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刑事加賀恭一郎が登場する『あなたが誰かを殺した』は昨年9月に発刊されたミステリ-小説です。 東野圭吾さんのファンの方ならご存じかも知れませんが、これは加賀恭一郎シリ-ズであるとともに、『〇〇がXXを殺した』シリ-ズの第三作目の小説になります。このシリ-ズの第一作は『どちらかが彼女を殺した』、第二作目は『私が彼を殺した』でしたが、前2作同様、いやこの作品はこのシリ-ズだけではなく、この10年の間の彼の作品で一番良かったと言えるかもしれません。とにかく面白かったです。最も感嘆したのは、事件の関係者一人ひとりの人物描写が見事でした。人間の表の顔と裏の顔、というより裏の顔に隠された《企み》と言ったほうが良いでしょうか、それを作品全編で巧みに描き切った作品でした。余り前置きが長くなっても退屈でしょうから、まずあらすじをご紹介しましょう。【あらすじ】1. 或る避暑地に隣り合う別荘の4家族と知人合わせて15人が、毎夏恒例のバーベキュ-・パーティを開いた。その会がお開きになってそれぞれの別荘に帰ってから異変が起きる。4人が刺殺され1人が怪我をするという大惨事だった。2. 犯人は犯行後すぐに自首して犯行を自供はしたものの、動機や犯行の詳細については黙秘し、事件の全容がつかめないまま2ヶ月が過ぎた。事件の解明に手こずる警察にしびれを切らした遺族の1人の呼びかけで、真相に迫るために事件関係者で『検証会』を開くことになった。3. 警視庁捜査一課の刑事である加賀は、関係者の1人から依頼されて検証会に出席することになったが、関係者一人ひとりの話を聞いていくうちに、様々な疑問や裏の顔が浮き彫りになってくる。【読後の感想】序盤は子供の目を通した4家族の人物描写があります。本来なら退屈な箇所になってしまうところですが、この作者は読者を退屈させないですね。むしろこの部分に事件の伏線になるものが隠れている…。次の写真は別荘地のマップです。表紙をめくると直ぐに出てきます。これが謎解きの時に結構役に立ちました。 事件が起きてからも、読者には事件の全容がなかなか知らされないので、少々落ち着かない気分になります。事件後しばらく経ってからの遺族関係者による『検証会』の中で、読者は初めて事件の概要が知らされます。これも作者独特のスト-リ-構成なのでしょう。この『検証会』こそがこの小説の肝であり核心部分なのですが、当初は何も新事実は出そうにないのですが、司会役となった加賀刑事が、出た話を丁寧にわかりやすく整理して、次第に疑問点が浮かび上がってくる様は、なかなか読みごたえがあります。『検証会』には、事件現場の現場検証も含まれており、それを通して新事実が出てきます。そしてその『検証会』を彩るのは、仮面をかぶった関係者一人ひとりで、この会を通して裏の顔が徐々に明らかになっていきます。そして、東野圭吾のミステリー小説ですから、ページが残り少なくなったところで二転三転のどんでん返しがありますから、最後まで気を抜くことが出来ません。この作者は女性読者に人気がありますが、その理由の一つは、女性の登場人物のキャラクタ-設定のうまさと人物描写の巧みさがあるのではないでしょうか。この作品でもそれは随所に感じることが出来ます。さて、ここからは雑談ですが、作者は『〇〇がXXを殺した』シリ-ズ第三作として当初からそのタイトルを『あなたが誰かを殺した』に決めていたそうですが、実は20年間もスト-リ-を考え続けたそうです。なぜそんなにかかったのかというと、作中で『あなたが誰かを殺した』と言うシチュエ-ションがなかなか考えつかなかったからだそうです。さて【まとめ】です。昨年末から、ミステリ-だけでも『爆弾』『爆発物処理班の遭遇したスピン』『捜査線上の夕映え』『方舟』『#真相をお話しします』、そしてこの『あなたが誰かを殺した』の計6冊、いずれも話題作を読むことが出来ました。どれも伏線とどんでん返しの連続するゾクゾクするスト-リ-でしたが、個人的に優劣をつけるとしたら(単に私の好みと言ったほうが良いかもしれませんが)、次のようになると思います。(良)『方舟』=『あなたが誰かを殺した』>『捜査線上の夕映え』>『爆弾』>『#真相をお話しします』>『爆発物処理班の遭遇したスピン』 高評価の『方舟』と『あなたが誰かを殺した』は、同じミステリーでもかなり作品の内容、ジャンルが違います。比較などできないのですが、共通しているのは《スト-リ-の巧みさ≫で、特に人間の表と裏の顔を上手く表現している点でしょうか。『方舟』は大どんでん返しの驚愕のラストで魅了させられたし、『あなたが誰かを殺した』は人物描写の見事さで他の追随を許しませんでした。いつものように、この本にご興味のある方は、次をクリックください。あなたが誰かを殺した [ 東野 圭吾 ]楽天で購入ここからは私の独り言です。実は上のリンクで購入いただけると、私に3%の手数料が楽天ポイント(1ポイント1円という激安!)として入ってくるのですが(今までで購入して頂いた方はいません)、楽天ポイントを獲得しても楽天サイトで購入する気はありません。なぜなら日本からベルギ-への送料が、楽天サイトは他サイトに比べてかなり割高なんで、ここで買う意味が無いんです。