音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年10月10日
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 トム・ぺティ(Tom Petty)は1970年代後半から現在に至るまで活発に活動を続けているアメリカン・ロックの雄。ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンといったメッセージ性の強いロック・シンガーとよく比較される。しかし、アメリカン・ロックという表現で名前が浮かぶであろうブルース・スプリングスティーンがコテコテで武骨な感じがするのに対し、あるいは、ボブ・ディランが無愛想で小難しい感じがするのに対し、トム・ぺティはより爽やかでスマートな印象である。

 本作『フル・ムーン・フィーヴァー(Full Moon Fever)』は、1989年にリリースされた初めてのトム・ぺティのソロ名義のアルバムである(それまではトム・ぺティ&ザ・ハートブレイカーズとしてアルバムを発表してきた)。1979年発表の 『破壊(Damn The Torpedos)』 は初めてトム・ぺティを聴く人にもお勧めの名盤だけれども、本盤もまたトム・ぺティの入口としては好適盤であると思う。

 その理由は、ストレートでなおかつさらりと聴かせるスマートなアメリカン・ロック・アルバムに仕上がっているのに加えて、アメリカン・ポップな要素が比較的目立っているいるという部分にある。そのポップな側面は曲作りとプロデュースの両面に参加した(E.L.O.の)ジェフ・リンの影響が強い。当時、トム・ぺティとジェフ・リンは覆面スーパーバンド、 トラベリング・ウィルベリーズ で活動を共にしていたため、なるほどという参加ではある。実際、本盤を聴いていると、ジェフ・リンの参加によって“これってE.L.O.?”と思わされる箇所が所々ある。だが、そうしたポップ性すらトム・ぺティが自己のものとしてのみ込んでいってしまっているような気がする。というのも、トム・ぺティ自身がザ・バーズやビーチボーイズといったアメリカン・ポップの影響を強く受けてきたわけで、当然、E.L.O.もその延長線上のような立場にいる。トム・ぺティと言えば、ロックな面ばかりがクローズアップされがちだけれども、ある意味、彼は結構ポップなのだということをとりわけ本作は再確認させてくれる。実際、6.では ザ・バーズ の有名曲をカヴァーし、そのバックグラウンドからくる部分を見事に表現している。仰々しい名盤ではないが、さらりと聴かせる気持ちいい好盤で、上で書いたように、初めてトム・ぺティを聴くという人にも外れのない推薦盤だと思う。




[収録曲]

1. Free Fallin'

3. Love Is A Long Road
4. A Face In The Crowd
5. Runnin' Down A Dream
6. Feel A Whole Lot Better
7. Yer So Bad
8. Depending On You
9. The Apartment Song
10. Alright For Now
11. A Mind With A Heart Of Its Own
12. Zombie Zoo

1989年リリース。






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