュレよりふんわり柔らかく、そのかわり歯ごたえは後退する。ボリュームもラデュレよりある。ただ、中に仕込んだジャムがちょっと強すぎたり、フレーバーが少々人工的だったりという印象もあり、もちろん好き好きだが、個人的にはラデュレのほうが断然おいしいと思う。日本のラデュレは輸入だが、日本のエルメは日本でのライセンス生産。そのせいか、ピエール・エルメはやたらあちこちに出店している。こういうことすると、ほとんどダメ。希少性がなくなるし、日持ちもせず手間のかかる生ケーキより、賞味期限の長いチョコレートだのクッキーだの大量生産できるものを置き始めて、質自体が低下する。パンのメゾン・カイザーもそうだ。最初は北海道の洞爺湖にあるザ・ウィンザーホテル洞爺以外だと、東京では白金とか田園調布にしかなかった。それがデパートに出店しはじめて、最初のころの飛び切りの上質感を失ったように思う。値段だけパリの帝王エルメと同レベルにしても売れるほど、東京の消費者は甘くはない。ラデュレには出来る行列は、エルメのマカロンにはできない。いや、むしろ「売れてるの?」と心配になるくらい。ラデュレも今は銀座だけだが、そのうち新宿にもでき、渋谷にもできて、そのころには移り気な日本人には飽きられてるかもしれない。
2009.03.09
パリで泊まったホテルがランカスター。シャンゼリゼ大通をはさんで、ほぼお向かいに有名なラデュレ・シャンゼリゼ店があった。むちゃくちゃご近所なので、行く前は「パリに言ったらラデュレでブランチしたり、マカロン買ったりしようっと」と思っていた。だが、実際に行ったら、朝食のヘビーな卵料理でお腹が超いっぱいになり、昼になっても夕方になってもほとんど何も食べられなくなってしまった。甘いマカロンなんて、店先で見ただけで「うっ」となる。それにラデュレは一応銀座の三越にもあるし、なんとなくラデュレ店内に入る元気が出ないまま滞在最終日になってしまった。やはり、まだスイーツを食べる気分にはなれなかったが、銀座三越にあるラデュレのマカロンと、パリのラデュレのマカロンがどのくらい違うもんか試してみたい。なので、最終日の朝買って、日本まで持って帰って食してみた。結論:いやぁ、本当に、最高です。パリのラデュレのマカロン。さっくりした外側の食感に対して、なかはしっとり+ふんわり。マカロンで感動したことはほとんどないが、ラデュレは例外といってもいい。香りも自然かつ上品で、うっとりさせてくれる。味もなかなか複雑で、舌のうえで幾重にもハーモニーが展開していく仕掛け。ここまでいったら、「スイーツの芸術品」の太鼓判を押しましょう。で、銀座三越のラデュレと比べるとどうだろう?さっそく行きましたよ、銀座に。パリのマカロンの味が頭の中から消えないうちに。結論:パリのマカロンの記憶が残っている間に食べると、やっぱりちょっと違う。フレーバーが少し弱く、味も若干抜けてしまっている感じがある。それと、不思議なことに日本のマカロンのほうが「早く乾いてしまいやすい」。日持ちは3日ということたが、夜を越すならラップしておいたほうがいい。うっかりそのまま冷蔵庫で保存すると、パサパサになってしまう。でも、それは無理に比べればの話であって、やはり銀座三越のラデュレのマカロンも今日本で売られているマカロンの中では、間違いなくエベレストの頂上にのっかってるスイーツだと思う。銀座三越は、ラデュレのマカロン人気(週末の午後は行列が出来ている。もし週末に行くなら、開店直後の10時ぐらいに行けば、それほど並ばずに買える)にあやかろうとしているのか、地下のスイーツ売り場ではやたらとマカロンが売られているが、ラデュレ以外はさっぱり売れていない。ラデュレだけがひとり勝ち状態で、それこそ、文字通り「飛ぶように」売れている。モナコ公国で作ったものを船便でもってきてるそう。ということは、冷凍してるってことだよね。パリのラデュレのマカロンは税込みで1個160円ぐらい。銀座三越では1個231円(値段もエベレスト級だよね。1個ですよ、この値段)。それでも、バカ売れ。「金融危機」だの「戦後最大の不況」だのは、ここにはないです、ハイ。マカロンは壊れやすいので地方発送は不可。もしまだ不幸にも、ラデュレのマカロンを食したことのないアナタ、銀座に来たら、三越2Fのラデュレのマカロン、ぜひともお試しあれ。
2009.03.08
