りゅうちゃんミストラル

りゅうちゃんミストラル

2010.06.07
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カテゴリ: 読書




この物語は誰を対象にしているのか。
子ども?それとも大人?
私が読んだハードカバー(大島かおり翻訳)には「5、6年生以上」とある。

モモを取り逃がした灰色の男たちが「斟酌」という言葉を使う。
「不倶戴天の敵」という言葉も出てくる。
ルビがあり、国語辞典で調べるということを考えても易しくはない。

つまり、この物語は大人のためのもの。
私はそう考える。

廃墟となった円形の劇場跡にすむ浮浪児。
それが主人公のモモ。
彼女には人の話を聞くという特技があった。
聞くだけではなく、モモに向かって話した相手は何かを解決する。
そうした不思議な力がモモにはあった。

そんな彼女の周りには、多くの人が集まった。
子どもも大人も。

だが、灰色の男たちによりそうした状況は大きく変わる。
時間を節約するということに目の色を変え始めた人々。
子どもたちはそんな大人から突き放される。
モモのところに来て泣く子どもたち。

何かが狂った世界を元に取り戻す。
そのためにモモができることは何か。

時間は不公平にできている?
それとも時間だけは公平に流れている?
人によって考え方は違う。

私はこの物語を読んでいる際でも時間に流れがあると認識できた。
最初の40ページほどは読むのに時間がかかった。
だが灰色の男たちが出現してからは、読むスピードが上がった。
時間の流れが変わるのを実感できた。

この作品は挿絵までエンデ本人によるもの。
今後も世界中で読まれるに違いない。

何しろエンデが皮肉をこめて描く世界は現代に通じるものだから。
しかも多くの国や地域で似た状況は起きている。

物語の中に、トランジスターラジオを持つ子が出てくる。
「高価なものをもらう」ことが愛情だとその子は言う。
だが実際は違うということを子どもたちは知っていた。

今の日本で言えば、トランジスターラジオは携帯電話になるのだろうか。
それともPC?ゲーム機?

灰色の男たちに時間を奪われた人々。
ある人は、無駄を省くことを「洗練」と呼ぶ。
例えば鉄道の自動改札。
入鋏による鉄道職員の腱鞘炎は防ぐことができた。
鉄道会社も人件費削減が可能となった。
しかしその一方で人と人との接点が減った。

便利なものは何かを得るのに必要。
しかしその反面、何か失っているものがある。
現代人は何を失っているのだろうか?

作者の ミヒャエル・エンデ はドイツ人。
1929年に生まれ、95年に亡くなっている。
この「モモ」は72年の作品。

この作品を読んでいて感じたのは、 エーリッヒ・ケストナー のこと。
「エミールと探偵たち」「飛ぶ教室」。
そして「ふたりのロッテ」で世界中に知られている。

上で書いた、大人から突き放された子が泣く場面。
私は「ふたりのロッテ」を思い出した。
クリスマスや誕生日のプレゼントよりも家族が一緒にいることの大事さ。
それをケストナーは皮肉をこめて書いた。

物語の終盤、モモがベッポを再会する場面。
泣いては笑い、笑っては泣くというのはまさに「ふたりのロッテ」そのままだ。

エンデはケストナーより後の時代に活躍した人物。
だがケストナーの流れを取り入れている。
そう考えるのは私だけだろうか?

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ミヒャエル・エンデ「モモ」岩波少年文庫(1973年)

↑「格言」「時間」など、要点を抜き出している。
その抜粋するセンスが私と似ている。
ネットはこうしたページをすぐに探せる。
便利な世の中になったものだ。
だがその便利な裏で、何かを失っているかもしれない。
この便利さに潜むものが、灰色の男たちの陰謀でないとどうして言えるだろう。

「モモ」ミヒャエル・エンデ著(大島かおり訳)岩波書店

超名作ファンタジー 『モモ』ミヒャエル・エンデ

「モモ」ミヒャエル・エンデ

ミヒャエル・エンデ 「モモ」

人生と時間について~ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)の『モモ』に思う~

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最終更新日  2010.06.10 19:46:09


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