まずは鹿児島、下田鹿児島、江戸、函館、長崎の各1枚ものの測量図。測量図といえば文政4年(1821年)に伊能忠敬が中心となって作製した「大日本沿󠄀海󠄀輿地全󠄁圖」(伊能図)が完成していたが幕府が秘蔵したため、慶応3年(1867年)になって「大日本国沿海略図」(幕府から伊能図(の小図で縮尺1/432,000)の写しを入手した英国が、その写しを元に1863年に「日本と朝鮮近傍の沿海図」として刊行し、それが日本に逆輸入されて勝海舟が木版刊行したもの)や、幕府開成所が同じく伊能小図を元にした「官板実測日本地図 続いては仏国の度量衡図説。江戸時代の日本は尺貫法が使われていたので、この本に興味を惹かれたのも分かる気がする。ちなみにメートル法は18世紀末の仏国において、世界で共通に使える統一された単位制度の確立を目指して制定されたものらしい。1799年に仏国でメートル法が公布された際のスローガンは「全ての時代に、全ての人々に(À tous les temps, à tous les peuples.)」だったそうな。日本がメートル条約に加盟したのは明治18年(1885年)のことだった。 探検地図や冒険譚など少年っぽさを感じさせる本もあるにはあるが、解剖生理学、工芸概論、醸造論といった専門書っぽいタイトルが並んでいる。醸造ってことはワイン作りでも始めたかったのかしらん。他には外国人の日本文法論だとか紡績事業の本だとか、那翁(ナポレオン)の伝記本だとか。ナポレオン3世(Napoléon III)に謁見して感じるところがあったのかも。 「佛譯四書」は道光27年出版ということは中国の本なのね。上海で購入したのかな。そういえば可軒さんの蔵書には四書(「論語」「大学」「中庸」「孟子」)に関する書物が多かった気がする。岡山大学付属図書館所蔵の池田家文庫中に所在する可軒さんの蔵書目録のうち、昭和43年発行「書誌学(11-13)」に載っている岡田祐子著「池田可軒の舊藏書(1-3)」に列記されている「池田可軒蔵書目録」と「歳寒書屋珍収蔵書目録」所載の漢籍、準漢籍の合計は400点、4,400冊余という膨大な量であった。その内四書(特に中庸)関連は約100点(冊数は書かれていない)。昌平黌で抜群の成績だったというのも頷ける。 「人間は萬巻の書を讀まなければならない」――可軒さんはまさに有言実行の人であった。