ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Mar 3, 2007
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「フジヤマパワー」

 せっかく黄金の島ジパングに来てるからには、フジヤマを見ずして亜米利加に戻るわけにはいきません。
 そう思ってた矢先、富士山麓在住の友人I崎さん(ピアノ弾き)のご自宅での催し物にお招きいただきました。名づけて「 ひな祭り杯争奪、室内楽ごっこパーティー2007(仮称) 」。楽器と楽譜を携えて、お山のふもとへいざ出陣です。

 ちなみにこの企画、つい先日決まったばかりなのに、地元の音楽愛好家などが六、七名も集まり、豪勢な食事やお酒も楽しみつつ、ワイワイガヤガヤと楽しいひとときとなりました。

 皆さん、普段から熱心に練習されてる方がたばかりで驚きましたし、はっきり言って焦りました。
 持ち寄られた曲は偶然にもブラームスばかり。チェロのT村君はソナタ1番を、I崎さんは ピアノ三重奏曲1番 を、そしてクラリネットのT屋氏の音頭で五重奏曲をみんなで合わせました。かくゆう僕もちゃっかり バイオリンソナタ1番 を持参しました。(いずれも1楽章のみ。)

ベートーベンのカルテット9番(ラズモフスキー3番) に挑戦することでありました。第1バイオリンは僕、第2はN澤さん、ビオラC子さん、チェロT村君という面々。
 事前のメールのやり取りで、一部の方のこの曲にかける並々ならぬ意気込みは察してはおりましたが、どうやら僕を除く三人はこの曲を別の団体で取り組んでいるらしく、貫禄も充分。その事実を当日知った僕は大慌て。そうこうしているうちに宴もたけなわ、ついに練習が始まってしまいました。

 この曲、ほんとに名曲中の名曲であります。1楽章冒頭の音からして意味ありげ。この和音の響きだけでもいきなり緊張感を覚えます。全体的にファーストのみが他と違う動きを見せることも多く、それがこの曲のファーストを弾く醍醐味ではあるけれど、かと言って他の三人がつまんないことをやってるわけでは決してなく。
 一風変わった裏打ちリズム、随所に現れる超高音など、次々と登場する難所に悶え苦しみながらも、我々は1楽章を早々に切り上げ、果敢にも(というか無謀にも)4楽章に挑むことにしました!

 ビオラが独りでアレグロモルトなテーマを弾き始めます。そして、次々とメンバーが加わり、壮大なフーガ合戦の火蓋が切られました。
 この楽章はやはり有名なだけあって弾きがいに満ちてます。譜面的には、単なる八分音符の羅列かつすっきりしてわかりやすいハ長調の曲と思えなくもないのですが、実際に音にしてみると、複雑に声部が織られていて細部まで計算され尽くした大曲であることを実感します。バロックやモーツァルトの 風雅なフーガ とは一線を画す新世代なそれ。ジャズっぽい粋なリズムも登場するし。

 弾いてて楽しかったし、かなり燃えました。下界で何が起ころうとも、微動だにせず威厳を放ち続けている雄大な富士山のように?、この曲は古今東西の室内楽曲のなかで不動の地位を保っていると言えましょう。ハ長調だからかもしれないけど、どっしりと地に足のついた音楽という気がしました。

 自分までひと回り大きな人間になったような錯覚というか、荘厳な不思議なパワーを感じながら弾いたのでありました。





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最終更新日  Mar 5, 2007 10:18:31 PM
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