吉祥寺と渋谷を結ぶ井の頭線。吉祥寺から乗って1つ目の駅井の頭公園口は、先ごろ肺がんで亡くなった名バイプレイヤー峰岸徹氏も出演していたテレビ版『高校教師』のロケにも使われていた。井の頭公園口は、最近まで放送されていた某生命保険のCMにも使われていた。そして、2つ目の駅が三鷹台。いかにも私鉄のそれらしいこじんまりとした駅舎を出て、小田急OXストアの側に降りる。OXストアの角を右に曲がり、吉祥寺方面にほんの数十メートル。すると、右手に……蔦に覆われて看板もない古びたケーキ屋。「ふつうだったらゼッタイに入らない」系の見てくれは、札幌の隠れた超名店ププリエとよい勝負か!?だが、この店、実は50年(!)も続いている洋菓子の老舗なのだ。この店のケーキはどれも、古きよき味がする。そして、最多価格帯が310円という良心的な設定も、都心あたりで600円、700円というふざけたプライスタグをつけてる流行の店とは別世界。よく買うのはチーズババロア。要するに、表層はフランボワーズ、中層はレアチーズ。ボリュームもたっぷり。チョコレートケーキもしっかり律儀に作っている。昔ながらのおやつといった感じ。気取りはまったくないけれど、これぞチョコケーキの原点。種も仕掛けもない、ごくごくふつうのシュークリーム。なのに、なぜかとても美味しい。皮は硬すぎず、柔らかすぎず、飽きのこない口当たりと風味が絶妙。生とカスタードの2種類あり。秋の名物アップルシュトゥーデル。これは甘いものがまったくダメなわが連れ合いの大好物。つまり甘くない。表面の薄皮の乾いた風味、お酒をたっぷり含んだ中の林檎のすっぱい歯ごたえ。レーズンもオトナ風に効いていて、隠し味のようなナッツが時おりカリリ。これまた郷愁さえ誘うようなサバラン。ラム酒で惜しみなくブリオッシュをしとらせた正統派。レトロな包装紙。永遠に使い続けてほしいもの。ここは夏は長期休暇を取るらしい(イタリア人みたい)。遠くから来店する場合は、開いているかどうか電話で確認したほうが無難かも。ローラン東京都三鷹市井の頭2-5-9TEL:0422-45-2826営業時間:昼間はたいがい開いている
2008.10.15
もともとはパリで抹茶風味のケーキで評判を得たSadaharu Aoki。実は昔パリで彼のマッチャを試したときは、「うえっ、これ抹茶の香料じゃん」と思った。日本に上陸したはじめのころは、逆に「抹茶の風味がしないじゃん」と思った。つまりパリでは香りが強すぎ、日本では抑えすぎていると感じたのだ。だが、しばらしくしたら、きちんと上質の抹茶を使った、バランスのいい商品を提供してくれるようになった。その代表作が「バンブー」。日本の正統抹茶の風味とパリ風の個性の強さがうまく融合している。一度は試してみる価値あり(何度もリピートしたくなる味かどうかは、微妙)。Mizumizuのお気に入りは「チーズケークシトロネ」単にレモン好きだからかもしれないが、日本のパティシエとしては、かなり大胆にレモンの酸味を出している。それでいて甘みもあり、全体的に上品な味にまとめている。東京にもブティックができて久しいが、いついっても混んでいる。新宿の伊勢丹にはパリの大御所ピエール・エルメのブティックと同階にあるが、エルメと比べて安いわけでもないのに、客の入りから見れば圧倒的に勝っている。もっともピエール・エルメはパリのエルメとは比べものにならないぐらい、力が抜けてしまったブティックだが。いくら帝王エルメでも、名前と定番商品、それに日持ちするチョコレートでやっていけるほど東京は甘くない。エルメの実力はやはり生菓子で発揮される。少なくともパリではそうだ。どことなく風呂敷を思わせる「和」な箱もオシャレ。
2008.10.14