(勿論、日本国内なら送料無料ですが)ではなんで使いもしない使い道のないポイントを稼ぎたい(本当に稼ぎたいのか、と言われればよく分かりません)のかと言えば、単なるモチベ-ションだと思います。本当かな。なんとも情けないというか寂しいというか、もの悲しいというか…。いったい自分は何のためにこんなことをしているんだか…。現実的にはあり得ませんが(絶対に)、数万点ゲットできないとは限りませんので、まあもうチョッと続けて行こうとは思っています。電子書籍という手はありますが、私は筋金入りの「紙の本」派ですので。何かいい使い道は無いですかね? ポイントを稼いだ時のために考えておきたいです。まあ、こういうのを「捕らぬ狸の皮算用」というんでしょうけど…。ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2024.01.16
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結城真一郎著の『#真相をお話しします』は5編からなる短編集で、発売以来既に1年以上は経ってはいますが、そこかしこで宣伝された話題作です。 例えば、「違和感を感じるところは全て伏線や手掛かりに繋がり、しかも余すところなく回収されるのは鮮やか」とか「騙される快感がたまらない」というものでした。でも、この手の宣伝文句はミステリー短編集でよく使われる常とう句なので、これを真に受けると「なあんだ、この程度のことか」と読んでから買ったことを後悔することになりかねません。では、この短編集『#真相をお話しします』は実際のところはどうなのでしょうか?それ程面白いものなのか、ちょっとチェックしてみました。 《あらすじ》5話それぞれのあらすじを。いずれも不自然な状況に置かれた語り手たちが、その不安を解消するために真相を究明しようとします。ネタバレしない範囲でご紹介すると 1.惨者面談 : 家庭教師仲介会社でバイトをしている大学生が、訪問先の母親と息子と3者面談を行うが、何故か話が噛み合わない。母子の態度も何か不自然で違和感ばかりが漂う異様な光景が続く。その真相とは…。2.ヤリモク : 娘のパパ活を疑いながらも、その父親はマッチングアプリで知り合った女性と付き合っている、何とも奇妙な父娘の関係。しかし真相は…。3.パンドラ : もう駄目だろうと思っていた矢先に妊娠の嬉しい知らせが、自分たち夫婦を絶望の底から救った。そのこともあり、精子提供を始めることにした夫婦。それから15年、幸せの中にいた自分に届いた1通のメール。すべてはそこから始まったのだ…。4.三角奸計 : 大阪に転勤した学生時代の友人2人との「リモ-ト飲み会」の最中に、突如異様な緊張感が走る。友人のひとりの婚約者の浮気が発覚したのだ。その相手がことも有ろうか…。しかしその真相は…。 5.#拡散希望 : 子供が4人しかいない小さな島で、一風変わった生活を送る主人公の小学生。仲間の一人の少女がスマホを持ち始めたことから、島内の様子が微妙に変わり始める…。 《読後の感想》こうしてみると、この短編集は旬の題材をふんだんに取り入れており、そこかしこに漂う『違和感』は間違いなく読者のミステリ心をくすぐるでしょう。軽い気持ちで読む分には面白い本だと思うし、それには異論はありません。個人的には、1の《惨者面談》と5の《#拡散希望》が気に入っています。流れもタイトルもこの中では最もしっくりくる。一方で他の3編はというと、それ程私の触手をくすぐりはしなかったのが正直なところ。「まあまま」といったところでしょうか。ただ、どの話もスト-リ-構成はよくできており、「騙される快感がたまらない」という宣伝文句も誇張ではないので、どの話が面白かった面白くなかったというのは、要は好みの問題だと思うので参考程度に考えて欲しい。それよりも、短編集というのは『様々なミステリー小説を味わえるから割安感がある』とか『次はどんな物語かビックリ箱を開ける時みたいにワクワクする』と捉えるか、反対に『期待通りの面白いのもあれば、それ程大したものも無い玉石混交』と冷めた考えで読むかによって、全く読後感が変わってくるのも事実。ミステリーというのは短編集に限るか、ミステリーの醍醐味は長編にこそあるか、は人それぞれでしょう。今回この短編集を読んで、短編集は長編小説とは異質のものだと再確認した次第です。短編集の特異性(?)と共に注意が必要なのは、『軽い気持ちで読む分には面白い』ということは、逆に言えば、衝撃のラストを期待する人や本格ミステリー嗜好の人には、期待外れに終わる可能性があるという事でもあると思います。まあちょっと控えめな感想文だったのですが、読んで見たいという方は次のリンクからも購入いただけます。念のため。#真相をお話しします【電子書籍】[ 結城真一郎 ]楽天で購入ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2024.01.12
