遊心六中記

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2021.02.15
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カテゴリ: 観照 & 探訪
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​京阪電車宇治駅から右手に宇治橋を眺めつつ、宇治川右岸沿いの朝霧通(府道247号)を上流側に歩みます。
橋寺放生院、正覚院、京都府茶業会館、宇治神社の鳥居前を通り過ぎると、右に宇治川宇治公園に架かる朱塗りの「朝霧橋」があります。
道路の左側に朝霧松露会館が見え、その手前に 「真言宗朝日山恵心院」の寺号標 が立っていて緩やかな坂道の参道が延びています。

寺号標の背後に、恵心院の 「木造十一面観音立像」(宇治市指定文化財)の案内板 が設置されています。残念ながら褪色し読みづらくなっています。もう一つ 「宇治市の史跡紹介」 が設置されています。こちらは読むのに支障はありませんが、画像としてはうまく撮れませんでした。ここでのご紹介の中で、参照資料として利用したいと思います。

緩やかな坂道を登ると 突き当たりに覆屋 があります。赤地に白抜きで「南無遍照金剛」と記された幟が数多く奉納されていて、 弘法大師の石像 が建立されています。
右折してさらに坂道を少し上ります。
恵心院の表門 が見えます。
この門の左側は境内に上るための舗装された車道が設けてあります。たぶんかつては築地塀が延びていたのかなと勝手に想像しました。今はオープンな空間になっています。
表門の右手前に 「恵心僧都説法の遺場」と刻された石標 が設置してあります。

上記「宇治市史跡紹介」は「 当寺のはじまりは、弘仁12年(821)に真言宗の開祖弘法大師によって開かれた古刹龍泉寺と伝えられ 」と説明しています。この「寺名は唐の青龍寺に似ているところから龍泉寺と呼ばれた」 (資料1)
一方、観音立像の説明板には「寺伝によれば弘仁13年(822)空海の創建になるという」 (資料1) とあり、手許の本も弘仁13年と説明しています (資料2) 。伝承なので多少の差異は誤差範囲というところでしょうか。
その後、 1005(寛弘2)年比叡山横川の僧都源信がこの寺を再興 し、寺号を朝日山恵心院と称するようになったと言います。 恵心僧都源信は『往生要集』の編者 (宇治市史跡紹介、資料1,2)

宇治と言えば、『源氏物語』の宇治十帖のヒロインである浮舟にふれることは定番のようなものです。朝霧橋の東詰畔にモニュメントも建立されています。
宇治十帖の「浮舟」の巻では、浮舟が宇治川に入水する決意を描いて終わります。「蜻蛉」の巻は浮舟の失踪が引き起こした波紋と影響のプロセスが描き出され、亡骸のないままの葬儀が執り行われることにもなります。「手習」の巻で、実は浮舟は死んではいなかったという展開に・・・。初瀬詣での帰途に体調を崩した横川の僧都の母尼と僧都の妹尼らの一行が宇治に立ち寄ります。山籠もり中の横川の僧都は下山してきて母尼の助けをします。僧都と僧都の母尼は、浮舟とは知らずに助けます。一行は浮舟を小野の山里に連れて帰ります。「夜更けておはし着きぬ。僧都は親をあつかひ、むすめの尼君は、この知らぬ人をはぐくみて、みな抱きおろしつつ休む」(資料3)と「手習」に記されています。浮舟は小野の里で世話を受けることになり、やがて僧都に懇願して出家します。「ただ頂ばかりを削ぎ、五戒ばかりをうけさせたてまつる。・・・・僧都は、今はかばかりにて、いたはりやめたてまつりたまへと言いおきて、登たまひぬ」(資料3)と描写されています。浮舟に新たな道を歩ませるのが横川の僧都です。 (資料3,4)
この横川の僧都は恵心僧都源信をモデルにしていると言われています。


表門の屋根を支える 蟇股 。蟇股の中央の円の中のシンプルな線描は三葉葵を図案化しているのでしょうか。ちょっと興味を引かれるところがあります。
鬼瓦と飾り瓦

      門を入ると、斜め左方向に本堂が見えます。 手前の掲示板の文 をご紹介しましょう。
過去にまいた種が今、花開く すべては因と縁でつながっている 」と記されています。
その後に、小さな文字で次の文も併記されています。
道うこと莫れ、比の華今年発くと。応に知るべし。往歳種因を下すを。 』「拾遺雑集」
  (いうことなかれ、このはなことしひらくと。
   まさにしるべし。おうさいしゅいんをくだすを)
インターネットで検索してみますと、こちらの原典は『弘法大師全集』に所収の「拾遺雑集」に録された「過因詩」と題する漢詩です。 (資料5,6)
  莫道此華今年発
  応知往歳下種因
  因縁相感枝幹聳
  何況近日遇早春

二度も脇道に逸れました。元に戻ります。

山門の傍から 境内にはスイセン(日本水仙)が咲き誇っています
実は、一週間ほど前に、NHKの午後6時台の京都府関連ニュース報道で、宇治の恵心院でスイセンが咲き始め、2月の下旬ごろまでが見頃というのを見ました。この宇治川右岸では、上記の橋寺往生院からさらに上流側にある興聖寺までの寺社はこの恵心院を除き、今までに数度訪れていました。恵心院は未訪でしたので、このニュースがトリガーとなって、ちょっと恵心院だけ先週の土曜日に訪れてみた次第です。
(訪れた時間帯では、10人未満の参拝者・来訪者でした。)


左の参道を歩むと、 本堂 です。

              本堂正面に 「恵心院」の扁額 が掲げてあります。

大棟の瓦が生み出す幾何学的な美

正面にむかって右側の 下り棟と稚児棟の鬼瓦
躍動的な獅子の飾り瓦
軒丸瓦の正面には「恵心院」の文字 が陽刻されています。

冒頭に記した「木造十一面観音」は恵心院の本尊です。(本堂内は拝観していません。)
案内板によると、平安時代の作で一木造・古色・彫眼で像高は91.5cmだと言います。

恵心院は豊臣秀吉、徳川家康の庇護を受けたそうです。江戸時代初期に淀藩主永井尚政により伽藍の整備がなされました。現在は、1559(永禄2)年建立の本堂と表門が残っているとのことです。 (資料1,2)
表門は天正17年(1589)再建のものと言います。 (資料7)
また、「近世にはいると、春日局との縁故もあり、宇治茶師上林一門の後援を受けました」という説明もあります (宇治市史跡紹介より)

           本堂正面の右側にはこの文が掲示されていました。

この掲示のある手前、少し南側に離れた位置に本堂に向かう形で

     こ が建立されています。「 子育 水子 地蔵尊 」です。

                             傍にこの 駒札 が立っています。

地蔵尊の台座上には、地蔵尊を囲む形で祈願奉納された小ぶりな地蔵菩薩坐像が幾重にも列をなしています。



地蔵尊立像の所から本堂の東側面に境内の歩道を回り込んでみます。
満月蝋梅(マンゲツロウバイ) 」の札が付けられています。

この蝋梅越しに、 本堂の東側面 が見えます。 入母屋造りの屋根 です。

足許を見下ろすと、石造りの小川、石塔と石で作庭され、信樂焼の狸が置かれていておもしろい。
大棟の鬼瓦

妻降の先端の鬼瓦 阿形・吽形の相貌 に造形されています。



境内地の東側は 散策路や憩いの空間でいくつかの区画に分かれていますが、 一帯にスイセンが咲き乱れて いて、見頃になってきています。

「蘇秦蝋梅(ソシンロウバイ)」 の札が付けられた梅の木もあります。
 境内地東端寄りの建物の南庭部分を眺めると、
この 小さな小便小僧像 が傍の石に寄りかかる感じで置かれていました。ちょっとユーモラス。

建物の西側の通路には柵と扉があって、扉の先北東側は境内墓地になっているようです。

閉じられた扉の手前から、 地蔵尊と六地蔵 が見えます。











本堂より西側、山門に近い境内地への車道寄りにこの鎮守社があります。
白龍大神社 だそうです。 (資料5)

手前の 木鼻 は象の姿です。これも 阿形・吽形の形 であることがわかります。
本殿部分の木鼻はごくシンプルな造形です。

唐破風屋根内に 龍像の彫刻 が見られますが、全体を撮ることはできませんでした。

表門を出て、参道の坂道を下ります。

    宇治川右岸の上流側から「 朝霧橋 」を眺めて、恵心院を後にしました。

ご覧いただきありがとうございます。

参照資料
1)「木造十一面観音立像」案内板 平成4年3月 宇治市教育委員会 恵心院参道傍
2)『京都府の歴史散歩 下』 京都府歴史遺産研究会編 山川出版社 p65
3)『源氏物語 6』 新編日本古典文学全集 小学館 p290-291, p298
4)『源氏物語ハンドブック』 鈴木日出男編  三省堂 p48-51
5) ​ 中島由起子さんのツイッター情報 ​ 2019年1月1日
6) ​ 弘法大師全集. 巻10 祖風宣揚会 編 ​   :「国立国会図書館デジタルコレクション」
   巻10のP232に載っています。119/138コマです。
7) ​ 惠心院 ​ :ウィキペディア

補遺
源信 ​  :「Web版 新纂浄土宗大辞典」
源信 ​  :「コトバンク」
恵心僧都源信 ​ :「天台宗 祖師先徳賛仰大法会」
ニホンスイセン (日本水仙) ​  :「花々のよもやま話」
やっぱり日本水仙! ​  :「みんなの趣味の園芸」
ロウバイ ​  :ウィキペディア
蝋梅(ロウバイ)の花言葉や生け方、育て方などご紹介 ​ :「LOVEGREEN」

  ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
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Last updated  2021.02.15 13:32:54
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