December 18, 2005
XML
カテゴリ: TOTO日記
(...続き)

もう一度、青黒い海底をめがけて潜っていくと、
いた! 海底近くに。ヤツが…

どうやら、その辺りを旋回している感じでした。
ゆっくりと悠々と。
堂々とした、流れるような流線型。

襲ってくるような気配は感じませんでした。
根拠は全くありません。はい。
ただ、ボクはもうとりつかれていました。


距離をつめていっても、サメが反応する様子はありません。
ただ、横目でボクを意識しているのは感じました。
サメと目をあわせながら、
「まだ行けるか」「もうちょっと寄れるか」とジリジリと距離を縮め、
いよいよ手を伸ばせば届いちゃうかも!という距離まで。
その瞬間。

「いやん!」

という感じで、サメは身をよじって距離を置きました。
その瞬間にボクも反射的に反応して、全速力で浮上しました。
サメの意外な反応に、ホッとするやら苦しいやら。
明らかに、緊張のため、思うように息が続きません。




なぜか冷静に妙なことを考えている自分がいました。

… サメには、人の手の機能が分かるんだろうか?

サメが体を翻したのは、
ちょうど手を伸ばせば届くくらいの距離だったのです。

しかも、ボクの勝手な解釈では、



しばらく海底を見つめながら、
多分、いろいろな考えを整理していたんだと思います。
ノドが乾いていました。
スノーケルが唇に張り付いて、ツバも飲み込めませんでした。

自分の呼吸に意識を集中させて…

… オリャ!

ボクはジェットコースターなんかも大っ嫌いな人間です。
高い所もできるだけ避けて生きてきました。
スリルというものを好き好む人間ではないんですが、
多分、その時はもう、アドレナリンに酔っ払っていたんだと思います。


今度は近くに寄ったら、一定の距離を置いてしばらく泳いでみました。
サメはボクの存在をどう考えているのか、
全神経を傾けてみても、ほとんど読み取ることはできませんでした。
なんたって相手は魚。

イルカと泳ぐのとは全く異質の感覚です。
当然、ボク側の気持ちが全く違います。
ただ、何か共通している部分もあるような気もするのが不思議でした。


そうしているうちに、

「いやん!」

とサメはまた身を翻して、距離を置きました。


なぜかコレが病みつきになってしまいました。
だんだん落ち着いてきて、息も長く持つようになりました。

ボクは何度も潜行と浮上を繰り返しました。

「いいではないか」
「いやん!」

「いいではないか」
「いやん!」

いつの間にかボクは、
サメよりも上の立場にいるような錯覚に陥っていました。


何回目かのとき、
ふとサメの位置がずい分と浅くなっているのに気づきました。

アレ?

周囲は青く明るくて、見通しもいい状態。
見回してみて、ビックリしました。
1頭かと思っていたサメは、見える範囲だけで6頭いました。

そしてすぐ頭の上には、イワシとカツオとカモメの塊。
サメはその周りをゆっくりとグルグル旋回しながら、
徐々に浮上して距離を詰めているところでした。
その真ん中にボクはいたのです。

おもむろに左側のサメが、ウォームアップでもするかのように、
ビビビッと稲妻状にダッシュし始めました。


は、はじまるんだ…!


ようやく自分が置かれている状況が分かったと同時に、
ものすごい恐怖が全身を襲ってきました。
意識が一瞬にしてすべて吹き飛びました。

とにかく怖かった。

そこからどうやって船に戻ったのか全く覚えていません。
多分、自己新記録ペースで泳いだんだと思います。
どうやって船を見つけたのか、そもそも浮上したのか、
呼吸はしたのか...
全く覚えてないんです。
一時的な記憶喪失です。

人間って、死の恐怖を味わうと、生命維持機能が働いて、
その記憶を消してしまうらしいですが、
多分、ソレだと思います。

ボクが唯一覚えているのは、
船に飛び込むように上がって、
「ベチャ!」と顔から着地したことだけでした。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  December 19, 2005 10:19:27 AM
[TOTO日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: