音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年08月21日
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テーマ: Jazz(1977)
カテゴリ: ジャズ




 〈ジャズ・イン・パリ〉シリーズというのは、ユニバーサル・フランスが手がけたジャズCDのシリーズで、その一部については日本盤も発売された。デジタル・リマスターを謳っているが盤によっては音質がいまいちだとか、ジャケットがオリジナル無視のパリの風景だとか、いろんな声が聞こえてはくるものの、過去の貴重な音源が結構まとめてCD化され、それらを広く知らしめ普及させたという点では、ありがたいシリーズだ。本盤もそんな〈ジャズ・イン・パリ〉シリーズの1枚である。ただし、この盤に関しては、もともとのオリジナル・アルバムというのが存在するわけではなく、EP音源の寄せ集めである。

 前半(1.~7.)はアルト奏者ユベール・フォル絡みのEP2枚分である。これら7曲のうち、1.~3.はユベール・フォルのワン・ホーンのカルテット、4.~7.は管楽器アレンジ系で、ヴィブラフォンも含むミシェル・ド・ヴィレ中心の8人編成の演奏。これらの音源は、それぞれ1956年と1954年に録音されたものである。

 これに対して、後半(8.~14.)は1962年と1963年のEPを再録したもので、ソニー・クリスのカルテットおよびオルガン入りクインテットの演奏である。アルト・サックス奏者という共通点はあるものの、時間的にも最大10年近い隔たりがあるし、どう考えても無茶な組み合わせ、ずばり言ってしまえば、“パリ(サン・ジェルマン)”と“サックス(アルト・サックス)”というタイトルにしか共通性のない、“寄せ集め”の印象が拭えない。こう言ってしまっては身も蓋もないが、正直なところ、アルバムとしては間違っても出来のいいものとは言えない(実際、通して聴いたら、最後に空虚感や物足りなさが残る)。

 前半(特に1.~3.)のユベール・フォルの柔らかなアルトも悪くはない。4.~7.の八重奏団のアレンジもそれはそれでいいものだと思う。しかし、本盤の聴きどころは(というか筆者が本盤を購入した目的もそうなのだが)あくまで後半のソニー・クリスにある。“寄せ集めだから”、“企画ものシリーズだから”といった理由で聴き逃すにはあまりにもったいない演奏だと思う。つまりは、“珍しい音源だから”というマニアの方もいるだろうが、そういう希少性とは別に、これらの演奏におけるサービス精神全開のソニー・クリスがいい。ソニー・クリス主体の8.~14.のうち、8.~11.はカルテット演奏、12.~14.がオルガン入りクインテットの演奏である。

 まず8.「マイティ・ロウ」から始まるカルテット(4人組)演奏の部分であるが、全体の雰囲気はまったり、ソニー・クリスのソロはサービスたっぷりといった風情である。演歌顔負け(?)の得意の節回し全開で、時折擦れながら微妙に揺れるサックス音が心地いい。合間合間の小刻みな奏法についてはおそらく好みが分かれる部分ではあるが、11.「ウィル・ビー・トゥギャザー・アゲイン」に至るまでの4曲が本盤の最大の聴きどころであると個人的には思う。場合によっては、本盤のこの部分だけを聴くのもいいようにすら感じる。

 続く12.からはメンバーがごっそり入れ替わり、録音年も別である(前の4曲と共通するのはソニー・クリスの他はドラマーのみで、およそ半年後の演奏)。ギターが加わり、オルガンを含めたクインテット(5人組)編成で演奏されている。残念なのは、12.がフェードアウトしてしまっているところだが、同じ曲の“パート2”である13.でオルガン入りの熱気はちゃんと伝わってくる。この曲がオルガンとサックスをメインにしているのに対し、14.はソニー・クリスのサックスがより中心に演奏が展開する。録音の問題と当日の演奏の問題が重なったのかとは推測するが、サックスの音のエッジがしっかりしていないのが心残りである。ただし、ソニー・クリス節はこれら3曲にもしっかり現れている。




[収録曲]

~Hubert Fol Quartet~

 2. They can't take that away from me
 3. You go to my head

~Michel de Villers Octet~
 4. Cat on the stairs
 5. These foolish things
 6. I only have eyes for you
 7. Penitas de amor

~Sonny Criss Quartet/Quintet~
 8. Mighty low
 9. Don't blame me
 10. Black coffee

 12. Early and later, part 1
 13. Early and later, part 2
 14. Blues pour flirter No.2


[パーソネル、録音、原盤]

 Hubert Fol Quartet(1.~3.):

 Ren? Urtreger (p)
 Jean-Marie Ingrand (b)
 Jean-Louis Viale (ds)
 1956年1月18日パリ録音、EP Barclay 74 016

Michel de Villers Octet(4.~7.):
 Charles Vestraete (tb)
 Hubert Fol (as) 
 Maurice Meunier (ts)
 Michel De Villers (bs)
 G?o Daly (vib)
 Andr? Persiany (p, arr)
 Alix Bret (b)
 Bernard Planchenault (ds)
 1954年パリ録音、EP Decca 450 511

Sonny Criss Quartet (8.~11.)
 Sonny Criss (as)
 Henri Renaud (p)
 Michel Gaudry (b)
 Philippe Combelle (ds)
 1962年10月10日パリ録音、EP Polydor 27 004

Sonny Criss Quintet (12.~14.)
 Sonny Criss (as)
 Georges Arvanitas (p, org)
 Ren? Thomas (g)
 Pierre Michelot (b)
 Philippe Combelle (ds)
 1963年4月パリ録音、EP Polydor 27 049





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Last updated  2010年08月21日 15時22分17秒 コメント(1) | コメントを書く


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