朝日新聞朝刊 2015年4月14日。「患者を生きる」シリーズで林家木久扇(木久蔵)さんの闘病記がスタートしました。
木久扇さんは、昨年6月に声が枯れて異変に気が付きます。
木久扇さんは、7月上旬に検査を受けます。これもちょうど私が生検を受けたころです。
日本テレビ系の長寿番組「笑点」の大喜利。40年以上レギュラーを務める古参メンバーの1人だ。
東京・日本橋の雑貨問屋に生まれた。初めは漫画家を志した。指導を受けた漫画家の紹介で1960年に落語の道に入った。72年、林家木久蔵(きくぞう)として真打ちに昇進。「木久蔵ラーメン」を商品化するなど、事業も手がけた。
二代目木久蔵を襲名した長男の宏寿(ひろとし)さん(39)ら10人の弟子を抱える。「毎日しゃべっていないとだめ。笑点も寄席も、お風呂に入ったり歯を磨いたりするのと同じくらい欠かせないもの」
そんな木久扇さんに昨年6月ごろ、異変が起きた。商売道具の「のど」だった。寄席の高座で話し始めても、終わる頃には声がかれた。「コホンコホン」。かすれたような空せきも出るようになった。風邪薬を飲んでも、良くならなかった。
7月初め、笑点の収録日。急きょ隣に座る三遊亭好楽(さんゆうていこうらく)さんに、ネタを耳打ちし、代わりに話してもらうことにした。見慣れぬ演出に客席からは笑いが起きる。
司会の桂歌丸(かつらうたまる)さんも「木久(きく)ちゃんにも助手がつくようになっちゃった」とちゃかして盛り上げた。でも、もどかしくてたまらなかった。「なぜ、声が出ないんだ?」
7月上旬、以前に胃がんの手術を受けた東京慈恵会医科大病院(東京都港区)を受診した。検査の結果、「喉頭(こうとう)がんが強く疑われます」と、耳鼻咽喉(いんこう)科客員教授の加藤孝邦(かとうたかくに)さん(66)が言った。
喉頭はのどの一部で、舌の付け根から気管までの部分。左右一対の声帯があり、空気で振動することで声が出る。内視鏡で撮った写真には、声帯がある声門付近に白いものが写っていた。大きさは1センチほどで、悪性腫瘍(しゅよう)の疑いがあるという。
「これっぽっちのものが、がんなのか」。真っ先に浮かんだのは仕事のこと。いくら名が売れても保障はない商売だ。「笑点の座布団も寄席の出番も、他の人にとられてしまうんじゃないか」。焦りと不安が駆け巡った。
復帰後は高座でも闘病体験を話題にする=3月、東京都渋谷区

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