仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2011.10.15
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カテゴリ: 宮城


■参考
 ・『涌谷町史上巻』(昭和40年)
 ・『涌谷町史下巻』(昭和43年)
 ・河北新報社編集局編『仙台藩ものがたり』河北新報出版センター、2002年
 ・朝日新聞宮城支局編『宮城風土記3完』宝文堂、1987年
■関連する過去の記事(涌谷商人関係)
宮城県北の東北本線ルート(再び) (2011年8月24日)

伊達家臣団の家格と一門のプロフィール (06年3月7日)

1 涌谷城下の成立

伊達稙宗の第12子で外祖亘理宗隆(母の父)の嗣子となっていた亘理元宗は、気宇凝重で智勇群を抜き伊達三傑の一と称され、天正19年(1591)の仙北一揆平定に嫡子重宗とともに功績があった。同年政宗の岩出山移転に伴い、遠田郡に村替えとなる。はじめ大沢村の百々城(田尻駅東南の丘陵にあり岩出山城の南の押さえとして要地)を与えられるが、間もなく19年冬に涌谷城(大崎氏家来涌谷正右衛門居住と伝えられる)に移る。軍事上の要地のみならず、未開発の平地が開け江合川を控えて経済交通の中心となりうる地点であることから、元宗の嫡子重宗がそのすぐれた立地条件に着眼したものである。
(17代当主の正彦さんは旧涌谷村の村長を務めた町政の功労者。県議を6期、公安委員長の要職も歴任された。亡父の16代胤正さんは重宗公胸像のモデルとされた。)

元宗は文禄3年(1595)6月死去、城下町づくりは重宗が始め本格的な建設は慶長9年に嗣いだ三代定宗(1606年伊達姓を許される)に引き継がれた。四代宗重(1671年伊達騒動で落命)になると新田開発などで2万2千6百石の大身になり、仙台街道に延びる新町や江合川に通じる川原町が整備された。

また、石巻から江戸へ運ぶ江戸廻米(かいまい)盛りのころであり、江合川沿いに蔵が建ち船着き場が栄えた。涌谷大橋からやや下流の岸(城とは反対側の駅のある方の岸)に船着き場があった。

2 涌谷商人の興隆

江合川舟運で栄えた涌谷商人は、維新後いっそう財力を蓄えていく。

多くの分家を抱えた久惣(ひさそう)一族は、それぞれが呉服、米穀、雑貨、文房具、書籍、荒物、煙草、酒造などで繁昌した。また、明治14年創立の日本鉄道会社の出資者には、砂、横山などの涌谷商人の名が見える。分家の久保(ひさやす)は明治20年代に旅館業を始めた。

だが、東北線から外れ舟運も廃れる中、涌谷は昭和中期以降衰退していく。



屋号を久惣。初代は久道(我妻)惣五郎。18世紀の人で味噌醤油醸造に始まり、太物、呉服へと商いを広げた。久惣は御用商人であり、町政を司る検断でもあった。今風に言えば、商事会社社長かつ区長。本家であることから分家の久保より更に羽振りが良かった。

また本町通り南端にある紫雲山光明院(元宗移封に伴い亘理から移った)の山門には天明飢饉の供養碑が3基あるが、うち2基の功徳主は三代目惣五郎の名。のちの天保の飢饉でも久惣と久保は粥を施した。

本町通に偉容を誇った久惣の大店も今はない。

涌谷町史下巻には、明治の久惣当主の文章が紹介されている。曰く、曾祖父の久道惣五郎(代々襲名のよう)は味噌醤油の商いで天保年間などに涌谷を支えた。また祖父の惣五郎は仙台大町の高甚小間物店で見習い奉公し、維新前後に今の店舗で商売を始めた、などと。

4 久保(ひさやす)



また光明院山門に句碑があるが、1千5句を収めた著書「四季句集」がある。天保年間でも家業を使用人に任せる余裕があったと見られる。

「樅の木は残った」の著者山本周五郎は、久保旅館の昭和29年6月20日の宿泊人名簿に載っている。「横浜市...著述業山本周五郎51」、また、文芸評論家で当時山本担当編集者の「会社員木村久邇典31」とあるそうだ。山本は新聞連載に先立ち、29年6月18日から22日にかけて、船岡、青根、涌谷などを取材し紀行文「雨のみちのく」を書いた。涌谷はどこよりも城下らしい規模を遺していた、ひさやす旅館の主人が親切で旧伊達の家従の住宅を見る機会をつくってくれた、と記している。

6代目の保衛さんは昨年(おだずま注:上掲の宮城風土記に掲載された昭和58年頃)涌谷高校を定年退職された。山本宿泊当時の主人久道新治郎さんは亡くなられたが(おだずま注:昭和55年頃か)、大正時代からの日記が最近みつかり、山本さんに町内を案内したことなどが記されていた。

5 桜井屋

本町通り光明院近くには桜井屋がある。桜井屋も供養碑に名を残す御用商人で、1800年頃当主が城下龍淵寺の総代長を務めた。京都から招いた和尚が桜井屋に伝えたのが豆腐作りで、今や涌谷の名産となった「おぼろとうふ」の始まりである。





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最終更新日  2011.10.15 22:23:59 コメント(2) | コメントを書く


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