遊心六中記

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2017.07.30
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カテゴリ: 探訪
(2016.10.12)
京都市動物園、京都市美術館、京都国立近代美術館、みやこめっせ(市勧業館)が建ち並ぶ区域に沿って、琵琶湖疏水が南から西に直角に曲折し流れています。 神宮道の少し西で琵琶湖疏水から白川がふたたび分流します。 ここがその起点となって、 「白川」としての流れに戻ります。 私は、この起点から曲折しつつ南西方向に流れ、鴨川に至る「白川」沿いの散策が好きです。

「知恩院ふたたび」をまとめて前回ご紹介しました。このとき知恩院総門を出て、白川畔を眺め、白川沿いを部分的に散策しながら川端通に出ました(2017年6月)。
岡崎からの南の白川沿いは、その都度いつも部分的にしか歩いていません。 白川沿いに歩き通すかたちでまとめてみて、眺め直すのもおもしろいかとふと思った次第です。
そこで岡崎を訪れた帰路に、幾度も白川沿いにその一部を歩いてきて、折に触れて撮った記録写真を集めて編集し、 白川沿いの景観、史跡などへの誘いとして、探訪記をまとめてみます。白川沿いの四季を交えたご紹介です。

勿論、白川自体は比叡山と如意ヶ嶽の間の山麓を源とする河で、「北白川」という言葉で知られるとおりです。南禅寺の西側で琵琶湖疏水と合流します。そして、冒頭の地点に至るのです。 (資料1)

冒頭の画像は仁王門通から白川の右岸に入り、神宮道に立つ平安神宮の朱色の大鳥居を眺めた景色です。左に見えるのが、京都国立近代美術館です。この辺りはまだ左京区で、もう少し南で東山区に入ります。
(2016.10.12)
仁王門通に架かる白川の橋の傍、 「分水界」と題する碑 が目にとまります。そこには、白川と疏水を称える詩が記されているのです。こんな詩です。引用しましょう。

  白川はやさしい川
  比叡のかすみの向こうから
  京帯をなげおろし
  白川女のくりだすように
  恋にすすり咽く草の根わけ
  谷川石を縫ってくる
  南禅寺インクライン船溜で
  山を割って流れくる
  びわ湖疏水と合流し

  たゆとう川面に濡れながら
  白川砂を汲み上げる
  浚渫船の脇から
  壱別離苦の分水界
  ああ白川は妙なる川

(2016.10.12)
仁王門通の橋の上から白川が南に流れ始める景色です。
塀沿いの左岸を歩くと、白川が曲がっていく少し先で簡素な平橋を右岸に渡ることになります。
一方、仁王門通を西に数分歩くと、能の上演される 「京都観世会館」 、その西隣りに 「有麟館」 (中国文化の結晶を収集した美術館)があります。

 (2009.11.12)
晩秋の白川。左岸沿いの塀に紅葉を楽しめます。右に少しだけ、手摺も何もない幅の狭い平橋がちょこっと写っています。
(2013.4.17)
こちらは春に撮った一枚です。簡素で実用本位の平橋がこんな感じで架かっています。

白川に沿って右岸を歩いて行きます。
(2016.10.12)
白川に東の方から小さな流れが合流してきます。 その辺りが左京区と東山区の行政境界になります。その少し先、右岸の道路と民家との間に 「三谷稲荷社」 が北向きで祀られています。

この稲荷社に行くまでの上掲の左岸の景色で橋のある辺りの右岸側に、大正寺代には大きな水車を動かす水路が造られた精麦所があったそうです。 「竹中精麦所水車水路跡」 です。2016年にこの傍を通ったときには工事塀が建てられていて、その旨の表示がありました。この三谷稲荷社は、この稲荷社は水路と一帯の安全祈願のために祀られたといいます。 (資料2)

三谷稲荷の傍に、白川に架かる 「堀池橋」 があります。高さが低いながらこれが欄干の付いた最初の橋だったと思います。橋名とおりで、この辺りは堀池町です。

小川が合流しているこの近くには、焼板塀で日除けの簾を窓外にかけた民家が見られ、白川の風情を感じさせます。モダンな家より古風な家がやはり・・・・雰囲気がいいですね。

この辺りの地図(Mapion)はこちらからご覧ください。

堀池橋の南に見える橋は、 「三条北裏通」に架かる橋 です。
この橋の先は、白川端まで民家の敷地で川沿いには進めません。美術展を見るために岡崎に来た帰りは、この白川沿いに歩き、三条北裏通を利用して、適当なところから三条通に出ることが多いのです。
この橋を東に渡ると、左岸の際まで大きな民家の古風な塀囲いとなっています。
そこは 「並河靖之七宝記念館」 がある民家です。もともとの自宅兼工房が、記念館として利用されています。一度拝見したことがあります。良い雰囲気でした。


