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第1次政権が連邦最高裁判事に3人の保守派を指名したように、既に人の配置や米社会の制度の弱体化がトランプ氏に都合の良いように進んでいる。こうした状況で、 今後は三つの側面で民主主義の弱体化が進むと考えている。
一つは、さまざまな形で 自由や人権が侵害される可能性がある ということだ。今回の選挙ではトランプ氏への支持を公言しない「隠れトランプ」が少なかった。トランプ氏が作り出す極端な言説に対して、人々の心理的なハードルが下がっている。
トランプ政権下では米国際開発庁(USAID)や全米民主主義基金(NEO)など民主主義分野の支援を行う機関への政府予算も削減されると予想される。これらのことが米国の自由主義的な価値をさらに下げ、メディア報道の抑圧につながったり、マイノリティーの人権や女性の権利擁護のための活動が難しくなったりする。市民社会の空間が小さくなる恐れがある。
二つ目は、 人々の間の信頼関係が弱体化する ということだ。本来は知らない人でもある程度は信頼できると想定し、地域内で協調した取り組みを行うことができる。しかし米国では分断的な言説が強まっており、アイデンティティーや宗教、経済格差を起点にした亀裂がさらに深まるだろう。
そして最後に、情報分野での懸念もある。民主党のバイデン政権下で、米社会はロシアなどからの偽情報の取り締まりを強化してきたが、共和党は情報の取り締まりを嫌い、相当反発していた。今後、共和党が政権に就き、米国がさらに偽情報対策をしなくなる可能性が高い。 海外からの情報工作に弱くなり、何が真実の情報かますます分からなくなる。 米国は民主主義のモデルではなくなってしまう。
ハリス副大統領の敗北要因として「女性であることが不利に働いた」との意見や、政策面でのアピールが不十分だったとの指摘がある。民主党としては政策合戦よりも民主主義制度の存続にとっては「ハリス氏が良い」ということを示したかったはずだ。しかし、こうした主張は市民には十分理解されなかった。
【聞き手・松本紫帆】
<いちはら・まいこ> 1976年生まれ。米ジョージ・ワシントン大大学院博士課程修了。関西外大准教授などを経て現職。米カーネギー国際平和財団客員研究員なども歴任。
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