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除夜の鐘が聞こえてきました。今年も本当にあとわずか。 この一年もたくさんのすばらしい本と出会え、たくさんのすばらしい方々と出会えたよい一年でした。来年もそうであってほしいと思います。 みなさんにとって新しい年がよい年でありますように。 この一年、本当にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。 それでは、よいお年を!
2009.12.31
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「24時間、365日対応」。これが本庄病院の理念。変人で通っている内科医・栗原一止はこの理念の下、時には数日眠らずに勤務する。夏目漱石を敬愛し、優しい細君を愛する青年医師は、「御嶽荘」の友人たちや病院のスタッフ、そして患者たちに囲まれて今日も診察に当たる・・・ 第10回小学館文庫小説賞受賞作。 いわゆる病院のドキュメンタリー、例えば救急医療や末期医療の実態、医師の過酷な実態のような要素もありますが、中心になっているのは医師の理想像と一止を囲む人々との交流ではないでしょうか。 古めかしい口調からしてちょっと変わり者の一止。でも、こんなお医者さんがいるならいいなあと思わされます。医者ですから積極的に掛かりたいとは思いませんが、掛かるなら彼がいいなと。なにしろ患者との接し方があたたかいのです。末期癌に侵され余命幾許もない安曇さんとの時間の過ごし方など、その際たるものでしょう。無論、一止の姿は理想であって、実際の医療現場ではこんなことできないのでしょうけれど。これでいいのかと真剣に悩むあたりも一止の魅力かもしれません。 時には、医療現場の厳しい現実を突きつけられるような場面もあります。それも一止の漱石のような口調とユーモアがオブラートに包んでくれます。 一止を支えるハル(榛名)もまたやさしくあたたかく、そしてキュートな女性でした。こういう夫婦関係は本当に理想でしょうね。仕事の関係上、会えない日が続くのは難点かも知れませんが。 本庄病院での一止は、同期の砂山、良き理解者である大狸先生、古狐先生、信頼できる看護師の東西など、周囲の人物に恵まれています。また、おんぼろ下宿の「御嶽荘」には男爵や学士殿のような友人もいます。彼らとの関係もひとつの理想かもしれません。 あたたかさとやさしさに満ち溢れた理想の一冊。いまさらですがオススメします。2009年12月16日読了
2009.12.18
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20歳の大学生佐々木ましろには特殊な能力がある。それは他人の殺気を感知する能力。周囲に殺気を持った人間がいると、強い不快感があるのだ。ある日、ましろのバイト先に強盗がやってきた。彼女の能力と勇敢な態度で難を逃れたが、それをきっかけに彼女の過去を調べることに・・・ 『栄光一途』『白銀を踏み荒らせ』に出ていた佐々木深紅がこちらにも登場するということで読んでみました。主人公佐々木ましろは彼女の従妹です。 雫井さんの作品らしく、とても読みやすい作品でした。するするっと頭の中に入ってくる感じです。ただ、それだけにストーリーもするすると流れていくようで引っ掛かりがなく、正直なところ強い印象を残すものではありませんでした。 物語は、ましろが感知する殺気と彼女の過去を中心に動いていきます。ただし、ましろが殺気を感じるときは何かしらの事件が起きるとき。ゆえに、大小さまざまな出来事が頻発します。加えて、彼女の能力の原因になったと考えられる過去の連れ去り事件などもあります。いろいろありすぎて、ちょっと詰め込みすぎではないかと。事件が連続することでストーリー上にいまいちメリハリが感じられず、残念でした。そういった出来事を越えていく友情の強さが見られたのはよかったです。 登場人物たちは今回もとても生き生きとしていて、読んでいて好感が持てます。主人公であるましろはもちろんですが、その友人たちをはじめとして一癖あっておもしろい人物たちがそろっています。中でもやはり深紅のキャラクターは強烈です。作者にとっても、使い勝手がいいのかもしれません。あのマイペースぶりはすごい人物です。 殺気を感知するというましろの設定はなかなかおもしろく、また違った形でも使えそうな気がします。今度はもうひと工夫された物語で彼女たちが登場してくれたらうれしいです。2009年12月14日読了