ある日の午後、クレープシュゼットが食べたくなった。フレンチのコースの最後に作ってくれるレストランはあるものの、その日はクレープシュゼットだけが食べたかった。もちろん、目の前で作ってもらわなければ。たしか、ホテル・オークラのオーキッドルームでサービスしていたハズ。もうそろそろ夕方に近い時間だった。さっそく電話をしてみると、ディナーに向けてクローズ時間があるという。今から行くとディナータイムになってしまう。おそるおそる「クレープシュゼットだけの予約でもいいいですか?」と聞くと、こころよくOKの返事が。オークラに着き、オーキッドルームで名前を告げると、「クレープシュゼットのお客様ですね」きわめてジャパネスクな意匠の施された、高い天井をもつ大空間に腰を下ろす。さっそくワゴンが運ばれてくる。クレープシュゼット、それは1つの儀式。オレンジピールと砂糖を練りこんだシュゼットバターをピカピカの銅製フライパンで溶かすのが、秘密めいた儀式の始まり。グランマルニエに加えてコアントロー、それにキルシュを加えるのがオークラ流。さくらんぼのリキュールを入れるのは珍しいかもしれない。リキュールが一筋の青い炎となって、折りたたまれたクレープにふりそそぐ。レモンの皮がソースに加えられ、香りを移したところですぐに取り出される。残り香が苦味に変わる前に。角砂糖をオレンジとレモンの皮にぎゅっとこすりつけ、移り香もろともソースに溶かす。最初は激しく燃え上がり、それからまとうようにフライパンをつつみこむ炎。巫覡がオレンジの皮をむく。ヴァチカンの奥でとぐろを巻く、あの螺旋階段のよう。そして、炎で昂ぶったコニャックを鍋の頭上でたらすと、青い翼をひろげて、天使が螺旋階段を降りてくる。それが儀式のクライマックス。ソースはかなり煮詰めてとろみを出す、クラシカルなフィニッシュ。艶やかな逸品。何層にもなったリキュールの芳香、大地の恵みを貪欲に吸い込んだクレープの舌触り。フレッシュなオレンジの果肉とアイスの冷たい甘み。時間と手間がかかりすぎるためか、クレープシュゼットを供してくれる店は少なくなった。その意味でもオークラは貴重。一度は行くべし!
2008.04.06
北海道大学の広大なキャンパスには驚かされた。同じ国立大学とはいえ、23区内にあったわが母校とはえらい違いだ。北大自体が1つの町のよう。北大の構内にて。北欧で撮った写真のよう。この大学は敷地のスケールも建物の佇まいも日本離れしている。北大のそばに、とびっきりのケーキを売る喫茶店がある。「ププリエ」という古い店で、きっと知らなければゼッタイに入らないだろうな、というような店… それに、万が一予備知識なしに入ったら、店の中をみたとたん「失敗したかな?」と思うかも…どういう意味だ?あまり追求しないでください(苦笑)。とにかく店構えはおいておいて、一部のケーキの味は最高。ネットではクレームブリュレが評判よいようだけれど、Mizumizuのお奨めは1 チョコレートケーキ2 レアチーズケーキ スタイル703 ブルーベリータルトの3つ。これらのレベルは東京の有名パティシエもかなわないかもしれない。北大のそばに行く機会があったら、お試しを。北大から来ると道の左側。黄色い(苦笑)店なので、それなりに目立つ。くれぐれも店を見てひきかえさないように(そりゃ、あんまりか)。札幌駅の駅ビルには、ルレー・エ・シャトーで有名になった北海道増毛出身のシェフの店ミクニのカフェもあり、チョコレート系のケーキを売りの1つにしているが、ハッキリ言ってププリエの足元にも及ばない。ミクニのカフェはすでに大量生産の味になっている。駅ビルのミクニのカフェでスイーツタイムを過ごすくらいなら、地下鉄もしくはタクシー(たぶんワンメーターかツーメーター)で無理してもププリエに行こう(ただしイートインは、青春時代をあそこで過ごした人以外には、あまりお奨めしないけど・笑)。カウンターにとびきり安い赤ワインがおいてあるのを見たときは、けっこう愕然となった。どうしてこの店であんなにおいしいケーキが作られているのか、まるで狐につままれたような気分になる(って、ひどすぎますか?)。店名:ププリエ住所:札幌市北区北12条西2丁目4-4TEL :011-736-0079営業時間:11:00~20:00定休日:月曜日
2008.03.09
東京の和菓子屋で「栗きんとん」と言ったら、どうやら栗の甘露煮を餡でつつんだものを指すらしい。普通、栗きんとんと言ったら、コレでしょう。東京の和菓子屋で、秋に自家製でコレを作っているところを見たことがない。仕方なく他県の和菓子屋で作った栗きんとんを買っている。中が白く硬くなってしまっているものも多いが、岐阜の松葉の栗きんとんは、中心部までしっとりとして、栗そのものが凝縮されたような自然の風味が楽しめる。甘さもくどくなく、絶妙。ただ、ちょっと小さいのが玉にキズ(笑)。しかし、いかんせん東京の正調・栗きんとんの選択肢の狭さには落胆する。どこかで自家製で作っているところはないんだろうか。