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昨年末から昨日まで、昨年読みたかったけれど読んでいなかったミステリ本を新たに何冊か読むことが出来ました。良いのもあれば期待外れのものも当然ながらありましたが。 今日は、読了したばかりの≪方舟≫(夕木春央著)について書いてみようかと思います。発売以来、かなり話題になった本ではあります。「この衝撃は一生もの」という本の帯の宣伝文句にたがわぬ面白さでした。先ずは、ネタバレにならない範囲で「あらすじ」を。《あらすじ》長野県の山奥にある地下建築を軽い気持ちで探検に訪れた学生時代のサークル仲間7人が、キノコ狩りに来て道に迷った3人連れの家族と出会い、その巨大な地下建築の中で予定外の一夜を過ごすことになる。ほんの一夜のはずが、夜中に起きた地震により入り口の扉が大岩で塞がれてしまい地下建築に閉じ込められてしまった10人。脱出する唯一の方法は、地下2階に設置されている機械を操作して、扉を塞いでいる大岩を地下に引っ張り下ろすしかないが、大岩が落下すれば機械を操作した者は、小さな小部屋のような洞窟に取り残されてしまう事になる…。絶望に打ちひしがれた10人に衝撃的な事実が明らかになる。地震の影響で地下水の水位が上昇し、1週間後には地下建築内は水没することになる…。つまり、地上に脱出するには、機械を操作しこの地下建築内に閉じ込められる者を、1週間以内に決めなければならないのだ。その混乱の最中に、7人グル-プの1人が何者かに殺害されてしまう。残された9人はその犯人を探し出して≪生贄≫にしようとするが…。《感想》地下建築内に閉じ込められたことで、読み手も登場人物同様にかなりの閉塞感と心理的圧迫感をを味わう事になります。しかも1週間というタイムリミットが加わり、そこに想定外の殺人により殺人犯と同じ空間で生活することへの恐怖感が追い打ちをかける中、最終的にこの洞窟内に置き去りにしなければいけない一人を選ばなくてはいけない重圧が、登場人物一人ひとりを通して、私にはヒシヒシと伝わってきました。そして、犯人を特定できたラストに、大どんでん返しが待っています!このどんでん返しによって「真実」が明らかになった時、「成る程、こういう結末になるのか」と勝手に結末を決め込んでいた私は、その「真実」に正直に言えば「茫然自失」でした…。この結末については、読む前に「賛否両論ある」とか「後味が悪い」とかいう書評を目にしていましたが、実際に読んで見るとやはりショックでした。読んで暫くはちょっと考え込んでしまったほどです。確かに後味は良いものではなかったけれど、全く予想すらできなかった結末に出会って、「読んでよかった、最初から最後まで面白い作品」だった、と自信をもって言えると思います。さて《まとめ》です。(5点満点で、最高は5点)ジャンル : ミステリー小説(特殊設定もの、クロ-ズド・サークルもの)スト-リ-展開 : 5点(最高点)。中だるみ無く、最後まで緊張の連続。一般にこの手のミステリー小説に言えることですが、フーダニット(誰が犯人か)だけでなく、ホワイダニット(動機)を推測するのが面白かった物語でした。結末 : 5点(最高点)。見事としか言いようのないラスト。読みやすさ : 5点(最高点)。癖のない文章で読みやすかった。ミステリー度と緊迫感 : 5点(最高点)。《地下建築という閉鎖空間》+《タイムリミット》+《極限状態での殺人》+《生贄の人選》という事で、全編緊迫感満載です。昨年末に3冊ほどミステリ小説を紹介しましたが、この《方舟》は他作品を凌ぐ、明らかに最高の作品だったと言えます。他の小説によくある《驚愕のどんでん返し》とか《二度読み必死》などの宣伝文句に魅かれて読んではみたものの、大したことのないラストに大きな失望感を味わったことがあるのではと思いますが、《方舟》のラストのどんでん返しは、それこそ本当にびっくりしてショックを受けるどんでん返しです。期待にたがわぬラストと言っていいと思います。もし読んで見たいという方がいらっしゃれば、下記をクリックすれば「Rakutenブックス」サイトにて詳しい情報を入手できます。方舟 [ 夕木 春央 ]価格:1,760円(税込、送料無料) (2024/1/6時点) 方舟【電子書籍】[ 夕木春央 ]価格:1,672円 (2024/1/6時点)ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2024.01.06
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昨日、読了しました。この「捜査線上の夕映え」は、犯罪学者の火村英生とミステリ作家有栖川有栖が警察の捜査に協力して、解決困難な殺人事件を解決する「火村英生シリ-ズ」の最新作です。 読後の率直な感想は、「いつもの火村英生シリ-ズとは一味違うな」という事でした。先ず第一に、いつもだと事件に遭遇した作家有栖川有栖が、犯罪学者の火村英生に助けを求めるのが通常の展開なのですが、今回は初期段階で困難に直面した警察からの応援要請を受けて、火村と有栖川が「同時に」捜査に加わるというもので、参考人への事情聴取や捜査会議への参加など、全ての証拠や参考人の情報が私こと有栖川有栖の目と耳を通して読者にも開示される。つまり火村のみが知っている知りえた情報というものは無く、火村の持っている情報イコ-ル読者の情報でもある訳です。そして、殺伐とした殺人事件でありながら、有栖川と火村の「2人だけの捜査会議」で交わされる突拍子もない仮説の乱舞が、時には笑い転げるし、時には「ありえなくもないな」と奇妙に納得させられることもある。何となく2人でミステリ小説のトリックを考えているとしか錯覚しかねない場面では、それが実際のむごたらしい殺人事件でありながらも、何となく楽しい気持ちにさせてくれるのが何とも嬉しい限りです。