音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年10月24日
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テーマ: Jazz(1972)
カテゴリ: ジャズ




 デクスター・ゴードンは、1923年生まれのアメリカ合衆国のジャズ・サックス奏者。1940年代から活躍し、途中、麻薬中毒で活動が止まった時期もあったが、長くアーティストとしての活動を続け、1986年には映画『ラウンド・ミッドナイト』でも活躍した。1990年に67歳で亡くなっている。彼が1962年にブルーノートで録音した本作『ゴー!』は、どのジャズ名盤ガイドを見ても登場しそうな定評のある一枚であり、彼の代表作の一つである。

 ジャズの真髄がアドリブにあり、楽器演奏を通して発せられる個性や独自性にその核心があると仮に定義するならば、デクスターの本盤は最高傑作ということになるだろう。上のようにジャズという音楽を定義するならば、重要なポイントは2つあると思う。一つは、演奏者個々の楽器の音色および演奏の仕方(音の出し方)による独自性であり、ここでは"音の独自性"と呼んでおく。もう一つのポイントとなるのは、演奏内容としての"アドリブ"、すなわち原曲のメロディをどう破壊し再構築して独自の演奏内容を繰り広げるか、という才能や閃きの部分ということになろう。

 本作におけるデクスターはこの二点のオリジナリティが明確かつ抜群で、だからこそ名盤と呼ばれて久しいのではないだろうか。上で挙げた一点目から見ていこう。本盤の彼のテナーの音はふくよかであり、なおかつ芯がある。一般に、デクスターのサックス演奏は、大らかで伸び伸びとしたプレイが魅力と言われるが、本盤の演奏を聴いていると、単に大らかなだけではなくて、一音一音に切れがあるのもその魅力につながっているのだと思う。次に、二点目に関して、デクスターの演奏は"後ノリ"だと評される。つまり、もたついているかのようで、完全にもたついたタイミングになる前にフレーズが飛び出てくるわけである。本盤の演奏を聴いて筆者が感じるのは、もしこれが"後ノリ"でなかったら、メロディが美しく流れすぎて退屈になっていたのかもしれない、ということである。前述の柔らかくふくよかでなおかつ芯のある音が、"ため"を作ったうえで心地よいアドリブのメロディを奏でる(しかも他曲からの"引用"もうまく混ぜ込まれている)からこそ、聴き手を飽きさせないのだと思う。したがって、デクスターのサックスが奏でる音を追い続けながら聴くと、わくわくして楽しい時間があっという間に過ぎていく。

 何だか抽象的で全体的な話になってしまい、収録曲の個別の話や他のパーソネルの話から外れてしまったので、最後に付け加えておきたい。収録曲はほとんどどれも好きなのだが、いくつかだけに絞ると、本作の代表曲1.「チーズ・ケイク(チーズケーキ)」、4.「ラヴ・フォー・セール」、6.「スリー・オクロック・イン・ザ・モーニング」。いずれの曲も上で述べたデクスターのサックス演奏の魅力に溢れている。あと、メンバーで注目はピアノのソニー・クラーク。彼の演奏がデクスターの"後ノリ"とうまく絡み合っている。さらに、デクスターのテナーのワン・ホーン(ベース+ドラム+ピアノに管楽器が一つだけ加わる)であることが、本項で述べた彼の演奏を楽しむのに適していると思う。また、ジャズを聴こうと思い立った人すべてに合うとは言わないが、入門者のうちでサックス演奏を聴いてみたいと思った向きには、「彼のサックスのメロディを追いながら聴いてみてください」という言葉を添えて、筆者ならお勧めする一枚である。


[収録曲]
1. Cheese Cake
2. I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry

4. Love For Sale
5. Where Are You
6. Three O'clock In The Morning

Dexter Gordon (ts)
Sonny Clarke (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)

録音: 1962年8月27日






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Last updated  2013年07月23日 21時07分00秒 コメント(1) | コメントを書く


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