2008.03.05
湯島に行くからには、いまやすっかり有名になったタント・マリーのカマンベールチーズケーキを買って帰ろうと思い、自宅を出る前に電話で予約しておいた。湯島神社のすぐ隣のマンションの一室だったハズ… と思って行ってみたが、あれ? 店がない。湯島神社の周りをグルグルまわってみたが、やっぱりない。変だなあ、電話番号は変わってないのに。あいにくケータイを忘れた。神社の公衆電話から電話してみると、なかなか出てくれなくてファックスに切り替わったりしてる。イライラしながら、何度かかける。公衆電話のボタンの反応が悪く、押したつもりの数字が抜けたりして失敗し、ますますイライラがつのる。5分ぐらいかかっただろうか。やっとこさ出てくれた。話をしてみると、「移転した」とのこと。「どこですか?」と聞いたものの、神社の近くであることは間違いないのだが、道が入り組んでいるようで説明がよくわからず、さらにイライラ。こちらのとげとげしい雰囲気を察したのか、「じゃ、迎えに行きますから」とお店の人。数分で来てくれた。確かに近所なのだけど、路地裏の小さな工房で、およそショップという感じではない。これは正しい住所を知っていても見逃したかも。銀座の松屋デパートのほかに、丸の内のオアゾでも売り始め、元の工房が手狭になって移転したということだった。1983年から作っているタント・マリーの大ヒット作「カマンベールチーズケーキ」。ノルマンディのAOCカマンベールをたっぷり使った個性的なチーズケーキ。ひところ「甘くない」のがケーキへの褒め言葉になって、そこらじゅうのケーキが甘くない、というかほとんど味がなくなってしまった時代があった。今はかなり甘いケーキが「イン」だけれど、タント・マリーのカマンベールチーズケーキは、「おいしいケーキは、甘くない時代」の代表的なヒット作で、かつ今でも根強い人気を誇っている逸品だ。見た目はふつうのベイクドチーズケーキ。中身がしっかり詰まっている感じがある。ふわふわではない。一口食べると食感は確かにチーズケーキ。ところが、食べてるうちに、あ~ら不思議、完全にカマンベールチーズの味に変わってくる! つまり全然甘くない。そして、チーズ特有の風味、別の言い方をするとカマンベールの生臭さが鼻腔に抜けてくる。この魔法のような味わいは、ちょっとほかにはないかもしれない。ケーキといいながら甘くないし、カマンベールチーズそのものという個性的な味だから、嫌う人は全然受け付けないだろうけど、ほとんどこの1つの商品だけで、銀座と丸の内のデパートに出してやっていってるワケだから、ファンも多いのだろう。すべての人が好きなわけではないだろうけれど、どこにもない個性でファンが多く、根強い人気。実はこれが人気商売では一番強いのかもしれない。もちろん、ホンモノの上質の素材を使ってこその味であることは間違いない。ついでにりんごのタルトも買ってみた。ちょっとタルトタタンの雰囲気もある感じ。お酒がきいていて、やはり甘さは控えめ。酸っぱさはイマドキからすると強くもないかな。チーズケーキほどオンリーワンではないけれど、ちゃんと作ったおいしさ。タント・マリー工房 文京区湯島2-26-5 電話:03-3836-3358銀座店 中央区銀座3-6-1 松屋本店B1 電話03-3567-1211丸の内店 千代田区丸の内1-6-4 オアゾ1F 電話03-5252-7734
2008.03.03
いわずと知れたパリの天才パティシエ、ピエール・エルメ。パリに行くと必ずサン・ジェルマン・デ・プレの彼の店を訪ねたものだ。地下鉄のマビヨン駅を東方面から出て、ボナパルド通りを左へ。エルメの店は間口が狭くて中が細長い、典型的なパリのペストリーブティックで、いつもお客でいっぱい。新作の時期には、それを目当てに行列もできるほどだった。エルメを出てサン・ジュルビス通りに出たら、すぐ左へ歩く。すると教会が見えてきて、その前がちょっとした広場のようになっている。ここのカフェで飲み物を注文して、持ち込んだエルメのケーキを食べる。パリではカフェに別の店で買った物を食べても別に問題はない。ただし、紙皿とフォーク&ナイフは持参していた(笑)。パリのエルメは、チョコレートはあくまで濃く、しかも何種類かの違ったテイストを必ずミックスさせていた。その組み合わせはいつも新鮮な驚きに満ちていた。日本にもおいしいチョコレートケーキはあるが、チョコレートの組み合わせの妙という意味では、エルメの右に出る人にはまだお目にかかったことがない。フルーツ系は日本人にとっては香料があまりに強く、ナチュラルな風味に欠けていると感じることが多かった。そういう優雅な(?)パリでの日々もすっかり遠くなってしまった。最近は仕事に追われまくり、パリどころか最寄の駅ビルにすらいけないような状態(苦笑)。おまけにこのユーロ高で、ただでさえ物価の高いパリに行ったら、おそらく、カフェでコーヒーを飲むのも二の足を踏むんじゃないかと思う(再苦笑)。さて、そんなエルメだが、東京にいくつか店はあるものの、パリのブティックのような賑わいはどこにもない。以前はパンもやっていたのにやめてしまったし、ケーキの数も心なしか減っている。海外の有名パティシエも東京では苦戦することが多い。だんだんと生菓子の数が減り、チョコレートだけになる、なんてことも多い。レシピを渡して、ブランド名だけでやっていけるほど東京人のレベルは低くないのだ。新宿の伊勢丹に行ったついでに、エルメの店があるのに気づいた。例によって(笑)あまりお客がいない。サン・ジェルマン・デ・プレでの賑わいを知っている人間からすると、ちょっと寂しいものがある。ひさびさにどうかな、と思って生ケーキを買ってみた。やはり、さすがの実力。チョコレート系は文句なくおいしい。スクエアなフォルムにスクエアなゴールドリーフのアクセント。シンプルなルックスだけれど、味は複雑。エルメの真髄である「チョコレートの組み合わせの妙」が堪能できる。ナッツの食感もアクセントになっている。パリのチョコレート系より若干あっさりとしているかもしれない。こちらは日本のピエールエルメの定番。表面のオレンジピールの若干の苦味とレモンの酸味がなんともいえない。何層にもなったチーズの味わいも密やかに複雑。ただ、パリだったらきっと、もっと酸味をきかせるハズ。日本人向けにおとなしくなっている感は否めず。おいしいことは間違いないのだが、やはり問題は種類の少なさと1つ700円以上という値段だろう。あまりお客さんもいないし、「このケーキっていつ作ったもの?」などと余計な心配までしてしまう(苦笑)。ピエール・エルメをありがたがって食べなくても、日本人の有能なパティシエはいくらでもいるということかもしれない。ただ、やはり「どっか違うな」と思わせるものがあるのも事実。それは意外なアクセント使いだったり、種類は同じでも少し味わいの違う素材の配合だったりする。ほんの「ちょっとした」違いだ。この違いにこの金額を払ってくれるお客がいるというのも、また東京の寛大さなのかもしれない。
2008.03.01
銀座近辺でどのホテルが好きかと言えば、やはり『西洋銀座』かもしれない。高速のすぐ近くというのがちょいイタイが、銀座中央通りに面していて、買い物途中に寄って休むのにも最適。何よりこの喧騒に満ちた銀座という街にありながら、ホテル内へ一歩入ると静かで、インティメイトな隠れ家的な雰囲気があるのがいい。不特定多数の人が歩く、ペニンシュラの埃っぽい「ザ・ロビー」でアフタヌーン・ティーをするより、西洋銀座の「プレリュード」のほうがよっぽどくつろげる。人もあまりいない。高速をはさんで京橋側にはかの有名なパティシエ『イデミ・スギノ』のメゾンがある。先日お昼に行ったら、イートイン&テイクアウトもの両方すべて売り切れだった。平日なのに…… 相変わらずすごい人気だ。イデミ・スギノにフラれたので、西洋銀座でチョコレートスフレを試してみた。「20分ほどかかりますが」と、ウェトレスのお姉さん。もちろん、スフレですからね。待ちますとも。荻窪のオレンジ風味のスフレとどっちが上かな~。待つこと20分、チョコレートスフレが銀のお盆にのって、ふるふるとやって来た。写真を撮っている間に、早くも縮んでくる。やはり、スフレは時間が命。硬めの表面をスプーンでトントンやって、崩しながらいただくのがスフレタイムの楽しさ。チョコレートは上質で、案外さっぱり感があり、くどくない程度に濃厚なのが日本人好みだった。スフレには果物(ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー)&バニラアイスがセットになっている。果物はしっかり蜜でコーティングしてある。自家製ケーキと併用だろうけど(笑)。これは甘いチョコレートスフレを食べたあとの口直しに最適。紅茶もしくはコーヒーも選べる。出来合いのスイーツではなく、その場で作ってくれる暖かいデザートが食べたいときは、寄ってみて損はないだろう。ちなみに荻窪スフレとの比較で言うと…… う~ん、チョコレートとオレンジ風味なので、なんとも言えない(笑)。コストパフォーマンスとふるふる度では荻窪に軍配が上がるかも。