じつはこのような場面は他の火村シリ-ズにもあるのですが、今作品ではそれが随所に頻繁に出てくるのです。そして3つ目ですが、有力な容疑者の決定的な証拠が見つからない火村と有栖川は、出身地を訪ねて調査を行うのですが、そこで2人は決定的な「情報」を得ることが出来たのです。そこの描写を本文から拾ってみると、『火村が事件の真相を射抜く瞬間に何度も立ち会ってきた。そして、同じものを見たり聞いたりしながら、どうして彼だけに判ったのか、と驚かされてきた。推理の道筋を説明されてやっと理解したものだが――今回は違う。彼と私は殺人現場で起きた不可解な事件の謎を同時に解いた。』実を言うと、彼らが同時に謎を解いたまさにその時に、読み手の「私も」謎を解いたのでした。その時は、私も心が震えたのを覚えています。ミステリ小説の中で「名探偵」と同時に真相にたどり着くことなど、普通ではありえないことです。しかし今回は著者にまんまとしてやられました。というよりか、貴重な体験をさせてもらった、あるいは滅多に味わう事のない「興奮」で脳が痺れてしまったと言ったら大げさでしょうか?そして最後ですが、カバ-の美しい夕焼けの写真がありますが、この「夕焼け」に代表される景色がこの小説の大切な背景になっているような気がします。 捜査線上の夕映え [ 有栖川 有栖 ]価格:1,980円(税込、送料無料) (2023/12/9時点)楽天で購入捜査線上の夕映え【電子書籍】[ 有栖川有栖 ]価格:1,800円 (2023/12/9時点)楽天で購入著者は「あとがき」の中で、『余情が残るエモ-ショナルな本格ミステリが書きたい』という漠然としたイメ-ジから本作品の構想をまとめて行ったそうです。この『夕焼け』の場面は、別にカバ-だけではなく、物語の冒頭や訪問した場所でも象徴的なシーンとして描かれています。だからこそタイトルにも入っている訳ですが。この夕焼けの鮮やかな色合いこそが、モノクロで殺伐とした殺人事件に、まるで砂漠の中のオアシスのような生命力と、殺人とは不釣り合いな懐郷的な雰囲気を醸し出しているのです。そしてそれこそが、殺人事件を扱ったミステリ小説でありながら、場違いなように懐かしい、ある意味清々しい気分にさえさせてくれる結末だった、と思います。数多くの有栖川有栖の小説を読んできましたが、その中で最も心に響く作品だったと言えると思います。採点 (5段階で最高は5)ジャンル : 警察犯罪ミステリスト-リ-の面白さ : 5読みやすさ : 5結末 : 5ミステリ度(犯人捜しとトリック) : 5主役のキャラ : 5満足度 : 5+ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.12.19
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2021年に『テスカトリポカ』で直木賞を受賞した佐藤究の短編集が、今回紹介する『爆発物処理班の遭遇したスピン』です。爆発物処理班の遭遇したスピン [ 佐藤 究 ]価格:1,760円(税込、送料無料) (2023/12/15時点)楽天で購入爆発物処理班の遭遇したスピン【電子書籍】[ 佐藤究 ]価格:1,672円 (2023/12/15時点)楽天で購入2022年「このミステリーがすごい!」ベスト20の第6位となり、この新作でも高い評価を受けています。この短編集には8つの物語が収録されていますが、それらのタイトルは次のようになります。 爆発物処理班の遭遇したスピン ジェリ-ウォ―カ― シヴィルライツ 猿人マグラ スマイルヘッズ ボイルドオクトパス 九三式 くぎ前代未聞の爆弾テロ事件を描いた表題作の他、世界的CGクリエ-タ-の決して他人に知られてはならない秘密『ジェリ-ウォ―カ―』や、喧嘩っ早い不良少年が落ちていた1本の巨大釘から想像を働かせる『くぎ』など、8つの全く異なったジャンルの予測不可能な物語が収められています。そのジャンルたるや最新科学を取り入れたSF的作品から犯罪小説に至るまで、バラエティーに富んだ密度の高い短編集です。私が最も気に入ったのは表題作の『爆発物処理班の遭遇したスピン』で、そのタイトルから想像すらできない(特に「スピン」の意味)全く異次元の、驚愕の爆弾テロに見舞われた爆発物処理班の活躍と苦悩を描いた作品です。とまあ、こんな書き方をしては読んでる方には何のことか分かりませんよね。もっと砕けて書くならば、九州のあるホテルに設置されている疲労回復に効果あるとされている「酸素カプセル」内に高性能爆弾が仕掛けられ、カプセル内にいる睡眠中の官僚が閉じ込められており、ふたを開けると爆破するようセットされていた。しかし、仕掛けはそれだけでは無かった。もっと高度で解決不可能な驚愕の「仕掛け」が施されていたのであるこの物語には最先端の量子理論や量子コンピュ-タ-が鍵となるなど、かなり異色のミステリーといえます。私の感想を一言で言えば、「こんなことがこの世界で起きうるのか」という事でしょうか。表題作であり最も刺激を受けた物語である「爆発物処理班の遭遇したスピン」の私の評価は次の通りです。ジャンル : 警察科学ミステリースト-リ-展開: 5読みやすさ: 4どんでん返し度: 4結末: 4主役のキャラの魅力度: 4ミステリー度: 5 ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.12.16
