漫望のなんでもかんでも

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まろ0301

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2005.06.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類
9時半に家を出て、河原町四条についたのが11時。大丸8階の晦庵・河道屋で蕎麦を食べて、ぶらぶら歩きながら南座へ。
 12時半開場。
 さすがに中高年の女性が多いが、若い女性の姿も見える。男性の姿はほんのパラパラ。私もそのパラパラの、「パ」ぐらいか。

 3階左1列目、3と4という席。身を乗り出すと、下に花道が見える。小振りのいい劇場だ。

 「坂東玉三郎 特別舞踊公演 中村獅童出演」・・どんな舞台なんだろう。

 時間が近づくと、「チョーン!」と拍子木が入る。雰囲気でるなぁ。

 緞帳が上がって、引き幕がスルスルスル・・・。

 あ、せり上がりで出てくるんだ。3階だからいち早く見える光景だ。

 最初の演目は、『雨の五郎』。曽我五郎と二人の若い者との絡み。



 ここから約20分。瞬間瞬間に、どうやったら一番カッコよく見えるか・・の連続技。所作が一々決まる。うーん、いいなぁ。
 生で初めて聞く笛、小鼓、太鼓、三味線の音のいいこと。ビンビンと響いてくる。

 どんなのかなぁ、退屈だったらどうしよう・・という心配は杞憂。あっという間に引き込まれてしまった。

 上手で入るツケの音がなんともかんとも効果的。見得を切る時、若い者がひっくり返される時等にピタッと決まる。快感。

 時折、「萬屋!」の声がかかる。この声を生で聞くのも初体験。

 15分休憩。2階の売店を覗いてみると、小物、いろんなグッズを売っている。

 次は、『隅田川』。

 子どもを人買いにさらわれた斑女(はんじょ)の前は、諸国をさまよううちに東国隅田川のほとりにたどり着き、ここで渡し舟の舟長と言葉を交わすうちに我が子の非業の最期を知る・・という筋。

 玉三郎が、花道から出てくる。笠をかぶっていて、顔が見えない。何しろ3階から見てるんだから。・・あ、止まった。3列目と4列目の間で止まって、膝をかがめて何かしておるではないか。

 笠を取ろうとしている。もう・・・3列目と4列目の花道の近くの人たちは、玉三郎と目があってるんだろうなぁ・・。凄い体験だぞそれは。



 やはり、目があわないような3階席で良かったではないか・・と妙にポジティブな思考をめぐらしつつ見入る。

 舟長との会話。なんともよく通る声だ。観客に背を向けていても明晰に聞こえる。これが伝統というものか。たしかに小振りの劇場というか芝居小屋なのだが、それにしても凄い声だ。

 長唄の声も、よく響くし、どっから声が出てんねん、どこにそんな声を隠してたんや!と突っ込みを入れたくなるような高い声から低い声まで自由自在。

 舞台で、滝沢修、仲代達矢らの声は堪能してきたが、それとは質が違う声だ。

 息子の死を知った斑女の前を舟長は舟に乗せて墓へと案内する・・。あれっ、紐が張ってないぞ。どうやって舟を動かすんだ・・・、と思っていたら、なんと!背景の方が動いて、舞台上手より墓が出てくる。この手があったのか・・。


 玉三郎の姿は、もう此の世のものとも思えない。
 見ているほうをこんな気持ちにさせるとは・・・。えらいものを観てしまったぞ。

 30分休憩。売店に行って、隈取り葉書、一筆箋、ハンカチを買う。・・あれこれ買ってる男は私だけ。ずっと以前のハヤシ言葉「女のなーかに男が一人!」状態。ま、そんな事は気にせずに買う。

 さて、『舟弁慶』。

 玉三郎は最初は静御前として登場して、舞を舞う。この衣装が凄い。パンフレットに、「佐々木能衣装」の佐々木洋次さんという方の聞き書きが掲載されているのだが、京都の古道具屋さんで見つけた御所車と花の模様の装束を復元しようとしたが中々うまくいかず、とうとう機から設計しなおして復元して『熊野』の装束を織った。今回もその機で織りました・・・とのこと。

 あまたの職人芸に支えられている舞台なのだ。

 獅童の弁慶は、茶の地に黒の縞なのだが、この茶がいい。「日本の伝統色」で調べてみたが、ピッタリくるものが見つからない・・・何色なのか。

 静が去り、一同は船出、さて、出るぞ、出るぞ、平知盛の霊が出るぞ・・・、なかなか出てこないな・・・締め太鼓も入って賑やかになってきた・・さて・・あっ、こっから出てきたのか!