2008.02.22
チョコレートは、トリュフのような量感のあるものではなく、薄いものが好きだ。それもタブレット(板チョコ)ではなく、2口、3口で食べられるサイズのもの。となると、パレファンが好み、ということになる。そんななかでも銀座の「ピエール・マルコリーニ」のパレファンは、なんとも官能的で、嗜好にピッタリはまる。厚さ4ミリの正方形(なので、正確にいえば「Palet」ではない)に4種類のフィリング。周囲の硬いカカオの風味とねっとりとした中の個性的なフィリングが最高にマッチしている。「山の蜂蜜」は、樹液から採ったのではないかと思わせる野性的な蜂蜜に、ビターなチョコレートが競うように舌のうえで主張しあう。自分自身が蜂にメタモルフォーゼし、森の樹木から蜂蜜を集めているかのようなイメージが浮かぶ。「伝統的プラリネ」は、ベルギーのチョコレートらしく、ヘーゼルナッツの香り。とじこめられたいたヘーゼルナッツの甘く、独特なクセをもったフレーバーが、チョコレートをかじったとたんに周囲にひろがる。「キャラメル」は文字通り、少し苦めに仕上げたキャラメル。周囲がミルクチョコレートでかなり甘いので、味覚がミルクの風味のなかで無意識に苦味を探しているのに気づく。「ビターガナッシュ」も、文字通り。甘みをおさえたチョコレートクリームを甘みを前に出したミルクチョコレートでくるむ。二重のカカオの風味と違った食感を一度に楽しむ仕掛け。
2008.01.14
自由が丘の「モンサンクレール」もあまりに有名なパティスリー。昨日ご紹介した「アテスウェイ」と方向性が似た、非常に「イン」なスイーツで、長いこと人気を博し続けている。実は自由が丘は荻窪からも、距離的にはそれほど遠くはなく、あまり渋滞していなければ、クルマで40分ほどで行ける。「セラヴィ」のような有名ヒット商品もあるが、Mizumizuがオススメしたいのは秋のお楽しみ、「タルトタタン」。タルトタタンというのは、フランス中部ソローニュ地方にあるラモット・ブーヴロンという小さな町でホテルを経営していたタタン姉妹が作ったお菓子のこと。ある日、りんごのタルトを作っていて、焼く時にうっかりタルト生地を入れ忘れてしまった。型の中にりんご、砂糖、バターだけを入れて焼いてしまったというわけ。仕方なく、その上に生地をかぶせてみたら、意外にも、底にたまった砂糖がキャラメリゼのようにりんごを覆い、りんごのタルトとは違う、美味しいお菓子ができあがったのだ。これをパリの「マキシム」がデザートとして紹介し、一挙に広まった。りんごのタルトより「りんご感」が強い。実はMizumizuは、物好きにも、このタルトタタン発祥の町を訪ねて、町一番というタルトタタンを買ったことがある。シャンボール城で名高いロワール川流域からそれほど遠くなかったので、シャンボールに行ったついでに足を向けたくなったのだ。クルマで湿ったソローニュ地方の森を抜けて走った。ラモット・ブーヴロンは本当に小さな町で、目抜き通りもすぐにわかり、目指すパティスリーも名前だけで、通りを走っていて一発で見つかった。こんなことは東京ではほとんど考えられない(笑)。タルトタタン発祥の町で一番という評判のタルトタタンは、意外にも甘さも酸味も控えめな、やさしい味だった。りんごのカタチも残っているし、自然の風味が豊かに感じられた。生地も厚めで素材そのもののもつ美味しさを大切にしていた。自由が丘の「モンサンクレール」のタルトタタンは、紅玉の酸味が非常に強く出ている。ここまで酸味を前面に出すのは、日本では冒険だったと思う。ちょっと沈んだ、きれいとはいえない色合いで、りんごのカタチはほとんど姿を消しているが、そのかわり洗練された不思議な歯ごたえと舌触りが楽しめる。すっぱいケーキが嫌いな向きにはオススメしないが、りんごのお菓子好きなら間違いなく評価してくれるはず。モンサンクレールのりんごのスイーツはどれも美味しい。りんごのタルト「プティポンム」もリピートしたくなる味。