2009.12.17
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小伝馬町のマンションで独り暮らしの女性が絞殺された。引っ越してきて日が浅い彼女は、なぜ殺されたのか? 殺したのは誰なのか? 練馬署から日本橋署に移ったばかりの加賀恭一郎が、古きよき日本がいまだ息づく人形町界隈を歩き、少しずつ真相に近づいていく・・・ 週刊文春のミステリーベスト10第一位を獲得した、2009年を代表するミステリ。このシリーズにハズレはないようです。 9つの章に分けられた長編ですが、実際は各章がそれぞれ短編の連作短編集のような形態。各章で章題になった店での問題を加賀が解決に導くとともに、一歩ずつ真相に近づいていきます。ただし、加賀の捜査は非常に地味で、なかなか真相へ向かっているようには見えません。エピソードの中には事件とはまったく関係なさそうなものもあります。でも、あの聞き込み、あの会話のひとつひとつがなければ、犯人には到達しないのです。前半の事件と全然関係がなさそうな部分が、やがて真相へと繋がっていく様は圧巻としか言いようがありません。構成力の勝利。 事件の真相にたどり着いたときに見えるものは決して大きくはありません。意外なほどです。それを大きなものに見せる、あるいは膨らめる。この技術が巧みなのです。 初出一覧を見ると、「瀬戸物屋の嫁」と「時計屋の犬」との間に二年以上の期間がありますが、この間に何かあったのか気になります。全体の構築に時間がかかったのでしょうか、それとも他の仕事が忙しかったのでしょうか。 事件とは別に、それぞれのエピソードが人形町の風景だけではなく、気質や人情までも描き出しているようで、見方によっては日本橋人形町最高のガイドブックだったかもしれません。触発されたのか、加賀刑事も今までになく人情味があったように思えます。 加賀刑事の推理が鋭すぎるのが玉に瑕ですが、そんなこと忘れてしまうくらい引き込まれた作品でした。関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『嘘をもうひとつだけ』2009年12月7日読了
2009.12.09
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フミは大陸へ渡った。吉原のお職だったという母に憧れ大陸一の女郎を夢みたフミは、12歳で人買いについて行ったのだ。未だ幼いフミは、哈爾濱の女郎屋「酔芙蓉」でとりあえず下働きからはじめることに。幼き頃から辻芸人としての生活の糧であった角兵衛獅子が、彼女の運命を左右する。明治末期のこと・・・ ガールズ大河小説! 適切かつ巧みな表現です。まだはじまりの部分だけなのかもしれませんが、これはとてもおもしろい作品でした。続きが読みたくなります。 舞台は哈爾濱(ハルビン)にある女郎屋「酔芙蓉」。客を含めた「酔芙蓉」を取り巻く人々の人間模様が描かれます。その中でもメインになるのは、女郎になりたいフミとなりたくないタエ。異なる思いを持つふたりの少女の友情が素晴らしい。互いの夢のために協力するあたりもほほえましいのですが、なんといってもタエの水揚げの日のエピソードでしょう。いざとなったときのタエの度胸とお姉さんぶりには感心するばかり。 一方のフミは気持ちの強さがよく出ていて、中でも黒谷に対して啖呵を切ったシーンはもっとも彼女らしいような気がします。もちろん、躍動感あふれる舞もよかったです。 さて、フミとタエが互いの夢を追う「酔芙蓉」でのストーリーとともに、哈爾濱に渡った直後に出会った山村との物語ももうひとつの柱。果たしてふたりは再会するのか否かというところ。最終的にこういう結果でよかったのではないでしょうか。 あえて残念だったところを挙げるならば、中間がすっぽりと抜け落ちているところ。きっとフミやタエにとって欠かせない出来事がたくさんあったはず。その辺も読めたらよかったかなあ。 とにかく、満足させてくれるおもしろさのガールズ大河小説。まだまだ先に続くはずなので早く読みたいです。2009年12月3日読了
