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中学生向けの本だとバカにできない。読んでそのことを認識した。【送料無料】日本という国価格:1,260円(税込、送料別)残念ながら売り切れ。本書で最初に紹介されているのは福沢諭吉。日本の近代、現代史を見事に解説している。同感だったのは昭和天皇が敗戦を決めなかった部分。1945年(昭和20年)2月に近衛文麿が進言した。近衛の進言を天皇は「もう一度戦果を挙げてからでないと」と拒否。この件については、以下の記事に書いた。天皇に戦争責任はある!もしこの時点で戦争終結ができていたなら。東京大空襲や沖縄戦は避けることができた。学校での歴史は、近代史や現代史まで届かないことが多い。一部の教員は「面倒な部分を避けられてラッキー!」と感じているのか。学校でも勉強しない。家には戦争を語れる大人がすでにいない。そんな時、こうした本を読むことは間違っていない。本書がすべて正しいとは言わない。だが、歴史を語る上での「叩き台」にはなる。この「叩き台」の存在こそが大きい。正直に書く。私はサンフランシスコ講和条約についてよく知らなかった。東京裁判の判決受け入れについては、すでに何度も記事に書いた。中国副首相の会談キャンセルと靖国神社 東京裁判と靖国についての社説比較。日本から見た講和条約。そしてアメリカから見た講和条約。だがそれ以外にアジア諸国から見た講和条約の視点が欠けていた。その「よく知らない」という部分を知ったのは大きな収穫。忘れないように記録しておく。※トラックバックは楽天の方針で受け付けなくなりました。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.04.21
ジェシカ・ウィリアムズが書いたこの本を読んだ。【送料無料】みんなで考えよう世界を見る目が変わる50の事実価格:1,470円(税込、送料別)「世界がもし100人の村だったら」「あの金で何が買えたか」。そしてこの本。 世界はまだ混沌としている。奴隷に麻薬、著しい平均年齢の差(84歳と39歳!)。知っていることも多かったが、この本で知ったことも多い。「イギリスのスーパーマーケットは政府より個人情報を持っている」「ブラジルでは軍人より化粧品販売員のほうが多い」気になったのは麻薬について。オランダの例を挙げて規制緩和を紹介。読者の一部は「規制緩和すれば問題解決する」と解釈しないだろうか。この問題はデリケートだ。くれぐれも誤解のないように。私は大麻の規制緩和には反対だ。以下のページでそのことについては書いた。素人が語る薬物問題ペットボトルの処理についてもリサイクルで解決するのか。石油製品のペットボトルを製造しないよう「量り売り」が必要だ。性器切除や良心の囚人、HIV陽性患者。デジタル・ディバイド(情報格差)の問題。中絶医師を殺害して一躍ヒーローになる牧師。宗教を背景に殺人が正当化されるとはキリストもびっくり。中絶医、教会で殺害されるにもかかわらず、キリスト教を背景に純潔教育が蔓延っている現状。純潔教育については、かなり前になるが記事にした。シルバーリングで純潔を守る?この問題、キリスト教的世界観のない日本では理解されにくい。追記その後、この本を読み直してみた。拷問についてのページで、以下の質問が鋭いと感じた。「テロの情報が事前にわかるのなら、多くの人を救うために拷問をしてもいい」という意見について君はどう思う?(本書から引用)拷問はしないほうがいいに決まっている。しかし911テロなどを知ってしまった今、私は拷問を否定できない。「多数を救うための少数を犠牲にする」という問題。これはハーバード大のサンデル教授が講義で使いそうだ。そう思ったら、来日時のテレビ番組でしっかりと使っていた。サンデル教授 日本を救う!特別講義 3/3(youtube)番組内での例はテロではなく、北朝鮮による拉致事件について。拉致被害者救出のため、スパイの拷問をするかどうか。サンデル教授は「どちらも正しい」と解説。本当は、電車の例で「目の前の人は殺せない」ということが重要。忘れてならないのは、拷問した場合「例外の怖さ」。一つ例外を作れば、その次に別の事例で拷問するだろう。そうするうちに、拷問が当たり前になる。女性器切除についても考えさせられる。「世界にはさまざまな価値観がある、女性器切除もひとつの伝統として認めるべきだ」と主張する人に、君ならどう反論する?(本書から引用)伝統がすべて許されるのであれば、黒人差別も伝統だ。だが現代社会では差別を許さない。伝統について、どこまで肝要になるべきか。これを間違えると、多くの悲劇が生まれる。***********************関連記事ジェシカ・ウィリアムズ『世界を見る目が変わる50の事実』 50の項目はここで紹介されている。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.04.07
北海道の図書館司書、書店員たちが推薦する本。それが多数(541作品)紹介されている。【送料無料】高校生はこれを読め!価格:1,260円(税込、送料別)図書館で偶然、この本を手にした。司書たちが推薦する3冊の本。結構有名なのに、私自身読んでいない作品も多い。たとえばこんな本。「阪急電車」有川浩「天地明察」冲方丁「悩む力」姜尚中三浦しをん「風が強く吹いている」も読んでいない。読書量の不足がはっきりわかる(汗)。「西の魔女が死んだ」(梨木香歩)。「夏の庭」(湯本香樹実)を推薦するのは予想通り。「夜のピクニック」(恩田陸)を推薦している人が多かった。「オリエント急行殺人事件」(クリスティ)も複数いた。本書では、漫画の推薦もあり。「リアル」(井上雄彦)や「ちはやふる」(末次由紀)など。手塚治虫は「アドルフに告ぐ」を推薦する人がいた。だが哲学や宗教などを描いた「火の鳥」を私は推薦したい。私なら、以下を推薦する。「その日のまえに」重松清「種まく子供たち」佐藤律子(編)「いつでも会える」菊田まりここんな3冊もいい。「大地の子」山崎豊子「四日間の奇蹟」浅倉卓弥「車輪の下」ヘッセ実際に自分で選んでみると、本を推薦するのは難しい。みなさんなら、どんな本を推薦するだろうか?***********************関連記事『高校生はこれを読め!』(北海道新聞社,2010) 高校生はこれを読め!***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.04.02
図書館がベストセラーを多数購入する行為は、著作者にとって害となるか?本が売れない時代、この記事ではそれを考えたい。【送料無料】情報基盤としての図書館(続)価格:2,520円(税込、送料別)今日26日の読売朝刊「編集手帳」は、この件について書いている。2月26日付 編集手帳文芸評論家の山本容朗さん、作家の樋口毅宏さんの例を取り上げている。樋口さんは25日発売の『雑司ヶ谷R.I.P.』で公立図書館にお願いをしている。「半年間は貸し出しを猶予する」というのがその内容だ。そしてこのように書いている。著作者という泉が涸(か)れては元も子もない。猶予期間を設けるなり、補償金を著作者に支払うなり、何らかのルールがあっていいだろう(太字部分、「編集手帳」より引用)「編集手帳」が書く元になった報道はこれなのだろう。図書館貸し出し猶予を…小説家が巻末にお願い(読売新聞)この議論は前からあった。私も09年にこの件でブログ記事を書いている。本を図書館に寄贈しよう読売は自身が出版を手がけているためなのか、図書館に新ルールを求める。ところがブログなどの意見はまったく逆の考えも多いのではないか。この議論は02年にNHK「クローズアップ現代」で取り上げられた。それに対する町田市立図書館の反論が以下のように残っている。NHK「クローズアップ現代」に対する図書館の見解こんな文章もある。ず・ぼん9 ●クローズアップ現代「ベストセラーをめぐる攻防」を批判する NHKのお粗末な図書館認識町田の図書館活動をすすめる会よりNHKに対して出された抗議文「図書館にベストセラーは必要か」本来なら、「クローズアップ現代」のHPも紹介したいところ。だが検索しても古いためかこのテーマでのページが見つからなかった。以下のような番組検証なら残っている。番組検証結果10年近く議論されていても、決着がつかないのは立場が違うから?この件は、もっとし調べてみる必要がある。***********************関連記事ベストセラーが図書館の貸出増加に貢献しない単純な理由 図書館ベストセラー問題を考えるベストセラー本と図書館の死***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.26
先日、ラウル・ワレンバーグの伝記を読んだ。多くのユダヤ人をホロコーストから救った人だ。【送料無料】いのちのパスポート価格:1,890円(税込、送料別)ユダヤ人保護といえば、日本人では杉原千畝。映画にもなったオスカー・シンドラーが知られている。ワレンバーグはスウェーデンの外交官。偽の旅券を使って10万人のユダヤ人を虐殺から救った。ナチス親衛隊のアイヒマンとの対決も見事。だが、ハンガリーに来たソ連軍によって連れ去られる。その後は消息不明。知られていない偉大な人は多く存在している。忘れないよう記録しておく。追記もし、ワレンバーグに問いかけることができるなら。今のイスラエルについて質問してみたい。彼はユダヤ人の味方をするだろうか?それともパレスチナ人を助けようとするだろうか。***********************関連記事ワレンバーグと杉原千畝 ワレンバーグのこと杉浦千畝とワレンバーグ00089-00090 ~ワレンバーグ アイヒマン~***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.25
前にも書いた、「14歳の世渡り術」シリーズの1冊。報道カメラマンの宮嶋茂樹が、報道について語る。【送料無料】不肖・宮嶋メディアのウソ、教えたる!価格:1,260円(税込、送料別)「報道を疑う」というのは、テレビや新聞を読む際に必要。それをわかりやすく解説した本がこれ。現場第一であること。写真がフィルムからデジタルになったことで変わったこと。ネットで得た情報を鵜呑みにする危険。これらは納得できる。特にネットの情報はそれが出まであっても伝わりやすく、訂正しにくい。以下のページに出てくる「福島瑞穂の迷言」は、まさにその典型。■「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)出所がはっきりしない情報を根拠に批判される。情報化社会のデメリットと言っていい。話が脱線した。本書に戻る。ジダンのW杯決勝での頭突き事件。納豆を取り上げた、「あるある」の件。これらについては私もブログで記事にした。決勝はジダンの一人舞台!ジダンの頭突きとMVPそれでもジダンは間違っている!「納豆ダイエット」ねつ造「自分の意見」「自分で決めろ」というのは説得力がある。ただ、現実は「他人と違えばいい」ということになりがち。ネットでは、ブログなどで簡単に自分の意見を表明できる。それはいいことだが、かなり偏った意見が多い。現代は「見解の相違」を認める傾向にある。それはメリットでもあるが、間違った意見を放置する結果に。「自分の意見」は大切だが、それこそ疑ってかかる必要がある。この本を読んで、それを強く感じた。***********************関連記事「不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる! (14歳の世渡り術) 」を読んでみる 『不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる!』宮嶋茂樹 不肖・宮嶋メディアのウソ、教えたる!不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる!不肖宮嶋 メディアのウソ、教えたる!不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる!/宮嶋茂樹***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.24
「14歳の世渡り術」というこの本。大人が読んでも興味深い内容だった。【送料無料】右翼と左翼はどうちがう?価格:1,260円(税込、送料別)学校では特に教えないけど、よくわからないもの。いくつかあるが、右翼と左翼はまさにそのひとつ。著者が書いたように、両者は共通点がある。拝金主義は間違っているし、「常識を疑う」という点。「このままじゃまずい」という意識が両者の根底にある。だが、天皇の存在になると意見が大きく分かれる。著者である雨宮処凛。小林よしのりの「ゴーマニズム宣言」に強い影響を受けた。右翼での活動を経験し、その後左翼的な考えに変化した。本書でも紹介されている。一水会の鈴木邦男氏。「朝まで生テレビ」にも出演した鈴木氏は魅力ある人物。右翼とは思えないほどのリベラルな主張には驚いた。どこかで出会っていたら、心酔してしまったかもしれない。人が右に行くか左に傾倒するかは環境が大きく影響する。イデオロギーというより、魅力的な人に人間は弱い。「自分の置かれた環境に反発」する人もいるだろうけど。特に興味深かったのは野村秋介氏に関すること。野村氏は右翼という立場を超えて魅力的な一面があった。本書では触れてないが、俗に言う「黒シール事件」。新井将敬氏のポスターに石原慎太郎の公設秘書がシールを貼った。「1966年に北朝鮮から帰化」という内容のシールだった。野村氏はこの事件で石原氏に怒った。右の野村氏が、同じく右の石原氏を批判する。それは、野村氏のフェアな一面を物語っている。本書でも紹介されているように、野村氏は93年に自殺。朝日新聞東京本社に抗議した後での出来事だった。亡くなった方を批判するのはフェアじゃない。だがそれでも私は言いたい。野村氏が起こした河野一郎邸焼き討ち事件とそして経団連襲撃事件。当たり前だが物事を暴力で解決できるわけはない。野村氏には自殺することなく言葉による訴えで語って欲しかった。彼の言葉には説得力があっただけにそれが残念。ひとつ、この本で勘違いしやすい点。それは、自衛隊で割腹自殺した三島事件。そして山口二矢による浅沼稲次郎暗殺事件の表現。繰り返しになるが、言論ではなく暴力による解決方法は間違っている。本書では間違いやすい表現になっているかもしれない。私はその点を危惧する。浅沼稲次郎暗殺は、沢木耕太郎「テロルの決算」に詳しく出ている。私はこの作品をノンフィクションとして高く評価している。後にノーベル賞作家となる大江健三郎。彼も「セヴンティーン」第二部「政治少年死す」でこのテーマを描いた。だが右翼団体の強い批判があったそうだ。そのため長い間「読めない作品」になってしまった。脱線した。話を本書に戻す。著者によるイラクでの活動。そして訪朝など、私は彼女に賛同できない部分もある。もちろん「行って見なければ何もわからない」という意見。これには強い説得力がある。***********************関連記事「右翼と左翼はどうちがう? (14歳の世渡り術)」を読んだ「右翼と左翼はどうちがう?」を読む 14歳の世渡り術 右翼と左翼はどうちがう? 状況整理に・・・ 右翼と左翼はどう違う?44 右翼と左翼はどうちがう? 『右翼と左翼はどう違う?』 雨宮処凛 河出書房新社***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.23
今日、「東京タワー」を読み終えた。大いに笑って、そして泣ける作品だ。東京タワー (新潮文庫) (文庫) / リリー・フランキー価格:740円(税込、送料別)確かに厚いけど、文章は簡単で読みやすい。06年の本屋大賞。舞台は福岡県の小倉(後半は東京)。私のイメージとしては、漫画「クッキングパパ」。言葉が同じだし、強い母親と息子の関係が似ている。もちろん本作品のオトンは「サンダーバード5号」で存在。笑ったのは選挙ポスター用の掲示板で草野球のバットを作ってしまう話。小学生が公職選挙法違反というのかおかしかった。私自身の経験で言えば、「選挙ポスターはいたずらするな」との厳命。親を含めた大人たちからきつく言われていた。もうひとつは東京での荒んだ共同生活。ハムを食べて食中毒になったエピソード。水道も止められ、脱糞した上に脱糞した話。「人間でなくなってしまう」という表現には大笑いした。後半部分は特に、「その日のまえに」を思い出した。重松も泣かせてくれたけど、この作品もかなり泣ける。人は誰も死ぬ。自分の家族が死ぬのは避けることができない運命。この作品を読んだ後で、もし自分の家族がガンと告知されたら。手術できない場合に抗がん剤治療を選択するだろうか?一部には、こんな意見がある。「抗がん剤は患者の体力を消耗し、役に立たない」現役の医師がこうした意見を述べる。一般人としては抗がん剤に疑いの目を向けるだろう。「5月にある人が言った」というよく出てくるフレーズ。作者のリリー・フランキーはこう述べている。最初は意図していなかったんですが、結果的に、長い時間に渡る話を書くために有効でしたね。たとえば3年間の飛ばし方に無理がないっていうか。「5月に」というのは、実際に、おふくろが死んでから書き始めるまでにいろんな人がぼくに言った言葉なんですよ。(上記太字部分、楽天のインタビューから引用)この作品、いつか私が読む運命だった。それが今だったということ。過去に高い評価を受けた作品を、後に読む。それは悪いことじゃない。自分なりに解釈できるという利点がある。追記 リリー・フランキーといえば「おでんくん」。このおでんくん、オカンの影響を大きく受けているに違いない。今後おでんくんを見る際にオカンをイメージしてしまう。作品の終盤、東京タワーの取り壊しの話がチラッと出てくる。気になったので検索してみると、以下のページが見つかった。スカイツリーができたら東京タワーは消滅?スカイツリーの出現で、電波塔としての収入が激減する東京タワー。すぐに取り壊されるということはないが、将来的には不透明だ。***********************関連記事リリー・フランキー著「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」(新潮文庫) 医師や看護師へのいらだちは、私も感じた。もし自分だったら、同じ気持ちになっただろう。 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.20
