音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年07月18日
XML
ヒットにあやかったライブ・アルバムの「例外」


 スマッシュ・ヒット曲や大ヒット・アルバムに乗じて出るライブ盤には総じて「はずれ」が多い。考えて見れば、そりゃそうか。レコード会社だって苦労して育てたアーティストがリスナーに支持されれば、さらにそのアーティストの作品をリリースして、しかも、しっかり儲けたいはず。そして、その結末たるや、推して知るべし。一過性のヒットに乗じた駄作ライブ・アルバムだけが後に残ってしまう、そんなパターンが典型だろう。
 さて、ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジは1954年生まれのブルース・ホーンズビーをリーダーとするアメリカのバンド。デビューまでの下積み生活(シーナ・イーストンのバックでも演奏していたらしい)を経て、「ヒューイ・ルイスに見出された」との触れ込みでデビュー。当時のヒューイ・ルイスはといえば、アメリカン・ロックの大スター。それもあってか、デビューアルバム『ザ・ウェイ・イット・イズ』は大ヒットを記録。同アルバムからカットされたタイトル曲が1986年に全米No. 1となり、スターダムに躍り出た。その後も同アルバムからは、「エブリ・リトル・キス」、「マンドリン・レイン」といったシングルがたて続けにヒットした。
 そんな大ブレーク真っただ中で、「日本限定盤」として発売されたのが、1987年のこのアルバム。ニューヨークはリッツでの演奏(同年2月)が収められている。収録曲はいずれも上記のデビューアルバムからのもので、6曲しか入っていない(うち1曲は2トラックに分割されている)が、それぞれが6~7分と長尺のため、トータルではフルアルバムなみの収録時間になる。
 さて、本作の中身だが、上の収録時間(各曲6~7分)ということからわかるように、実にのびのびと、そして自由に演奏している。きっとブレークする前からこういう演奏をライブでいつもやっていたのだろうな、と想像させてくれる。つまるところ、大ヒットしたことで無理に聴き手に迎合することもなく、今までどおりのプレイを、今まで通りの方法で、いい意味でやりたいようにやっている雰囲気が伝わってくる。
 そうした雰囲気を伝える最たる曲が「ザ・ウェイ・イット・イズ」。上で述べたように全米No.1だから、下手なライブアルバムだったら、聴衆が「キャー」と叫んで熱狂し、アーティスト側はといえば、演奏内容はほどほどに原曲を再現して終わってしまいそうなところだ。ところがブルース・ホーンズビーは「ソロ・ピアノ・イントロ」を7分にわたって延々演奏する。観衆がピアノ・ソロに聞き惚れたところで、かのヒット曲のピアノの出だし、そして曲本体へとなだれ込む。ヒット曲を「商品」としてではなく、「作品」として大事に演奏している。
 もう一つ、このアルバム全体の雰囲気を良くしている要素として、チープなポップに終わらない彼ら(特にリーダーのブルース・ホーンズビー)の音楽的バックグラウンドがにじみ出ている点がある。後にジャズ系アーティストとのコラボレーションへと向かっていく志向性は既にこのライブ演奏でもかなり発揮されている。この点もまた、本アルバムを「ありがちな駄作」に終わらせなかった大事な要因なのだろう。

(余談) これ書いてて初めて気づきました。「ホーンスビー」じゃなくて、「ホーンズビー」(濁点あり)だったんですね(笑)。日本盤の(日本語で表記された)アルバムを何枚も持ってるのに、20年も勘違いしていました。カタカナ絡みでついでに言わせてもらうと、「(ザ・ウェイ・)イット・イズ」っていう、ベタな表記は何とかならなかったのだろうか…。80年代だからその頃は気にならなかったのかもしれないけど、今となってはいかにも「日本人の通じないカタカナ英語」の典型みたいに見えてしまうのでした。


[収録曲]

2. The Long Race
3. The Way It Is (intro)
4. The Way It Is
5. Mandolin Rain
6. The Red Plains
7. On The Western Skyline






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009年07月26日 17時17分05秒
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: