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2018.02.13
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カテゴリ: 観照
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これは大阪モノレールで「大阪空港」駅に着いた時に撮った景色です。
2014年10月に「大阪国際空港(伊丹空港)」の南側をぐるりとウォーキングしました。その時に歩いた記録は既にご紹介しています。このとき、ウォーキングの行程でウォッチングしたマンホールのふたを写真に撮っています。そのご紹介です。

大阪国際空港は空港のターミナルビルが豊中市の北西端の蛍池西町にあり、滑走路は兵庫県伊丹市の東端部を主体にして、南東端部が豊中市、北東端の一部が大阪府池田市に跨がっています。
地図(Mapion)をご覧いただくと一目瞭然です。こちらからご覧ください。

冒頭から話が逸れます。国内線の飛行機しか飛んでいないのに、なぜ「大阪国際空港」なのか? なぜ「伊丹空港」と呼ぶのか? なぜ地図にも括弧書きで付記されているのか?
そう言えば、かつて、この空港で飛行機を利用したとき、伊丹空港という言葉を使ってもいました。

ふと疑問を抱き調べてみました。
昭和11年(1936)に当初 「大阪第二飛行場」 「伊丹空港」 と称されるようになったそうです。それが 「大阪空港」 と改称され、国際便も飛ぶようになって 「大阪国際空港」 となります。泉佐野市に「関西国際空港」が建設され、平成6年(1994)に開港して国際便がこちらに就航することになりまっす。 大阪国際空港では平成6年9月までで国際線が廃止されたのです。

「大阪国際空港は『第一種空港』として位置づけられていましたが、空港整備法が 空港法 という名称に改正されるとともに、空港の区分が見直され、平成20年6月18日より 『国際航空輸送網又は国内航空輸送網の拠点となる空港』(28空港)として、東京国際、新千歳、福岡、那覇と同様の位置づけとなりました。
 空港の名称につきましても、国において名称変更が検討されていましたが、 周辺都市の要望などにより、改正前のままの『大阪国際空港』に据え置かれました。 (資料1) という経緯があるそうです。

大阪国際空港のWEBサイトがあります ​。これを見ると、 「ITAMI Osaka International Airport」 という英文表記と 「ITAMIガイド」 「大阪国際(伊丹)空港は国内線のみです」と表記してあるのがおもしろい。
やはり「伊丹空港」という呼び方にかつての馴染みがあり、わかりやすいということでしょうか。

そこで別の疑問が生じました。「大阪第二飛行場? ならば、第一ってどこにあったの?」です。調べると、情報は得られるものですね。
ルーツは、大阪市大正区に、大正12年(1923)に水陸両機能の民間空港として 「木津川飛行場」 が開港されたことにあったのです。ここが 大阪飛行場 とも呼ばれていたとか。ところが、この飛行場の発着数の限界を迎えるにあたり、 堺市大和川辺に大阪第一飛行場、伊丹に大阪第二飛行場を 建設し、機能を移転することになったとか。しかし、 大阪第一飛行場は計画だけで終わり (資料2,3)
今まで疑問を抱かなかったので、このことを知りませんでした。

本筋に戻ります。

大阪空港の滑走路の南端側にぐるりと回り込むために、歩き始めて道路で撮ったのがこの汚水ふたです。
中央の小円の中に、市章がレリーフされています 。この市章は一般公募をして1939年3月30日に制定されたそうです。
”図案化した豊中(トヨナカ)の頭文字「ト」を4個組み合わせて「トヨ(豊)」ともじり、全体の形を「中」と見たてて、「豊中(トヨ中)」としたものです。”とか。そして「図案文字の突起は豊中市が四方八方に発展することを象徴しています。」 (資料4)

このふたを観察すると、六角形の網状模様がベースになり、内円より外周円にやや寄る位置に6個の小円が配置されています。これは何か意味を持つのでしょうか・・・・。単なるデザインか?

ふたのベースに亀甲文(六角形)の網状のものを使うのは、他の都市の何カ所かで見ています。車のスリップ防止という機能的な役割があるのでしょうか。あるいはコストパフォーマンス的な利点でしょうか。


もう一つ見つけたのが、この 雨水用のふた です。形式は汚水用のふたと同じです。扇形のところに、「雨水」という文字を入れて識別されていることと、4箇所の小さな円の内側が穴になっているという違いが見られます。路面の雨水が落下できるようにということでしょうか。

二つに共通する汚水、雨水の二文字の間に上向きの矢印マークがあるのは何を意味するのでしょう? 
疑問が残りました。

それはさておき、ふたについては実質本位、機能本位の印象を抱きました。
これも一地域だけでウォッチングして撮った「ふた」ですという限定つきです。他のデザインのものがあるかもしれません。

