朗読と音楽「重監房」より
療養所園長に与えられた「懲戒検束権」に、「監禁は一ヶ月を越えてはならない」と言いう決まりがある。決まり通り一ヶ月ごとに入浴と称して連れ出すのだ。と言うことは、死ぬまでここに入れておく意図があったと解釈できるだろう。
私が楽泉園に来て間もないころ、この特別病室に入れられた人が月に一度の入浴の後、分館の窓の下にムシロを敷いて座らされ、散髪をしてもらっている所を目撃したことがある。その人たちのあまりの異様さに思わず後ずさりし、しばし凝視したことを覚えている。
髪の毛の黒さは普通なのに、肌の色だけが只々白く、透き通る程の白さだった。
あるとき、それらの人を再び特別病室へ連れて行く列に出会ったことがあった。しかも、そのうちの一人は担架に乗せられていた。後で聞いたところによると、その人は入浴後へたり込んでしまい、看護婦が注射を打ったがまだ歩けない。そこで担架に乗せて運んだとのことだった。
こうした光景は誰もがよく目撃した。そして見た人は、あの人たちは一体何をしたと言うのか、故郷恋しさ、肉親恋しさから無断帰省しただけ。職員の命令に従わなかったから不隠分子にされた。賭博をしただけ。そんな程度ではないか。だとすれば、この患者隔離撲滅政策の下ではありがちな話で、自分もいつ、あのような目にあわされるか、分かった物ではないと、恐怖の目で見ていたのである。
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