今になってこの本を読んだ。【送料無料】ライオンと魔女価格:1,365円(税込、送料別)なぜ今かといえば、この本で紹介されていたから。それは「マノン・レスコー」を読んで「椿姫」を読むのと似ている。爆撃を逃れるため、ロンドンから田舎に疎開した四きょうだい。大きな屋敷にあった衣装ダンスからナルニア国に行く。そこは白い魔女によって永遠の冬に閉ざされていた。春どころかクリスマスさえ来ない。彼ら4人こそ、予言にあった王たち。サンタからもらった剣や弓で戦う四人。この物語の背景には、キリスト教的世界観がある。著者C.S.ルイスの経歴を見ても、そのことは明らか。C・S・ルイス(Wikipedia)ライオンの姿をしている王アスラン。彼こそは他人の罪を背負って死ぬキリストそのもの。キリストと同じく復活する。当初、魔女の言いなりになろうとするエドマンド。さしずめ彼は罪深き人間を象徴している。犠牲的精神は洋の東西を問わず存在。映画「アルマゲドン」のように、多くの人に理解されている。三浦綾子の「塩狩峠」でもそうだった。「塩狩峠」の主人公、永野信夫とアスラン。両者には同じ精神が宿っている。ある意味キリスト教を嫌っている私にも、そのくらいは理解できる。キリスト教を背景としていながら、この作品は説教じみていない。そこが日本でも受け入れられた、大きな理由だろう。翻訳の瀬田貞二氏について、一部では批判もあるはず。何しろ言葉が古い。だが、ロンドンにドイツの爆撃があった時代の話。しかもファンタジー小説なので、かえってこの訳が合っている。古いものを何でも新しくするということが正しいとは限らない。新訳があるのは当然だが、瀬田訳版も残すべき。このシリーズ、全7巻ある。すぐに続編を読むかといえば、そうならない。正直私にとってファンタジー小説は好みではないから。***********************関連記事598「ナルニア国物語 ライオンと魔女」C.S.ルイス/瀬田貞二〈図〉 この作品について書かれた記事。以下の疑問が目を引いた。 ちょっぴり疑問なんですが、蘇ることがわかっているのにアスランが悲しくてさびしかったのは何故なのでしょう?(太字部分、上の記事から引用)私も読んでいて同じ疑問を感じた。だが、自分なりの解釈で以下のように答を出した。もし、蘇ることを知っていたとして。通常は一度しかない別れを二回経験するということになる。アスランが勇者であっても、それは同じこと。もうひとつの答。それは上に書いたアスランとキリストの共通点。キリストは他人の罪を背負って死ぬ際、やはり悲しくて寂しかっただろう。アスランもそれは同じではないか。この疑問、素朴だけど背景となる世界を理解するために欠かせない。根源的なもの。まじめに考えると時間がいくらあっても足りないに違いない。今後、思いもよらない答が見つかるかもしれない。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.17
海堂尊の最新刊、「モルフェウスの領域」を今日読み終わった。これは医療を土台にした近未来を描いたSFだ(一部ネタばれあり)。【送料無料】モルフェウスの領域価格:1,575円(税込、送料別)もし、あなたやあなたの家族が治療困難な病気だったら。コールドスリープを使って未来の医療に期待する。そんなことが近い将来行われるかもしれない。バチスタシリーズも作品数がかなり増えた。桜宮を舞台にしなければ、作品ごとの設定がかなり難しくなる。もともとプロの作家ではなかった作者の海堂。その分、内容に集中できる(はず)。本作品の主人公は日比野涼子。東城大医学部のカルテ整理とスリーパーの管理。それが「未来医学探求センター」で彼女の役目。「ナイチンゲールの沈黙」で出てきた網膜芽細胞腫(レティノ)。「医学のたまご」で「スーパー高校生」となる佐々木アツシ。すでに摘出した右目だけでなく、左目にも発症。そのため、5年間眠って治療方法が見つかるのを待っている。ゲーム理論の第一人者、曾根崎伸一郎も登場する。彼は曾根崎薫(本書でも少しだけ出てくる)の父親でもある。「ジェネラル・ルージュの凱旋」でも出てきた如月翔子。かつて救急究明で部長代理だった佐藤伸一も登場。「千里眼の眠り猫」こと猫田も登場。少しだけだが如月翔子にアドバイスする重要な役。もちろん「丸投げ」高階病院長や「行灯」田口も出てくる。それだけじゃない。桐生のバチスタ手術で救われた元少年兵のアガピも登場。何と世界は狭いのだろう!近未来を描きながら、これはすでに実現が見えている現代。海堂氏の主張もわからなくはないが「すべって」いる感が強い。医学知識があるからといって、涼子にスリーパーの管理を任せる?結末で分かる涼子の行動も現実離れしていて疑問。私は本書を「もう一度読みたい」と思うことがあるだろうか?単なる「流行小説の続編」で終わってしまうのではないか。そんな気がする。追記 ノルガ共和国で中学時代の涼子に医学知識を授けた医務官。私は「あの人」だと予想。多分この予想は当たっている。失意のまま日本を出ても医学への情熱を失っていないとは感心。彼の再登場が、この先あるのだろうか?ところで天馬大吉はもう出てこない?***********************関連記事モルフェウスの領域コールドスリープといえば、「夏への扉」。当然、海堂も読んでいるんじゃないか。手塚治虫の「ブラックジャック」でも似たエピソードがあった。難病を抱えたカップルがソ連科学アカデミーの人工冬眠装置に入る。(第117話「未来への贈りもの」)もちろん海堂はこのエピソードも知っているだろう。『モルフェウスの領域』 海堂尊 「とにかく退屈でした」とのこと。無理な設定を考えれば、こうした感想が出るのも仕方ないか。モルフェウスの領域 海堂尊佐々木アツシの年齢設定に矛盾がある件について言及。なるほど、そうだったんだ。「モルフェウスの領域」海堂尊モルフェウスの領域***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.14
不思議と今まで読んでいない本。私にとってそれが「夜のピクニック」だった。(この記事はネタばれあり)【送料無料】夜のピクニック価格:660円(税込、送料別)進学校である北高には修学旅行がない。その代わりにあるのが「歩行祭」という行事。これは、全校生徒が80キロを24時間かけて歩く。男女関係なく、脱落者はバスで収容されるという厳しいルールだ。高校3年生の甲田貴子には歩行祭に秘めた想いがあった。それは病死した父親が同じの西脇融とのこと。3年で同じクラスになった二人だが、かなり気まずい状況。まったく会話がなく、視線も厳しい。興味深いのは、人は極限になると正直になる点。「非日常」を作り出すことこそが、歩行祭の本質。高校生の登場人物たちは、いろいろな想いを持ってこの行事に臨む。この作品を読んでいて思い出したのがあだち充の「みゆき」。事情は大きく違うが、根底にあるテーマは似通っている。私が知らないだけで、血のつながりが多くのドラマを生んでいるはず。それはもちろんギリシャ悲劇のような不幸なドラマをも含む。少し残念だったのは、融の描き方。「女性が考える高校3年生の男子」から脱していない。リアルな世界では、こんなドラマはまず起きない。高校時代、仲が悪い奴とはまず関係を修復できない。遊佐美和子や戸田忍という貴重な友人もまず出会えない。だが、読者は貴子たち登場人物と一緒に歩く経験を得る。多くの人が経験できないことを物語で体験させる。それは小説や映画の王道と言っていい。今はこの作品で描かれる時代とは違っている。作品に携帯電話は出てこない。もしこの作品でメールがあれば。遠くアメリカにいる友人とも意思の疎通が可能だ。話の中に「ナルニア国ものがたり」が出てくる。私はこれも読んでいない。機会があれば読んでみよう。「前に読んでおけばよかった」と思う本。多くの人にたくさんあるはず。私も何回か経験している。その人にとって、読んだ時を含めた「運命」がある。後悔するということは、それだけ救いがあるということだ。何しろ、多くの人は後悔すらできないのだから。この作品は、05年(第2回)本屋大賞受賞作。本屋大賞といえば、08年の「ゴールデンスランバー」を思い出す。この賞、私にとっては次に読む本を決める参考になっている。06年「その日のまえに」と「容疑者Xの献身」が受賞を逃しているのは意外。***********************関連記事「夜のピクニック」恩田陸夜のピクニック<恩田陸>-(本:2007年33冊目)-[恩田陸] 夜のピクニック『夜のピクニック』恩田陸 恩田陸著。「夜のピクニック」恩田陸 『夜のピクニック』「夜のピクニック」 恩田陸恩田陸『夜のピクニック』夜のピクニック恩田陸 『夜のピクニック』 モデルがあったんですねぇこの作品に私が思い出したのは、和敬塾の山手線一周ハイキング。和敬塾は村上春樹が学生時代、一時過ごしたことでも知られている。塾は「ノルウェイの森」のモデルとなっている。また、早稲田大学の100キロハイクもある。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.02.07
今日、図書館で手にした本がこれだった。【送料無料】勇気ってなんだろう価格:819円(税込、送料別)江川紹子氏といえば、オウム事件で有名になったジャーナリスト。この本は勇気を持った人たちの生き方を紹介している。ジュニア向けなのだが、年齢に関係なく感動できる。読んでいて私はそう確信した。登場するのは以下の各氏。野口健(アルピニスト)山本譲司(元衆議院議員)蓮池透(拉致被害者家族会)仙波敏郎(現役警察官として愛媛県警の裏金を告発した)高遠菜穂子(イラクで拉致された人質事件の被害者)イスラエルの徴兵拒否者たち人と違う意見を表明したり、行動するのはとても勇気が必要なこと。その意味と各氏の判断についてわかりやすく解説も加えている。野口健氏は七大陸最高峰の最年少登頂記録で有名になった。実は以前、私は野口氏の近くに住んでいた。会って少し話をしたこともある。亜細亜大学へ一芸入試で入学した彼。その後清掃登山活動をしている。中国によるチベットへの人権侵害についての活動は知らなかった。山本譲司氏は現首相である菅直人の秘書募集の新聞記事に応募。政治との関わりを持った。その後、都議会議員から衆議院議員になった彼は順風満帆のはずだった。ところが秘書給与流用事件で有罪判決を受け、党からも除名される。その後、刑務所内での経験を生かして福祉活動をしている。山本氏の人生は、まさに波乱万丈。絶頂の国会議員から塀の中へ。相当の苦悩があったはずだ。蓮池透氏は弟の薫さんが北朝鮮に拉致された。その後、家族会のメンバーとして発言し続けている。拉致については以下のページに書いた。拉致事件とは何なのか?本書で紹介されている「北朝鮮と一緒」という記者の指摘。何が正しいのかということについて考えさせられた。仙波敏郎氏は愛媛県警の警察官として裏金を告発した。本書で紹介されている息子さんが起こした殺人事件については知らなかった。その後、混乱が続いた阿久根市の副市長に任命される。しかし1月に行われた市長選挙で仙波氏を任命した現職が落選。新しい市長により解任された。この件は以下の記事で書いた。阿久根市長選挙、西平氏が当選日本では内部告発者に対して厳しい目が向けられる。「裏切り者」として生きていくのは苦しかっただろう。高遠菜穂子氏はイラク人質事件で知られる。日本国内では人質3人に対して「自己責任」と批判が集まった。イラク人質事件についてはここに書いた。イラク人質事件128ページに気になる記述があった。これだ。「死は、生きることの対極にあるものではなくて、いかに生きるかということの延長なんだな」(太字部分、本書から引用)似た文章をどこかで読んだと思ったのだがこれだった。「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」(村上春樹「ノルウェイの森」から引用)最後に紹介されているのがイスラエルの徴兵拒否者。イスラエルと中東情勢については以下のページに書いた。中東の紛争はいつまで続く ノーベル賞候補になった作家の村上春樹氏。彼もエルサレム賞の受賞式でイスラエルを批判した。村上春樹、ガザ攻撃を批判この本を書くにあたり、江川氏はかなりの取材をしたに違いない。だが「書かなかったこと」と「書けなかったこと」もあったろう。その点を読みながら想像した。最初にも書いたが、人と違う生き方は風当たりが大きい。重要なのは、「人と違う」ことを認めるということ。このことを勘違いしている人は多い。たとえばホロコースト。今でも「ホロコーストはなかった」という意見がある。これも「人とは違う意見」だが、これを認めるわけにはいかない。「見解の相違」で済むことと済まないことがある。それを混同してしまっている人が結構多く存在している。自分がそうならないように気をつけたい。巻末に紹介されているジャネット・ランキン氏とバーバラ・リー氏。こちらのページでも紹介されている。ジャネット・ランキンを知っていますか?単なる変わり者と勇気ある意見表明。その違いをはっきりさせることはとても重要。最後にドイツの作家ケストナーの言葉を紹介する。「賢さを伴わない勇気は乱暴であり、勇気を伴わない賢さなどはくそにもなりません! 世界の歴史には、おろかな連中が勇気をもち、賢い人たちが臆病だったような時代がいくらもあります」(「飛ぶ教室」から引用)***********************関連記事『勇気ってなんだろう』 江川紹子(岩波ジュニア新書) 「勇気ってなんだろう」江川紹子(@岩波ジュニア新書)江川紹子著『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書639)を読む勇気ってなんだろう/江川紹子「自虐的歴史観のせいで台無しになってしまった残念な一冊」とのこと。本書についての批判的意見があるということで紹介しておく。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.01.29
正月に安岡章太郎の「質屋の女房」を読んだ。 安岡の描く主人公は、必ず劣等感が背後にある。病気に落第、そして敗戦。人間が以下に弱い存在であるか。それを文学で表現したのが安岡だ。「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞。ヒグラシが鳥だと思っている悦子。宮城(今の皇居)前でお辞儀をするかどうか。主人公のささやかな抵抗と時代の流れ。今読んでも新鮮さを感じることができる。「悪い仲間」に出てくる藤井高麗彦。彼のモデルは古山高麗雄。朝鮮半島の新義州生まれの古山は「プレオー8の夜明け」で芥川賞受賞。今になって古い小説を読むのは意味のあること。それは、その時代を人がどう生きたのか推察できるから。興味深かったのは「軍歌」。いつの世にも歴史を自分の都合で曲げて解釈したがる人はいるものだ。あなたの近くにもそんな人はきっといる。***********************関連記事質屋の女房 安岡章太郎@屈折した感情を読む楽しみ安岡章太郎「悪い仲間」「質屋の女房」読書会質屋の女房 安岡章太郎 新潮文庫***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2011.01.03
「終身刑の死角」を読んだ。終身刑の死角価格:777円(税込、送料別)著者は桐蔭横浜大学教授。仮釈放なしの終身刑導入について「絶対に当たらない宝くじ」と表現。厳しく批判しているのは何故なのか。数字を読者に提示しながら説明するやり方は説得力がある。何人が死刑確定しているか年度別で示す。オランダで死刑を廃止する代わりに終身刑を導入した。その結果はどうだったか。日本で「量刑制度を考える超党派の会」が発足。終身刑導入が検討されている。もし仮釈放なしの終身刑を日本で導入した場合。すでに収容人数をオーバーしている今の刑務所。これ以上、受刑者を増やしてどうするのか。税負担が増すという点ですら、どの程度の国民は覚悟しているのか。ネットでは受刑者に対する暴論も多い。「費用がかかるなら死刑で減らせ」という意見すらある。人を1人殺して無期懲役になった受刑者がいたとする。その受刑者は命を軽視したからこそ無期懲役となっている。にもかかわらず、受刑者の命を軽視するのは矛盾していないか。凶悪事件を起こしたからといって、何をしてもいいわけではない。また、仮釈放なしでは受刑者たちにとって希望がない。犯罪者を社会的に隔離するという点ではそれは「あり」なのかもしれない。だが、日本の刑務所は「なるべく入れない、できるだけ早く出す」もの。受刑者には高齢者も多く、獄死するという結末。果たしてそれでいいのかどうか。興味深いのは「何人殺せば死刑になるのか」という記述。読んでいて、以下の騒動を思い出した。光市事件「死者1.5人」 の准教授処分?「ブログ論壇の誕生」佐々木俊尚某准教授は批判され、この著者が批判されたという話は聞かない。何がどう違うのか、実際に読んでみてほしい。実際には無期懲役の場合でも仮釈放が少なくなっている。「数年経てば仮釈放で出られる」というのは噂話でしかない。実際、50年以上も塀の中にいる受刑者もいる。そうした人は釈放されても実社会になじめるわけがない。こうした現状から、「実質的に終身刑化が進んでいる」という指摘がある。以下の記事でもその点について書いた。無期懲役の終身刑化「凶悪犯罪は増えていない」「再犯率は1%」など、目から鱗の事実が次々。犯罪被害者家族の心情についても述べている。少し経過してから、再び読んでみるのも意味があるだろう。***********************関連記事『終身刑の死角』河合幹雄著終身刑の死角『終身刑の死角』(河合幹雄)終身刑の死角を読む『終身刑の死角』この本について書かれたブログ記事。興味深いが、残念なことにトラックバックを受け付けていないようだ。紹介だけさせていただく。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.11.22