2009.12.08
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廃部の危機にある吹奏楽部。チカは変わり者の幼なじみハルタや、憧れの顧問草壁とともに部員集めに奔走し、幾人かの部員を集めることに成功した。目指すは吹奏楽部の甲子園「普門館」。だが、ふたりの周りには新たな部員よりも、不可解な謎が集まってくる・・・ 『退出ゲーム』に続くシリーズ第二弾。今回もキャラが立った青春ミステリでした。●「スプリングラフィ」 職員室に鍵がない。だが音楽室の鍵はかかっている。職員室に戻ると鍵は戻されている。いったい誰とすれ違いに・・・どんなに才能があったり努力したりしても、どうにもならないこともある。そうわかっていてもあきらめずにいたい。もちろん、簡単にできることではありませんが。チカにも芹澤さんにもがんばってほしい。●「周波数は77.4MHz」 勉強の合間にチカは「FMはごろも」を聞いている。ある日、チカは吹奏楽部の予算のために生徒会からの交換条件を呑んだ・・・事情を知ってしまうと、麻生美里の心配りがうれしいです。結末への持って行き方がうまい。●「アスモデウスの視線」 草壁先生が過労で倒れた。顧問が謹慎になった他校からのヘルプを受けたためだ。謹慎の謎を解く鍵は一ヶ月に三度の席替え・・・ゴリラのような外見からは想像できない堺先生の心。席替えが三度というのだけでもおもしろいですが、その並び方がまた興味を誘います。●「初恋ソムリエ」 初恋ソムリエを名乗る初恋研究会の朝霧。芹澤は叔母と彼が会うことを阻止しようと、チカとハルタに泣きついてきた・・・叶わなかった初恋なんて、思い出だからこそいいに決まっています。ましてや、今回はその裏にあったこと。やはり、知らなかったほうがよい気がするのです。 『退出ゲーム』が吹奏楽部を舞台にしながら理系トリックに走ったことと比較すると、今回の『初恋ソムリエ』はややミステリ的な弱さを持っているかもしれません。ただし、決めにかかったときの切れ味は抜群。特に「アスモデウスの視線」における席替えにまつわる興味深い謎とその真相は目を引きます。また、表題作「初恋ソムリエ」は、『退出ゲーム』でも見られた社会派的な要素を色濃く見せている作品。そのあたりが絡むことは登場人物たちの呼び名からも想像できることですが、しっかりときれいに本筋と関連付けられています。 チカやハルタにとっては「目指せ、普門館」なのですが、それよりも謎の方が積極的に手招きしてくれそう。普門館はまだまだ遠いようです。収録作:「スプリングラフィ」「周波数は77.4MHz」「アスモデウスの視線」「初恋ソムリエ」関連作:『退出ゲーム』2009年11月28日読了
2009.12.08
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人気作家の日高邦彦が自宅で殺害された。発見したのは日高の妻理恵と友人で童話作家の野々口修だった。捜査にあたった加賀は事件に違和感を覚え、些細なことからトリックを見破り犯人を逮捕する。だが、事件の真相は想像を絶するものだった・・・ これまたかなり複雑な作品。加賀刑事のパートと野々口の手記が交互になった構成も物語を複雑にしているのですが、それ以上に影響しているのが犯人の仕掛けたトリック。とにかく微細に至るまで徹底しています。もうこれは犯人の執念としか言いようがないほど。ここに細かい点まで詳らかにできないことが残念です。ただひとつ言えるとすれば、それはミスディレクションが積み重ねられた作品だということ。見事なほどに鮮やかに読者を裏切ってくれます。 また、執念といえば加賀刑事の執念もまた素晴らしい。犯人はわかっても動機がわからないという一点に疑問を持ち、そこから事件の全容を解明していく執念。これは犯人と加賀刑事の頭脳合戦なのです。 ということで、見どころは加賀刑事が犯人を逮捕するに至る前半よりも、逮捕した犯人についてただひたすらに調べ、動機を追究していく後半ということになります。どんなものなのか、それはぜひ読んでほしいのです。最後まで読み終えたとき、少し前に読んでいた前半はガラガラと音を立てて崩れていくはず。おそらく一見の読者には受けないのではないかと危惧するのですが、それでも東野さんの傑作のひとつでしょう。関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ』2009年11月21日読了
