ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jul 16, 2006
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先週末の野外コンサート をもって、今シーズンのオーケストラの本番は全て終了した。やっと夏が来たという感じ。

 振り返ってみると、去年の秋から、かつてないほど多くのオケで弾かせていただいた。自分でもちょっと無理をしたと思うし、練習が追いつかないまま本番を迎えるのはいただけなかったけど、多くの人との出会いがあったし、オケで弾くのはやっぱり楽しい。

 今シーズンの自分のオケ活動について、忘れないうちにここにまとめて記録しておきたい。

 * * * * *

 去年の後半、突然ながら数ヶ月ロンドンで暮らすことになった。あわよくば現地で演奏仲間が見つかればと思い、もちろん楽器を持参した。

 渡英後、Rオケという団体を見つけた。それは「演奏会を行なわないオーケストラ」。

 週一回集まっては、毎回異なる曲を一、二曲弾く。曲目はあらかじめ知らされるので事前にさらうもよし、潔く初見で臨むもよし。
 特定の曲を本番に向けてじっくり取り組みたい人には不向きだろうけど、自分のような風来坊にとっては、お気楽に参加できるのが嬉しいし、考えようによっては効率的。曲のリクエストもできて、自分のやりたい曲も弾ける。協奏曲のソロとかも。


R.シュトラウスのホルン協奏曲2番 を団員の独奏で演奏した。難曲だったけど、ソロのスティーブンさん、熱演。
デュカスの「魔法使いの弟子」 も弾いた。こういう時に限ってビオラパートの人数が足りず、僕がビオラのソロを弾くハメになって焦ったり。
 今まであまり弾いたことのなかったシューマンやメンデルスゾーンの曲も体験できた。

 本番を行なわないこういう特殊なオケは、集まってくる人も多種多様。コンサートホールで人前で弾くのが恥ずかしいという内気な人もいれば、「広く浅く」タイプ、束縛を嫌うタイプとか。
 ほかのオケと掛け持ちしている人も多かった。オケのレパートリーを勉強したいという真摯な紳士もいて、練習後にパブで生ぬるいビールを呑みながら、オケ談義に花が咲いた。

 ロンドンを去ってかなり経つ今でもこのRオケのことを時々思い出す。「けじめ」を大切にする日本社会で、明確な目標(=本番)のないまま練習しつづけるオケが存在するのかどうかわからないが、このオケは、情報交換の場として、あるいは単なる社交場として、疑いなく有意義な活動をしている団体だと思う。

 普通、オケの思い出って、同じ舞台で演奏会を達成した者だけが共有できる結束感のようなものに支えられていることが多い。そして、このRオケにそういう思い出は当然ない。
 でも、あの薄暗く汚い練習場の匂いとか、クラリネットのおばさんが休憩時間に入れてくれた紅茶の味とか、はっきりと覚えている。





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最終更新日  Jul 17, 2006 12:03:35 PMコメント(0) | コメントを書く


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