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応援するプロ野球楽天イ‐グルス関連記事とベルギ-での出来事を中心に書いていますが、今回より何回か、私が読んだミステリー小説について感想を書いてみようかな、と思っています。ぶっちゃけた話、プロ野球がオフに入ってからというもの、イ‐グルスに関する話題がめっきり減ってきて、ブログで書くネタが無くて困る毎日が続いています。あとひと月ほどはこんな状態が続きそうですから。という事で、第一回は呉勝浩著「爆弾」です。2022年の「このミステリーがすごい!」ランキングで1位を獲得した作品ですので、ミステリー好きの方ならネットや書店で本の名前はご存じかも知れません。爆弾 [ 呉 勝浩 ]価格:1,980円(税込、送料無料) (2023/12/15時点)楽天で購入爆弾【電子書籍】[ 呉勝浩 ]価格:1,980円 (2023/12/12時点)楽天で購入物語は、自販機を蹴飛ばし店員に暴行を働き警察に連行された「スズキタゴサク」と名乗る冴えない男が、取調室で刑事の尋問をのらりくらりとかわしながら、「霊感」と称して時刻を指定して爆破予告をします。必死になって爆弾の在りかを聞き出そうとする刑事たちに、様々な持論を展開して刑事たちを翻弄する「スズキタゴサク」。そしてついに爆発が起きて犠牲者が出てしまう…。というスト-リ-ですが、主人公である「スズキタゴサク」という男の外見やキャラには、ダークヒ-ロ-的な格好良さが微塵もありません。本文から引用すると、『男は照れたように顔をほころばせ、頭をかいた。黒い苔を生やしたようないがぐり頭。その下で、広いおでこがてかっている。太い眉、無精髭が目立つ二重顎。頬はぷっくり張りがある。』外見は冴えないが、刑事を翻弄し人の価値観を揺さぶったりしながら平然とした態度を崩さない「スズキタゴサク」に、読み手である私も彼のふてぶてしい態度に、ついつい興奮してしまったほどです。この小説は、スト-リ-や刑事たちの人物描写も見事ですが、主役はあくまでも「スズキタゴサク」であり、彼を中心にした『エンタ-ティンメント』作品と言ってもいいと思います。それほど「スズキタゴサク」のインパクトは凄いんです!この作品は彼のキャラ無くしては成り立たなかった、と言っていいのではと思います。この作品を読んでいたら、かなり以前に読んだ和久峻三著「被告人、名無しの権兵衛」という「赤かぶ検事シリ-ズ」の連載小説を思い出しました。名前も住所も「忘れた」という置き引き犯と法廷で争う物語で、スリル溢れる展開だったのを覚えています。今回紹介した「爆弾」は、法廷ではなく「取調室」での爆弾魔と刑事の対決で、構図こそ違いはしますが、本名を名乗らず素性を隠して飄然とする容疑者の態度は、どことなく共通点があるようです。 さて話を戻します。自己採点するとこんな感じです。(最高点は5)ジャンル : 爆弾魔と刑事たちの警察ミステリースト-リ-展開: 5読みやすさ: 5どんでん返し度: 4結末: 3犯人捜し: 1(容疑者は確保済)主役のキャラの魅力度: 5+ミステリー度: 5 (動機目的や容疑者の正体)読んで「スズキタゴサク」の毒気に充てられては如何でしょうか?結構快感かもしれませんよブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.12.15
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(その2)からの続きまたドジしてしまい、せっかく書き上げた下書きを消してしまいました。クリックするボタンを間違えたのがそもそもの間違いのもとでしたが、いま前の下書きを思い出しながらこれを書いているところです。何とも悔しいし惨め…。さて、東野圭吾を読み漁りながらも、ドンドン新規開拓にも精を出しました。米澤穂信、沢木幸太郎、筒井康隆、島田荘司、椎名誠、カズオイシグロ、辻村深月、堂場瞬一、山口恵以子、柚木裕子、伊坂幸太郎などなど、ミステリ-か否かにかかわらず多数の作家の作品を堪能しましたが、沢木幸太郎(深夜特急シリ-ズは最高でした)を除き、性格不一致でお別れとなりました。(実は、この辺りで「名探偵コナン」に出会います。49巻まで行っちゃいました!)そしてついに、(文庫本をほぼ読み尽くしていた)東野圭吾を超えるミステリ-作家と作品に出会うことが出来ました!!!それは、三上延の「ビブリア古書堂の事件手帖」と綾辻行人の「館シリ-ズ」です。ビブリアは古書に纏わる謎解きの見事さと、栞子さんの魅力(古書のことになるとスイッチが入る)が合わさって古書ミステリ-という新ジャンルを堪能できました。この記事を書いていて、ちょっとネットを覗いてみると、新シリ-ズが出ているんですね。さっそく読まなきゃ。「館シリ-ズ」は何といっても「時計館の殺人」が私の評価では断トツです。館の秘密やトリックは言葉では言い表せない程素晴らしかったし、結末のどんでん返しは衝撃的でした。ただそれらにも増して私には、館内での殺戮の場面がゾクゾクするほど恐ろしく、特に殺されなくてもよいはずの人が殺された場面では、私自身がその場にいる探偵役のごとく、無い知恵を絞って考え込む有様でした。