2009.12.04
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バレエ団の事務所で、侵入した男がひとりの団員によって殺された。当然、正当防衛を主張するのだが、それが証明される前にバレエ団で次の事件が。事件を担当する刑事・加賀恭一郎は、捜査に関わる中でダンサーのひとり浅岡未緒に惹かれていく・・・ 加賀恭一郎、刑事になる。『卒業 雪月花殺人ゲーム』で卒業間近の大学生として登場した彼が、なんと刑事として再登場。加賀恭一郎シリーズ第二作。 読んでいると、まずダンサーたちのあまりにもストイックな生き様に注目が行きます。精神的にも肉体的にも自分を追いつめていく姿には頭が下がります。ただし、事件はバレエ団内の表に見えない複雑な人間関係とその生き様によって、加賀刑事を真相から遠ざけようとするのです。だからこそ、真相に手が届いたときには、悲しく切ない気分にさせるのでしょう。その理由はこれだけではないでしょうが。 さて、この作品はミステリとしてだけでなく、恋愛小説としてもまた読者をひきつけます。事件の関係者であるダンサー浅岡未緒に、加賀はどんどん惹かれていくのです。その姿はまるで少年のよう。学生時代の彼の姿からは、ちょっと想像しにくいかも。話の中で沙都子らしき女性のことも話題になりますが、加賀は彼女のことはもう吹っ切れたようですね。 事件の真相は『卒業』に続いてこちらも悲しく、切ないものでした。この動機がなんとも言えません。関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ』2009年11月19日読了
2009.12.03
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就職を間近に控えた大学四年の秋、同級生の祥子がアパートで遺体となって発見された。彼女の死は加賀たち仲間を悲しませるとともに、疑問を残した。彼女は自殺なのか、他殺なのか。その疑問が解ける前に、次なる悲劇が彼らを襲う・・・ 加賀恭一郎初登場。後に刑事となる彼も、この段階ではまだ大学生でした。『嘘をもうひとつだけ』を読んだときもこんな感じの人だったかなあ。なんとなくイメージが違う気もします。 加賀が事件の真相究明に乗り出すきっかけになったのはもちろん祥子の死なのですが、そちらよりもむしろ第二の事件のほうが目を惹きました。まさかあんな複雑なものを使うなんて。読んでいるほうは理解するのもなかなか難しいかもしれません。わかりやすくするために図も入れてくれているのですが、それでもやっぱり難しいのです。 もちろん、この事件だけでなく最初の祥子の死も捻りの効いたもの。そして、こちらもまた悲しさ、やりきれなさが残ります。 真相は悲しく、そしてさびしいものでした。でも、これこそが本当の卒業なのかもしれません。近すぎる、仲の良すぎる関係というのも、それが壊れたときが悲劇ですね。 余談ですが、加賀たちの大学生活にちょっとした親近感を覚えました。もう二十年以上前の作品ですから、今の大学生たちから見たら随分古臭いことでしょう。僕は彼らよりもむしろ加賀よりの世代なので、懐かしいというほどではなくてもよくわかる気がします。祥子や波香が住んでいた『白鷺荘』ようなアパート、今はもう少ないのでしょうね。 最近の東野本格は、「ガリレオ」のためかやたらと理系的な印象を持っていたのですが、これはストレートな本格推理でした。関連作:『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ』2009年11月17日読了
2009.12.02
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