「アリアドネの弾丸」を読み終わった。(この記事はネタばれあり)アリアドネの弾丸価格:1,500円(税込、送料別)「バチスタ」シリーズの最新刊。「行灯」こと田口と厚労省の「火喰い鳥」白鳥コンビ。大学病院内で起きた殺人事件に挑む。正直に書く。肝心の殺人事件が起きるまで200ページ以上かかっている。作者が主張したがっているAiも大切だろうが、前置きが長すぎ。そして多くのことをひとつの作品に詰め込みすぎ。「医学のたまご」で東城大学付属病院のその後。そして高階病院長の出世ぶりは描かれている。すると、多くの読者はこの事件で高階が失脚しないことを知っている。ならば、作者は結果ではなく「経過」を描かないといけない。これは作家として表現力が求められる。専門知識だけではなく、作家としての表現を海堂は持っているのか。この点についてはいささか疑問がある。間違ったDNA鑑定が冤罪を生み出した「松崎事件」。これはもちろん、実際にあった足利事件がモデルになっている。足利事件では、冤罪が明らかでも元検事は謝罪を拒否した。足利事件、元検事謝罪拒否また、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件もあった。警察が無実の人間を陥れることは実際にある。事実が先に進んでしまうと、この小説が「絵空事」にならない。訴状便宜主義についても海堂は訴えている。日本では、起訴された場合、一審での有罪率が99.9%。この異常な数字については以下の記事にも書いた。有罪率99.9%この記事にも書いたが、検事総長ですらこの数字を問題視している。銃弾が事件解決の鍵を握ることは最初から想像できた。白鳥が硝煙反応と線条痕にどんな説明をするのか。私にとって予想外だった。被害者の命を奪った弾丸がパチンコから発射されていたなら。銃の場合とは違い、熱と火薬で差が出るに違いない。解剖の際、その点は気がつかないものだろうか。被害者の目に弾丸が入ったなら。その周りは火薬と火傷が残るはず。この点が大きな疑問として残った。それにしてもひとつの殺人事件がなければ。もうひとつの事件が闇に葬られるところだった。この世には表に出ない事件がたくさんある。それはとても怖いこと。「ナイチンゲールの沈黙」に出てくる城崎。そして病気で目を失った少年、牧村瑞人。「マドンナ・ヴェルデ」のみどりも出てくる。「イノセント・ゲリラの祝祭」からは彦根新吾も桧山シオンと参加。会議の場面には飽きた。活躍ぶりのみなら「極北クレイマー」で再登場の世良も出る。「お嬢」桜宮小百合の陰謀もこれから。白鳥や田口との対決も今後見られるのだろう。さすがに「アリアドネの弾丸」からこのシリーズを始める読者は少数派。読む順番は別にして、かなりの読者が多くの海堂作品を読んでいる。私も桜宮の事情にかなり詳しくなった。***********************関連記事650「アリアドネの弾丸」海堂尊〈図〉『アリアドネの弾丸』 (著)海堂 尊【書評】「アリアドネの弾丸」海堂尊書評:アリアドネの弾丸海堂尊 『アリアドネの弾丸』「アリアドネの弾丸」(海堂尊)弾丸とMRIと「アリアドネの弾丸」自分のための読書日記Part.144『アリアドネの弾丸』海堂尊『アリアドネの弾丸』アリアドネの弾丸# 「アリアドネの弾丸」海堂尊***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.11.21
芝田勝茂の「進化論」を読んだ。進化論価格:998円(税込、送料別)売り切れです。進化論そのものについては、かつてブログに書いたことがある。「キリンの首はなぜ長いのか」(実吉達郎 PHP研究所) 進化論と宗教についても何回か書いた。ダーウィンと進化論 進化論とインテリジェントデザインこれらの記事でも触れたように、進化論は一部の宗教批判される。本作品を読む前に進化論、そして宗教に関して予備知識がない人。その人たちにとってこの作品は刺激的なのだろう。一般的に公立の学校では宗教と進化論を並べて解説しない。それは、宗教的な偏りだと学校が批判されるのを恐れるため。本来は中学あたりで詳しく解説すべきこと。日本は宗教に関して寛容なのではなく、無知なだけ。差別と同じで知らないということは怖い。この作品の主人公は大学院生。家庭教師をしている女の子が処女懐胎する。「新人類」であるその子の誕生で、日本は分裂する。新人類と共生しようとする一派と戦おうとする一派。この本を今になって読んだのは、図書館で偶然見つけたから。自分で買うかといえば、まず買わない。一度読んだだけで読み返すこともない。そのくらいの評価しかできない。アイデアはいい。だが、なぜこの本が多くの人に評価されていないか。それはストーリー展開が「背伸び」をして書いてあるから。もし中学生あたりがこの本を書いたのなら評価もしよう。だが世界が狭く、登場人物も魅力に乏しい。ヤングアダルト止まりの内容。***********************関連記事8月読了その10「進化論」***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.11.13
宮部みゆきの「ステップファザー・ステップ」を読んだ。ステップファザー・ステップ価格:650円(税込、送料別)宮部作品は今までも多く読んでいる。しかし何故かこの作品は未読だった。泥棒が屋根から落ちた家は、夫婦そろっていなくなっていた。残された双子の息子たちは、その泥棒を「お父さん」にした。宮部の作品で少年が出てくるもの。すぐ思い出すのは「今夜は眠れない」と「夢にも思わない」。「ステップファザー・ステップ」よりも私は前二作品のほうが好き。作中でも描かれているが、両親が同時にいなくなるという設定に無理がある。「やはり」と思うのが欠損家族。宮部にとって誰か欠けた家族は描きやすいのだという。前にインタビューで読んだことがある。仮想家族も宮部の得意とする分野。「R.P.G.」や直木賞作品の「理由」もそうだった。発表されたのが92年ということもあって、少し前の時代を描いている。日本ハムは札幌ではなく、東京ドームで主催試合をしている。西武の秋山は、今ソフトバンクの監督。当然、清原も巨人に行き引退している。もうひとつは携帯電話のない時代特有の設定。いつでも現代を描く宮部は、時代遅れになりがち。「昔はこうだった」というノスタルジーを感じるには宮部作品がいいのかも。青い鳥文庫バージョンでは、授業参観のエピソードがないのか。厚くなるために削った?それにしてもあの表紙は賛否両論だろう。***********************関連記事宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』を読む【本】ステップファザー・ステップ『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』 / 宮部みゆき 宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.30
久々にウェルズの「タイム・マシン」を読んだ。タイムマシン価格:651円(税込、送料別)この作品を読むと、いかに後の小説や映画に大きな影響を与えているか。それがよく理解できる。たとえばタイムトラベラーが見た遠い未来(紀元80万2701年)。牧歌的な世界が広がっていて、エロイたちが住む。しかし現実はその世界が偽りだった。エロイたちは暗闇を恐れる。それは地下世界の住人、モーロックが襲ってくるからだ。モーロックの食料、それはエロイだった。この世界観何かに似ていると思ったら、手塚治虫「火の鳥」だった。「太陽編」で未来を描いた手塚。21世紀の日本は「光」と呼ばれる宗教集団が支配していた。対抗するのは「シャドー」。人食いの設定はないものの、基盤はウェルズと同じ。ウェルズのタイムマシンは自ら移動できない。そのため、行った先の時代でその場所に何かあれば爆発が起きる。過去に旅をすることも描かれていない。このため、タイムパラドックスは関係ない。大ヒットしたタイムトラベルの映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。主人公たちはタイムパラドックスを解消すべく奔走する。ウェルズの作品で行方不明になったタイムトラベラーは過去にいるのだろうか。それとも再び未来に行き、ウィーナを助けたのか。「次元」というものを一般的に紹介したのもこの作品。1次元は点。2次元は線。3次元は立体。そして4次元は立体プラス時間。現代も生きているウェルズの世界。まさにSFの原版がここにある。***********************関連記事最大の幻視作家(若島正)↑95年に書かれた「タイム・マシン」の解説。『タイム・マシン』/H・G・ウェルズ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.29
「海底2万マイル」を読んだ。海底2万マイル価格:651円(税込、送料別)児童向けの小説でも読んでいない作品が意外に多い。これもその中のひとつ。「八十日間世界一周」や「二年間の休暇」(「十五少年漂流記」)など。多くの作品は小中学校時代に読んだのだが、これだけは読まなかった。ネモ船長の名前がラテン語の「無名」なのは知らなかった。潜水艦ノーチラス号がオウムガイを意味することを始めて知った。世界各地で目撃された、海に生息する謎の巨大生命。その正体を明らかにすべく、アメリカの軍艦リンカーンは出航する。フランスのアロンナクス教授とその従者コンセーユ。そしてカナダ出身で銛打ちの名手ネッド・ランド。リンカーンは巨大生物に遭遇するものの、あえなく撃退。前述の3人は海に投げ出されるが、その生命に救われる。謎の巨大生命は科学の粋を集めた潜水艦だった。艦長はネモ船長。秘密を知った3人を解放することはできないと宣言する。電気が動力源という潜水艦ノーチラス号は世界の海を探検する。アトランティス大陸やサルガッソなど、1870年発表とは思えない。されの作品が単なる空想ではないことは、後の世が証明している。ジュール・ヴェルヌで思い出すのは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。エメット・ブラウン博士(通称ドク)はヴェルヌのファン。妻となる女性クララもヴェルヌのファン。ふたりはこれをきっかけに親密となる。子どもたちの名前もヴェルヌにちなんでジュールとヴェルヌ。あの世で本家ヴェルヌはさぞや驚いているだろう。***********************関連記事ジュールベルヌの海底2万マイルと潜水艦の歴史↑世界初の原子力潜水艦は名前がノーチラス。この作品にちなんでいる。結びで、平和な航海を望んでいたアロンナクス。だが現実は潜水艦の多くが軍の所属であることは皮肉か。『海底二万里』ジュール・ヴェルヌ↑この作品に関する本と映画のリスト。興味深いので紹介する。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.26
世論調査で、1ヶ月本を読まない人が半数を超える52%だった。 「1か月本読まず」52%…読売調査(読売新聞)本屋にとって、今は冬の時代だという。ネットや携帯があるせいで本が売れない。万引きによる損害も多大で、撤退する本屋も多いとのこと。考えてみれば、本はネットで買えばすぐに届く。まとめ買いすれば送料無料も可能。なるほど、これでは本屋が衰退するわけだ。アマゾンで有名になった「ロングテール」という言葉。希少価値の本は、神田の古本街ではなくネットで探す時代。反面、売れる本は図書館で100人待ちしてでも借りる。一握りのベストセラーと、淘汰される運命にある多くの本。以前、国語の教師がこんなことを話していた。戦争中、本が好きな兵士は薬の説明書きを何度も読み返していた。「紙に書かれた文字」を読むことに飢えていたからだ。今は読みきれないほどの本がありながら読まれていない。このコントラストをどう考えればいいのか。本が読まれない時代を記録するため、この記事を残す。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.23
前に書いた記事が字数制限のため、ここで続ける。マドンナ・ヴェルデ価格:1,575円(税込、送料別)理恵は帝華大学で発生学を学生たちに教えている。そのくだりは「ジーンワルツ」に出てくる。私はそれまで理恵を評価していた。青い学生たちが何故理恵に発生学の特別講義を求めたか。それは、発生学という科目が以下に重要か。それだけではなく理恵に対しての尊敬があったからに他ならない。その理恵は裏で勝手に代理母計画を進める。しかも自分の母親を使って。もし発生学教室の学生たちが、みどりに対する理恵を知ったら。青い学生たちは反発するのではないか。物事は一面からでは分からないことがある。それを著者の海堂は語りかけている。私はそう評価した。ところで基本的なことを問いたい。説明にない精子をを使った受精卵を体に入れられたみどり。これはだまし討ちの暴行に等しい行為ではないか。事情は違うが、かつてこんなことがあった。受精卵取り違えで妊娠、中絶「以前は精子をミックスしていた」という理恵の乱暴な説明。ならば「子どもがほしいなら、別の受精卵でもいいじゃん」と説明しそうだ。子どもは親の所有物なのか?医者のオモチャなのか?理恵にしろ、みどりにしろ著者の海堂はよく女性を描く気になった。医学には詳しい海堂でも、女性の心理描写は素人のはず。ところで閉経後のみどりはホルモン剤の使用により生理が復活する。肌の張りについて記述があった。若返りにホルモンを使うことはよくあるのだろうか。もしあるのなら、それは医学としてかなり問題があるのではないか。どうでもいいと思いながらも気になった。***********************関連記事『マドンナ・ヴェルデ』 海堂尊 ↑「信念の人がどれだけ傍迷惑で、非常識か」という部分、大いに賛同する。「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊↑以下の記述に同意する。>昔は人工授精に何人かのカクテルが使われたから今やっても問題ないというのは、乱暴すぎるんじゃないかと思います。説明もなくそんなことをしていいのでしょうか。問題はその「説明」にあると私は考える。産科の医師は目の前の妊婦に対して説明することが求められる。もし田口がこの件を知ったら内緒にしていたことをどう評価するだろうか。以前、アメリカでは代理母が子どもを引き取る件が裁判になった。事前に文章で契約、了解していても裁判となる。しかも本書のように説明どころか偽のカルテまで作ってしまうあたり。悪意ありありのケースならトラブルが起こらないわけがない。「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊私が注目したのは以下の部分。>さらに驚いたのは、不妊治療していてラストチャンスだという女性にも自分と清川の受精卵を入れるのです。ありえないって!私もありえない話だと思う。怖いのは医師がその気になれば、「ありえないこと」が実際にできること。だからこそ医師は患者に対して説明することが重要となる。以下、コメントはしないが本作品について書かれたブログ記事を紹介する。マドンナ・ヴェルデ 海堂尊 マドンナ・ヴェルデ(海堂尊)「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.07
