(前編からの続き) ボブ・ディランの本作『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に収められている中では、1.「風に吹かれて」の他、3.「戦争の親玉(Masters of War)」や10.「第3次大戦を語るブルース(Talking World War III Blues)」などがプロテスト・ソングと見なされる代表格。だが、上で述べたとおり、“時代の寵児”的な扱いをディラン自身は好まなかった。実際、アルバムの企画自体もそういう方向性に統一されていたわけではない。7.「くよくよするなよ(Don’t Think Twice, It’s All Right)」のような恋愛感情の歌が収録されたり、当時同棲中だった恋人で先ごろ亡くなったスージー・ロトロ(2011年2月没)と仲良く映り込んだジャケット写真を使っているあたりからもこのことが伺える。
すっかり話題が違う方向に行ってしまったが、1.「風に吹かれて」以外に本盤で特に私的なお気に入りは、2.「北国の少女(Girl from the North Country)」、8.「ボブ・ディランの夢(Bob Dylan's Dream)」、10.「第3次大戦を語るブルース」、12.「アイ・シャル・ビー・フリー」。こういうフォークのスタイルに慣れていない聴き手は、最初は単調で退屈に感じるかもしれないが、歌詞カードと睨めっこしながら聴くのもよし。また、後世の影響に思いを巡らせながら聴くのもよし。この点に関して付け加えれば、日本のフォーク/ニューミュージック系アーティスト(例えば中島みゆきなどは顕著)も大きな影響を受けているし、とにかくカッコいいハーモニカの演奏に耳を傾ければ(歌も部分的にそうだとは思うが)B・スプリングスティーンがディランズ・チルドレンと言われるのも頷ける。
1.Blowin' in the Wind 2. Girl from the North Country 3. Masters of War 4. Down the Highway 5. Bob Dylan's Blues 6. A Hard Rain's A-Gonna Fall 7. Don't Think Twice, It's All Right 8. Bob Dylan's Dream 9. Oxford Town 10. Talking World War III Blues 11. Corrina, Corrina