朗読と音楽「重監房」より
“風呂に入れられているのを見たかよぅ。痩せるだけ痩せて、ヒョロヒョロで、湯船につかまってても浮いてくるんだ。だから世話係が棒で押さえるんだ。
出てくる時は、亡霊のようにフワリフワリ出てくる。地べたに敷いたムシロの上に座らされて、頭を刈ってもらってる。へたばって動けないのに、担架に乗せて入れちゃうんだからなぁ。ああまでしなくたっていいだろぅなぁ”
“どんな悪党が入れられているかと言えば、たいした事はないんだぜ。逃走常習なんてぇのはそんなに悪いことか? おとなしくしてない者への見せしめじゃぁないか。職員反抗だってそうだ。たいした事はない。園内騒動だってそうだ。たいした事はねぇのに、奴らが勝手に悪いと決めつけてやってる。そんなのが罪かよ”
“この療養所は療養所なんてもんじゃない。患者が患者の看護から始まって、ありとあらゆる作業は、患者が働かないと一日も成り立たない。その上、炭背負い、薪あげ、工事作業、温泉修理と毎日毎日奉仕作業に追い回され、座る暇もないくらいだ。これじゃ良くなる病気だって悪くなる。不治の病と言われてはいても、療養所へ行けば、少しは治療の道もあるかと期待をかけていたところもあるが、全くの当て外れと言うもんだ”
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「怖いもの見たさで」この場を何度も見たと言う人がいる。
その光景は、その残酷さ、人間の誰にでも潜在する「ヘイトクライム」を見ることができる。ここではとても書けない。
人間という生きものは、普通の人間が、これほどまでに冷静沈着にできるものかと。そして弱き者の心情を伝えなければ、と思います。
現場を恐る恐る覗き見た人も90を越えてます。話すと一夜眠られなくなるとか。当然でしょう。でも語り継いでもらいたい、とも話していました。
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