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February 17, 2006
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 地球人が土手を散歩していると、前から宇宙人がジョギングしてやってきた。

「やあこんにちは」
 2人は挨拶をして通りすぎようとしたが、地球の重力磁場がホモ・サピエンスの苦行のお陰で異常をきたしてしまったので、その場から動けなくなった。2人はびっくりしてマイケルジャクソンみたいな格好をしていたが、飛ぶように月日は流れ、一億年という途方もない年月が経ってしまった。だから、生命体である彼らは、重力磁場に固定されたまま、微生物に分解されて骨になってしまった。
 ある、一億年後と少し経ったころのよく晴れた日に、一匹のトカゲが川泳ぎから上がってきて、固まったまんまの2人の人類に声をかけた。
「やあこんにちは、いい天気ですね。地球はどこも晴天だそうですよ。ナトリウムの雲も出ないし、酸素濃度が正常値よりも高いらしいから、とっても快適ですよ。うーん、おいしい空気だな」
 トカゲは挨拶代わりに2人の人類の大腿骨をこんこんと鳴らして、陽気な鼻歌を歌いながら去っていった。しかし、弱肉強食の掟はいまだにご健在で、トカゲはすぐに、ヴェロキラプトルの追跡に遭ってロストした。
 それからすぐに、もう一億年が経った。2人の人類の骨はリン酸の結晶に置き換わり、その後、プラチナ化されて、風雨落雷にも動じないようになっていた。そこに、一匹のインド象がやってきた。
「やあこんにちは。今日も好いお天気で。紫外線の降線確率は100%ですって。でも私は、コカ・コーラ社製のステルス皮膜を付けているから、全く問題はないは。しかし、どうしたものかしら。大陸移動説が高精度で実証されて、インドが山に登ってしまったというのに、私はまだインド象なのよ。宇宙が収縮しても、インド象のままなんでしょうね」

 それからまた一億年が経った。2人の人類の体は地熱の作用によってα化し、彼らは、かの有名なアメーバーになった。
 地球人が、久しぶりに口を開いた。
「全く、体の節々が痛んでしまうよ、こんなに長く立っていちゃあ」
「全くそうだ。僕の骨なんかぽきぽき言って、テレビショーを観たみたいに笑っていたよ」
 宇宙人も、久しぶりに口を開いた。
 あんまり長く2人とも黙っていたので、久しぶりに声を交わすと、お互いの思っていることが本当の本当に通じ合ったような心持になった。本当の本当に、通じ合ったように。
 しかし、ふと2人は、ほぼ同時に同じことに気づいて、空を見上げた。晴れた空の天頂には、アンドロメダ銀河が巨大な両腕を回しながら旋回している姿が浮かんでいた。
 その虚空に浮かんだ星のゆりかごは、途方もない時間の流れを彼らに照射して、2人は足が触れ合うほど近くにいるのに、ブラックホールでも突き破ることのできない空間の隔たりが互いの間に絶対的に存在してしまっていることを感じさせた。2人は、黙って空を見上げた。
「また、長い年月が過ぎるね」
「また、そうだろうだね」
 ヘールボップ彗星と百武彗星がかち合って、クリスタルグラスのはじける音を立てた。







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Last updated  February 18, 2006 01:29:13 AM
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