 花道の舞台近くのところにせり上がりがあったとは・・。後で話していたら、妻は、「私、分かってたで、あそこに四角く切ったところがあったから・・」と誇らしげに言う。
 二重のショック・・。

 玉三郎、今度は長刀をもっておどろおどろしく登場し、船上の義経に迫る。

 「その時義経少しも騒がず」と、義経が自ら言う。演劇の約束事の目でこれを見ると、「れれっ」となるが、内心の動きもセリフにしてしまう歌舞伎などの約束事の目で見れば不思議ではないということになる。

 知盛は二度、三度と義経に迫る。

 弁慶、動かない。こら、ボディーガード、なにをしておるか!・・と思っていたら、立ち上がって、数珠を手にしてなにやらゴニョゴニョやり始めた。

 そうか、弁慶は比叡山で修行した事もある坊さんだったんだ。ただの暴れん坊ではなかったのだなぁ・・と改めて見直す。法力もあったわけだ。

 知盛の霊は遂に鎮められてしまう。

 おしまい。

 緞帳が下りたらみんなさっさと立ち上がって帰途につく。そうか、「アンコール」はないのか。

万雷の拍手に応えて再び幕が上がって・・という光景はないんだな。

 外はいつもの雑踏。

 南座の異界を出れば夏の京

 楽しい一日だった。今度は、歌舞伎が観たくなった。





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Last updated  2005.06.18 22:40:07
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Re:南座の異界を出れば・・ 玉三郎と獅童(06/18)  
サリィ斉藤  さん
南座の公演を堪能されたようで、玉三郎ファンの私としてもわが事のように嬉しいです!(大きなお世話ですね)
というか、南座での芝居見物というのに憧れているので、「異界を出れば夏の京」というシチュエーション自体が本当にうらやましい。
今度、ぜひぜひ歌舞伎にも足を運んでくださいませ。

「もう此の世のものとも思えない。」という玉三郎評、そのお気持ち、同感です…
どこか、異次元から人間界に紛れ込んでしまったような感じさえする美しさですが、陰ではたゆまぬ努力の人、なんですよね。
衣裳への妥協を許さぬこだわりなども、見る側にとってはうれしい、ありがたいことです。 (2005.06.19 11:30:45)

Re:南座の異界を出れば・・ 玉三郎と獅童(06/18)  
玉さまにお会いになったのですかぁ?!それは、それは・・
>まてよ、もしも、目があってしまって、その後の>人生が変わってしまったらどうするのだ・・。
いやあ、それもまた良いのでは?
>知盛は二度、三度と義経に迫る。
私はよこしまな意味を想像してしまいました。
(^^;

玉さまは大昔、「夜叉ヶ池」の舞台を見ました。あの妖艶さは凄いものがありますね。
私も今週末、久々に東京でバレエを見ます。
ベルリン国立バレエの「ニーべルングの指環」です。




(2005.06.19 14:34:17)

小屋の大きさ  
まろ0301  さん
サリィ斉藤さん
玉三郎ファンの私としてもわが事のように嬉しいです!

☆お仲間の末席というところですが。

>今度、ぜひぜひ歌舞伎にも足を運んでくださいませ。

☆そのつもりで準備しております。12月には吉例顔見世興行がありますから、なんとしても観にいくつもりです。
 あと、神戸とか大阪での興行の情報も集めるつもりでいます。

>どこか、異次元から人間界に紛れ込んでしまったような感じさえする美しさですが、陰ではたゆまぬ努力の人、なんですよね。
>衣裳への妥協を許さぬこだわりなども、見る側にとってはうれしい、ありがたいことです。

☆すべるような動き、一つとってみても、そうですね。ここまでいけるというのが驚異でした。
 遅ればせながら観る事が出来て、「間に合った・・」という思いです。 (2005.06.19 16:38:43)

それも羨ましい  
まろ0301  さん
なずなっち8643さん

>いやあ、それもまた良いのでは?

☆事実、少しづつ変わって行っている様な・・。

>私はよこしまな意味を想像してしまいました。
>(^^;
☆考えすぎでございますよ・・・。

>玉さまは大昔、「夜叉ヶ池」の舞台を見ました。あの妖艶さは凄いものがありますね。

☆「大昔の玉三郎」を観ていないというのはこうなると痛恨ですね。ま、仕方ないか。これから先を観ます。

>私も今週末、久々に東京でバレエを見ます。
>ベルリン国立バレエの「ニーべルングの指環」です。
☆これはまた羨ましい。
 バレエというのも、ウソ偽りのない世界ですね。その人の身体と技術でしか表現できないものがありますから。それ以上でも以下でもなく。
 なんにしても、生で観る機会を持ちたいと思っています。
(2005.06.19 16:44:38)

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