海堂尊の「マドンナ・ヴェルデ」を読んだ。(この記事はネタばれあり)マドンナ・ヴェルデ価格:1,575円(税込、送料別) この作品は、「ジーン・ワルツ」を別の角度から描いた作品。代理母として娘の卵子を使った妊娠に挑戦する、55歳の女性みどりが主人公。生まれてきた子は孫であると同時に息子、娘でもある。この設定は決して小説だけのものではない。実際に06年、日本で同様の代理出産は行われた。その件については以下の記事で書いた。50代女性が「孫」を代理出産↑この記事でも触れたが、日本では出産した女性が母親。卵子を提供した女性は母として認定されない。この作品は多くの問題を提起している。まずは結婚は何のためにするものかという問題。もし結婚が子孫を残すために行われるというのであれば。曾根崎理恵と伸一郎の夫婦は何のために結婚したのか説得力に欠ける。「結婚は社会契約」という手紙を書いた伸一郎。その主張は半分正しいが不足している。結婚は法律婚と事実婚の両面がある。伸一郎が法律婚という部分だけを見ているなら、それは誤りではないか。私が古いタイプの人間なのかもしれない。だとしても、こんな夫婦がいるのなら少子化が進むのは当然な気もする。母親に帝王切開を説明せずに代理母を頼む娘。離婚することすら母親に知らせない。しかも、みどりが生む双子は清川の精子かもしれない。最初はそれすらみどりに教えない。こうなると理恵はただの狂った女でしかない。後半部分は特に、私はみどりに感情移入した。もし、理恵のような産婦人科医が実在したら。女性は信用して身を任せることができるだろうか?医学は合理主義だけで成り立っているわけではない。それがために理恵は母親のみどりに負けた。生まれてくる子の親権について手紙でやり取りするみどりと伸一郎。往復書簡で有名な小説といえば宮本輝の「錦繍」。伸一郎の合理主義は趣というものがまったく欠如している。理恵と結婚したのではなく、伸一郎は合理主義と結婚したのか?「医学のたまご」になると、手紙がメールになってさらに無味乾燥となる。便利さというものは何かを失うということ。それにしても・・・こうした人間関係に寒さを感じたのは私だけなのだろうか?合理的な理恵に反発しながら読んだ。少なくとも私は、代理母に対して反対しているわけではない。私でさえ反発するのだから、保守的な人は代理母辞退を拒否するだろう。次に産婦人科の危うい状況。妊娠は病気ではない。そのため胎児や妊婦が死亡すると問題になりやすい。この作品でマリアクリニックの院長、三枝茉莉亜の息子である久広。彼は極北市民病院の勤務医だったが医療事故で逮捕される。この事件も実際にあった以下の件がモデルになっている。福島県立大野病院産科医逮捕事件(Wikipedia)大野病院の件は医師の無罪が確定し、元の病院に復帰した。海堂もそのうちにこの件を描いた作品を出すかもしれない。それにしても、双子だから理恵と伸一郎で一人ずつという解決法。私には安易なアイデアに思えて仕方ない。私は有名なドイツの児童文学である「ふたりのロッテ」を思い出した。エーリッヒ・ケストナーは家族が一緒にいる重要性を皮肉を込めて訴えた。そんな価値観はすでに日本でも失われているのだろうか。それがロッテのいた1949年と2010年の違いなのか。もし薫が成長したら、「シッターの山咲さん」は事実を話すのか。「実は私があなたの祖母であり、母である」ということを。この作品の終盤、みどりはそのことを否定している。代理母であることは祖母を失うということになったわけだ。それにしてもこのシリーズ、長く続く。スターウォーズみたいに「医学のたまご」の後で本作品が出ている。すでに多くの読者が結果を知っている。そのことを考えれば、本作品は結果ではなく経過が勝負。著者の海堂はやりにくかったのではないか。「どう描くか」ということになると作家としての手腕が試される。「ジーン・ワルツ」で描き切れなかった医学以外の部分を描きたかった。私はそう理解している。この作品で誕生した双子は「医学のたまご」に中学生として登場する。伸一郎も薫を助けるべくアメリカにいながら活躍。双子のしのぶは今後、別の作品に出るのか?「ジーン・ワルツ」は11年に映画が公開される。曾根崎理恵を演じるのは菅野美穂。清川吾郎は田辺誠一が演じる。次に読むのは「アリアドネの弾丸」になるのか。アリアドネの弾丸価格:1,500円(税込、送料別)※楽天特有の字数制限のため、これ以上書けない。この記事は以下に続く。「マドンナ・ヴェルデ」その2***********************関連記事海堂尊の「マドンナ・ヴェルデ」は、海堂尊の「ジーン・ワルツ」と同じ時間軸の話だった。海堂尊 マドンナ・ヴェルデ (6/2010)☆☆☆1/2【マドンナ・ヴェルデ】ジーン・ワルツの裏側 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.10.07
86年から91年までに韓国・京畿道で起きた連続猟奇殺人事件。それが華城事件だ。殺人の追憶価格:1,418円(税込、送料別)著者はこの事件で捜査を担当した刑事ハ・スンギュン氏。殺されたのは9名の女性。詳しくは以下のページに出ている。華城連続殺人事件(Wikipedia)華城連続殺人事件京畿道という地はソウル郊外にあると考えてもらえればいい。私も何回か訪問したことがある。ソウルからは地下鉄1号線が乗り入れている。日本人も簡単に行くことができる。事件の起きた華城市近辺は、静かな農村。犯行は女性を乱暴し、縛るという手口。さらに異常なのは、被害者の陰部を傘で数回突くなどの行動。陰部にスプーンや下着などを詰めるということさえあった。犯人は凶器を使わず、被害者を絞め殺している。本書で驚くべきは遺体の写真。モザイクがかけられているものの、直視できないほど痛ましい。日本ならまず掲載できなかっただろう。事件は06年までに時効が成立した。犯人がその後どうしているのか、まったくわからない。今もどこかで犯人は生きているのかもしれない。もしかしたら、私が地下鉄1号線に乗った際、隣にいたかも。この事件は「殺人の追憶」という映画にもなった。事件の異常さ。そして刑事役のソン・ガンホの演技が印象に残る作品。この映画については昨年、教育テレビの番組でも紹介した。番組については以下の記事にも書いた。NHK「韓流シネマ 抵抗の系譜」犯人を特定できなかった韓国警察には批判が集まった。追い詰められた捜査陣は取調べ中の人を暴行。その人は病院に搬送されたが死んでしまう。今度は捜査員が取調べを受けることに。休みも満足に取らない捜査員の中には脳出血で倒れる者さえ出た。さらに摸倣犯まで出る始末。(摸倣犯が事件を起こしたのは華西駅近く。ここは私も通ったことがある)「犯人検挙こそ最大の防犯」ということは日本でも同じ。犯人の血液型はB型。犯人を乗せたとされるバスの運転手や乗務員の目撃証言もある。それでも犯人検挙にはいたらなかった。犯人はなぜこの期間だけ犯行を重ねたのか?華城市近辺、もしくは水原に住んでいたのか?謎ばかりが残る事件だ。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.09.28
海堂尊の「外科医 須磨久善」を読んだ。外科医須磨久善価格:1,200円(税込、送料別)著者の海堂尊は現役の医師。と同時に「チーム・バチスタの栄光」でも知られる作家でもある。須磨久善は日本で初めてバチスタ手術を行なった外科医。バチスタ手術とは、肥大した心臓を小さくする手術のこと。拡張型心筋症を外科的に治療する方法だ。この術式を発案したブラジル人の外科医バチスタに由来する。本来、拡張型心筋症は心臓移植が有効。だが移植するための心臓を待つ間に患者は死んでしまう。そのためにバチスタ手術は生き残っている。少なくとも日本では。須磨の歩んだ道は、日本人医師としてはかなり変わっている。大阪医大を出た後は虎ノ門病院で経験を積む。順天堂大、大阪医大を経て胃大網動脈をグラフトに使ったバイパス手術を考案。世界で初めて成功させる。その後、三井記念病院で循環器外科科長⇒心臓血管外科部長。ローマ・カトリック大学客員教授として活躍するも帰国。そして日本ではバチスタ手術が待っていた。須磨のバチスタ手術はNHKの「プロジェクトX」で取り上げられた。01年に放送されたこの番組は感動的だった。初めてのバチスタで患者は術後肺炎のため死亡する。患者の家族からは「バチスタを続けてほしい」という手紙をもらう。次に失敗したら、日本でバチスタはできなくなる。だが次の患者を救った須磨。世界的に見て廃れるバチスタだったが、日本では生き残った。須磨の帰国に徳洲会の徳田虎雄が深く関係していることは知らなかった。葉山ハートセンターも徳田がいなければ完成しなかったプロジェクトだ。須磨は自分で進む道を選んでいるようでいて、実は違うのかもしれない。医師を目指した点。そして虎ノ門病院を出たのは自分の判断。だが日本で初めてのバチスタ手術はどうなのだろう。彼は目に見えない運命に従っている部分もあるのではないか。孫悟空が釈迦の手のひらから出られないように。日本は先駆者(本書では「破境者」と呼ぶ)に冷たい。海堂はそのことをこの本で訴えている。この点は医学だけではない。多くの分野で先進的なアイデアが実現できないのはこうした土壌があるから。私は以前、このブログで以下の本を紹介した。「ブレイズメス1990」海堂尊 ↑この作品の主人公、そして心臓外科の土台は須磨がモデルとなっている。そして、以下の作品もまた同じ。海堂尊「チーム・バチスタの栄光」↑須磨は「チーム・バチスタ」映画版で医事監修を担当。私は映画版より連続ドラマのほうを高く評価している。ドラマ「医龍」でも医事監修は須磨だ。そういえば「医龍」もバチスタ手術がテーマだった。須磨はすでにフィクションより先を行っているのか。読む順番だが、私は本書を先に読むべきだったのか。フィクションとノンフィクション。そして手品とそのタネ。「ブレイズメス」と本書はその関係にある。どちらにしろ、外科医として須磨の活躍ぶりはフィクションに劣らない。そのことははっきりとここに記録したい。なお、本書はドラマとして先日放送された。私は見ていないが、須磨役は水谷豊だったそうだ。***********************関連記事『外科医 須磨久善』 海堂尊 著 ↑この作品に関するブログ記事。秀逸なのでこの場で紹介したい。須磨が医大受験するために高校を休んで受験勉強するエピソード。「自分が自分の行為をどう思うかの方が大切」という言葉も記憶に残る。外科医 須磨久善【書評】「外科医 須磨久善」海堂 尊「外科医 須磨久善」 海堂尊海堂 尊『外科医 須磨久善』***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.09.13
海堂尊の最新作、「ブレイズメス1990」を読んだ。(この記事、ネタばれあり) ブレイズメス1990価格:1,680円(税込、送料別)タイトル通り、「ブラックペアン1988」の続編。前作品はタイトルが黒だから表紙が黒。でも今回も黒なのはルーレットの黒になぞらえて。もちろん、中心人物は世良。今回はフランスから話が始まる。学会出席のため出張していた垣谷と世良。佐伯教授からは、世良に密命があった。それは、天才心臓外科医である天城を東城大に呼ぶこと。天城はモナコの病院にいた。カジノでの勝負に「負けなかった」世良。桜宮に天城を連れてくることに成功する。だがそれがために東城大付属病院は騒動となる。そして公開手術。直接吻合法(ダイレクト・アナストモーシス)が公開される。これができるのは世界でただ一人、天城だけ。手術にシーンが少なめなのが玉にキズ。あっけない気がする。この作品で海堂が言いたかったこと。それは、これだ。「優れた医師が儲けて何が悪い」この主張について、海堂はNHKBSの手塚治虫の特集で語っていた。ブラック・ジャックと海堂尊この作品を読む大部分の読者は、その後の東城大を知っている。つまり結果予想は容易に立てられる。その間、何があったのかを描けなければ、読者は納得しない。だから先にあったことを後で描く手法は難しい。(スターウォーズみたいだ)話はいい所で終わる。この先、「スリジエ・ハートセンター」設立への挑戦。そしてウエスギ・モーターズ会長の手術は続編を読むしかない。過去、天城が一度だけ失敗した公開手術とは?後半に描かれるのだろうが気になる。高階、黒崎、藤原、猫田、そして花房などおなじみのメンバーも出る。世良が猫田のことを「眠りの国の宇宙人」と表現していたのには笑った。「でんでんむし」こと碧翠院桜宮病院の親子3人も登場。田口は?島津は?速水は?続編に出る予定なのか。心臓外科の設定はもちろん須磨久善医師が絡んでいる。海堂が盛んに紹介している外科医だ。「チームバチスタの栄光」に出てきた桐生も出てくる。しかも桐生にアメリカ行きを薦めたのは天城。修行先まで紹介している。16年後、桐生は東城大に招聘される。バチスタ手術をこなす名医として。そして世良はかなり先に、極北市へ病院再生のため赴任。その間、何があったのか。これも気になるところ。手技だけでなく、恋でも速水に負けたのか世良?ところで文庫が出た「ひかりの剣」。カバーを書店で見て「やっぱりな」と思う。装画が村上もとか。 ひかりの剣価格:590円(税込、送料別)「六三四の剣」ということ。女流剣士に下段の構え。「ひかりの剣」を読んでいる時からそう感じていた。***********************関連記事668「ブレイズメス1990」 海堂尊〈図〉『ブレイズメス1990』ブレイズメス1990ブレイズメス1990 海堂尊「ブレイズメス1990」 海堂尊 著 レビュー 海堂ワールド 時系列↑こうした表がないとわからないくらいシリーズが長期化した。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.08.10
59年間文通していた男女が初めて実際に会った。59年間文通続けた2人が感激の初対面、生活環境の変化も乗り越え交流。(Narinari.com) 錦繍改版価格:460円(税込、送料別)最近は直筆の手紙を書くことは少なくなった。 年賀状ですらメールに押されて減少している。 確かにメールは便利だ。 世界中どこにいても送受信できる。 航空機の発達とともに、メールが世界を狭くしていることは事実。 便利な世の中になった。 手紙で思い出すのが宮本輝の「錦繍」。 夫婦だった男女による往復書簡だけで構成されている小説。 悲しい別れがあったけれど、希望の持てる内容。メールが今後も手紙より存在感を増すのは仕方ない。 それでも手紙という文化が廃れることがないように願う。最近は、すぐに答えを求めることが多い。手紙のように、長い目で物事を見るべきなのかもしれない。ここ数日、ブログでの記事は子どもの虐待死。高齢者が実は生きていなかった事件。そしてヘリの墜落事故など、どれも暗いものばかり。たまにはこうしたニュースについて書くべきだ。自戒を込めてそう思う。手紙文化よ永遠に※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.08.02
「くだらない」と一言で語れない。それが「つきのふね」。【2冊同時購入ポイント3倍】つきのふね価格:460円(税込、送料別)人間は面倒だから植物になりたい。主人公さくらでなくても、そう思った人はたくさんいるだろう。似た話は、きっと世界中に存在しているはず。前向きになれず、「生まれ変わったらプラナリアになりたい」。そんな主人公もいた。山本文緒「プラナリア」中学生はネット上で「厨房」と呼ばれる。幼い行動を揶揄するための言葉。だが、中学生にも悩みはある。その重みは大人より重い場合も当然ある。石田衣良は「4teen」で中学生男子の世界を描いた。性があり、生もある。そして笑いがあり友情がある。森絵都はこの作品で、女子中学生の友情を描いた。万引きがあり、禁止薬物への誘惑もある。人は、人を嫌いにはなるが一人では生きられない。どこかで人を求めてしまうもの。ネットの2ちゃんねるやmixiが受け入れられるのは、人の弱さがあるから。誰かとつながっている安心感。人はどこかでそれを求めるもの。盗っ人のさくらは万引きの世界から抜け出せた。それは、ずるいからなのか。それとも勇気があるから?今、この瞬間にも万引きをしている中学生がいる。友だちに誘われて、やめたくてもやめられない子がいる。そればかりか、援助交際という名の売春に誘われている子もいる。シンナーやMDMAなど、禁止薬物を手にする子もいる。薬物問題に詳しい水谷修氏。彼は講演でこう言っていた。「薬物は先輩から、友人から蔓延することが多い」そうした中学生たちのことを考えれば。この作品は、稚拙な現代文の古文書に笑ってばかりもいられない。ノストラダムスの大予言を懐かしがるのも少しの間だけ。さくらは実際の人物ではないが、多くのさくらが日本中にいる。その子たちは夜も悩み、苦しんでいる。勝田くんのキャラクターは女性作家独特の視点。高橋留美子が「めぞん一刻」で五代の性欲を描けたのはすごい。この作品を読んで、改めてそう思う。石田衣良だったら、この作品をどう表現したか。重松清だったら?梨木香歩や角田光代だったら?作家のよる違いを想像するのは楽しいことだ。問題があるとすれば、放火魔のこと。描き方と処理の方法が唐突。というより説明不足。次にこの作家の作品を読むとしたら。「永遠の出口」になるのだろう。***********************関連記事この作品は、感想を読むのが面白い。つきのふね/森絵都(小説)「つきのふね」 森絵都つきのふね(森絵都)つきのふね 森 絵都***********************風に舞いあがるビニールシート価格:570円(税込、送料別)永遠の出口価格:1,470円(税込、送料別)※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.07.20
梨木香歩の「裏庭」をやっと読み終えた。実に8日間かかった。 裏庭価格:620円(税込、送料別)私はこうした作品が苦手。だがこの本に限っては「最後まで読む」ことができた。1日20ページしか読めないこともあった。主人公は13歳の照美という女の子。双子の弟がいたが、6年前肺炎で亡くしている。照美の両親はレストランを経営していて忙しい。弟を亡くしたことも親子の間には冷たい空気となっている。照美が幼い頃遊び場にしていたバーンズ屋敷。そこには英国人一家が住んでいて、裏庭があった。大鏡を通して裏庭に入った照美。そこで「テルミィ」の冒険が始まる。作者は呼び名にこだわっている。照美の父親はパパだけど徹夫。その徹夫である自分を日常では忘れている。母親のさっちゃんもそうだ。自分の母親(つまり照美の祖母)から愛されていないと感じていた。娘に対しても放任というか冷たい一面を見せる。名前によって「自分が自分であること」という考え。まるでスタジオジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」みたいだ。自分は何もしないでも自分のまま。だがあることをして「自分を取り戻す」「自分が自分になる」ということ。現実の世界と裏庭の中の世界。その二つが最後にはつながる。二つの世界が交互になっていれば村上春樹の世界だ。春樹は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を書いた。梨木と春樹が似ているのは世界に入るということ。作家が独特の空間を作り、読み手はそこに入る。いかに空間を作るかが作家の力量となる。英国人一家も姉妹の一人が帰国後に亡くなっている。照美一家と同じく欠損家族。欠損家族といえば宮部みゆき。彼女は失われた人が作品にどんな影響を与えるか。それをよく知っている。人はどこかで欠けたものを取り戻すように行動する。死んだ人は生き返らない。だが、「もう失わないようにする」ことはできる。作者の梨木香歩もそれを願ったのではないか。この作品を読んでいて私はそう考えた。私がこの作家の作品を読むのは2作目。最初の作品は「西の魔女が死んだ」だった。「西の魔女が死んだ」に学ぶ「裏庭」と「西の魔女が死んだ」。この両作品を読むと、作者の描きたかった世界が少しは理解できたかと思う。私は基本的に再読をしない。その時間があれば、読んだことのない作品を読みたいから。だがこの作品は再読が必要なのかもしれない。環境や年代によってこの作品に対する感じ方はまったく違う。小学生でも読めるから、広いストライクゾーンがあるのだろう。***********************関連記事「裏庭」梨木香歩「裏庭」梨木香歩 ↑この作者の作品を読むと「夏の庭」を連想する。それは私だけではなかったらしい。「裏庭」梨木香歩裏庭 -- 梨木香歩 --『裏庭』梨木香歩「裏庭」 裏庭裏庭 梨木香歩裏庭 / 梨木香歩***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.07.02