 (2013.4.17)
一旦、迂回して三条通に出て、 三条通の白川橋 まで戻ります。
白川橋の傍に、 「史跡 三条白河橋道標」 があります。延宝6年3月に建てられたものです。東面に「是よりひだり ちおんゐん ぎおん きよ水みち」と刻されていて、白川沿いに行けば、知恩院・祇園に行けますよという案内です。 (資料3)


(2013.4.17)
三条通から南に。白川沿いに歩きます。 最初に「土居之内橋」が見え、その少し先が、梅宮町です 。左岸の通りから東に入る辻の一つの角に、右の画像の石標が立っています。 「東梅宮 明智光秀墳」 と記されています。この道を少し東に入ると、 「明智光秀の塚」 があります。以前にここを探訪してまとめています。再録してご紹介したい所存です。


白川の東にある大きな南北の通りが神宮道です。そして、神宮道の東側が「粟田口」であり、青蓮院があり、さらに北東方向の先に、「粟田神社」があります。
この画像は、 2008年10月の「粟田祭」の折に、この三条から南の白川沿いを巡行する剣鉾を撮ったもの です。
知恩院の七不思議の一つ、「瓜生石」に関わる伝承の一説との接点があります。知恩院のご紹介のところで触れています。こちらを御覧いただけると、うれしいです。
(スポット探訪 京都・東山 知恩院 ふたたび -4 黒門・瓜生石・[元大谷]崇泰院・良正院・先求院・松風天満宮ほか へ)


 (2008.10.13)

 (2008.10.13)
(2017.6.12) (2017.6.12)
白川沿いに左岸を進むと、 知恩院総門の門前に、黒門に向かう華頂道に架かる幅の広い石橋 が見えます。
石橋の景色は橋の北端から南を眺めた景色です
他方、この石橋の北側の左岸には、上掲画像のように白川に張り出した船着場風の場所があります。
その北に「一本橋」と呼ばれる幅の狭い石橋が架かっています。
石橋から南に見える橋の先で白川は右(西)に曲がって行きます。 白川の右岸が「白川北通」 となります。左岸は白川際まで民家が建ち並んで行きます。


この後、東大路通を横切って白川北通、新門通、白川南通へと白川沿いに行けるところは流れに沿って歩くことになります。一部は迂回が必要です。


白川北通を進むと花見小路通に突き当たります。 白川に架かる橋が「有済橋」そして、その近くに「なすあり地蔵尊」という小祠と駒札 が目にとまりました。
(2017.6.12)
駒札説明の要点を箇条書きにしてみます。              
*道が「なすありの径」と名づけられていた。(→白川北通のことのようです)
*花見小路通の市の水道工事の時に、白川の川底から地蔵菩薩像が掘りだされた。
*「なすあり」は地元の小学校の名称「有済」に因む。有済小の校歌に「たえてしのべばなすあり」と歌われている。
*「有済」は中国の『書経』に記された言葉である。「人間はどんなつらい事に対してもたえてしのび努力すれば、必ずむくわれ成功する」と言う事を意味する。
*この地蔵を発見した故中村さんがお地蔵様を祀りたいという願いに四若神輿会がお堂の建立という協力をされて、今日に至る。
*「なすありの径」が京都市によりコミュニティ道路となったのを機会に「なすあり地蔵菩薩」と呼ぶことになった。

「有済」について少し調べてみますと、中国の儒書の一つ『書経』に出てくる言葉です。はじめは単に『書』と呼ばれ、漢代になって『尚書』と呼ばれたそうです。それが宋以降になって『書経』と呼ばれるようになったそうです。「五経」の一つになっているそうです。
 その『書経』の「君陳」に「 必有忍其乃有済 」(必ず忍ぶ有りて、其れ乃ち済す有り)というフレーズが記されているとか。「苦しい時でも耐え忍び、力一杯努力すれば、必ず報われ成功する」という意味です。 有済小学校の「有済」がここに由来するそうです (資料4,5)

この有済小学校も、少子化傾向の中で、創立135年をもって閉校となり、平成16年(2004)に白川小学校に統合されてしまいました。さらには、平成23年(2011)には、東山区北部の7小・中学校が統合され、東山開晴館(開晴小・中学校)となっています。 (資料5)

この先の白川は民家が川の際まで建て込んでいますので、花見小路通を下り、新門前通に一旦入ってみました。
「新門前橋」 が白川に架かっています。

橋の上から、白川を眺めた景色です。右の画像は、東から西に流れていた白川がこの部分で南北に流れの方向を転じて、この橋に至る景色。左の画像は南に流れゆく川が、南西方向(斜め右)に転じて行く景色です。転じた後の右岸が「白川南通」となります。


