October 29, 2006
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カテゴリ: イルカの話
ボクはそもそも、

でも「出会いが少ない」のは問題だと思います。

人は出会いで成長するものです。
成長すると、不安や恐怖が少なくなります。
不安や恐怖が減って緊張が少なくなると、
その人の能力が最大限発揮できるようになります。
そもそも「出会い」そのものが人生じゃないでしょうか。


不登校の子には、不安や緊張が極端に多い場合があります。

水中の緊張状態たるや痛々しいほどです。
手足はピンと緊張。緊張というより硬直です。
ヒザを柔らかく使うどころか、曲げることさえできません。


まずはヒザ高くらいのビーチでスノーケルの練習をします。
海という水は塩分が多く、このために浮力があります。
基本的にすべての人間は「浮き」ます。
呼吸をしようと頭をあげてしまうので、
人間の身体で一番重たい器官「頭」が重力を受け、
これを支えるために一生懸命泳がなければならなくなります。
泳げない人は、この苦しい記憶によって恐怖を感じてしまうのです。
頭を海中に浮かせて呼吸ができるスノーケルをつけていれば、

しかし、安全上、また本人の安心材料のために、
「フロート」というスチロール製の棒を浮きに持たせます。

ちょっと慣れてくると、多少足をバタつかせることができます。
ただ、足につけるフィンは、本来、
団扇のようにフィンの面に抵抗がかかるように使うものなのですが、

こういうときは、
使い慣れない道具をつけていると不安を煽ってしまうので、
フィンは使わせません。

本人は、ただただフロートにしがみつき、
硬直した身体を一切動かすことなく、海面を浮遊します。
このときほど、
「恐怖が能力を奪い取る」ということを実感するときはありません。

この状態で、そのまま背の立たない深さまで連れて行って、
水中でOKサインの交換を繰り返します。
身体が硬直しながらも、少なくとも意識はしっかりしていて、
自分が見ているものが分かっているようになったら
いよいよ、ドルフィンスイムに挑戦です。



怖いでしょ~? シャレにならないですよ。


一度、アテンドしていた女の子が水中でパニックを起こしたことがあります。
彼女も不登校で、ものすごい偏食のあるコでした。
水中でパニックを起こした彼女は
必死にボクの頭を両手で押さえつけ、自分の顔を上げようとしました。
でも同時に彼女は、両足をボクの身体にガッチリ絡みつかせているので、
彼女は身体を持ち上げることができませんでした。
どう考えても彼女の運動には無理があるんです。
(ま、考えられないからそうなるのですが。)
それは、単にボクを沈めるだけの動きになっていました。
イヤ実際、パニック時の力とは恐ろしいもので、
彼女の両脚のスクイーズで、ボクはアバラを折られるかと思いました。

「お... やばいぞ... 」

と静かに思いながら、
ボクはできる限りの浮力を使うために二人の体を沈めました。
ボクが呼吸をするには、
彼女の上半身まで海上に持ち上げるほどキックしなければなりません。
あえてボクはそれをしませんでした。
彼女と戦えば一気に酸素を使ってしまい、負ければアウトだからです。
ボクは静かに水中に沈められながら機会を伺うことに切り替えました。

彼女の顔がギリギリ海面に出るくらいの位置をキープしたい.....
でも、ボクの頭は水中で押さえつけられたままで、
上を見上げることもできないので、だいたいの勘です。
彼女の頭が海上に出れば、ズッ...と重力がかかるので、
その分、無呼吸状態で強くキックしなければならなくなります。
彼女の頭をあまり出し過ぎないように気をながら、
立ち泳ぎで少しずつボートに向かって水中を移動しました。


とにかく慌てない、焦らない。余計な酸素を使わない。

う~ん...
でも、このスピードでボートまで、息は続かないなぁ...


そう思っていると、彼女が手の位置を直した途端、
ズルっと手が滑ってボクのマスクをベロっとはがしました。
「コノヤロ...!」
さすがにそう思いました。はい。

でも、
彼女が体勢を立て直す瞬間、少しのスキが生まれました。
ボクは彼女のボディプレスをかいくぐって、後ろから羽交い絞めにして、
なんとか、ボクも彼女も顔を上げられる体勢を作れました。
その一瞬の攻防で、彼女は海水を少し飲んで咳き込みましたが、
なんとか呼吸を確保はされ、ボクも耳元で「大丈夫大丈夫」とささやき続け、
無事にボートまで辿り着くことができました。


あれは危なかった。

泳げない子をイルカに会わせるのは一苦労です。
泳げないことが問題なのではなく、パニックなんです。怖いのは。







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最終更新日  October 29, 2006 10:54:48 AM
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