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2023.11.22
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気温がちょっとだけ秋らしくなりました。
今回は横溝正史作品集「​ 殺人暦 ​」に掲載された作品の感想を書きたいと思います。横溝先生の昭和初期の頃の作品の数々で、短編の他にそこそこの長さの中編もあり読みごたえがあります。推理物の他にユーモア小説もあり、横溝先生の意外な一面が見られます。

​殺人暦​
短編よりは長く長編よりは短い、いわゆる中編といった感じの作品です。ある日、新聞に存命している5人の人物の死亡広告が出されます。実はこの5人、人工的にダイヤを作り出す製法に関わった人々とその遺族。犯人は人造ダイヤ製法を考え出した人物の遺児で、仲間達の裏切りにより製法を記した暗号を奪われ殺害された父の無念を晴らすべく、復讐を開始したのでした。
ここで警察と腕利きの探偵が殺人者の犯行を阻止しようとしますが、他にも探偵のライバルである怪盗が乗り込んできて、殺人者の標的の1人であるお嬢さんを救おうとします(要するに女好きなんですね:笑)。そうしているうちに、殺人者の標的にされた面子の中で人造ダイヤ製法の暗号を解くカギを巡ってドロドロの争いが起きますが・・・・・・。
この怪盗さん、変装したり殺人者の裏をかいたりと、なかなかカッコ良いのですが、最後の最後で敵の罠に嵌ります。もし、殺人者が改心して助けてくれなかったらお陀仏でした。
最終的に殺人者は自滅しますが、根っからの悪党で無かったのが救いかもしれません。

​富籤紳士​
これは完全なユーモア小説。横溝さんには珍しい作品です。今で言うところのニートの男性が恋人と同棲中の友人宅に居候しますが、友人も恋人も彼の前から消えてしまいます。
友人に見放されたと思い途方に暮れる彼の前に結婚媒介所を経営する女性が現れ、富籤の景品の花婿にならないかと持ち掛けます。彼女は会員のお金に余裕があり且つモテない女性に高額の富籤を売りつけ、当たりくじの番号の花婿をプレゼントという少々非合法的な手段で儲けています。
選ばれた12人の花婿1人1人が自己紹介の演説をして、いよいよ自分の番だと思って自分の前に演説している花婿を見たら、何と彼の前から消えた友人!!この友人も恋人に逃げられて、どうしようも無かったようです。
この2人、自分のくじ番号を当てたお金に余裕があるモテない女性の花婿になって紐のような生活を送るのでしょうか?長持ちしそうに無いと思いますが・・・・・・(苦笑)。

​生首事件​
こういう顔の無い死体の事件の時には、その主を当人と証明した者も疑えという事なのでしょうね。

​幽霊嬢(ミス・ゆうれい)​
男装の麗人が登場!映画監督に、ある令嬢の乳母から手紙が届きます。何でも、この監督が撮った映画に出演している美少年が現在行方不明のその令嬢に似ているとか。
映画関係者はその少年の素性を探りますが、どうしても彼(彼女?)の正体が掴めません。その詳細を手紙に書いて令嬢の乳母に送るも、令嬢の乳母を名乗る女性は存在しないと手紙が送り返されてきます。
その後、美少年にそっくりな女性が目撃されますが、イケメン俳優は令嬢だったと言い、脚本家はバーの女だったと言い、意見が食い違います。
実はこの件は、退屈していた映画監督が同じように退屈している女性に話を持ち掛けて、常連達を引っかけてやろうと一芝居打った茶番劇だった(乳母からの手紙も監督が書いた物)という何の捻りも無いオチでした。

​寄せ木細工の家​
不倫妻を殺害する為に夫が作った殺人兵器である天蓋付きの寝台。この天蓋が徐々に下がり、眠っている者を閉じ込めて窒息死させる仕掛けですが、眠っていたのは何と妻では無く、無断で寝台で眠っていた女中さんでした。夫は覗き穴から見ていましたが、殺す相手を間違えた事が分かると驚きのあまり足を滑らせ、覗き穴で首つり状態になり死んでしまいます。
時は流れ、女優をしている不倫妻は何も知らずに寝台を映画の小道具にしてしまい、映画の撮影中にスイッチが入ったのか、妻が寝台に寝ている時に天蓋が下がり、閉じ込められて窒息死してしまいます。夫の怨念が寝台に宿っていたのでしょうか。怖いです。

​​ 舜吉の綱渡り ​​
主人公の舜吉という青年、自分を袖にして金持ちの行政官(肥満体)についた恋人の気を引く為に、下に網を張らずに綱渡りをしてみせると宣言します。
まさに命懸けの綱渡りに挑戦しようとした時――。突如として大地震が発生し、綱梯子にぶら下がっていた舜吉を除く町の人々全員が死亡してしまいます(当然、恋人も)。
ただ1人生き残り、町の王様となった舜吉くん。死んだ恋人よりも何倍もきれいな女性を他の町からいくらでも買う事ができると喜んだのでありました(鬼畜・・・・・・)。

​三本の毛髪​
大学教授が殺害される事件が発生。教授の手には三本の長い毛髪が握られていて、殺人現場には「良子」と書かれた紙片が落ちていました(ちなみに、教授の妻の名は浪子)。
犯人は教授の妻と思った主人公の青年、教授の妻に思いを寄せている自分の友人に彼女を庇っているのではないかと突っ込みを入れますが、友人は真犯人は必ず見つけるから時間をくれと言います。
犯人は泰良子(たいりょうし)という名の中国人男性。長い毛髪は、彼の辮髪(べんぱつ。ラーメンマンのような髪型)から抜け落ちた物。当時の日本では、男性であれば短髪という思い込みがあったようですね(笑)。

​芙蓉屋敷の秘密​
女優・白鳥芙蓉が自分の屋敷で殺害されます。芙蓉さんの周りには怪しい人物がいっぱい!20年程前に彼女と関係を持っていた大学教授、それをネタに教授を強請る芙蓉さん宅の女中、芙蓉さんと1人の男性を巡って毒入りワイン決闘を持ちかけた教授の娘(実は芙蓉さんとの間にできた子!)、その2人の女性に愛されてにっちもさっちも行かなくなったイケメン青年(本命は娘さんの方)・・・・・・。これらの一癖も二癖もある人物達が、謎の多い殺人事件を更にややこしくしてくれます(汗)。
真犯人は大学教授の娘・・・・・・と思われている少女の本当の父親。彼は農林省の官僚の令嬢と結婚が決まり、芙蓉さんとの関係が発覚しないように証拠を隠滅する為に芙蓉屋敷へ来ましたが、芙蓉さんに気付かれてしまい手に掛けてしまいます。
でも、殺人現場にボルサリーノを残してきたのが落ち度でした。その後、殺人現場を見て面喰ったイケメン青年が、そのボルサリーノを自分の物と思って持ち去ってしまいましたが、書かれたイニシャルが自分のものでは無かった為、犯人の物と分かりました。
何とも身勝手な犯行ですが、何人もの男の心を虜にする芙蓉さんの美しさも罪なのかもしれません。

​腕環 ​​
主人公の青年が恋人の為に購入した腕輪。それは夫である博士を殺した泥棒を勇敢にも射殺した博士の妻の持ち物でした。購入先の貴金属店から腕輪を売りつけた男性の事を聞き出し訪ねてみると、彼は何者かに襲われ虫の息。
死に際の男性の言葉によると、何と博士を殺したのは博士の妻の情夫。2人で逢引きしているところを博士に見られ息の根を止めたとの事。夫人の腕輪は、泥棒に入って一部始終を見た為、口封じに夫人に射殺された相棒の懐からせしめた物でした。
不倫にしろ、泥棒にしろ、悪い事をすると必ず報いを受けるのですね。

​女王蜂​
石坂浩二さんや古谷一行さんが出演した映画やドラマになった「女王蜂」よりも前に書かれた一番最初の「女王蜂」です。こんなのがあるとは知りませんでした。
悪辣な子爵家の後見人の為に運命を狂わされた子爵令嬢と彼女と瓜二つの女優。子爵令嬢は後見人の男を嫌うあまり不良行為に走り、不良外人を射殺して監獄に入れられてしまいますが、その時には周囲から彼女と瓜二つの女優と思われていました。
後見人は映画会社の社長に大金を握らせ瓜二つの女優を買い取り、奸計を巡らせて監獄の令嬢と女優を入れ替えました。刑期を終えて出所した女優は、本物の令嬢よりも偽物の方が扱いやすいという理由で後見人によって令嬢に仕立て上げられていまいます(本物の令嬢は、おそらく殺害されたのであろうとの事)。
瓜二つの女性達、確かにどちらも女王蜂のような気品と危なさを持ち合わせています。

​死の部屋​
アメリカ帰りの男性が、ある博士から買い取った家。その部屋の1つは、過去に博士が不倫妻と愛人の不良少年を殺害したガス室になっていました。
博士の妻と共に殺害された少年は、実はその家を買い取った男性がかつて愛した女性との間に儲けた子で、全てを知った男性は博士をそのガス室におびき出し殺害した後、自らも命を絶ちます。恨みは晴らしても、また次の恨みを生み出す。悲しいです。

​​ ​​ 三通の手紙 ​​ ​​
昔は海賊、今は堅気で家庭を持つ男性。そんな彼にかつての仲間から、大金を用意しろという脅迫の手紙が届きます。男性はすかさず脅迫してきた仲間に、金を用意するから指定する場所で待っているように手紙を書きます。
そして、別の海賊仲間に大金を用意しろという脅迫の手紙を書きます。指定場所は、先に強迫してきた仲間を待たせている場所・・・・・・。
お家の外で、ズドンという音。どうも、脅迫の手紙を受け取った別の海賊仲間が、指定場所で待っている男を自分と思って撃ち殺したな、と思い、彼は安心するのでした(笑)。

​九時の女​
主人公は探偵小説家。彼は大金を作らなければ生家が破産するという窮地に立たされていました。そんな彼の元に、ダンスホールの常連・九時の女が電話を掛けてきて、これまた常連の市会議員の部屋から赤いショールを持って来て欲しいと頼まれます。そうすれば、生家を救うのに必要な額の金を用意するとの事。
主人公は喜び勇んで市会議員の家に向かいますが、彼を待っていたのは顔が焼けただれた市会議員の死体。ショールは、その死体が持っていました。主人公はビビりながらもショールを持ち出し九時の女に渡しますが、そのショールは赤では無く黄色でした。
実は彼女は内閣書記官長の娘で、父親は殺された市会議員から秘密書類を奪われ自殺してしまいました。悪辣な市会議員、その書類により多くの人々の弱みを握り私腹を肥やし、書類を取り戻そうとした彼女にまでけしからん事をしようとしました。彼女は身を守る為に、暖炉の火掻き棒で殴りつけたそうです。その時、自分のショールを忘れてきたとか。
実は市会議員は死んではおらず、彼女に殴られて気絶した後に第三者の襲撃を受け、その相手を殺して自分が殺されたように見せかけたようです。死体が脱いだ筈の服を着ていた事、持っていたショールが赤では無く黄色だった事から(彼は色覚異常)、犯行が発覚しました。
秘密書類は手元に戻り、主人公の生家は破産を免れ、物語はハッピーエンド。おそらく、主人公と九時の女も良い仲になっていくんでしょうね。

今回は、ここまで。





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最終更新日  2024.05.15 00:59:40
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