橋を渡って少し先に足を延ばしてみると、ここにもお地蔵様の小祠があります。

この辺りは「西之町」です。 「西之町の定め事(町式目)」というまちづくりニュース が掲示されています。 「西之町町式目」と古風な表現が意識的に使われていて、おもしろい 。京の町中ということが感じられます。

新門前通をそのまま西に進めば、川端通りに出ます。この景色は、その手前の南側の景色です。

この地図は、新門前通が川端通に出会う少し手前に掲示されている観光案内地図の部分拡大図です。北が下辺、南が上辺という形で描かれています。つまり白川は左下から右上へ、くねくねと方向を転じながら流れているのがおわかりいただけるでしょう。

白川沿いの探訪から外れますので、一旦花見小路通まで戻り、白川南通に入ります。
(2017.4.6)
白川南通に架かる橋はこの画像の左側。白川が方向を南から南西寄りに転じるのがこの画像の右側です。

新門前橋から南に流れてきた白川はこの箇所で方向を南西寄りに転じます。

白川に架かる巽橋上から南西寄りに流れる白川の景色。左岸には祇園末吉町のお店が軒を連ねています。
巽橋を渡って、祇園町北側のお店の間を通り抜けると、四条通です。

白川南通と新橋通の角地にあるのが 「辰已大明神」 です。
白川沿いで一番観光客が多いのは、やはりこの辺りから西への白川南通です。

白川の畔にあるうのが、吉井勇の有名な歌を刻んだ歌碑です。
(2008.10.13)
  かにかくに祇園はこひし寝るときも枕の下を水のながるる    吉井 勇
(2017.4.6)
歌碑は年中不変でも、周辺の木々は季節に応じて移り変わり、雰囲気も変化します。勿論、昼間と夜間の変化も同様です。この歌碑の場所で、毎年 「かにかくに祭」 が行われます。
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白川を西から東に眺めた景色。いくつかのお店は、白川南通側が入口となっていて、そこには橋が架けてあります。それがちょっとした川のアクセントにもなっています。

この辺り一帯は、昭和51年(1976)に「祇園新橋伝統的建造物群保存区」に京都市が指定し、風趣ある町並みの保存が図られています。 (現地説明板より)
祇園新橋は、東が花見小路通、西が縄手通(大和大路通)に挟まれ、北が新橋通、南が白川南通のそれぞれの南北の町並を含む範囲といいます。その内、1.4haの区域がこの保存地区に指定されていて、戸数104戸が選定されているそうです。祇園新橋の歴史は、江戸時代の正徳2年(1712)に開発された茶屋街から始まっているとか。新井白石が登用されて活躍していた頃です。この後、8代将軍吉宗の享保の改革に転じていきます。現在の建物は幕末動乱期の元治2年(1865)の大火後に再建されたものです。 (資料6)
このあたりの地図(Mapion)はこちらからご覧ください。




大和大路通は四条通を超えて北に上がると 「縄手通」 と称されます。縄手通(大和大路通)に架かるのが、 「大和橋」 です。


縄手通を横断して、白川通沿いに進むと、赤い傘を象った形で休憩エリアが作られています。
(2017.4.6)
川端通から眺めた白川と大和橋
左側には憩いのスペースがあり、左側手前には 「弁財天地蔵」 を祀る社があります。小さな境内地となっています。ここの地名は 弁財天町 です。
弁財天町から縄手通をはさみ、東側は元吉町、元吉町とは白川を挟んで南側が末吉町です。

弁財天地蔵の境内地の一隅に、いまではひっっそりと 「陶匠青木聾米宅蹟」 と刻された史跡碑が立っています。
809
白川の水は川端通の下をくぐって、鴨川に流れ込みます。
ここが白川の終着点です。

これで白川沿いのまとめとご紹介を終わります。
ご一読ありがとうございます。

参照資料
1) 白川(淀川水系)   :ウィキペディア
2) 竹中精麦所水車水路跡   :ウィキペディア
3) 三条通白川橋[道標]   H056 :「京都市」
4) 『中国古典名言事典』 諸橋轍次著  講談社学術文庫 p192
5) 「東山区八十周年記念誌」  京都市東山区役所
6) 『京都府の歴史散歩 中』 京都府歴史遺産研究会編 山川出版社 p132

補遺
京都観世会館   ホームページ
有麟館  ホームページ
並河靖之七宝記念館    ホームページ
水辺の作品展   京都市立芸術大学×京都岡崎の文化的景観
  三谷稲荷社付近を南から北に眺めた景色と水路跡の写真が載っています。
なすあり地蔵   「コトログ京都」
なすあり地蔵   道ばた史料館  :「京都新聞」
書経  :ウィキペディア
青木木米  :ウィキペディア
青木木米  :「e國寶」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)





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Last updated  2017.07.30 13:58:07
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