ふたには表現されていませんので、序でに調べてみますと、 市の木は「キンモクセイ」、市の花は「バラ」 が、1966年に市制30周年記念として市民投票で決定されたそうです。 (資料4)

豊中市のホームページを見ると「キンモクセイ(モクセイ科)」と記された横に「Osmanthus fragrans」と記されていています。これはモクセイの学名で、広義には属する変種、品種の総称をさすようです。同様に「バラ(バラ科)」の横に「Rosa x hybrida」とあります。Rosaがバラ属を意味するようですので、hybridaとの交配によるバラということかと思います。 (資料5,6)
バラは種類が多いのですね。検索してみて、驚きました。一説に約2万種以上もとか。 (資料7)

豊中市の地域を歴史的に遡ると、『古事記』に「それで、兄のヒコヤヰは、茨田の連、手島の連らの祖 (おや) になったのじゃ」と語られる部分が、神代篇・其の七に出て来ます。この手島の連が摂津国豊島郡(大阪府豊中市・池田市・箕面市あたり)を本拠とした豪族と考えられているようです (資料8)
そして、 豊嶋郡 という記述は 『続日本紀』 の称徳天皇の時代、神護景雲3年5月22日の条に「摂津国豊嶋郡の人で、正七位上の秦井手小足 (はたのいでおたり) ら15人に秦井手忌寸の姓を賜った」 (資料9) と記されています。
中世には藤原氏の私領となり、戦国期に至ると、伊丹市のところで触れますが、荒木村重がこのあたりも支配下においた時期があるようです。江戸時代には幕府が政策的に領地を入り組んだ形にして「入組支配」を行ったと言います。意図的にこの地域がまとまることを回避したようです。
そして、 明治22年(1889)に町村制が施行されたときに、豊島郡豊中村が発足した そうです。豊島郡の中央に集落があったことから名づけられたと伝えられていて、 「豊中」という地名ができたのはこのときだとか 。そして、豊中村から豊中町に、さらには 昭和11年(1936)に、豊中町、麻田村、桜井谷村、熊野田村が合併、豊中市となります。 その後、中豊島村、南豊島村、小曽根村、三島郡新田村のうち大字上新田、豊能郡庄内町が段階的に豊中市に編入されて行きます。 (資料10)
発足時の豊中市を1つに数えると、6カ所が統合されて現在の市域になったようです。
想像を膨らませて、6角形や6つの小円は6カ所の統合の表象と受け止めるのもおもしろいかもしれません。


伊丹市の方に滑走路の境界沿いに回り込むと、空港のターミナルビルや滑走路など全景を眺められる場所があります。 「伊丹スカイパーク」 です。ちょっと余談に。


伊丹市の昆陽池公園の近くの道路で撮ったのがこの 汚水ふた です。

伊丹市の名前の由来は、このあたりを領有した 伊丹氏が伊丹城を構えていた ことに由来するのでしょう。 天正2年(1574)に織田信長に仕えていた荒木村重が伊丹城に入城します。そして、有岡城と改名して、摂津国を任されるのです 。しかし村重は信長に反乱を起こします。黒田官兵衛がこの城に幽閉されて足を萎えさせたのは良く知られた話です。 信長の大軍の包囲により、有岡城は落城します。その後、廃城となります。
江戸時代の寛文元年(1661)から明治維新まで、このあたりは京都の公家である 近衛家が領有 していたそうです。荒木村重・有岡城のことは知っていましたが、近衛家の領地というのは知りませんでした。
この汚水のふたの中央にあるのは 調べてみると 伊丹市の市章 ですが、「近衛家(京都の公家で五摂家筆頭)の家紋のひとつである合印紋」を昭和18年(1943)に市章として制定したものだそうです。 (資料11)

伊丹市のふたは、ベースがテトラポットをイメージさせるような形をつないだデザインになっています。そして、中央の市章を左右と上の三方向で囲むように小円がその中に配されています。こちらは9つの小円です。
伊丹町と稲野村が合併して伊丹市が発足 し、その後に神津村の編入、宝塚市の一部(旧長尾村の一部)編入という経緯を経て現在に至るようですので、しいて言えば、3という数字がリンクするのかも知れませんが、単なるふたのデザインなのかもしれません。 (資料11)
こちらも、豊中市と同様に、実質・機能本位という印象を受けます。