「青空のむこう」を読んだ。 人は死ぬとどうなるのか。いろんな人がこの問いに答えてきた。アレックス・シアラーの回答がこの作品だ。主人公ハリーはサッカー好きの少年。自転車で走っている途中、トラックにはねられて死んだ。この世に未練があるハリーは現世に戻り、同級生や家族と出会う。仲が悪かった同級生。だがその同級生の作文を読む。記念樹も見る。そして最大の未練は主人公が死ぬ直前ケンカした姉。鉛筆を使って姉と会話する主人公。多くの読者はここで泣くんだろう。ひとつはっきりしたの画映画館。なぜひんやりとしているのかがこの作品で謎解きされている。正直に書く。私はこの作品に感情移入できなかった。死を扱った作品に慣れてしまったのだろうか。自分では理由がよくわからない。精神が磨耗してしまったのなら危険だ。よくできた作品だということは理解できる。ケストナーにはあれほど感動するのに。数年してからもう一度読み直す必要があるのかもしれない。日本で似た作品といえば重松清の「流星ワゴン」だろう。車を運転中に事故で亡くなった親子が出てくる。シアラーの作品で次に読むのは「チョコレート・アンダーグラウンド」か。「13ヶ月と13週と13日と満月の夜」か。「スノードーム」もある。 ***********************関連記事青空のむこう / アレックス・シアラー 青空のむこう小説『青空のむこう』(アレックス・シアラー著)↑「あまり泣けもしなかったし、大して感動もしなかった」とのこと。よかった。私だけではないようだ。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.06.19
加賀恭一郎シリーズ初期の作品。それが「悪意」だ。(この記事ネタばれあり) 作家が仕事場で殺される。鈍器で殴られ、その上銃殺されていた。全体で300ページほどの作品で、100ページ以内に犯人がわかる。残りの200ページは何が描かれているのか。読者なら読んでいる最中、それが気になっただろう。私もその一人だ。可能性としては以下のことが考えられる。1、真犯人は別にいた。2、もうひとつの犯罪が起きる。3、「犯罪は何が起源になっているか」を表現する。東野が描いたのは3だった。ホワイダニット(なぜ事件が起きたのか)を加賀は追う。「犯人がわかれば事件は解決」ではない。ここで「説明する作品」であれば、読者からは拒否される。説明ではなく表現することが作家の役割。この点は「悪意」の本文でも出てきた。遺体発見者の書いた文章による始まり。それはアガサ・クリスティのある作品を思い出させる。読者は書いてあることが真実だという前提で読み進める。だがその一部に嘘があったとしたら。ミスリードされた読者(と加賀)は、何が真実かを見定める必要がある。後半部分にある同級生たちの供述。それにも人を見る目の難しさがある。人の記憶くらいあてにならないものはない。社会科の教師だった加賀恭一郎がなぜ刑事となったのか。その理由もこの作品で明らかになっている。教師を続けられなかった加賀は、よく刑事に転進しようと思ったものだ。この作品を読んで思い出したのは「容疑者Xの献身」。以下の記事で書いた。「容疑者Xの献身」東野圭吾今になって初期の作品を読む。それは意味のあること。なぜなら、東野圭吾という作家の軌跡が見えるから。「容疑者X」は「悪意」をベースにしている。私はそう感じた。順番としては逆だが、私は「赤い指」を先に読んでしまっている。「赤い指」東野圭吾人がなぜ殺人者となるか、事件ごとに事情は異なる。「容疑者X」で感動した読者が多かったのは殺人事件の背景。犯人に共感する読者が多かった。それが「容疑者X」の成功につながっている。この作品に苦言があるとすれば、それは鍵。殺人現場に入るための鍵について、読者にはそのありかが伝わっていなかった。推理小説の掟として、必要な材料は読者に示されなければならない。終盤になって鍵のことを書くのはいただけない。だが、それを差し置いてもこの作品は評価が高い。東野は挑戦する作家だ。映画監督が自らの作品をリメイクするように、東野もそうしている。上で書いたように、「容疑者X」は「悪意」のリメイクだ。そう書いたら彼のファンは反発するだろうか?加賀恭一郎シリーズの最新作、「新参者」。図書館で待って、いつかは読んでしまうのだろう。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.06.08
300ページを超える長い話。それが「モモ」。 この物語は誰を対象にしているのか。子ども?それとも大人?私が読んだハードカバー(大島かおり翻訳)には「5、6年生以上」とある。モモを取り逃がした灰色の男たちが「斟酌」という言葉を使う。「不倶戴天の敵」という言葉も出てくる。ルビがあり、国語辞典で調べるということを考えても易しくはない。つまり、この物語は大人のためのもの。私はそう考える。廃墟となった円形の劇場跡にすむ浮浪児。それが主人公のモモ。彼女には人の話を聞くという特技があった。聞くだけではなく、モモに向かって話した相手は何かを解決する。そうした不思議な力がモモにはあった。そんな彼女の周りには、多くの人が集まった。子どもも大人も。だが、灰色の男たちによりそうした状況は大きく変わる。時間を節約するということに目の色を変え始めた人々。子どもたちはそんな大人から突き放される。モモのところに来て泣く子どもたち。何かが狂った世界を元に取り戻す。そのためにモモができることは何か。時間は不公平にできている?それとも時間だけは公平に流れている?人によって考え方は違う。私はこの物語を読んでいる際でも時間に流れがあると認識できた。最初の40ページほどは読むのに時間がかかった。だが灰色の男たちが出現してからは、読むスピードが上がった。時間の流れが変わるのを実感できた。この作品は挿絵までエンデ本人によるもの。今後も世界中で読まれるに違いない。何しろエンデが皮肉をこめて描く世界は現代に通じるものだから。しかも多くの国や地域で似た状況は起きている。物語の中に、トランジスターラジオを持つ子が出てくる。「高価なものをもらう」ことが愛情だとその子は言う。だが実際は違うということを子どもたちは知っていた。今の日本で言えば、トランジスターラジオは携帯電話になるのだろうか。それともPC?ゲーム機?灰色の男たちに時間を奪われた人々。ある人は、無駄を省くことを「洗練」と呼ぶ。例えば鉄道の自動改札。入鋏による鉄道職員の腱鞘炎は防ぐことができた。鉄道会社も人件費削減が可能となった。しかしその一方で人と人との接点が減った。便利なものは何かを得るのに必要。しかしその反面、何か失っているものがある。現代人は何を失っているのだろうか?作者のミヒャエル・エンデはドイツ人。1929年に生まれ、95年に亡くなっている。この「モモ」は72年の作品。この作品を読んでいて感じたのは、エーリッヒ・ケストナーのこと。「エミールと探偵たち」「飛ぶ教室」。そして「ふたりのロッテ」で世界中に知られている。上で書いた、大人から突き放された子が泣く場面。私は「ふたりのロッテ」を思い出した。クリスマスや誕生日のプレゼントよりも家族が一緒にいることの大事さ。それをケストナーは皮肉をこめて書いた。物語の終盤、モモがベッポを再会する場面。泣いては笑い、笑っては泣くというのはまさに「ふたりのロッテ」そのままだ。エンデはケストナーより後の時代に活躍した人物。だがケストナーの流れを取り入れている。そう考えるのは私だけだろうか?***********************関連記事ミヒャエル・エンデ「モモ」岩波少年文庫(1973年) ↑「格言」「時間」など、要点を抜き出している。その抜粋するセンスが私と似ている。ネットはこうしたページをすぐに探せる。便利な世の中になったものだ。だがその便利な裏で、何かを失っているかもしれない。この便利さに潜むものが、灰色の男たちの陰謀でないとどうして言えるだろう。「モモ」ミヒャエル・エンデ著(大島かおり訳)岩波書店 超名作ファンタジー 『モモ』ミヒャエル・エンデ「モモ」ミヒャエル・エンデミヒャエル・エンデ 「モモ」人生と時間について~ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)の『モモ』に思う~***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.06.07
NHK教育テレビで放送されている「ハーバード白熱教室」。ハーバード大学、マイケル・サンデル教授の講義を放送している。 私はこの放送を見ていない。だが今日、この講義の本を手に取った。第1回、4月4日放送は「殺人に正義はあるか」。二つのケースをどう考えるか。とても興味深い。NHKのHPから、その内容を紹介する。Lecture1 犠牲になる命を選べるか あなたは時速100kmのスピードで走っている車を運転しているが、ブレーキが壊れていることに気付きました。前方には5人の人がいて、このまま直進すれば間違いなく5人とも亡くなります。横道にそれれば1人の労働者を巻き添えにするだけですむ。あなたならどうしますか?サンデル教授は、架空のシナリオをもとにしたこの質問で授業を始める。大半の学生は5人を救うために1人を殺すことを選ぶ。Lecture2サバイバルのための殺人 サンデル教授は、19世紀の有名な訴訟事件「ヨットのミニョネット号の遭難事件」から授業を始める。それは、19日間、海上を遭難の後、船長が、乗客が生き残ることができるように、一番弱い給仕の少年を殺害し、その人肉を食べて生存した事件だった。君たちが陪審員だと想像して欲しい。彼らがしたことは道徳的に許容できると考えるだろうか?ここで大事なことは、「どう考えるか」ということ。はっきりした答えを出すことも需要だが、考えるというプロセスも重要。そして、「何が正しいということは白黒つけにくい」ということ。人は多くの場合、「正しいのはこれ」とすぐに答えを求めたがる。ところが、すぐに出る答は間違っていることも多い。しかも人というのはすぐに出した答えを頑固にも変えようとはしないものだ。Lecture1で思い出すのは三浦綾子の小説「塩狩峠」。サンデル教授がこの小説を読んでいるのか気になった。もうひとつは西村寿行の小説「血(ルジラ)の翳り」。国家が「犯罪を犯すDNAを持った人を抹殺する」というもの。将来、犯罪被害者が5人いたとすれば、それは国家的な損失。それを防ぐために国家が殺人許可を出すという内容。これも、サンデル教授は読んでいないだろう。Lecture2で思い出すのは「ひかりごけ事件」。各国に同じような話はあるのだろう。日本の場合は死体損壊罪という刑事罰以上に、精神的なダメージがあった。カルネアデスの板と同様、これも各国で同じような話があるに違いない。皮肉なのは、サンデル教授のような講義があるアメリカ。なのにブッシュが大統領になってしまうこと。911テロ後、ブッシュはアメリカ軍が十字軍であるという趣旨の発言をした。「何が正義か」ということの難しさ。それを示したのがサンデル教授なら、その国の大統領がブッシュだったという事実。アメリカという国はとても興味深い。最初にも書いたように、この講義は書籍化された。私は一部しか読んでいないが、内容はとても興味深いものだった。例えば過去に対する謝罪について。サンデル教授は日本の慰安婦問題についても知っていた。これは驚きに値する。私が注目したのは、その場にいなかった者の責任について。私が思うに戦争責任は戦後生まれた日本国民が背負うべきではない。なぜなら、私も含めてそうした人たちはその場にいなかったからだ。行為無き物が、責任を取れるわけがない。サンデル教授もこの点を指摘している。私は20年ほど前にはすでにこの点を指摘していた。だが、その考えを理解し肯定する人は私の近くにはいなかった。20年後に、しかもアメリカの大学教授がその人だったとは。ただし、過去の歴史が先祖を批判するものであったとしても。歴史を否定することは間違っている。これな、前に述べた「行為無き物が、責任を取れるわけがない」ということと矛盾しない。最近、「太平洋戦争は日本の自衛戦争だった」という主張をよく見かけるようになった。いくら戦争責任を負う立場にないとはいえ、過去の歴史を否定はできない。もうひとつ忘れられないのは妊娠中絶の問題。アメリカでは連邦最高裁判事の任命にも、この問題が深く関わっている。もし胎児が人であるなら。その生殺与奪権を親が持つというのは殺人許可書に等しい。だからこそ、「中絶は女性の権利」という考えは多くの人に支持されない。この本、立ち読みで一節ずつ読んで考えるにはいいかもしれない。図書館で探し、予約が多いなら、そうしたことも考えよう。本屋にとっては迷惑なことかもしれないが。追記日本でも人を殺す仕事というものが存在している。この件については以下の記事で書いた。人を殺す仕事とイラク自衛隊派遣死刑執行する刑務官。そして警察官は仕事として人を殺すことがある。まさしく「殺人に正義はあるか」ということ。※例によって、楽天特有の字数制限でこれ以上書けない。別の記事にこの件の続きを書くかどうか。それを今考えている。***********************関連記事ハーバード大マイケル・サンデル教授の政治哲学授業が超絶おもしろかった件 自分なりの道徳理論を確立する↑「殺人に正義はあるか」について書かれた詳しいブログ記事。「ハーバード白熱教室」 第1回 殺人に正義はあるか(1)「ハーバード白熱教室」 第1回 殺人に正義はあるか(2)↑この二つもかなり詳しくこの講義について書いている。参考にさせていただいた。前から何回も書いているが、ネットはこうした意見がすぐ読めるのが大きなメリット。時に「便所の落書き」と揶揄されるネットだが、存在する意味は大きい。正義を基礎づける――マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』を読む1 ↑番組ではなく、書籍について書かれたブログ記事。今後参考にさせていただく予定。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.06.07
雫井脩介の作品を初めて読んだ。それがこの「虚貌」だ。(この記事、ネタばれあり) この物語は1980年に始まる。場所は岐阜県。魚の輸送業者で勤務していた男、荒は仲間2人と会社を解雇される。恨みを持った男たちはひとり加えて4人で社長宅を襲う。社長夫妻は惨殺。家は放火され娘が車椅子の生活、息子は大火傷を負う。両親を失った姉弟は養護施設へ。それから21年後、事件の加害者が次々と殺される。アマゾンで調べてみると、この作品はすごく評価が高い。確かにいろいろな分野についてよく調べてある。計算された内容も濃く、多くの読者は満足しているようだ。そうでなければ上下2段で380ページもの大作。読む側が飽きてしまう。(正直、私は終盤読むのに飽きた)読んでいて気になったのが警察の間抜けな点。過去の事件の加害者たちが殺されているのに、緊張感に欠ける。「次に狙われるのは誰か」ということを、もっと真剣に考えるはず。「犯行時少年だから犯人が行きつかない」というのは希望的観測。また、朱音のカメラマンが誰であるか。気がつく人がたくさんいてもおかしくはない。人の噂というものは、いつの間にか広まる。著者はそう考えなかったのだろうか?警察も捜査員の娘が被写体になったことばかり目がいく。カメラマンに注目しないのはなぜか。私が最も理解に苦しむのは、21年前の事件で生き残りがいるということ。殺された者たちに恨みを持つのは誰か。小学生でも見当がつきそうなものを、警察は考えが行き着かない。犯人であろうがあるまいが、通常は事情聴取するに決まっている。所在不明ならまず疑ってかかるべきだ。それを「切れ者」の今枝警部補は3兄弟まで視野を広げる。捜査陣の大半がその線で捜査するのには笑ってしまった。宮部みゆきの「火車」でも、主人公が最後まで出てこないということがあった。実態の見えない謎めいた登場人物は、ミステリーにありがち。アマゾンで高く評価した読者たち。どうしてこれらの点を批判しないのだろう。この手の作品といえば横山秀夫。よくできているだけに、私には惜しい点が気になって仕方ない。もう1点。生き残った犯人は、これから何を目指すのだろうか?彼が考える「生きる意味」が私にはわからない。終盤、死ぬ人たちも意味がないように思える。「俺はやってない」という犯人のセリフも意味不明。この作品が単なるエンターテイメントであったとして。読者は堪能しただろうか?私には疑問が残るばかりだ。途中までは「読ませる」という点でこの作品が成功したことは確か。だが読み終わってみると、次に「どうしてもこの作家」とは思えない。隣に横山秀夫の新作があれば、そちらを先に読む。「火の粉」「栄光一途」「クローズド・ノート」そして「犯人に告ぐ」。この作家の作品はそのうち読むことになるだろう。優先順位は低いかもしれないけれど。追記この作品では、「顔」にまつわる話が何回か出てくる。そのためにこのタイトルになったとも言える。捜査員の辻は顔に青痣がある。痣については「金八先生」で出てきた。作者も見ていたのだろうか?トリックについて、「これはないだろう」という批判があるようだ。読者が疑いを持ったら小説としては問題あり。だが、完璧なミステリーなどこの世には存在しない。横山秀夫の「半落ち」でもそうだった。人が別人になることは可能。だが、ある特定の人物になるのはかなり困難。背格好に加え、体臭や言葉などクリアする問題が多すぎる。***********************関連記事雫井脩介:「虚貌」『虚貌』~笑顔の下に隠された殺意「虚貌」上・下 雫井脩介「虚貌」雫井脩介 幻冬舎文庫虚貌〈上〉/〈下〉(雫井 脩介)虚貌(雫井脩介)虚貌 上下 雫井脩介著 「虚貌」雫井脩介お奨めミステリー小説 (270) 『虚貌』 雫井脩介***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.31
