2019年07月31日
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カテゴリ: 老犬ホスピス


​ケンジ​

​​​「看取り期」​ ​​ に入りましたが・・・



​同じ日に ​「看取り期」​ に入った​

​​ 「サンペイ」 ​​ がいました。​

サンペイ は、人間に壁を作っていました。

人間に甘えることを知らずに育った仔でした。



このまま最期を迎えさせたくない!

毎晩、サンペイに寄り添っていた

そんなある日の夜…

​いつものように、 サンペイ

背中に突き刺さる視線を感じ、

パッ!と振り向くと・・・




ケンジと目が合いました!



サークルの網越しから、

一度も目を反らすことなく、ずっと…。


​それは…穏やかで優しい ケンジ から​

​初めて感じた ​「​嫉妬」​ の目でした。​



吠える力も残されてないはずなのに、

私を吠えて呼び戻そうとするケンジ。

ケンジは、ずっと淋しかったのでしょう…。

ケンジは、ずっと我慢していたのでしょう…。



翌日、 ケンジ をカートに乗せて​
お散歩。

初めて過ごす、二人きりの時間でした。


ケンジ を膝の上に乗せて、​

ケンジ と同じ景色を眺めました。​
​​​​


このとき、 ケンジ と何の話をしたのか、

ハッキリとは覚えていませんが、

​​​​ 「あと少しだけ我慢してね」

​​そんな ​​​​​残酷な言葉​​​​​ だった気がします。​​

​明らかに先に逝くであろう サンペイ には、

​​​​
​​心のケアが必要でした。

だから、

私には時間がないのだから…と。

ケンジ に我慢しろだなんて…

ケンジ には全く関係ないのにね…

​​


翌日・・・

​​その サンペイが永眠​ 。​

​私が犯した ミス …お気付きでしょうか。​



寝返りを打てない ケンジ なのに、

顔を棚側に向けてしまってたんです!

体位交換の際に起きたミスでした。

サンペイ の最期を見送ってる皆の後で

​淋しそうな ケンジ の背中…。​

後日、この写真を見たとき、

自分に怒りがこみ上げてきました。

​私は、 ケンジ の何を見てたのかと…。​



ケンジ に残された時間はあと僅か​

​​​今日か明日だろう…​​​

​薄々と感じていました。​



「悔いが残らない1日を過ごして下さい」

スタッフにもそう告げました。

「ケンジ…」

呟くように名前を呼びながら、

その優しい手は ケンジ の体を包み込みます。



ギュッと握り合う二人の手に

特別な何かを感じずにはいられませんでした。



5月2日 …この日は、

ケンジ にとって大切な日でもあったのに…

愛護センターに収容されている老犬の

容体が悪いと連絡が入り、

レスキューに向かう決意をしました。

私は、 ケンジ を置いて出て行きました。



ケンジ を置いて出ることが

何を意味するのか…

それは痛いほど分かっていました。



ケンジ との時間を割いてまでも、

今、老犬をレスキューするべきではない!

誰が一番大切なのか…

そんな簡単なこと、

全部全部、分かっていました。



生きてるケンジに会えるのは、

これで最期になるのかもしれない…

ずっと、ずっと、ケンジを抱きしめました。

なぜかな…

このときの心境は ​至福感​ だけでした。

藤井副代表にケンジを託して、

私は愛護センターに向かいました。



愛護センターレスキュー後の予定をキャンセルし、

急いでケンジの待つ保護家に帰りました。



泣きながら給水しようとするスタッフの手を

私は…止めました。

「口と鼻を湿らせる程度で良いからね」

​​​​​​​​​​​​​看取り期​ では、給水の拒否反応が出たら、

​体は、 ​死​ へ向かってる合図です。​

ゆっくり眠ろうとしている機能を、

邪魔してしまうことにより、

​最期の瞬間 ​「苦痛」​ を与えてしまうんです。​



​「枯れて死ぬ」​

命ある生物にとって、これが一番、

苦しみや飢えのない幸せな最期 なんです。​



5月2日 19時・・・

「死」へ真っ直ぐ向かっているケンジの姿が

そこにありました。





もう、引き止めることは出来ないんだ…





もう、引き止めてはいけないんだ…











ケンジ は終わりを迎えました。




​​​
※ 次 に 続 き ま す​​​​​​
​​​​​​​​​​​​​​​


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最終更新日  2019年07月31日 19時26分17秒
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