こういうの好きなんでよね。その次に面白かったのは「迷路館の殺人」でしょうね。 そして、今も読み続けているのが、知念実稀人の「天久鷹央の事件カルテ」と有栖川有栖でしょうか。特にお気に入りは「天久鷹央の事件カルテ」シリ-ズの長編ものです。読んだのはまだ5冊ですが、ストーリー、トリック、結末、どんでん返し、そして登場人物のユーモアたっぷりの遣り取り、どれをとっても今迄に読んだミステリ-作品の中では最高傑作(私の個人的見解です)と言えるものでした。この冬、ブラッセル在住の知り合いが日本に一時帰国した際に買ってきてくれた「このミステリーがすごい」を読んで気付いたのですが、デビュ-後10年未満の若手ミステリ-作家が数多くの傑作作品を上梓しているのを知って、嬉しいやら楽しいやら愉快な気分になっていました。しかし、よく考えてみれば、それらは全て新刊書(ハードカバ-本)であり、海外に住んでいる私らが簡単に手に入れられるものではないと思いいたり、ガックリしたものでした。(通常は2か月に一度、文庫本10冊ほどネットで購入します)そういう訳で、これからも費用対効果を最優先に考えながら、無い知恵を絞って良いミステリ-本を買って読み続けていきたいと思います。と、ここまで書いて前に書いた下書きの内容と比べてみると(消去されたので大体の感じですが)、前より良くなった気がします。結構苦労はしたけど、終わりよければ全て良し、ですね。ブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.04.12
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(その1)からの続きミステリーではありませんが、2007-8年頃ぐらいから「ノルウェイの森」など村上春樹作品をよく読みました。「ノルウェイの森」や「色彩のない多崎つくると彼の巡礼の年」には心に触れるものがありましたが、他の作品はそれほど自分の心に響くものはなかったように思います。雰囲気は好きなんですが、どうもスト-リ-が好みではなかったのかな。残念ながら。この頃には、ブリュッセルで日本書籍を扱う本屋が無くなり、手に入れる手段は、当地在住の日本人3-4人が中核となって年2回不定期に運営しているBrocante(骨董市、フリ-マーケット)だけという悲惨な状況となっていました。勿論、新書を取り寄せる、という事も可能ですが、発送費用がべらぼうに高かったので、そう度々は注文できません。諦めざるを得ませんでした。そして東野圭吾にたどり着きます。彼の作品は文庫化されたものははほぼ読破しました。短編集やエッセイ集は、長編とは一変してユーモア溢れる笑える作品が多かったと思います。多岐のジャンルに多くの秀逸な作品を、しかも心に残る作品を数多く世に出した類稀な作家だと思います。何も関連がないような話を散りばめて置いて、最後の最後にすべてのピ-スをピシッと嵌め込んでいくスト-リ-は、読んでいて快感を覚えますね。勿論、この手のスト-リ-は今ではどの作家でもやられていることですが、そこに至るまでの個々の物語一つ一つがそれだけでも短編に出来るほど完成されているところは、本当に凄いというしかありません。。以前は湯川学のガリレオシリ-ズが好みでした(テレ朝のドラマ「TRICK」っぽくって良かった)が、「容疑者Xの献身」以来、どうも結末に共感が持てなくなってしまったこと、ストーリー自体も重いものが多くなり、ちょっと自分の好みとは合わなくなってしまったのは残念ではあります。一番好きな作品ですか?余りにも多くの作品があり過ぎて、思い出すのも大変ですが、いくつか挙げるとすれば、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」: この作品の良さは一言では言い尽くせません。作中のいくつかの物語が、それだけでも短編集に出来るほどドラマチックで感動的でした。個人的には、「さかな屋ミュ-ジッシャン」が気に入ってました。「危険なヴィーナス」: ストーリーも良かったですが、それ以上に、素数やフラクタル図形に興味が湧きました。「あの頃俺はアホだった」: 内容もとても面白かったのですが、この中で、自称「似非理工学生」と称していたのを読んで驚愕しました。書かれている内容が、私が大学入学当時に自身が感じていたこと、そのままだったからです。こんなことアホなこと考えるのは自分だけだと思っていましたから。この手の逸話を読むと、彼の作品だけでなく彼自身にも一層興味、というか親しみが湧いてきましたね。TO BE CONTINUEDブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.04.10