【2018.2.22 追記】
 その後、他の都市関連で調べていて、思わぬところからベースの文様のことを知りましたので補足します。 「毘沙門亀甲文様」 と称するそうです。「六角形を下にふたつ、上に一つ結合して人の字形にした」という文様だとか。毘沙門は「毘沙門天」のことです。「毘沙門天の着衣や甲冑に使われていることからその名がつきました」とのことです。
 詳しい説明は、「神格性を持った亀甲文様係」(伊藤俊治氏)と題する「装い-歌舞伎衣装、かつらの美」の項 (「歌舞伎美人」の記事) を​ こちらからご覧ください。
 そして、この名称がわかったことから、 愛知県常滑市が汚水ふたのベースにこの文様を利用されているということ を、あるブログ記事で知りました。序でにご紹介します​ 。こちらをご覧ください。 (「毘沙門亀甲文様のマンホール[蓋女が行く] :「きょうのちょい福その2」) このことを知れば、少し見方が変わりそう・・・・。

それよりも、


この2種類のふたを道路に見つけたときが、楽しい感じでした。
彩色されているものの方が、やはりインパクトが強いですね。

伊丹市の市の鳥はカモです。 「昭和45年、市内の小中学校の理科担当教諭などでつくる協議会が市民の意見を募り選定」 (資料11) したそうです。大阪国際空港周辺をウォーキングした時、昆陽池に立ち寄りました。11月ごろには、北の国からカモが昆陽池に飛来するそうです。また、「春には白鳥の抱卵やひなたちを引き連れて泳ぐ可愛らしい姿」を見ることができるといいます。 (資料12)

こちらのふたは、中央にコブハクチョウを、その周辺に市の鳥・カモが昆陽池に浮かぶ姿を描いていると読み取れます。

序でに、 伊丹市の市の木は「クスノキ」で、市の花は「ツツジ」 が選定されています。
法厳寺には高さ28mの大クスノキがあり、兵庫県の天然記念物に指定されているそうです 。市役所前にもクスノキがあるとか。ツツジは「緑ケ丘公園や昆陽池公園、瑞ケ池公園、千僧浄水場前、伊丹スカイパークなどには、まとまって植えられています。」と説明されています。開花シーズンにこれらの公園などを訪れると楽しめるでしょうね。
京都なら、蹴上げにある浄水場のツツジをまず私は思い浮かべてます。

最後の脇道です。伊丹氏に少し関心をいだき、ネット検索で少し調べてみました。
摂津国川辺郡伊丹荘、つまり伊丹城を拠点とした国人の伊丹氏は、信長の命を受けた荒木村重に城を包囲され、落城自刃して果てます。それとは別流として、徳川の旗本となった伊丹氏が存在するようです。おそらく同族ではないかとか。 (資料13)

マンホールのふたから波紋を拡げていくと、結構様々な史実や事象が結びついてきて、興味深いものです。

ご一読ありがとうございます。


参照資料
1) ​ 大阪国際空港の沿革 ​  :「豊中市」
2) ​ 木津川飛行場 ​  :ウィキペディア
   ​ 大阪伊丹空港は予備の第二空港だった ​  :「ROSSさんの大阪ハクナマタタ」
3) ​ 大和川国際飛行場について知りたい。 ​:「レファレンス協同データベース」
4) ​ 市の概要 ​  :「豊中市」
5) ​ キンモクセイ ​ :ウィキペディア
  ​ モクセイ ​  :ウィキペディア
6) ​ バラ科 ​  :ウィキペディア
  ​ バラ属の種の一覧 ​   :ウィキペディア
7) ​ バラの種類 ​  :「公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会」
  ​ バラ図鑑 ​  :「NOIBARA」
8) 『口語訳 古事記 [完全版]』 訳・注釈 三浦佑之 文藝春秋  p140
9) 『続日本紀 (中)』 全現代語訳  宇治谷孟 講談社学術文庫 p449
10) ​ 豊中市 ​   :ウィキペディア
    ​ 豊中の歴史と歩み(市の歴史) ​  :「豊中市」
11)​ 歴史・文化 ​ :「伊丹市」
12) ​ 昆陽池公園 ​ :「伊丹市」
13) ​ 伊丹氏 ​  :「戦国大名探究」

補遺
豊中市 ​ ホームページ
伊丹市 ​ ホームページ
  ​ 法厳寺の大クス
大阪国際空港 ​  :「国土交通省 大阪航空局」
大阪国際空港 ​ ホームページ
昆陽池公園 ​  pdfファイル
荒木村重 ​  :ウィキペディア
遠くからでもその迫力は...法巌寺(ほうがんじ)の大クス~伊丹紹介⑧ ​:「阪急電鉄」

【2018.2.22 追記】
   ​ 毘沙門天 ​  :ウィキペディア
   ​ 毘沙門天像 ​ :「京都国立博物館」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

マンホールのふた見聞考  ウォッチング掲載記事一覧

歩く [再録] 大阪国際空港ぐるり -1 離着陸プロセスの絶景スポット
  これを含めて4回のシリーズでご紹介しています。
  こちらもご覧いただけるとうれしいです。
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Last updated  2018.09.13 19:11:36
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