2014年11月02日
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カテゴリ: OPERA
Orchard hall.jpg


プッチーニ「ラ・ボエーム」

2014/11/2(日)
東京・渋谷・Bunkamuraオーチャードホール

総監督:岡山廣幸
指揮:沼尻竜典
演出:岩田達宗

ミミ:砂川涼子(11/2)
ロドルフォ:村上敏明(11/2)

マルチェッロ:須藤慎吾(11/2)
ショナール:柴山昌宣(11/2)
コッリーネ:伊藤貴之(11/2)
ベノア:折江忠道
アルチンドロ:柿沼伸美
パルピニョール:岡坂弘毅

合唱:藤原歌劇団合唱部  
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

***

沼尻さんの「ラ・ボエーム」も素晴らしかった‼︎

彼の世界観はスゴイ!
音楽の甘さを余すところなく伝える空気感。
大きく手を旋回しながらオケと歌手を牽引する。見事なシンガーズコンダクター
先ほどのルイージのマクベスは歌手に引きずられてソロ歌唱がテンポ遅かっただけにさすがと思った。

歌手もソリスト全員すばらしい出来。


ミミの砂川さんすばらしい歌唱。見かけも演技もミミそのままの病弱で内気で可憐な雰囲気でピッタリ。それでいて歌唱はミミに必要なパワーと負けん気に溢れている。

瞠目すべきは今回藤原本公演デビューというムゼッタの伊藤晴さん。ものすごい歌唱だった。小悪魔のような雰囲気でクリクリお目目を見開いて自分の感情を素直に表現するムゼッタそのもの。大拍手をもらっていた。

そしてオペラはテノールがHigh Cを決めればそれだけでもうOKと言っても良いでしょう。
ロドルフォの村上さん 高い声がリリコ・スピントの響きを持つ強靭なテノールで 全ての 高音を決めMAX歌唱という見事な歌いっぷり。
スペランザとアモールでHigh C‼︎ さすが藤原のトップという安定感でした。

***
1幕のロドルフォのアリア
Che gelida manina!
の speranza! の部分ですが
オプショナルとしてHigh C がスコアに書かれています
プッチーニは歌えるテノールには歌ってねとHigh Cを書いているんですね?
また
1幕の幕切れの amor は
ソプラノは ラ→ド(High C)
ですがテノールは ファ→ミ
です
ここでテノールがソプラノと同じ音程(High C)を出すのはやはり慣例なのでしょうね?
***

須藤さんのマルチェッロは夏にすでにお聴きしました がやはりすばらしい芯のある強い声でまた聴けて幸せでした。

バスの伊藤さん 美しい温かみのあるリリックバスで良かったです。

柴山先生もヒュージヴォイスで素晴らしかったです。

岩田演出は伝統版の演出そのままの世界。

1幕は大きな天窓があり
ロドルフォたちの屋根裏部屋。
しもてに入り口

このロドルフォはお坊ちゃんで
優しくどこかひ弱で駄々っ子みたいな側面がある

マルチェッロとは正反対
このマルチェッロは常に世間と戦おうとしているかのごとく肩に力が入っている

だから何かあった時ミミが頼りにするのはマルチェッロ

ムゼッタはとても若く、やはりマルチェッロに似ていて野性動物のようなたくましさがある
街の人々に揶揄されても平気。
私は私なんだから
そういう天衣無縫タイプ

でもなんと3幕の幕切れ
最後に舞台に立っていたのはミミではなくムゼッタなのだった

背後に巨大なサクレ・クール寺院が浮かび上がる風景
その景色を見上げ
マルチェッロに Strega! と罵倒されてショックを受けて佇んでいるその寂しさの描き方が
なんかすさまじかった
セットはすべて絵画っぽい作りなんです

2幕のカフェモミュスは二階建てになっていて豪華感がある

音楽面では
以前プッチーニはムゼッタがスカートをめくる音楽も書いたんだ!
と気付いたが
きょうのはスカートはめくらないヴァージョンだった
その代わりに気付いたのは1幕で気を失ったミミを介抱するためロドルフォが水差しの水を振りかける時
その振りかける音をプッチーニは書いたんだ!
と気付きました

そしてライトモチーフはプッチーニも使っていて

4幕でムゼッタが入ってくる前にはムゼッタのテーマがオーボエかクラリネットかで語られていた。

もっともっと沼尻マジックを聴きたいなあと思いました。
ラ・ボエームは若き青春群像。
若過ぎる彼らにはあまりにも早過ぎる
ミミの若い死は…

***
始まる前、幕が閉じているのに「エウレカ!」と歌うテノールの声が再三聴こえる。私は相当後ろの方にいたのに!さすがです。フランチェスコ・メーリもミヒャエル・フォッレも始まる前から幕裏で声出しする声がよく聴こえてきます。特にテノールは大事。

1幕
ロドルフォたちの部屋
しもてで派手なアクションで絵画と格闘するマルチェッロ
一方のロドルフォは毛布をすっぽりかぶってどこにいるのかわからない。
(これは夏の高円寺の岩田演出でもありました)
寒いのでロドルフォの台本を燃やす
コッリーネやショナールが帰ってきてドタバタ騒動
皆が出かける
ロドルフォひとり
トン、トントン
まるで付点四分音符と八分音符2つ連続みたいな戸の叩き方に楽譜があるのかと思ってしまう
誰?
すみません…
女だ!
ミミが入ってくる
気を失う
ロドルフォはほんとに困った風に
そして水差しの水を音楽に合わせて振りかける
この瞬間ぱあっと覚醒した
さすが沼尻さん
ミミの存在感が素晴らしくて急に舞台に色彩が宿ったかのよう
鍵をなくしたわ!
暗闇の中
ロドルフォはミミばかり見ている
鍵を見つけてしまう
あったの?
いや…
探してください
探してます
ロドルフォは床につかれたミミの右手をガン見している
あっ!
なんて冷たい手なんだ…
ロドルフォのアリアは抜群にすばらしく
声量も十分
派手な最高音も華麗に思いっきり伸ばしてくれる
これでこそプリモテノール
大拍手。
そしてミミも圧巻の歌唱
大拍手
仲間に冷やかされるロドルフォ
O soave fanciulla
二重唱は圧巻
二人は身を寄せ合って出ていく
幕袖で歌う
2人ともHigh C でしめました
感動
沼尻さんの音楽が終わらないうちに拍手がわいてしまったのは残念。