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にほんブログ村ブログを始めて2週間ほど経ちましたが、ミステリ-小説についてブログに書くのは、これが初めてです。ミステリー小説がすきだ、ということはブログ開設の時に書きました。今日は、今までどんなミステリー本を読んだか、自分なりに纏めてみようと思います。振り返ってみて、今まで読んだ殆どの本は多かれ少なかれ、ミステリー要素のある小説だったのではないか、と思います。本格ミステリーや探偵小説はもとより、時代劇や刑事警察もの恋愛ものにもミステリーといってよいものが数多くあるからです。 時系列で行くと、初めて読んだミステリーというジャンルの本は、アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」だったと思います。確か高1の時、本屋で何を買うか迷いながら買った記憶があります。(ただ、自分の記憶では、「アクロイド殺人事件」というタイトルだった、という気がするのですが)初めて読んだミステリー小説の結果は散々でした。ビギナ-にとっては選んだ本が最悪だったというしかないですね。あまり本を読みなれていない私は(中学卒業まで漫画以外の本は読んだ記憶がない!)、海外推理小説というのはこんなものなのか、と呆れたような騙されて悔しいような気持になったような気がします。その影響か、今に至るまで、海外推理小説はミステリー好きの私にとっても全く触手が動かなかったですね。一方、日本人作家のミステリーは結構読みました。気に入った作家ができるとその作家の作品ばかり読み漁る、という繰り返しでした。食べ物についても同じような傾向がありましたから、そのような性格なんですね。記憶が正しければ、その作家第一号は赤川次郎であったと思います。好みに合ったのは三毛猫ホームズシリ-ズで、その中でもドイツの古城を舞台にした殺人事件がお気に入りでした。笑いの中に適度の怖さが混じったところが良かったのかな。次いで阿刀田高のショ-トショ-トのミステリー短編集でしょうか。少々ホラ-風味のゾクゾクする感覚が何ともいえぬ快感でした。「黒の数列」という作品が特に怖かったです。この作家のエッセイ集も読みまくりました。とにかく面白かったですね。この頃は高村薫や宮部みゆきの直木賞作品なども読みましたが、軽いタッチのミステリー小説を読みなれた自分にはこれらのスト-リ-がちょっと重たかったので、長続きしませんでした。その後はどういう理由か覚えていませんが、時代劇小説に深-く嵌まっていくことになります。池波正太郎の長谷川平蔵シリ-ズは未完の巻まですべて読んだし、その他のシリ-ズも何回も読んだものです。元々新喜劇の芝居の脚本を手掛けていたからでしょうか、殺陣のシ―ンなど描写が細かく迫力満点なので、まるで実際の芝居やテレビの時代劇を見ているような視覚的な興奮を味わえましたね。池波正太郎と並行して、平岩弓枝の「御宿かわせみ」シリ-ズ、「何とか新八御用帖?」シリ-ズも読みました。どちらもミステリ-味の読みやすい作品でした。 池波正太郎、平岩弓枝を読み切ると、次は藤沢周平でした。多分「三屋清左衛門残日録」が最初に手にした本だと思います。何とも渋いいぶし銀のタイトルですが、50代前半くらいの歳だったか、突然に、定年間近の男の心境とはどういうものか知りたかったからと記憶しています。この作家にも随分とのめり込みましたねぇ。「たそがれ清兵衛)や「蝉しぐれ」は言うまでもなく、「よろずや文四郎何とか何とか」や「獄中医立花何とか」のシリ-ズも読破しました。この作家の文章は非常に洗練されていて、どうしてこんなに上手く書けるのか、読みながら感心したものです。(池波正太郎と藤沢周平の2氏の作品はミステリ-とは言えないかもしれませんが。)TO BE CONTINUEDブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村
2023.04.09
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さて、続編です。謎のバン年が明けても窓を開けっぱなしにしている隣家に、変化が訪れた。隣家のガレ-ジの入り口に中型バンがお尻を少し突っ込んで止まっているではないか。運転席には誰も乗っておらず、わずかに見えるガレ-ジの中にも人影は見えなかった。その時は単に、ああ今頃やっと引っ越し荷物を運んできたんだな-、くらいにしか考えていなかった。ただ、奇妙な点がいくつかあった。奇妙な点 その1: 引っ越し荷物の搬入で中型バンは通常ではありえない。話によれば単身ではなくカップルということなので、かなりの搬入物があるはず。奇妙な点 その2:引っ越し荷物の搬入は通常、大型トラックを家の前に横付けにする。今回は中型バンなのでその必要はないのかもしれないが。ただ、ガレ-ジは地下にあるので、歩道からガレ-ジへのスロ-プは結構急である。そんなスロ-プに停車させて荷物の出し入れをするのはちょっとおかしい。それに入口をバンでふさがれていてガレ-ジ内は暗いのに明かりが点いていない。奇妙な点 その3:そして何よりも奇妙なのは、人の姿、出入りが全くないこと。どうも壊れやすいものか、あるいは人目に触れさせたくない物ののどちらかだろう。いくら時間に余裕のある私でも、1日中見張っているほど極度の暇人ではない。目を離した隙にバンはいなくなっていた。奇妙な訪問者隣人の素性が分からない悶々とした日々が続いた2月のある午後、予期せぬ訪問者によって奇妙な隣人の素顔が明らかになった。2人の男が訪ねてきたとき私は外出中であった。後でその話を聞いたとき、まさに地団駄を踏んで悔しがったものである。2人の男たちは警察の者であると名乗り(警察手帳のようなものを提示したらしい)、隣人のことで聞きたいことがある、内密な話なので家の中に入れて欲しい、と言ったそうである。