「スコーレNo.4」を読んだ。 私がなぜこの小説を知ったか。それは、読売新聞に出ていたから。「書店員が推薦する本」として紹介されていた。これがその記事。「スコーレNo.4」 書店員「つぶやき」でいきなり増刷いい作品だけど、広く世に知られていない。そんな小説がこの世にはたくさんある。ネットは時に「便所の落書き」と言われることもある。だが、自分の知らない世界を紹介してくれる手がかりはありがたい。ツイッターで有名になる作品。今ならそんなことがあってもいい。「本屋さん秘密結社」は、今後も作品を紹介し続けるのだろうか。主人公の麻子は骨董品店の長女。三姉妹の中でも麻子は二女の七葉にコンプレックスを持っていた。名前も、容姿でも麻子は不器用で自分に自信が持てない。タイトルの「スコーレ」とは学校のこと。麻子は経験を積むことで自分に自身が持てるようになる。この世には、自信が持てない人がいかに多いか。「自分なんて」とか「これは自分がやりたいことじゃない」と思っている人。この作品がそんな人たちの福音になるのだろう。姉妹というものは、互いをライバルに見るのだろうか。心理的なものが、男の私にはよく理解できない。読んだ感想も、男女で大きく違うのではないか。短い文章をつなげることで、独特のリズムが生まれる。この作品は、それが大きな特徴だ。正直、私はこのリズムに最初は乗れなかった。40ページあたりからやっと慣れた。文章自体は決して難しくない。ただ淡々と麻子の日常が描かれている。決して「感動巨編」でも、主人公が白血病になるわけでもない。そうなると作家としての力量が試される。一部の作家は読者に受け入れられるよう、盛りだくさんにし過ぎる。それがためにポイントがぼけ、台無しになった作品を私は多く知っている。本来、小説にどれだけの山場が必要なのか。それは書き手が決めること。読み手は「読む、読まない」で評価を決める。もちろん、読んで酷評する場合もある。少し前に読んだ作品が盛りだくさん過ぎた。その点、本作品は新鮮。この作家、私は知らなかった。機会を見つけて「コイノカオリ」も読もう。***********************関連記事「スコーレNo.4」宮下奈都 「スコーレNo.4」宮下奈都スコーレNO.4 〔宮下奈都〕 「スコーレNO.4」ネタバレ感想 宮下奈都スコーレNo.4 宮下奈都スコーレNo.4(宮下奈都)本『スコーレNO.4』宮下奈都本「スコーレNO.4」「スコーレNo.4」 宮下奈都 「スコーレNo.4」宮下奈都宮下奈都『スコーレNo.4』光文社スコーレNo.4(宮下奈都)↑mixiのコミュニティになっているとは知らなかった。あとで一度覗いてみよう。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.27
「極北クレイマー」を読んだ。(この記事はネタばれあり) 極北市民病院に赴任した外科医の今中。この地は無理なリゾート開発が裏目に出て、ひどい赤字体質。今中も外科部長なのに給料は驚くほど安い。病院は不衛生で緑膿菌(ピオ)と褥創(デク)が蔓延っている。脳卒中のリスクが高いにもかかわらず、病院のトイレは和式で水洗ですらない。院長は事務長と仲が悪く、看護師も多くがやる気なし。今中はこの病院を建て直すべく奮闘するのだが・・・この物語のモデルはもちろん夕張。自治体が事実上破綻し、病院にもその影響が強く出る。産婦人科の三枝医師が逮捕されるのは、以下の事件がモデル。福島県立大野病院産科医逮捕事件実際は06年に産婦人科の医師が逮捕された。だが08年には裁判で無罪が確定している。この事件では、06年に富岡警察署が医師逮捕について福島県警本部長賞を受賞。有罪が確定していない事件での受賞には大きな疑問が残る。妊娠と出産は病気ではない。だからリスクが低くても母子に何かあれば訴訟になりやすい。日本医療業務機能評価機構の審査場面は長くて不要かと思われた。そのことが私にとっては不満が残る。病院再生に向けた救世主は世良だった。大学に戻るよう言われながらも病院に残った今中。先行き不安な中、まさか世良がシリーズに戻ってくるとは思わなかった。世良については、以下の記事で書いた。海堂尊「ブラックペアン1988」大丈夫、世良なら瀕死の極北市民病院を復活させることができる。今中も世良に誠心誠意協力するに違いない。世良の復活は素直に嬉しい。東城大学の医局長から、どこで何をしていたのか。医局時代、世良は「ジェネラルルージュ」こと速見の指導役。その速水も東城大学を出て北の大地に来ている。海堂尊「ジェネラル・ルージュの凱旋」「ジェネラル・ルージュの伝説」海堂尊逮捕された三枝だが、大丈夫。彼には清川という同志がいる。きっと無罪になって病院に復帰する。(「ジーン・ワルツ」でもこの逮捕が少しだけ出てくる)海堂尊「ジーン・ワルツ」海堂のシリーズで次に読むのは「マドンナ・ヴェルデ」になるだろう。清川の同僚で産婦人科の理恵。彼女は病気のため子宮を摘出したため出産ができない。「ジーン・ワルツ」で出産する理恵の母親側から見たストーリー。山咲みどりは代理で双子を出産。このうちの一人が「医学のたまご」に出てくる。「桜宮サーガ」はまだ続く追記極北救命救急センターの桃倉は、「医学のたまご」に出てきたあの桃倉なのか。だとしたら時代考証に無理がある。「ブラックペアン」に出てきた桃倉(佐伯の弟子?)と親子なのか?「桃倉一家」は北海道で医師の名門だったりして。あと、初版本でこの作品を読んだが三枝逮捕の場面。9月の設定のはずが、始まりが七月になっていた。この作品は、続編が出るのだろう。作品間にある空白部分も気になるところだ。終盤に出てきた天国と地獄の話。天国と地獄はすぐ近くにあって、食べ物が多くある場所。だが、食事には長い箸を使わなければならない。天国と地獄は何が違うのか。この話はかつて金八先生で紹介されていた。天国と地獄の話海堂も金八を見ていたのだろうか?それとも私が知らないだけで、この話は有名なのか。出典がよくわからない。※いろいろ書きたいことはある。だが楽天特有の字数制限のため、これ以上書けない。***********************関連記事「極北クレイマー」海堂尊「極北クレイマー」(海堂尊)「極北クレイマー」海堂尊 海堂尊『極北クレイマー』「極北クレイマー」 海堂尊『極北クレイマー』/海堂尊 ◎海堂 尊 「極北クレイマー」【極北クレイマー】嵌り続けている『このミス』大賞作家『極北クレイマー』 海堂尊 朝日出版社 「極北クレイマー」海堂尊極北クレイマー極北クレイマー(海堂尊) 極北クレイマー 〔海堂 尊〕「極北クレイマー」海堂尊『極北クレイマー』海堂尊舞台は北へ。ひとまず転換。:極北クレイマー [小説]極北クレイマー ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.24
「1985年の奇跡」を読んだ。(この記事ネタばれあり) 野球の弱小校、小金井公園高校。設立から8年目で管理教育が行き届き、閉塞感が漂っている。クラスは学力別で主人公のキャプテンは最低のF組。校則は厳しく、運動部も勉強の邪魔としか評価されない。今まで勝ったことがないこの高校にチャンスが巡ってくる。野球で強豪校にいた左腕の沢渡が転校してきたからだ。剛速球を投げる彼がいれば勝てる。そう思っていたナインは張り切るし、実際地区予選の準決勝まで勝ち進む。美人マネージャーの登場もナインの刺激にはなった。だが沢渡には人に言えない秘密があった。(以下ネタばれ)トランプのシーンで使われたサインペンが、後半生きてくる。だが私には読んでいてそのことがすぐにわかってしまった。沢渡が同性愛者であるということが、墨山高校との試合中にわかる。しかし、噂というものは怖い。それまで、強豪校相手にノーヒットノーランまでした沢渡。実際は、もっと前に誰かが秘密を話してしまうだろう。「人の噂も49日」は面白かった。同性愛。私も含めて人は自分と違う者を避けたがる。1985年でなくても、同性愛者を理解する人は少ない。私も含めて、頑固な管理教育の推進者である校長を簡単に批判できない。カトリック信者でなくても、同性愛を批判する心を多くの人は持っている。作者の五十嵐貴久。「ロケットボーイズ」や「パパとムスメの7日間」などを書いている。成蹊大学出身。成蹊大と言えば作家では石田衣良。その前には小池真理子、桐野夏生もこの大学出身。(安倍晋三元首相も成蹊大)「1985年の奇跡」は舞台は武蔵野市や三鷹市で成蹊大に近い。この作品は雑誌で紹介されていたことで知ってはいた。だが今まで読まないでいた。今読んだのは、この本が図書館のリサイクルで無料になっていたから。残念なことに、本はかなり新しいままだった。(複数購入、または寄贈されたため?)後に古い作品を読むのは悪いことではない。しかも、携帯のない時代が描かれているのでノスタルジーに浸れる。おニャン子クラブや「夕やけニャンニャン」など、かなり懐かしい。チェッカーズやC-C-B、小泉今日子。ある年代には懐かしさ爆発のはず。JALの墜落事故もこの年の8月だった。たぶん5年後に読んだとしても面白さは変わらなかっただろう。墨山高校とのリターンマッチ。その結果とエピローグは果たして必要だったのか。読者によって意見は大きく分かれるに違いない。この作品は稚拙な部分が目立つ。しかしそれを差し引いても面白い。簡単な内容なので、するすると読める。今度、別の作品も読んでみよう。***********************関連記事〇「1985年の奇跡」 五十嵐貴久 双葉社 1700円 2003/7 五十嵐貴久 『1985年の奇跡』「1985年の奇跡」五十嵐貴久五十嵐貴久:「1985年の奇跡」 『1985年の奇跡』五十嵐貴久著/双葉文庫 『1985年の奇跡』 五十嵐貴久1985年の奇跡/五十嵐 貴久 1985年の奇跡「1985年の奇跡」読みました1985年の奇跡 五十嵐貴久 五十嵐貴久「1985年の奇跡」1985年の奇跡1985年の奇跡 【五十嵐 貴久】【1985年の奇跡】五十嵐貴久***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.17
「あなたのTシャツはどこから来たのか?」を読んだ。アメリカで売られていたTシャツがどこで生産され、どうなるのか。それを大学教授である著者ピエトラ・リボリが追った。 フロリダで買った5ドル99セントのTシャツ。素材である綿はテキサス州で生産された。アメリカでの綿の生産については、奴隷制も深くかかわっていた。大規模な機械による綿の生産は、アメリカの綿農家を生き残らせた。テキサス工科大学も害虫駆除の面で農家に協力した。インドのアンドラ・プラデシュ州では害虫による被害によって多くの農家が自殺。アメリカなら、雹による被害が出ても農家は保護される。同じ綿を生産する農家でも、国によってこれほどまでに違いがある。材料としての綿は、そこから長い旅に出る。西海岸へ運ばれ、船で中国へ。糸となり、布となった綿は中国国内で縫われ、白いTシャツになる。鮮やかなプリントされるのはマイアミ。中国で著者が見たのは低賃金で働く労働者たち。なぜ遠い中国に綿は運ばれなければならないのか?その秘密は中国での人件費の安さにある。中国ということで政治も大きく絡んでいる。ここで「搾取はいかん」とか、「グローバル化は悪い」という結論だったら。この本の魅力は何と乏しいものになっただろう。アメリカ国内に戻ってきたTシャツは、その後古着として売られる。行き先はアフリカだ。保護政策でガチガチの状態だったTシャツ。ここでやっと競争原理の下、取引が行われるようになる。グローバル化は悪いことなのか?日本との間においても貿易摩擦を引き起こしたアメリカ。自由の国では保護貿易が行われてきた。詳しい内容については、この本をじっくりと読んでほしい。この本で思い出したことがある。本書でも紹介されたように、一部のスポーツメーカーは批判された。「搾取工場で低賃金の労働者が犠牲になっている」という理由からだ。同じことを以前、「CBSドキュメント」で見たことがある。TBSで夜中放送された番組だ。番組ではサッカーボールの生産について報告されていた。サッカーボールは安いものがパキスタン製が多い。(私も安いパキスタン製のボールを使っていたことがある)その生産国パキスタンでは、子どもたちがボールを手縫いする。子どもによる労働と低賃金の世界がそこにはあった。CBSの番組により、子どもたちはサッカーボールの生産ができなくなった。このドキュメンタリー番組では現地のその後を追った。子どもたちに聞いてみると、「以前のほうがよかった」と言う。なぜなら、ボールの生産で少しは賃金がもらえたからだ。学校に行けないで働かされている子どもたちばかりではないらしい。アメリカ3大ネットワークのCBSによって、何が変わったのか。それは「先進国の自己満足」で終わったのではないか。番組自身が疑問を投げかけていた。この本で著者が言っているように、グローバル化が何でも悪いわけではない。保護貿易は予期しない形ではあるが有益なものを残すことがある。ひとつの視点だけで物事を理解したつもりになっていること。その危険をこの本は教えてくれる。繊維だけでグローバル化全体を語ることは無理がある。鉱石には鉱石の。食料には食料の事情があるに違いない。食品の輸入とフードマイレージについては以下の本で書いた。「コンビニ弁当16万キロの旅」石油についてグローバル化の視点から語ったら。さぞかし興味深い本になるだろう。***********************関連記事「あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実」ピエトラ リボリあなたのTシャツはどこから来たのか?/ピエトラ・リボリ「あなたのTシャツはどこから来たのか?」ピエトラ・リボリ著007『あなたのTシャツはどこから来たのか?』 ピエトラ・リボリ 第一版2007年【書評】『あなたのTシャツはどこから来たのか?』 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.11
「フードマイレージ」という言葉、今では一般的になっている。「コンビニ弁当16万キロの旅」は日本の食について教えてくれる本。 コンビニでの弁当は和風の幕の内でも食材の7割が輸入品。この事実は重い。確かに日本の食卓に欠かせない納豆でさえ、原料の大豆は輸入品が多い。テイクアウトの寿司でも鮭やマグロは遠くから日本に運ばれたもの。その他、日本の食事は輸入品なしには考えられない状態。バーチャルウォーターについては、私も知らなかった。確かに食べ物の輸入は、その食べ物を生産する際の水も重要だ。60億人が暮らす地球。そのうち12億人が安全な水を使えない環境にいる。牛肉を生産するには牛に穀物を食べさせる必要がある。牛が飲む水と同様、餌となる穀物には大量の水が必要だ。牛肉弁当に必要な水は約2トン。もし、先進国が牛肉を食べる量を減らして穀物にしたら。どれだけの人が救われるのか。日本で廃棄される弁当などを有効利用できれば。どれだけの人が食事に困らないでいられるか。それを考えなければなるまい。この本では廃棄食物を肥料などでしか紹介できていない。日本でも、フードバンクなど廃棄しない選択肢がある。それをもっと紹介してほしかった。セブンイレブンの弁当値引きを考える フードバンク(素敵な宇宙船地球号)食料の大量廃棄を見たこの本、確かに有益な情報を我々に提供してくれる。だが「食べられるものを捨てないこと」についての情報もほしい。「いただきます」と生命を食べる「いのちの食べかた」問題なのは、食物の生産が消費者に見えていないということ。現実問題は、この本に描かれているより厳しい。大量廃棄から脱却するために、発想の転換が必要だ。日本の食料自給率は約40%。この数字をすぐに上げることは難しいかも知れない。しかし、食べられるものを毎日捨てる現状は間違っている。***********************関連記事コンビニ弁当16万キロの旅 「コンビニ弁当16万キロの旅」-フードマイレージ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.11
