ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Dec 23, 2006
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「冬のリビエラ」

 弾き納め合宿、二日めの午後はひたすらピアノ五重奏曲を弾き続けた。メンバーは、セス(ピアノ)、トニー(第1バイオリン)、僕(第2)、キャロル(ビオラ)、ルース(チェロ)。

 セスの蔵書もすごいが、トニーもいろんな楽譜を所有しているとのことだったので、選曲については、今月上旬から五人の間で激しいメールのやりとりが交わされていた。あれ弾きたいこれ弾きたいと、みんな言いたい放題。

 エルガーの譜面をトニーが持ってると聞いたときには思わず狂喜乱舞してしまった。(乱舞はしなかったかも。) 僕はエルガーが、そして彼の五重奏曲が大のお気に入りだったから。ほかの人たちを強引にねじ伏せ、エルガーを演奏曲に加えることに成功したときは、 生きてて良かった とほんとに思った。まじで。

 ちなみにトニーは英国のご出身(しかもポール・マッカートニー似)。当然のようにエルガー卿を崇拝なさってる。下手に知ったかぶったことは彼の前では口にできない。

1楽章: エルガーの音楽というと、穏やかで慎ましいなかにも、秋冬の寂寥感に似た哀しさが漂うものだが、この曲にはなぜか太陽の光を感じた。スペインというか地中海的音楽と言ったら過言か。
 トニーによる曲目解説&ウンチクを授かりながら(しかもこてこての英国訛り!)、僕はかつて旅した英国南西部の海辺の風景を漠然と思い出した(トーキーとか)。英国のリビエラと呼ばれるほど温暖な地域なのに、どこか淋しい港町。真昼でも太陽の光が斜めから差し込んでくる。

2楽章: 映画「眺めのいい部屋」とかのバックにそのまま使えそうな(やや気だるい)英国風午後の紅茶的耽美系音楽が、ビオラのソロで始まる。チェロにも渋いソロが。


3楽章: 前楽章の旋律を使い回した小春日和系な出だし。リズムや強弱の変化に富んでいて、三連符の難所も出てくる。
 全体にわたりセカンドはひたすらファーストに添う。だから、たまにファーストと違う音型になると逆に萌えてしまふ。

* * * * * 

 実はこのトニーさん、ちょっとした有名人。少年少女オーケストラを率いていて教育者としても知られているうえ、非営利の国際組織、 Amateur Chamber Music Players(アマチュア室内楽演奏家協会) の理事だかも務めている。(僕も会員。) この団体、たぶん日本で言うところの 日本アマチュア演奏家協会APA(エイパ)

 だから、トニーは、ニューヨークだけじゃなく全米じゅうで カリスマ室内楽おたく として名を馳せている。僕も彼の噂は前から耳にしていた。お会いできるだけでも光栄だったが、実際に一緒に弾いてみて、彼の実力や曲に関する知識にはほんとに脱帽した。どんな編成の室内楽曲も知り尽くしていて、曲の背景とか難易度とかも全て頭に入っている。プロの音楽家や業界との結びつきも強そう。タダモノにあらず。
 彼とは今後も一緒に弾き続けていきたいけど、僕が彼のおメガネにかなってるかどうかは謎(←エニグマと読みます)。

 怒涛の合宿二日間が終了。ソナタ(ピアノとの二重奏)からピアノ五重奏まで、ちゃんぽんで弾きまくって疲れたけど、すごく勉強になった。(ここに全曲は記さないけれども。)





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最終更新日  Dec 25, 2006 11:46:47 PM
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