2幕

人びとで埋め尽くされている
ミミはロドルフォにボンネットを買ってもらうが今度首飾りも買ってあげると言うと
ミミは本気にしてロドルフォに抱きつく

テーブルに陣取るボエミアンの前で仁王立ちしているボーイ
どやされて飛び上がる
(これは夏の高円寺のボエームでもありました)
ミミを紹介する
マルチェッロは機嫌が悪い

メニューを決める
ミミはクリームスープを

しもてではパルピニョール
すごく立つ独特の声でした

ムゼッタが現れる
年寄りのアルチンドロを飼い犬扱い
人びとは楽しんでる
ムゼッタはマルチェッロにいじわる攻撃を開始する
皿を割る
誰にしゃべってるんだ?
私が街を歩くと
すっごい迫力です
すばらしい!
ムゼッタがきゃあああああっっっ!と叫ぶ
どした?
痛いの
どこが?
あああああ
足よ
男たちが靴を脱がそうと足もとに殺到する
いつもこのシーンはなぜか笑える
マルチェッロはかみてで喜びの歌唱
マルチェッロ!
シレーナ!

鼓笛隊を見る人々
ボエミアンたちはさっさとしもてへ
マルチェッロとムゼッタの熱い抱擁に
ショナールはあてられた振り

3幕

女たちが通り過ぎる
すれ違うミミを振り返る
大丈夫かしら…?
関係ないから行こう!
女たちがしもての通路(特設)から出ていく
ミミは税官兵に聞く
煙草女にマルチェッロを呼び出してほしいと頼む
煙草女は最初手を振って断るが真剣なミミにほだされる
マルチェッロが出てきてミミを探す
もう私たちダメなの
ここのマルチェッロとのやりとりは大好きな部分。
ミミの絶唱が開始される
すばらしい迫力
大拍手

マルチェッロを探してロドルフォが出てくる
ミミがしもての馬車?の影に隠れる
ロドルフォは苦しい思いを吐露する
ミミは温室の花だ
ミミの死を予感しているような
ミミが走り出てくる
ムゼッタの嬌声が響く
これが半端なくすごいです
ほんとにこれはびっくりでした。すばらしい!
マルチェッロも怒りモードに火がつく
ロドルフォとミミのすばらしい二重唱
罵り合うマルチェッロたちと加わっての四重唱
ステージの端と端ですごい
4人ともすごくてうまいので見事でしたわ~~
ムゼッタが瞠目でした
マルチェッロに鬼婆!と言われそこに立ちつくすムゼッタ
ロドルフォたちが穏やかに去っていくのに
ムゼッタはそこから立ち去ることすらできない

4幕
大好きな冒頭の二重唱
すばらしい!

4人で
どんちゃん騒ぎ
ムゼッタ
ミミが!
歩けないの
階段の途中で

ミミ入ってくる

彼のところで死にたいって…

しっ!

マルチェッロ

ミミが呼ぶ

マルチェッロが近づく

コッリーネとショナールも呼ばれて枕元へ

しかしマルチェッロだけはミミの運命が悔しくて悔しくてたまらずそばに寄れない

マルチェッロ、ムゼッタはいい人よ

わかっているとも!

マルチェッロはムゼッタを見る
ムゼッタと目が合う
近寄る
ムゼッタはお金を渡して買い物に行こうと
2人で出ていく

外套の歌
超美声だわ~~~♪

皆が気を使って部屋を出ていき
2人きりになった時
ロドルフォは反対を向いているが
寝ていたミミが起きあがって両手を広げる
振り向いたロドルフォが気付いて駆け寄り
2人はしっかりと抱き合う
涙…涙…

ムゼッタがマフを買ってくる
あなたが買ってくれたんでしょう?とロドルフォに言う
ムゼッタはそうよ!
と言う

ロドルフォは首を何度も振りながらそばを離れ、数歩行ったところで床に崩れ大声で泣き出す

泣いているの?
私は元気よ
眠いだけ

ロドルフォはミミが眠ったと思いそばを離れる
その瞬間音楽とミミの落ちる手でミミの死が表現される

ショナールはまっさきに気付く

コッリーネがお金をムゼッタに渡す

ショナールがマルチェッロに死んでいると知らせる

ロドルフォが2人の様子に気づき
なんだってそんな目で僕を見るんだ!
と小さな泣き声で言う

そして
反対側のしもてに走っていき
ミミを振り向いて
ミミ…
近づいて
ミミ…

驚いたことにここは精いっぱい声を張るのが通常ですが村上ロドルフォはあえてマイルドに泣いている表現でソフトにミミ…と歌いました
これは新鮮!

ムゼッタは2人の姿を見てマルチェッロを見ます。
マルチェッロに初めて自分から抱きつきます
マルチェッロがムゼッタの背中に両手を回そうと逡巡しているところで幕が下ります

すばらしい!
感動的な細やかな第4幕でした!





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最終更新日  2014年11月03日 09時45分02秒


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