GWというのは本を読むのに向いている。多くの人が遠くへ行って疲れている中、読めなかった本を手にするいい時期。 なるほど、この本がベストセラーになるのがよくわかる。日野原重明氏は90歳にして聖路加国際病院の現役医師。多くの役職をこなす著者の発言は重い。「人は不幸に敏感、幸福に鈍感」「健康は数値ではない」「医学が進むと病人が増える」どれも医師としての経験から出ている言葉。ある若い母親が、医師にこう相談した。「うちの子はご飯を食べる量が少ない。本によるともっと多くていいはず」確かに食が細いと心配したがる気持ちはよくわかる。だが子は生きている。本の通りにならないこともある。こんな言葉もあった。「高度すぎる文明は、人の心を破壊しかねません」人は便利を求めたがる。新幹線がよりスピードを求めるのは時代の流れ。だが飛行機が東京とロサンゼルスを3時間で結ぶ意味はあるのか?この本は医師の言葉であると同時に、現代社会への批判でもある。私が今まで知らなかったのがこの言葉。セレンディピティ(serendipity)探し物をしている時、別のものを見つける能力のこと。語源がスリランカというのも新鮮だ。この能力があるのとないのとでは、大きく違う。目の前にある価値あるものを見過ごすか否か。知らない間に私は大きな損をしているのかもしれない。人はいつでも挑戦できる。老人が憎まれ役になる必要性。これも現代社会が「おっかない老人」の喪失を迎えていることを意味する。「昔はよかった」で話を終わらせることは意味がない。だが、少子高齢化の今こそ老人の経験と憎まれ役の必要性は高まるはず。記録したい言葉はまだある。医療の対象は「病」ではなくあくまで「人」機械がぬくもりをなくす医療はアート医療ミスは増えたんじゃない、隠してきたんだ現代社会は機械により人間関係を変えた。昔は駅の改札で物理的に切符を切る人がいた。ところが最近はどこでも自動改札。ジュースを買うのも店のおばちゃんからではない。自動販売機が機械的な言葉を話す時代だ。それは一方で「洗練」と呼ばれるが、人間的なものを喪失してしまっている。こんなのもあった。「その患者さんが、あなたの子どもであったら、親であったら、愛する人であったらそれでも手術しますか?」先日、このブログで記事にした東京医大のことを思い出す。東京医大、肝移植の前に寄付金募る東京医大の八王子医療センターでは生体肝移植に問題があった。移植を受けた52人中20人が手術後1年以内に死亡。しかも移植手術前に寄付を募っていた。医師は神様じゃない。しかし命に関わる医師に差があるのは恐怖だ。日野原氏も認めているように、日本にはMRIなど医療設備が整っている。同じく医師で「チーム・バチスタの栄光」「死因不明社会」を出した海堂尊氏。彼は今ある設備の有効利用を訴えている。それが、オートプシー・イメージング(略してAi)だ。日野原氏は健康がデータではないことをこの本で書いている。患者の横にいて直接触れることの重要さを説いている。これはどちらが正しいという問題ではない。言ってみれば、両者とも正しい。長い医師の経験でも、日野原氏にとって大きな出来事。それがよど号ハイジャック事件と地下鉄サリン事件。福岡で行われた学会出席のためよど号に乗ったばかりに人質となった日野原氏。地下鉄サリン事件ではその日の外来を中止し、患者をすべて受け入れた。この本、文字が大きく読むのに時間はそう必要ない。医学に関心がなくても読める。読む価値はある。追記この本を読んで知った人。それがウイリアム・オスラー。ウイリアム・オスラーの名言忘れないように記録しておく。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.02
「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」を読んだ。 この本がベストセラーだということはずっと前から知っていた。「そのうち無料で読めるだろう」と考えたが、その無料の日がやってきた。タレントの遥洋子が東大で上野千鶴子から学んだことを書いている。上野千鶴子は社会学者。ジェンダー研究で知られている。この本を読む限り、上野は教室で厳しい。女子学生に対しても情容赦はない。社会学は正解のない学問だと言われている。人によって答えが違う。だがありきたりな答えを上野は容赦なく批判する。そりゃそうだ。好き勝手言っているだけで学問になるのなら、新橋の飲み屋に行けばいい。この本で出てきた上野の発言が印象に残る。「女性の価値は美にはない」正直、私はこの意見が間違いだと考えている。「女性の価値は美にもある」が正しいのではないか。問題は「女性の価値が美だけ」という点。あっさりと全否定されてしまうと、私には疑問が残る。もうひとつ印象に残ったのがこれ。「オリジナリティは情報の真空地帯には発生しない」情報の真空地帯にこそオリジナリティはあるのかもしれない。しかしそれは「本当のオリジナリティなのかどうか」を判断できない。やはり学ぶことは大切だ。上野の言うとおり、「引き出しの多さ」は人を豊かにするのだろう。ところで遥氏は何故新幹線に乗ってまで東大で上野に学ぼうとしたのか。この本の後半部分で少し出てくるが、根拠があいまいだと私には思える。東大、しかも上野でなければいけないのか。京大や阪大では学べないのか。議論の方法を学ぶなら、どこでもできそうな気がする。あえて東大、しかも上野から学んだことがよかったと言えるところ。それは知識ではない「直感」についての部分。上野は遥に直感があると認める。遥にしてみたら、その一言が何よりの宝になっただろう。本人も認めているように、遥の学習能力は限界がある。だが彼女の読書量はすごい。大学に通い続けること。それと学ぶ努力は認めていい。***********************関連記事東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ「大雑把な理解のプロ」に「学ぶこと」を学ぶ 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 遙洋子#3026 遙洋子著「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」フェミニズムってなんだろう---『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ遥洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 ↑この本と「ケンカのしかた十箇条」について書いている。***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.05.02
死刑と奇跡を描いた「グリーンマイル」。そのシナリオ対訳本を今読んでいる。(この記事はネタばれあり) 原作はスティーヴン・キング。薄い6冊の文庫本を出したことでも知られる。脚本はフランク・ダラボン。このコンビは「ショーシャンクの空に」でも知られている。やはり刑務所が舞台の作品だ。グリーンマイルというのは刑務所の廊下。褪せた緑色をしていて、死刑囚は処刑場までこの廊下を歩く。舞台は1935年。大恐慌の年だ。看守のポール(トム・ハンクスが演じた)は一人の死刑囚と出会う。ジョン・コーフィは黒人の大男。不思議な力を持っており、ポールの尿路感染症を治す。死んだはずのネズミを生き返らせる。さらには刑務所長ハルの夫人を致命的な脳腫瘍から救う。実はコーフィが死刑囚として送られた双子の少女殺害事件。その事件も冤罪だった。しかし裁判の結果はすでに出ている。悩むポールたちだがコーフィは処刑場へ送られることに。結果としてポールには罰が与えられる。映画は99年公開。すでに年数が経過しているため、ここまで結末を書いてもいいだろう。私はそう判断した。「死ねない罰」というのは手塚治虫の代表作「火の鳥」でも出てきた。ポールは同僚とともにコーフィの処刑をきっかけに転属。少年更生院で再出発する。「もう処刑はできない」という想いがあったのだろう。このシナリオ対訳本は英語の教材としても役立つ。(ただし、教科書に載せられないような表現も多い)捜索隊はsearch party尿路感染症はurinary infection「最後の審判の日」はOn the day of my judgement 処刑室はExecution Chamber腫瘍はtumor少年更生院はBoy's Correctional大恐慌はDepression作品に出でてくるフレッドアステアの映画は「Top Hat」。「Cheek to Cheek」という曲は知らなかった。始まりの文句はこれ。We each owe a death,there are noexeption.(我々はみな死ぬ。免れる者はいない)こんな表現もあった。Like you done before(前みたいにやる)Is that you official position?(それが君の公式見解かね?)You want to think about what you were doing just now?(自分が何をやったか考えろ)日本でも足利事件など冤罪が見つかった。この映画について、死刑と冤罪を考えないわけにはいかない。この本、いろいろ学ぶべきことがある。また手にとって学びたい。***********************関連記事冤罪を生む元凶「グリーンマイル」 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.04.30
この記事は前から続いている。「百億の星と千億の生命」 15章「妊娠中絶」アメリカでは人工妊娠中絶に関する意見がとても重要だ。中絶を行う医師が殺される事件も起きている。中絶医、教会で殺害される連邦裁判所判事任命でも「中絶に賛成か否か」が問われる。セーガン博士はこの問題で夫人と共著という形で意見を述べている。「生命になる可能性があるから」中絶は禁止すべきなのか?ならば自慰行為は大量殺人になるのか?チンパンジーを殺しても殺人にはならない。人間と活性遺伝子が99・6%しか違わないにもかかわらず。ところでアメリカで中絶が論争になったのは最近のこと。聖アウグスティヌスや聖トマスアクイナスの時代。初期の中絶は殺人ではなかった。ヴィエンヌ公会議からその点は変更がないとセーガン博士は言う。そればかりか1800年のアメリカでは中絶に関する法律はない。ところが1900年になると各州で母体を救う以外の中絶が禁止。その原因は宗教ではない。出生率の低下が最低になったことがもたらしたものだった。アメリカでは近年、中絶容認派と反対派が対立。そんな中、訴訟社会のアメリカで中絶をめぐる注目の裁判があった。ロー対ウェイド事件がそれだ。結局、妊娠初期の3ヶ月は中絶の権利を認める。(政府は初期の中絶を禁止できない)次の3ヶ月は母体を守るために中絶を制限できる。そして3番目の3ヶ月は母体の保護と健康を守る以外は州が中絶を禁止できる。となった。ところでこのセーガンによる文章には雑誌掲載時、電話番号がついていた。以下の4つの選択肢から読者の意見を選ぶようになっていた。1、受胎の瞬間から中絶は殺人。2、女性はいつでも中絶を選ぶ権利がある。3、妊娠初期の3ヶ月間の中絶は許されるべき。4、妊娠中の6ヶ月間は中絶を許されるべき。最初、この4つの意見はそれぞれ均等に分かれていたという。しかし邪魔が入った。伝道師で大統領候補にもなったパット・ロバートソン氏だ。彼は中絶反対派。そのためテレビ番組で「中絶禁止」の意見を送るよう求めた。それからは回答が圧倒されるようになったという。第16章「ゲームのルール」最近流行(?)のゲーム理論。第17章「ゲティスバーグ」年間で1兆ドルと言われる軍事費。その1割を使えば実にいろんなことができる。多くの人を救える。「地球村」に住んでいる我々村民。軍事に金を使っている場合ではない。セーガン博士の訴えはここでも冴えている。本書では、終わりに近づくとセーガン博士の病気のことが書かれている。骨髄異形成症候群という重病でシアトルでの闘病生活が始まる。妹さんから骨髄の提供を受けたセーガン博士。快復に向かうかと思われたが再発。96年に帰らぬ人となった。彼が偉大であることは間違いない。大切なのは彼の考えをこの世に残すこと。それには「みんなでセーガン博士になる」ことが必要だ。一人では彼の偉大さを受け止められない。なら100人では、1000人ならその考えを受け継ぐことができる。宇宙への探究心、環境問題、核軍縮と彼の夢は大きかった。残された者は、どれだけ彼の意志を継げるだろうか?***********************関連記事カール・セーガン 百億の星と千億の生命百億の星と千億の生命 (新潮文庫) 百億の星と千億の生命 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.04.29
この本の内容は深くて今でも消化し切れていない。消化できている部分だけでもこの本の内容は賞賛に値する。 カール・セーガン博士は天文学者。だが彼の主張は天文だけではない。生物学、環境、政治、宗教などあらゆる分野にわたる。この本は、96年に亡くなったセーガン博士の遺作。この世に残した人類への宿題と言っていい。しかもその内容は私のような文系の人間でも理解できるよう書かれている。本書はまず、数字から始まる。ミリオン(百万)、ビリオン(10億)、トリリオン(一兆)。英語だとイメージがわかない。だがメガ、ギガ、テラという単位はネットで見かけたことがあるだろう。写真の記録メディアで使われるようになった。テラはブログでの映像記憶で1テラのものがある。第2章「チェスを発明したペルシア人」チェス盤を用いた指数関数で麦の計算は有名な話。ただ麦だけではなく原子力の分野でも指数関数が出てくる。半減期の問題だ。「原子力の平和的利用」という原発は放射性廃棄物を出す。廃棄物は長い間放射線を出す。麦が増えるのと逆に、放射性廃棄物の半減期は重要な問題だ。(この本でもセーガン博士は原子力発電に対し、疑問を投げかけている)第3章「月曜の夜の狩人たち」ここで言う「月曜の夜」というのはアメリカンフットボールのこと。(以下アメフトと略す)アメフトは秋になるとシーズンが始まる。金曜、土曜、日曜と高校、大学、プロが試合をする。月曜の夜は「マンデーナイト」と呼ばれ、プロの注目される試合を行う。この試合は全米に中継される。スポーツが祭りであり、狩猟と関係していること。これは多くの人が認めている。日本でも岡野俊一郎氏が著作でそう述べている。第5章「宇宙の四つの謎」セーガン博士は以下の謎を挙げている。1、火星にはかつて生命があったのか?2、タイタンは生命起源の実験台か?3、どこかに知的生命体はいるか?4、宇宙の起源と運命は何か?どれも大きな謎だ。だがその後に書かれた一文は興味深い。「最もすばらしい発見は我々の無知ゆえに予見すらできない事柄であろう」第8章からは環境問題を取り上げている。フロントオゾンの関係。地球温暖化にどう対応するか。第12章では温室効果ガスについて語っている。セーガン博士は原発について放射性廃棄物の観点から危惧する。前にもあったように、半減期が数百年から数千年ある放射性物質。原子力は安全基準違反や組織的隠蔽があった。そのため「信頼性というものは感じられない」としている。私もこの点に関して同感だ。原子力関係者は今まであまりに嘘をつきすぎた。ところでこの原発と放射性廃棄物の問題は今に通じている。アメリカはオバマ政権が原発を復活させようとしている。その反面、ネバダ州のユッカマウンテン核廃棄物処分場計画を止めた。この件に関しては以下の記事に書いた。米露、新核軍縮条約セーガン博士はこの現状をどう見るだろう?「核なき世界」でノーベル平和賞を受賞したオバマ。原発を増設し、行き場のない放射性廃棄物をどこに捨てるつもりか。この本、環境の部分は「不都合な真実」に。格差については「世界がもし100人の村だったら」と通じる。13章の「宗教と科学」はとても興味深い。ここでは「100家族の村」として以下のような記述がある。・65の家族は読み書きができず。・90の家族は英語を話せず。・70の家族には飲料水が引かれていない。・80の家族では誰も飛行機に乗ったことがない。・7家族が土地の60%を所有し、エネルギーの80%を消費。・60家族が10%の土地に押し込められ。・大学教育を受けたメンバーがいるのはたったひと家族だけ。この世は不公平にできている。そして先進国側から見れば当たり前のことも、実は恵まれているとわかる。宗教は伝説と科学的事実を分けて考えなければ、未来がない。私は以前からそう考えていた。そしてセーガン博士は宗教と科学の協力が必要だと主張した。14章「共通の敵」この章は米ソの対立から脱却し、「共通の敵」に立ち向かう意味について。病気や環境、そして核軍縮など、人類への宿題は多い。国と国とが戦争している場合ではない。この部分は雑誌「アガニョーク」に掲載されたもの。セーガン博士は検閲を嫌ったが、結局検閲されることになった。巻末のその部分一覧が出ている。残念なことに、楽天特有の字数制限が近い。注目すべき15章「妊娠中絶」以降については次の記事に続く。「百億の星と千億の生命」その2***********************関連記事カール・セーガン著『百億の星と千億の生命』 百億の星と千億の生命 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.04.29
結城五郎の「心室細動」を読んだ。第15回サントリーミステリー大賞受賞作。(この記事はネタバレあり) 主人公である上原は内科の大学教授。アレルギーの研究で成果があり、次の教授が確実視されている。だが彼には人に言えない医療ミスという過去があった。この小説、医療過誤をテーマにしたミステリー。作者の結城五郎は千葉大学医学部を出た。そのため、医療に関する記述は考えさせられる部分が多い。当たり前だが医師は人間だ。機械でもなく、もちろん神様でもない。時にミスをするし、医師は医師をかばうこともある。医師にも背景がある。病院がまだ3年目と新しかったら。理事長が国会議員を目指していたとしたら。ミスをした看護師と医師に大きな期待が寄せられていたとしたら。死んでいる患者を生きていることにするかもしれない。遺体に向かって必死に治療しているように演技するかもしれない。フィクションにしても上原はひどい。秘密を共有した看護婦が白血病で生命の危機。にもかかわらず、病院へ見舞いにも行かない。この作品に疑問点があるとすれば。ストーリーにいろいろ詰め込みすぎ。人があれだけ死ぬ必要があったのか?探偵が院長婦人の死について上原に話すのはおかしい。いくら多忙な大学教授でも、かつて勤務した病院の院長婦人については情報が入る。せっかく教授になった上原が終盤、家に侵入するのも解せない。脅迫者に大金を払い、手に入れた教授の座が危うくなるマネをするだろうか?医師がその気になれば、完全犯罪が可能。それをこの小説は証明して見せた。上に書いたように、結城の出身大学は千葉大。千葉大医学部と言えば、「チーム・バチスタの栄光」の海堂尊がいる。解剖がしにくい現状で、Ai(オートプシー・イメージング)普及を目指す海堂。同じ千葉大でなくても、海堂はこの作品を読んでいるはず。海堂の作品に、この小説が大きく影響しているのかもしれない。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.04.19