2008.01.13
仕事ばかりで完全引きこもり生活の毎日。気がつけば世の中はクリスマス一色。23日は天皇陛下の誕生日だというのに、日本国民は完全に忘れている!?街に出てみると、お店は買い物客でいっぱい。クルマで吉祥寺に行ったら駐車場も空いてなくてスゴスゴ荻窪に引き返すハメに。荻窪のルミネに行ってみたら、こちらもクリスマスケーキを買うお客さんで大賑わい。ヒトが買ってるのを見るとやっぱり自分も買いたくなる。なんとも典型的ジャパニーズのMizumizuは、ケーキの物色にかかる。日影茶屋の「ブッシュドノエル」には惹かれるものの、「う~ん、でもやっぱり、味で選ぶなら「アベだよな」と行きつけのパスティッチェリアへ。ここはグルメ評論家の山本益博も激賞する荻窪の実力店なのだ。行ってみるとやはり時期が時期だけにお客さんで狭い店内いっぱいだった。キッチンでは、忙しく働くパティシエの姿が見える。いつもより頭数が多い気がする。「ブッシュドノエル」はなかったので、オーソドックスなクリスマースケーキをチョイス。生クリームの上質感からして、大量生産のケーキ屋のクリスマスケーキとは一線を画している。すっぱめの苺も存在感抜群。珍しく、焼き林檎を発見!「暖めて食べてるなら容器を替えてね」と言われるままに、器に移してラップをかけ、レンジであっためて食してみた。とってもよろしゅうございました。中までしっかり味がしみこんでいる。お酒もよく効いていて、すっぱい果実は大人の味。こういう変化球があるのもアベの楽しみ。近所にここまでおいしいパスティッチェリアがあるなんて、なんて幸福。できれば、美味しいパン屋もあるといいのだけれど。久我山に住んでいたときは徒歩3分の場所に、職人さんが1人でやってる極上のパン屋があった。荻窪はパン屋はたくさんあるけれど、だいたいが大手のチェーン店。まずくはないのだけれど、やはりもうひとつ少量手作りでなければ出せない「突き抜け感」はない気がする。例外は「ルクールビュー」の合鴨サンドかな。あれはヨーロッパ風の重めの味で、大変気に入っている(ただし売り切れるのも早いのでなかなかありつけない)。
2007.12.24
日本で高級チョコレートといえば、ゴディバ。というような時代があった。今はいろいろなショコラティエが東京に進出している。だが、どこもプラリネとかトリュフばかりであまり個性がない気がする。そんななかで、偶然新丸ビルで入った、ショコラティエの「円盤」形のチョコレートを見て、「あれ?」と思った。「もしかして、ここリヨンのショコラティエの店ですか?」何も知らないので、店員に聞いてみた。「そうではないんですが、リヨンのベルナションの店で修行したオーナーの店なんですよ」やっぱりそうか!ベルナション――チョコレート好きでその名を知らない人はいない、リヨンの天才ショコラティエ。「フランスで最も優れたショコラティエ、つまりは世界一のショコラティエ」と評されたこともある(ただし、そう言ったのはリヨンの政治家だけどね・笑)。その新丸ビルの店の名前は『パレドオール』だという。フランス語で「金の円盤」という意味で、金箔を散らした円盤形のそのパレドオールというチョコレートは、ベルナションのスペシャリテだった。イタリア派のMizumizuだが、チョコレートに関していえば、完全にフランス派。それもリヨンを聖地とあがめている(笑)。イタリアの高級チョコレートといえば、ジャンドゥイオッティだが、ヘーゼルナッツと合せたミルクの風味の高いこのチョコレートは、なんといっても高貴なエスプレッソ「家」と幸福な結婚をすべく育てられた、これまた高貴な貴族の箱入り娘のようなもので、あまりに甘やかで、我侭なほどねっとりしすぎている。東京では、カフェ・コヴァでも売られているが、買ってる人を見たことない(笑)。一方、リヨンはカカオそのものの美味しさを追求するショコラティエが多い。近頃少しだけ日本でも知られるようになった「ベネズエラ産のカカオ」を発見したのもリヨンのショコラティエであると聞く。2007年7月10日の記事で紹介したように、Mizumizuにとってのショコラの最高傑作はリヨンの街角で出会った、ベネズエラ産のカカオを使った極薄の円いショコラだった。