なでしこジャパン、勝ちましたね。先ずは幸先のよいスタートにてご同慶の至りに存じ上げます。
撫子は秋の七草の一つであるが、秋の七草は山上憶良の歌(下記1538番歌参照)に由来するものであるのですな。
さて、その撫子であるが、万葉集にも26首登場するという、昔から日本人に愛されて来た花である。この花を最初に歌にしたのが誰であるかは存じませぬが、撫子を女性に喩えたり、盛んにこの花を歌に詠んだのは大伴家持でありますから、「大和撫子」も「なでしこジャパン」も、その産みの親は大伴家持と言ってもいいのではないでしょうか。
小生は、ハマユウの人麻呂、スミレの赤人、ナデシコの家持などと呼んでもいますが、撫子の万葉歌は大伴家持に際立って多いのでありますから、順当な呼称ではないかと・・(笑)。
ということで、本日はナデシコの万葉歌、全員集合です。
なでしこの その花にもが 朝な
朝
な 手に取り持ちて 恋ひぬ日無けむ
(大伴家持 巻3-408)
秋さらば 見つつ
思
へと 妹が植ゑし
屋前
の
石竹
咲きにけるかも
(大伴家持 巻3-464)
わが
屋外
に 蒔きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ
比
へつつ見む
(大伴家持 巻8-1448)
わが屋前の なでしこの花 盛なり 手折りて一目 見せむ兒もがも
(大伴家持 巻8-1496)
なでしこは 咲きて散りぬと 人は言へど
わが
標
めし野の 花にあらめやも
(大伴家持 巻8-1510)
萩の花 尾花
葛花
瞿麦
の花
女郎花
また藤袴 朝顔の花
(山上憶良 巻8-1538)
<注> この歌によって、ハギ、ススキ(尾花)、クズ(葛)、ナデシコ、オミナ
エシ、フジバカマ、キキョウ(朝顔)が秋の七草となりました。下の
歌(「射目立てて」の歌と「高円の」の歌)もそうですが、これらの歌
のように、577577の構造の歌を旋頭歌と言います。万葉集には、
この他に、575777という構造の仏足石歌体の歌もあります。
射目
立てて
跡見
の
岳辺
の
瞿麦
が花
総
手折
り われは行きなむ
寧楽
人
の為
(紀鹿人 巻8-1549)
高円の 秋の野の上の 瞿麦の花 うらわかみ 人のかざしし 瞿麦の花
(
丹生女王
巻8-1610)
朝ごとに わが見る屋戸の なでしこの 花にも君は ありこせぬかも
(笠女郎 巻8-1616)
見渡せば 向ひの野辺の 撫子の 散らまく惜しも 雨な降りそね
(巻10-1970)
野辺見れば 撫子の花 咲きにけり わが待つ秋は 近づくらしも
(巻10-1972)
隠
りのみ 恋ふれば苦し なでしこの 花に咲き
出
よ 朝なさな見む
(巻10-1992)
うら恋し 吾背の君は なでしこが 花にもがもな 朝なさな見む
(大伴池主 巻17-4010)
一本
の なでしこ植ゑし その心 誰に見せむと 思ひそめけむ
(大伴家持 巻18-4070)
石竹花
が 花見るごとに
少女
らが
笑
まひのにほひ 思ほゆるかも
(大伴家持 巻18-4114)
石竹花
は 秋咲くものを 君が家の 雪の
巌
に 咲けりけるかも
(久米広縄 巻19-4231)
雪の
山斎
巌
に植ゑたる
石竹花
は
千世
に咲かぬか 君が
插頭
に
(
蒲生娘子
巻19-4232)
吾背子が 宿のなでしこ 日
竝
べて 雨はふれども 色も変らず
(大原今城 巻20-4442)
ひさかたの 雨はふりしく なでしこが いや初花に 恋しき吾背
(大伴家持 巻20-4443)
わが宿に 咲けるなでしこ
幣
はせむ ゆめ花ちるな いやをちに咲け
(丹比国人真人 巻20-4446)
幣
しつつ 君がおほせる なでしこが 花のみ
訪
はむ 君ならなくに
(橘諸兄 巻20-4447)
なでしこが 花取り持ちて うつらうつら 見まくのほしき 君にもあるかも
(船王 巻20-4449)
わが背子が
屋戸
のなでしこ 散らめやも いや初花に 咲きは益すとも
(大伴家持 巻20-4450)
うるはしみ
吾
が
思
ふ君は なでしこが 花に
比
へて 見れど飽かぬかも
(大伴家持 巻20-4451)
(注)長歌2首(巻17-4008、巻18-4113)は省略しました。
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