「荒ぶるをつかめ! 早稲田ラグビー主将たちの苦闘」を読んだ。 名門早稲田大学ラグビー部。常に勝つことが求められる集団にあって、主将として集団を引っ張る男たち。この本では左京泰明、山下大悟、大田尾竜彦、諸岡省吾、佐々木隆道、東条雄介、権丈太郎、豊田将万の歴代主将8人にスポットを当てた。「荒ぶる」というのは早稲田ラグビー部の部歌。この部には「北風」という部歌もあるが、「荒ぶる」には特別な意味がある。それは、大学日本一になった時にしか歌えないという不文律。部員が4年生の時、大学選手権で優勝できれば結婚式でも歌ってもらえる。「接近」「展開」「連続」で伝統のある早稲田。多くの日本代表選手も出してきた。だがこの本の冒頭部分を読めばわかるが凋落が激しかった。対抗戦で優勝できないばかりか中堅校に負ける。大学選手権でも1月2日の準決勝まで進めない。シーズンが年内で終了してしまうのは早稲田にとって恥。少なくとも清宮克幸が監督に就任する01年までこの傾向は止まらなかった。清宮が監督を引き受けた際、部員たちのスキルのなさに驚いたという。基本的なパスやキックが満足にできない。「伝統の縮小再生産」と揶揄されたこともあった。だが早稲田は復活した。惨敗が当たり前のように実力差がついてしまったライバルの関東学院。大学選手権で勝てるようになった。ジャージや練習着を契約による提供で得た。東伏見から上井草にグラウンドを移し、環境を整えた。だが環境だけで勝てるほどラグビーは甘くない。「勝つためのロードマップ」を清宮が示せたことは大きい。興味深かったのは主将の受け継ぎ。誰が次の代で主将となるのか。次年度の主将は前のシーズン、試合の結果を受け継ぐ。関東学院に勝ったのか負けたのか。前の主将からどういった言葉をかけられたのか。グラウンドで見えない部分を面白い人間ドラマとして読める。06年から清宮の後任監督は中竹竜二。自ら認める「カリスマのない男」中竹は、常勝集団に混乱をもたらした。選手たちに最短で勝つ方向を示せる清宮と違い、選手の自主性を重んじた。中竹は苦しんだろう。何しろ清宮の後任なのだから。それでも結果を出した中竹。ただ者ではなかった。清宮監督の時代、ミーティングに出られるのはA、Bチームのメンバーのみ。そのことが100人を超える大集団に溝を作ったこともあった。実際、多くの部員は早稲田の赤黒ジャージを着ることなく卒業する。それでも最後まで部員たちは赤黒を着るために努力する。それがどんなに小さな可能性であっても。「キャプテンはなぜ、CやDチームの試合を見ないのか?」そういった不平不満も出た。勝つためには少数精鋭にならざるを得ない部分がある。しかし部員がそのことで不満を持つのも当たり前。強豪といわれる部は、ラグビーに関係なくこの問題と直面しているはず。そして今、監督はSHだった辻高志に受け継がれた。この本では中竹の代までしか描かれていない。もうひとつ、気になったのが「ネセサリー・ロス」という言葉。「後の勝利のために必要な負け」という意味だ。ラグビーだけでなく、「ネセサリー・ロス」が必要な場合は多くある。覚えておいて損はない。今後、大学ラグビーはどう進むのか?中堅校だった帝京は実力をつけた。常に優勝争いできる組織に成長。またリーグ戦は不祥事から立ち直りを見せる関東学院。そして、日本代表選手を出すようになった東海大が優勝を狙う。少し残念だったのは、この本が後半急いでいたこと。大学選手権の結果が2行ほどで終わるのは物足りない。また、関東学院などに取材すればもっと奥行きが深くなっただろう。私にとって早稲田ラグビー部の監督といえば大西鐡之祐。早稲田はもちろん、日本代表監督にもなった。サインプレーの「カンペイ」は彼の時代に発案されたものだ。前にNHKで見た番組で、清宮が大西の自宅に行く場面があった。そこで見たのは「ラグビーを科学する」大西の記録。パスについて解析したノートを見て、清宮は驚いていた。「まだできることがたくさんある」ということを痛感したそうだ。海外の強豪にダイレクトフッキングやカンペイで対抗した大西。いつの日にか清宮も日本代表の監督となるに違いない。監督が大西なら、主将で思い出すのは永田隆憲。プロップとして早稲田の日本選手権優勝を支えた。大学のチームが日本選手権に勝つのはこの年が最後。地元九州電力に進んだが、日本代表のFWコーチとして迎えられる。永田が卒業したチームは苦戦した。長く明治の監督として早稲田のライバルだった北島忠治。彼は永田のいないチームを見て「やっぱりラグビーはプロップだ」と言った。最後にPR。今、全早慶明が行われている。早稲田の次の試合は18日午後2時から全明大と。場所は秩父宮ラグビー場。メンバーも以下のように発表されている。全早明戦出場メンバー(早稲田ラグビー部公式HP)全早慶明はOBを加えた混成チームで、「継承」が見られる。春のラグビーを見るのも面白い。***********************関連記事本:『荒ぶるをつかめ! 早稲田ラグビー主将たちの苦闘』 林健太郎『荒ぶるをつかめ!早稲田ラグビー主将たちの苦闘』『荒ぶるをつかめ!早稲田ラグビー主将たちの苦闘』(林健太郎) 「荒ぶるをつかめ!」読了 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.04.17
図書館で「ダーウィンと進化論」(丸善)を読んだ。 この本はジュニア(中学生)向けに書かれている。しかしその内容は深い。学校で進化論を教えるかどうか。その宗教が絡んだ裁判に見触れている。ビーグル号で1831年に航海へ出たダーウィン。彼は博物学者として多くの書物を残している。進化論という言葉は、ダーウィンが使っていたわけではない。彼は「自然選択による種の変形」と言っていた。(今では自然淘汰より中立進化説が正しいと考えられている)「ためしてみよう」のコーナーでは、ダーウィンの思想を現代で体験する。もし各コーナーを実際に試していたら。一冊読み終わるまで1日ではとても不可能。私はキリスト教の問題点として、この進化論があると考えている。以下のページにそのことについては書いた。天国はどこ?キリスト教を疑う進化論とインテリジェントデザインこの件については、いろいろな人がネット上で文章に残している。例えばこんな感じで。なぜキリスト教はダーウィンを非難するのか 「宗教は宗教、科学は科学」という割り切り方をしなければ。その宗教は廃れてしまうだろう。この本、内容が濃くて面白いのにアマゾンの書評がなかった。日本人が進化論について興味ないということなのか。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.03.19
図書館で「昭和少年SF大図鑑」を読んだ。 この本は、ある特定の年代にとってはとても懐かしい。思わず声を出してしまいそうになる。何といっても小松崎茂が素晴らしい。今見てもハリウッド映画で通用するんじゃないか。私と同じく声を出したい方は、このページを見るといいだろう。小松崎茂ミュージアムプラモデルの箱など、小松崎氏に世話になった人も多いはず。ウルトラマンシリーズの絵も描いていた。もうひとつ懐かしかったのがソノラマ文庫。「宇宙戦艦ヤマト」(石津嵐)や「クラッシャージョウ」(高千穂遙)はもちろん。「暁はただ銀色」(光瀬龍)の表紙を見た時にはさらに声が出た。当時からソノラマ文庫は「子ども向け」として低く評価されていた。だが海野十三の「地球盗難」など、今になれば手放したくない作品も多かった。(光瀬龍も海野十三から強い影響を受けている)「ブリキのおもちゃ博物館」の館長である北原照久。彼なんかこの「昭和少年SF大図鑑」を見て声を出している一人のはず。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.03.18
「イノセント・ゲリラの祝祭」をやっと手にした。今まで図書館で予約が多くて読めなかった。 この作品は、海堂による多くの作品と同様。「チーム・バチスタの栄光」の設定をそのまま取り入れている。舞台が桜宮市ではなく、霞ヶ関という点が少し違う。だが、田口と白鳥のペアはそのまま登場。「螺鈿迷宮」の碧翠院桜宮病院は火災で焼失。「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水はすでに北の地へ去った。東城大学付属病院は12階建ての新たな病棟建設真っ最中。そんな中、高階病院長の代役として東京での会議に出席する田口。その会議は「医療事故調査委員会創設検討会」。ここでは医療の現場が描かれることはない。会議室の中で語られるのみだ。海堂はここでも持論を展開する。それがAi(オートプシーイメージング)だ。日本の場合、人が死んでも解剖される確率は2%ほどしかない。多くが死因不明だ。医師は死亡診断書に「心不全」などとと記入し処理。医療事故が疑われる場合。遺体を解剖せずに火葬してしまうと真実が明らかにならない。そのことは遺族と同時に社会的なマイナスとなる。そこで出てくるのがAi。日本に多く存在するMRIやCTを使って死因を究明する。日本では遺体にメスを入れることを遺族は嫌がる。病院側も費用がかかる(1件約25万円と言われる)ので解剖したくない。Aiならば遺体も傷つかず、人件費を含めた費用も安く済む。日本ではすでに千葉大学(海堂の母校)や群馬大学で実現している。笑ったのが日光・月光菩薩と呼ばれる人の質問。彦根新吾に対して「右翼か左翼か?」と訊くのはナンセンス。今どき、そんな質問を会議でするわけがない。そんな質問は、もっと青臭い人たちが居酒屋でするもの。その後、彦根が演説する内容も荒唐無稽。せっかく現役医師が書く小説なのだから、もっとリアルにしてほしかった。海堂は彦根にこう言わせたかったのだろう。「医療という花に、欲にまみれた愚鈍な手で触るな」青島刑事ではないが、医療は会議室で提供しているわけではない。実際の現場は霞ヶ関から遠く離れている。医療裁判もまた、問題解決に役立つわけではない。ただ単に、司法としての判断を下すだけだ。ところで私にはわからないことがある。檜山シオンはどうして会議に参加しなかったのか?最初から彦根を代役に立てるにしても、やり方に納得できない。この作品を読んだ多くの人は、「極北クレイマー」を読むのだろう。「ジーン・ワルツ」で問題視された福島県立大野病院産科医逮捕事件がモデルになっている作品。「氷姫」こと姫宮も北に向かうため、今回の会議には関係しない。警察の動きも医師逮捕に向かっていて気になる。本作品や大野病院でも出てきて重要なのが医師法21条の問題。この問題を解説するスペースがないので、以下のリンクを参照されたし。医師法21条の歴史と矛盾医師法21条:「異状死体」の届け出義務について「異常死とは何か」という問題。これをいいかげんにしてきたことは、彦根でなくとも知っている。医療と司法の関係は、この問題を通じても語られるべき。また、イノセント・ゲリラは「東京都二十三区内外殺人事件」ともリンク。私は読んでいないが、田口が見つけた死体というのがその事件なのだろう。なお、この作品は文庫化された。上下巻各500円とハードカバーに比べて安い。 ***********************関連記事『イノセント・ゲリラの祝祭』 (著)海堂 尊【本】イノセント・ゲリラの祝祭海堂尊『イノセントゲリラの祝祭』「イノセント・ゲリラの祝祭」【本】海堂尊イノセント・ゲリラの祝祭<海堂尊>-(本:2009年読了)-イノセント・ゲリラの祝祭/海堂尊 「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊イノセント・ゲリラの祝祭「イノセント・ゲリラの祝祭」 海堂尊***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.02.17
この本を、偶然公共施設で見つけた。読んでみるととても興味深いことが書かれている。 この新書は3人によって書かれている。「ヒバクシャ 世界の終わりに」の鎌仲ひとみ氏。「花はんめ」の金聖雄氏。「にがい涙の大地から」の海南友子氏。ドキュメンタリーを制作した監督3人。テレビとの違いやタブー。製作での苦労話などが中心になっている。「ヒバクシャ 世界の終わりに」は各国のヒバクシャについて。イラクでは劣化ウラン弾による被害が出ている。アメリカでも原爆開発のマンハッタン計画で放射線被害が出た。日本では広島と長崎の原爆投下で、影響が今も残っている。この件で、久々に肥田舜太郎医師の名前を見つけた。肥田氏は1917年生まれの内科医。自身も広島で被爆した。肥田氏の紹介と考えについては、このページが詳しい。58年間ヒバクシャを診てきたなぜカタカナで「ヒバクシャ」と書くか。それは、ヒバクが「被爆」と「被曝」の二つの意味を持つから。外部からの「被爆」と内部からの「被曝」。この危険性については、今でもわからないことが多い。「低線量被曝」という言葉がある。「微量の放射線だから心配ない」ということが、果たして本当なのか。肥田氏はその危険性を訴える。核兵器と原発。「核の平和利用」という言葉に、どれだけの人が騙されているのか。この件に疑問を持っている必要がある。鎌仲ひとみ氏が注目する原子力発電。日本では六ヶ所村での再処理が問題だ。この件については私も何回か記事にした。JCO臨界事故から10年MUMOは新聞広告にいくら使う? 再処理工場トラブルで「里程標」越年私が記事を書くことで、一人でも原子力に目を向けたらいい。実際、「科学の粋を集めた」原子力の実態はお寒いものだ。「花はんめ」は朝鮮半島から来た在日を描いた映画。この映画は老いた在日の死までも映像として残したという。「にがい涙の大地から」は中国に残された旧日本軍の兵器について。化学兵器などで、多くの中国人が被害を受けているという。読んでいても気分が悪くなる表現があり、日本人としては見過ごせない。ドキュメンタリーは市民メディア。映画を公民館などで上映した場合、一度に見る人数は150人くらい。数万人が見るテレビと比較すれば、その規模はとても小さい。しかし、テレビには天皇制などタブーとされる問題がある。ドキュメンタリーは、テレビが流せない問題も鋭く切り込むことができる。また、テレビの番組製作現場では分業制が恐ろしいほど進んでいる。そのため、焦点がぼけてしまったりすることがある。演出と「やらせ」の問題も、テレビの弊害として残る。この本は、多くの人に読んでほしい。それは、自分の知らない世界があることを教えてくれるから。この本を読んで、3本のドキュメンタリー映画を見たくなった。***********************関連記事[book]『ドキュメンタリーの力』 ***********************※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.02.17
海堂尊「ジェネラル・ルージュの伝説」を読んだ。 「チーム・バチスタの栄光」で術中死解明に挑んだ田口。田口の同期で救命医の速水晃一。彼がいかにして東城デパート火災の現場で奮闘したか。それをこの本は描いている。時代背景としては「ブラックペアン1988」の後。だが後に病院長から学長になる高階権太は登場しない。水落冴子や花房美和は登場するが、田口は活躍の場がない。何しろ血を見て外科の世界を諦めた男なのだから(笑)。「ジェネラル・ルージュの凱旋」を読んだ人なら結果を知っている。やはり、というか修羅場で活躍したのが「眠り猫」こと猫田。速水に対してこんなセリフを残している。「あんたは飛べないイカロス。だけど人間なんてみんなそう」「諦めなければいつかは神になれる瞬間が訪れるものよ」「長い年月の果て、あなたはきっと誰よりも神の座の近くまで昇り詰めるわ」(太字部分、本文から引用)今まで怖いものなしだった速水。怖さを知ったことで医師として成長した。海堂の桜宮ワールドは今後も続くだろう。気になったのは以下の点。「医局長となった世良のその後」世良には今後、活躍の場が与えられるのだろうか?(追記 その後世良は「極北クレイマー」で登場)「事実が小説に追いつく」「極北クレイマー」では財政危機の自治体、夕張がモデル。「ジーン・ワルツ」とともに福島県立大野病院産科医逮捕事件が土台となっている。海堂の中では「医学のたまご」→「ジーン・ワルツ」の順。読むのなら、この順にしてほしいとのこと。海堂といえば欠かせないのがAi。相撲部屋での暴行死事件など、その活躍する場所は大きい。知らなかったのが海堂のブログで訴訟が起きていたこと。詳しくは以下の記事に出ている。海堂尊、「死亡時画像診断」の文章が名誉毀損と提訴される※この訴訟については一審で海堂氏側の敗訴。110万円の賠償を命じられた。現在控訴審が続いている。この本は後半部分が桜宮ワールドの設定解説となっている。登場人物一覧や簡単な医学用語辞典も付いている。コアな海堂ファンには興味深い本かも。登場人物と言えば、海堂は小説の足りない部分を人物でカバーする。例えば「ジーン・ワルツ」の清川。彼の登場により、物語の幅が広がった。「チーム・バチスタの栄光」でもそれは同じ。高階から調査を命じられた田口は素人らしくすぐに行き詰る。そこで必要になるのが白鳥の登場。なるほど、海堂がいかにして小説を書いているか。それが思い浮かぶ。※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。
2010.02.08
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