そのショコラはシンプルでプレーンな味わい。ほんの少し酸味のあるビターなカカオの美味しさをあますところなく味わわせてくれた。しかも、その薄さは芸術的だった。「パレドオール」では、ちょうど円盤形のチョコレートで新栗のペーストを中に入れたものが季節限定で出ているという。なので、それとヌーヴォーオレンジ(写真中)、あとはもう1つのスペシャリテだという「ガナッシュに砂糖を使わず、100%カカオにはちみつだけで甘みをつけた」というマールショコラからシトロン(レモン風味)を選んでみた。感想としては…… 新栗のパレは個性的でこれまで食べた栗と合せたチョコレートのなかでも相当評価できると思った。だが、オレンジとレモンは期待したほどではなかった。フランスだったら、もっと果物のすっぱさを前面に出しそうなのだが、酸味がかなり控えめになっている。そのかわり香料の後味が残ってしまった気がする。お題目ほどは感動しない。もちろん美味しいのだけれど、買い手というのは常に、払った金額に対しての満足度を考えるものなのだ。こちらはマドレーヌ。マルセル・プルーストの小説で主人公の記憶を呼び覚ますのはこのお菓子の香り。つまりはバターの香りだ。マドレーヌはバターの風味と香りが命といってもいい。ショコラティエの店なので、チョコレート味にしてみた。悪くはない味なのだけど、この程度なら『並』かな。もっとチョコレートの濃厚さがグッとくるかと思いきや、そうでもない。バターの風味を消してしまわないようにという配慮かも。でも、どちらにしろ控えめというか中途半端。上品で美人だけど、1度デートしたらそれでバイバイで十分な、育ちのよいお嬢様という感じ。やっぱりここのお薦めは、スペシャリテの「パレドオール」かもしれない。次回買うときは、これに絞ろう。少なくとも、リヨンの天才ベルナションの面影は伝えているだろうと期待している。なにせリヨンのショコラティエは、海外進出なんて考えない人が多いから、東京でその「風」を感じられるということは、それだけで貴重なのだ。
2007.11.14
日本橋人形町の『玉ひで』に行ったついでに、美味しい和菓子屋さんがあると聞いて寄ったのが、『東海』。佇まいからして、正調お江戸の老舗の雰囲気。中ではおかみさんが売り子、奥でご主人が作っているらしい。本当に昔ながらの手作りの店なのだ。「よく、マスコミにも取り上げられるんですよ」という商売上手なおかみさんの言葉につられて買ってみた「きみしぐれ」。黄身しぐれは東京では、ものすごくポピュラーだ。関西方面では逆にそれほど見ない気がする。もじどおり、卵の黄身で作るから、ふつうは黄色い。ところが東海のきみしぐれは、なぜか薄桃色!! 表面のヒビが実にいい感じだ。カタチあるモノが崩れていくその直前の、はかない美しさを切り取ったような姿。食べてみたら、このきみしぐれ、まったくタダモノではないということがわかった。中は少なくとも3重のグラデーションになっている。表面ははらりとした口当たり、中は対照的にしっとり。荻窪にも黄身しぐれを売る、それなりに老舗ぶった和菓子屋もあるのだが、単にあくどく甘いだけで、この東海のきみしぐれの繊細さや複雑さには到底及ばない…… というか、月とスッポン。まったく別モノ。いや、さすが、日本橋人形町の老舗。完璧にマイリマシタ。黄身しぐれがこんなに可憐で上品で奥深い和菓子だったとは。教えてくださってありがとう、と一礼したい気分。こちらは「栗むしようかん」。1本買ったときは、「あまったらどうしよう?」などと思ったのだが完全に杞憂。しつこくなく、軽い口当たりで、あっという間になくなった。「栗きんとんもなか」は、2種類の餡が用意されている。これは、1つを分け合って食べたので、味がよくわからないまま終わってしまった(笑)。くどさや重さがないことはわかったが、甘かった印象だけで終わり。ほかにも「うぐいす餅」は人気だとか。ここならまた荻窪から買いに行ってもいいな。和菓子の場合は特に、何度でも行きたいと思わせてくれる店は、こうした職人個人の力量だけでやっている小さな店が多い。機械化された工場では、結局出せない味というものがあるのだ。
2007.11.13
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