やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年07月21日
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カテゴリ: 読書感想
存在を知らなかったので恥ずかしかった本である。ちゃんと高校の文学の教科書(娘の)にもお名前はあるし、中村光夫著「日本の現代小説」(岩波新書)にも言及してあるではないか。しかしこの頃(1960年)は日本の私小説みたいな純文学は敬遠していたのだと言い訳する。

やはり壮絶としか言いようのない内容の小説だった。くたびれた。とにかく暗い。

ひたむきに愛をそそいでくれていた妻「ミホ」が夫「トシオ」の浮気を知る。ばれたことによってただごとではない狂気とともにそれを責め立てくるので、夫は異常な妻の反応に根をあげつつも、捨て鉢なやり取りをしてしまい「トシオ」も尋常でなくなっていく。ついに「ミホ」は精神に異常を来たす。

引越しをしてみる、アルバイトの職も失う、本業の作家稼業も作品に集中出来ない。とうとう精神科のお医者様に掛かり「ミホ」の狂気の原因は判ったが、判ったとて前途は多難だ。幼い子供たちが犠牲になりかわいそうだ。

『ひとつだけギモンがあるの。聞いてもいいかしら』とは妻「ミホ」が夫「トシオ」を責めるの言葉で、全編にわたってこれが続くからやりきれない、気がめいる。しかし私の疑問はひとつ解けた。

自分はごく普通と思っている、自分だけでの認識かもしれないが。世間には、いや身近にも、明らかに精神を病んでいると思われる人が出てくるのは、現代病とことさらいわなくても、昔からある。自身が心を病んでいないと思っているから、病んでいる人の考え、立ち居振る舞いが理解できない。理解が出来ないからといって、こちらが正しい保証はない。そういう興味を持ってこの本を読むと「ああ、そうだったのか」と理解がいく。

また、歌の歌詞ではないが「男と女の間には深い川が流れている」のを知る。この小説の「トシオ」の行動は男の身勝手さを象徴している。ああずるいなーと随所に思ってしまうのは私が女だからか。往生際が悪いのである。「ミホ」の容赦のなさにも辟易する。男と女をさらけ出すとはこのことかと思う。

私は暗くてくたびれたとは思ったが、嫌な文章を読んだとは思わなかった。むしろこんなに素晴らしい表現力のある文章をよんだのは歓喜だった。実に描写がうまいといおうか、文章のリズムがいいというのか、なるほど定評のある文学ではある。名作である。

なお、「ミホ」さんのモデル島尾敏雄氏の奥様島尾ミホさん(作家)のお話が パティさんの日記





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最終更新日  2005年07月21日 23時23分29秒
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Re:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
映画にもなりましたよね。怖そうな話だという印象があって、近づきたくないなと思ったことだけ覚えてます。(汗)
でも、ばあチャルさんの感想を拝見してたら、興味が湧いてきました。チェックしてみます。
(2005年07月22日 07時17分47秒)

Re:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
ケー16  さん
何度も手にとったことはあるものの、
まだ読んではいない、気になる作品です。
私の中では壇一雄「火宅の人」とごっちゃになってる感が・・・
どちらも未読なので、実際には全然違う作品なのかも
しれませんが、イメージ的に。

暑い夏、でかけるとぐったりなので、
「家で涼しく読書」が最高ですよね~!



(2005年07月22日 08時36分06秒)

くりむーぶ389さんへ Re[1]:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
ばあチャル  さん
>映画にもなりましたよね。怖そうな話だという印象があって、近づきたくないなと思ったことだけ覚えてます。(汗)

そうだそうです(私は知らなくて)

ハカマダキさんの「死の棘」読書感想↓
http://www.geocities.jp/tomo_dokusyo/newpage53.htm
によると1990年カンヌ映画祭グランプリ で出演:松坂慶子・岸部一徳・木内みどり

ですから、映像だともっとやりきれないところがあるのかもしれませんね。
しかし、純文学としてひとつの表現方法の傑作と思います。
(2005年07月22日 08時45分40秒)

ケー16さんへ Re[1]:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
ばあチャル  さん
>私の中では壇一雄「火宅の人」とごっちゃになってる感が・・・
>どちらも未読なので、実際には全然違う作品なのかも
>しれませんが、イメージ的に。

うん、うん。ほんとにそうです。
勿論すじは違いますが雰囲気は似ていなくもない。檀一雄の表現のほうが明るいと私は思いましたが。

でも、作家と家族は苦しんでいるのにそれを芸術として鑑賞するわたし達は何なんだとも思いますね。作家はそれが仕事ですけどね。(作家の家族にはなりたくないかも?) (2005年07月22日 08時57分34秒)

Re:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
パティP  さん
今本を開いてみたのですが・・・・うむむ・・・
やっぱりきついですよね、この本。
これが物語りでなく現実だから余計に重たいです。
でもどうやら私はほとんど忘れているらしいので
いずれもう一度読み返さなければいけないです。 (2005年07月22日 15時00分02秒)

パティPさんへ Re[1]:「死の棘」島尾敏雄(新潮文庫)(07/21)  
ばあチャル  さん
>やっぱりきついですよね、この本。
>これが物語りでなく現実だから余計に重たいです。

この世の中、トラウマを抱えている人がこんなにも多かったのだ、とは最近の認識です。多かれ少なかれみんな抱えているんだなーと思ってみても、表れ方、収め方が様々あるのはしかたないです。願わくは「死の棘」のようにならないように…祈るしかありませんです。 (2005年07月22日 20時24分04秒)

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