音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2009年12月01日
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テーマ: musica latina(82)
ポップ・ラティーノ歌手によるランチェラ・アルバム


 アナ・ガブリエル(Ana Gabriel)は、1955年、メキシコ・シナロア州出身のポップ歌手。「メキシコの女王」や「アメリカ大陸の歌姫」などと呼ばれ、ラテン系ポップ(=ポップ・ラティーノ)を代表する歌い手である。

 彼女の本名はマリーア・グアダルーペ・アラウホ・ヨングといい、母方に東洋系(中国移民)の血を引く。1979年にアナ・ガブリエルという芸名で活動を始め、1980年代にはOTI(Organización de Televisión Iberoamericana、イベロアメリカ・テレビ協会)というスペイン語・ポルトガル語圏のテレビネットワークが主催するフェスティバルで優勝している。

 アナ・ガブリエルの音楽は、ラテン・ポップ/ロック系とランチェラ系の2種に大別される。好みが分かれると思うので、この人のアルバムを買う時は、どちらの系統かに注意が必要だ。1995年発表の本作『二百年の至宝(Joyas de Dos Siglos、ホーヤス・デ・ドス・シグロス)』はアナ・ガブリエルにとって11枚目のアルバムで、本格的にランチェラ音楽を扱った最初のものである。本盤は、一見してジャケットからランチェラ系とわかるもので、メキシコの伝統衣装に身を包んだアナ・ガブリエル本人のセピア色のポートレートが中央にあり、左右にギターが配された、メキシコのランチェラ・アルバムにしてはなかなか洒落たジャケット・デザインだ(ちなみにランチェラに多いのは、伝統衣装に身を包んだ歌手のカラー写真がこれ見よがしに前面に配置されたようなパターンである)。

 ランチェラとは、19世紀に由来し、20世紀半ばに大衆に定着したメキシコの伝統音楽ジャンルである。田舎の生活や恋物語などが詞の題材としてよく取り上げられ、マリアッチやコリードなどといったジャンルとも深いかかわりがある。一般的には、歌い手も伝統衣装(ソンブレロをかぶった典型的メキシコ人イメージ)に身を包み、こぶしをまわすかのように情感を込めて歌い上げるスタイルである。ある意味では、日本の演歌的要素を含んでいると言えるかもしれない。

 複数出されている彼女のランチェラ・アルバムの中で、筆者がいちばんよく聴くのが本盤である。選曲もよければ、本人の歌も実に情感豊かにきまっている。収録曲の全15曲中で一押しは、1.「寛容(クレメンシア)」。シンプルなギター演奏に、溜めを効かせたアナ・ガブリエルの歌声が曲調に実にマッチしている。他の各曲も、演奏はギター中心の控えめな演奏(曲によってはヴァイオリン、ハーモニカも入っている)である。上記1.を別にして、本アルバムの収録曲で筆者が気に入っているのは、2.「古き愛(ウン・ビエホ・アモール)」、6.「和解(レコンシリアシオン)」、有名曲の7.「アイ・ウノス・オホス」、9.「黒い結婚式(ボーダ・ネグラ)」、12.「哀しきボヘミアン(ポブレ・ボエミオ)」といったところだが、総じてどの曲も出来がいい。

 ポップ系のアナ・ガブリエルではなく、ランチェラ系のアナ・ガブリエルに興味がある人には、最初に聴くなら本盤を勧めたい。


[収録曲]
1. Clemencia

3. Aburrido Me Voy
4. Ya Se Va la Embarcación
5. La Despedida
6. Reconciliación
7. Hay Unos Ojos
8. Flor Triste
9. Boda Negra
10. Marchita el Alma
11. A la Orilla de Un Palmar
12. Pobre Bohemio
13. Adiós Mi Chaparrita

15. Valentín de la Sierra

1997年リリース。



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Last updated  2009年12月01日 06時59分10秒
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