音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2018年11月28日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ
最晩年のスタン・ゲッツ、渾身の力作(前編)


 音楽に人生ストーリーを重ねるのは、個人的にはあまり好きではない。つまるところ、一義的には“音楽は音楽そのものとして聴かれる”のがいちばん重要だと、どこか心の底ではそう思っている。

 人生ストーリーが過剰に組み込まれるとおかしなことになるというのも分かっている。いつぞやの佐村河内何某(もはや忘れ去られている?)の事件でもそうだったけれど、マスコミ関係者には、全く分かっていない人も多いと見えて、報道する際の焦点が“ゴーストライター”や“本人の病状の真偽”に逸れていった。本当は、音楽そのもの以外の要素で音楽に付加価値を付けよう(付け過ぎよう)としたNHKほかマスコミにそもそもの問題があるように思うのだけれど、あの騒動の際、そこはまったく反省に付されなかった。これでは、音楽そのものを味わったり楽しんだりしようという姿勢は、人々の間に根づかないとすら言えてしまうかもしれない。

 さらに話を広げるならば、先の件と前後したころに、最近復帰を果たしているASKAの騒ぎもあった。その時にも見られたように、事件を起こした人とその作品の関係というのも微妙な問題だと思う。“素晴らしい曲”を作った作者が、もしも犯罪者となってしまったとしても、その曲まで発禁・回収する必要があるのだろうか。聴き手にそれを買う買わないという選択権はないものだろうか。それから、もしも仮にベートーヴェンやショパンが晩年に国家反逆罪か殺人罪か何かで死刑判決を受けた人物だったとしたら、彼らの残した音楽は葬り去られるというのだろうか。このことを問い返さずに、ただ“禁じて当然”という暗黙の前提のもとに発禁・回収の進む社会というのは、ある種、気持ち悪いとしか言いようがない。

 はて、のっけから話がそれてしまった。何が言いたかったかというと、そうは言えども、今回の盤は、背後にあるストーリーがあまりに重く、ストーリーを伴って聴かない人はほとんどいなさそうな盤だったりするのである。

 スタン・ゲッツ(Stan Getz)は、1927年生まれのサックス奏者で、クール・ジャズ、ボサノヴァを取り入れた演奏などで名を馳せた。そんな彼が肝臓癌で余命1年半という告知を受けたのは、1987年のこと。ちょうど60歳になる年のことだった。しかし、その後、彼は精力的な活動をこなし、余命宣告をはるかに超えて1991年6月まで生きた。本盤『ピープル・タイム(People Time)』は、この間に一緒に活動をしてきたケニー・バロン(ピアノ)とのデュオで、亡くなる3か月前、1991年3月の実況録音盤である。

 こんな話を聞かされると、きっと聴き手はそのストーリーから逃れ得なくなってしまう。でも、この盤だけは例外的にそれでもいいのかな、といくぶん思わなくもない。若い頃はそんなことは考えなかったが、身の回りの人が亡くなると、ついつい生前の話をして盛り上がろうとする。亡き人の死を悲しむこととその人を回顧することが重なり合うことに実感がわくようになる。

 なんだかまとまりなく話が長くなってしまった。アルバム内容については、あらためて 後編 で(曲目等のデータは後編に掲載)。





【輸入盤】People Time [ Stan Getz / Kenny Barron ]




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Last updated  2018年11月30日 10時33分27秒
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