ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2009.11.16
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カテゴリ: 民衆の歴史
デパートの誕生(35)

ボン・マルシェの「アジャンダ」は、1週間分の日付の入った白のページと日付のないピンクのページが交互に出てくるのですが、52週の全てで大売出しやバーゲンせールがあるわけではありません。何もない週のピンクページには、ボン・マルシェの買い物風景を描いた絵などが掲載されたり、夏場はパリ近郊のリゾート地の紹介記事などが載っていたりします。冬場になると、オペラ座をはじめミドルクラスが憧れる劇場の座席配置の図まで登場します。

こうして中・下層のブルジョワたちの上昇志向を炊きつけ、少しでも収入があれば、そうしたプライドを満たすための買い物に、主婦たちを狩り出す効果を狙っていたのでしょう。何しろ「アジャンダ」はバーゲンセールに訪れた客たちにも配られたのですから。中には毎月の家計簿をつけながら、今月まででいくら節約できたから、リゾート地へ出かけるときのカジュアル衣装が買えそうだなどと、考える主婦もいたのでしょう。

ところで、フランスのデパートには、食品売り場は出来なかったと書きました。そのわけは以前に庶民生活を概観した連載の中で、家事奉公人のことを記しました。その時に、プチブルと労働階級を分けるポイントは、僅か1人でも家事奉公人を雇っているか否かにあると記しました。そうなんです。料理は主婦の仕事ではなく、お手伝いさんの仕事だったのです。ですから、ブルジョワの訪れる場所であるボン・マルシェをはじめとする百貨店には、お手伝いのための食品売り場など、あってはならなかったのです。

それなのに、「アジャンダ」には「今月の料理」と題したページもあって、食材と料理法が載っています。料理に合わせるワインの欄は、私にも多少理解可能なので、眺めてみますと、安いワインは入っていませんので、こうした料理はアッパークラスやアッパーミドルの食卓用であることが分かります。

食材よりもさりげなく描かれている、そうした料理に相応しい食器や銀器、テーブル・クロスなどに、主婦たちの関心を惹こうという、高等戦術だったことが読み取れます。
                                 続く





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最終更新日  2009.11.16 13:20:54
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