音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2019年03月09日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ
南アフリカ発、ロンドン経由のジャズ・ピアノの個性


 ベキ・ムセレク(Bheki Mseleku)は、1955年生まれのジャズ・ピアニスト。生まれは南アフリカであるが、英国経由でシーンに登場した。アシッド・ジャズのブームを経て、英国のジャズ・シーンが独自の存在感を持つに至った1990年代にこの人物は現れた。活動時期が1990年代にほぼ限られるため、残した作品数はさほど多くない。本盤『セレブレーション(Celebration)』は、1991年末から1992年初頭に録音され、同年に発表された最初のリーダー作である。

 何よりも本盤で興味深い特徴は、いい意味で一つの伝統に特化していない点だと思う。先記のとおり、英国のジャズ・シーンから売り出されたわけだけれど、その演奏スタイルは、本人も認めていたように、マッコイ・ターナーをはじめとした米国のジャズ・ピアニストの影響下にある。つまりは、演奏の手法的には米国の伝統ジャズ的なのだけれども、面白いのは、妙にアフリカンな雰囲気の曲を演奏している点だったりする。表題曲の1.「セレブレーション」は、本人によるヴォーカル部分も含めてアフリカンなテイストがいっぱいである。他にも、4.「ブルース・フォー・アフリカ」のように、明らかに出身地のアフリカを意識した曲が収められている。

 もう一つの特徴としては、マッコイ・タイナーっぽい部分が随所で見える一方で、なるほど英国経由かと思わせる演奏も披露している点が挙げられる。その典型例は、3.「アンゴラ」であろう。このリラックス感と疾走感の同居は、なるほど英国からの発信だというイメージに合致しているように思う。ついでながら、収録曲のうち、6.「ザ・メッセンジャー」はバド・パウエル、8.「シュープリーム・ラヴ」はジョン・コルトレーンに捧げられており、ここにもアメリカン・ジャズの伝統に基づく姿勢が示されている。

 残念なことに、ベキ・ムセレクは2008年に52歳でその生涯を閉じた。複数の伝統や流れに基づいて形成されたこのオリジナリティは、きっと現在のジャズ界でも活かされたであろうという気がしてならない。その意味では、60歳、70歳になったベキ・ムセレクの個性を見てみたかったという、叶わぬ希望が個人的にはずっと心の片隅に残ってしまっている。


[収録曲]

1. Celebration
2. One For All - All For One
3. Angola

5. The Age Of Inner Knowing
6. The Messenger (dedicated To Bud Powell)
7. Joy
8. Supreme Love (dedicated To John Coltrane)
9. Cycle
10. Closer To The Source


[パーソネル・録音]

Bheki Mseleku (p, ts, v, arr)
Michael Bowie (b)
Marvin ‘Smitty’ Smith (ds)
Eddie Parker (fl: 3. & 7.)

Jean Toussaint (ts: 5.)
Steve Williamson (ss: 4.)
Thebe Lipere (perc: 10.)

1991年12月(1.から9.)、1992年1月(10.のみ)録音。




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Last updated  2019年03月09日 08時17分29秒
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