当時妻と息子が家にいたが、息子は即座にノンと言って拒否した。この地では見知らぬ人間を家に入れることは、まず無い。訪問者が強盗になる可能性があるから息子の判断は当然である。警察手帳を見せられたといっても、誰も本物を見たことがないのであるから信用はできない。押し問等を繰り返したのち、双方とも折れて一人だけ中に入れて話を聞くことになった。その話とはこうである。隣人は家の中で大麻を栽培している大麻密売組織の一員で、それも大量の大麻だそうである。警察官は隣家での人の出入りについて知りたがっていた。こちらはそんな情報は持っていない。むしろこちらが知りたいくらいだ。警察がうちに来た理由は、単なる隣人であるだけではなく、我が家からは隣家の玄関入り口は丸見えなのである。出入りを知りたければ我が家に来るのは当然である。ついに突撃!警察の訪問から2週間ほど経った3月初旬のある週末の早朝6時過ぎ、ドンドンドンというけたたましい物音でベッドから飛び起きた。2階の窓のカーテンを薄く開けて隣家の玄関を覗いてみると、開いたドアから4-5人の私服の男が荒々しく家の中に入るところであった。家の前には見かけない大型バンが止まっていた。どうみても警察による逮捕家宅捜索に間違いない。やっとその日が来たのである。しかし30分も経つと人の出入りは無くなり、いつもの週末の静けさが残るだけであった。スペクタクルはあっという間に幕を閉じた。この話には後日談がある。事件からしばらく経ったある日、うちのカミさんが隣家のオーナ-と話す機会があった。当然事件の話になったそうで、それは不謹慎ではあるが興味深く、かつ驚くべきことであった。 犯人グル-プは大量の大麻を短期間で成長させるため、大量のランプを昼夜点けっぱなしで使用していた。警察から聞いた話では、家の中は大量の大麻の苗と電気コード配線で足の踏み場もなかったという。1月に見た中型バンは、電気工事車両だったと思われる。また、窓を開けっぱなしにしていたのは、大麻の匂いとランプの熱を逃がすためだったと気づいた。オ-ナ-が電力会社から受け取った請求書によれば、3か月間の電気ガス代の合計は何と10万ユーロ、日本円にして約1300万円、1か月当たり約430万円、1か月の電気ガス代が 430万円!?ベルギ-の平均家庭の約200倍以上にも及ぶ、驚きの電力消費量であった。警察は家宅捜索時に、栽培されていた全ての大麻を押収したのは当然として、大規模な電気工事の配管配線を徹底的に破壊したとのことで、修理しなければならないオーナ-にとっては大変な経済的負担となる。警察に抗議したそうであるが、全く無視されたという。事件から丁度1年経つが、ニュ-ス等で報道された形跡はないし、近隣住民の殆どは事件が起こったことさえ知らなかったという。隣家にはスウェ-デン人家族が、年初より何事もなかったように住み始めている。彼らは当然事件のことなど知らないはずである。最後まで読んでいただいた方、お疲れさまでした。有難うございました。2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.03.21
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1年ほど前になるが、ある出来事が隣家で起きた。その出来事を話す前に、まず我が家の隣人について触れておこう。向かって左はオランダ語系家族が住んでいることは前に述べたと思う。今回お話ししたいのは右隣の隣人である。一昨年の11月頃から住み始めたのは、この家のオーナ-によればイタリア人夫婦ということであった。11月頃から住み始めたと書いたが、実はこれは確かな情報ではない。うちも含めて近隣住民は誰も引っ越し業者が大型トラックで乗り付けたのを見たことがなかった。そればかりか不思議なことに、住人の姿さえ誰も見たことがなかったのである。実は、私の日課として朝起きてまずやることは、飼っている2匹の犬を庭に放し用便をさせ、庭に出て後始末をする。すると垣根越しに隣家の庭やキッチンがよく見える。ある朝7時ころ、12月中旬頃だと思うが、キッチンの窓と2階の浴室の窓が開いているのが目に入った。電気は点いていない。全く人の気配はしない。ちょっと奇妙な感じがした。というのは、前の晩の9時ころに犬と一緒に庭に出た際に同じキッチンと浴室の窓が開いているのを見たのである。晩朝共に電気は点いていない。どう考えても窓を開け放しにして寝たらしい。ベルギ-の12月の朝はよく氷点下になるしとてもではないが窓を開け放したままで寝るなど普通ではありえない狂気の沙汰である。どうも新しい隣人は寒さにめっぽう強い、というよりは寒さをこよなく愛するマゾ好きの変態かもしれない。私の想像はとめどもなく膨らんでいったのです。-TO BE CONTINUED-実は全部書き終えたのでプレビュ-にしたら、その先の文章が消えてしまってました。どうも長すぎたようです。従い、後半は明日アップすることにします。ここまで読んでいただいた方には申し訳ないですが、また明日読んでいただければありがたいです。2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.03.21
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