隠
りのみ居ればいぶせみ慰むと出で立ち聞けば来鳴くひぐらし
(大伴家持 巻8-1479
)
(屋内に引きこもってばかりいると鬱陶しいので、気を晴らそうと外に出て立って聞いていると、来て鳴くヒグラシの声よ。)
大和には鳴きてか 来
らむ 呼子鳥
象
の中山呼びぞ越ゆなる
(高市黒人 万葉集巻 1-70
)
(大和で鳴いてから来たのだろうか。呼子鳥が象の中山を鳴きながら飛び越えて行くのが聞こえる。)
呼子鳥については一般的にはカッコウのことと解されているが、ツツドリ説、ホトトギス説、ウグイス説などもあって未詳の鳥である。烏とふ大をそ鳥の 真実 にも来まさぬ君をころくとそ鳴く (万葉集巻 14-3521 )
(烏という大馬鹿鳥が本当にはお出でにならない貴方であるのに「来る」と鳴く。)
「ころく」は「児ろ来」、「自(ころ)来」または「此ろ来」である。 古
に恋ふらむ鳥は 霍公鳥
けだしや鳴きし 我
が 思
へるごと
(額田王 万葉集巻 2-112
)
(昔のことを恋い慕っているであろう鳥はホトトギス。その鳥が鳴いたのでしょう、私が昔を恋いしく思っているように。)
ホトトギスは原文では霍公鳥と書かれている。音読みすればカッコウドリである。万葉人はホトトギスもカッコウも区別しなかったという説に従えば、ここでのホトトギスは「かく恋ふ」(このように恋しく思っている)と鳴くカッコウのことであろう。テッペンカケタカ(てっぺん駆けたか)と鳴いたのでは、下記のように銀輪家持風になってしまって、締まらないことになる(笑)。 ほととぎす 来
鳴
き 響
もす 卯の花のともにや 来
し
と問はましものを(巻 8-1472
)
(
ホトトギスが来て鳴き声を響かせている。「ウノハナノトモニヤコシ(卯の花と一緒に来たのか)」と尋ねたいものだ。)
暇
なみ 来
ざりし君にほととぎす われかく 恋
ふ
と行きて告げこそ(巻 8-1498
)
(暇がないからとお出でにならない君に、ホトトギスさん、「ワレカクコフ(私はこんなに恋しく思っています)」と行って知らせておくれ。)
木
の 晩
の夕闇なるにほととぎす 何処
を家
と鳴き渡るらむ(巻 10-1948
)
(木の下陰の夕闇なのに、ホトトギスは「イヅクヲイヘ(何処が<自分の>家か)」と鳴き続けている。)
わが 衣
君に着せよ
とほととぎすわれをうながす袖に 来
居
つつ(巻 10-1961
)
(「ワガコロモキセヨ(私の衣を君に着せよ)」とホトトギスが私を催促して鳴きます。来て袖にとまりながら。)
春さればすがるなす野のほととぎす ほとほと
妹に逢はず来にけり(巻 10-1979
)
(春が来るとすがる蜂がブンブン翅音を立てる野のホトトギス、「ホトホト(ほとんど)」彼女に逢わずに帰って来るところだった。)
信濃なる須賀の荒野にほととぎす鳴く声聞けば 時すぎにけり
(巻 14-3352
)
(信濃の須賀の荒野でホトトギスの鳴く声を聞くと、それは「トキスギニケリ(時が過ぎたなあ)」だった。)
橘は 常
花
にもがほととぎす 住む
と 来
鳴かば聞かぬ日なけむ(巻 17-3909
)
(橘がいつも咲いている花であればなあ。そうなら、ホトトギスが「スム(<此処に>住む)」と来て鳴くだろうから、毎日その声を聞かないという日はないのに。)
梅の花ひとり見つつや 2024.01.13 コメント(6)
梅一輪の春咲きにける 2023.01.14 コメント(8)
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