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2006年09月09日
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「それでは、みなさん今朝はセミナーの締めくくりです。

いかがでしょうか。何か発見があったでしょうか。

ご満足いただけましたでしょうか?」

最初の日のように、テーブルの周りにエヴァさんが一番奥の席に座った。

「今朝は、今回このセミナーに参加しての感想を語り合って、

お別れすることにしましょう。

自分の中で、もし何か変わったものがあれば、言ってください。

新たな発見でもいいです。それから一つだけ特別ルールをつくります……」

そのとき、木瀬が立ち上がって各パートナーの前に小さな皿を置いた。



「今配ったのは、ただの乾燥した大豆です。

別に何もなければ口にする必要はありませんが、

発言者のことばを聞いていて、

自分が何か喋りたくなったらその豆を口に入れてください。

しゃべりたい心を抑えてください。

そして最後まで話を聞いてあげてください。

豆は硬いですが、じっくり噛めば柔らかくなるはずです。

噛むうち、その人の心を感じることができるかもしれません。

・・・・・・いいですか。私が終わりというまで、

指名された人以外は発言を謹んでくださいね」

奇妙なゲーム説明を聞いて、皆神妙な面持ち。



バード君は一瞬言いよどんで、そして意を決したようにしゃべり始めた。

「実は、ヨーコと別れようと思っています」

と切り出した。

「オオッ!」

と驚きの声を上げたのは船場さんだ。



船場さんは慌てて豆をつまんだ。

「ヨーコは嫌いではないけれど、恋人というより、

いい飲み友達みたいな関係で・・・。

そのままでも良かったのですが、ここでシホさんと出会いました。

シホさんと出合ったことで、ぼくの中で何かが変わりました。

初日の夜、外で煙草を吸っているとき、シホさんと話しました。

それがとても自然で…。いっしょにいるとうれしい気持ちになった。

それから2日目の夜も、3日目の夜も、

皆さんがそれぞれの部屋でお休みになっているあいだ、

ぼくたちは会っていました」

ヨーコが、豆をつまみ、気持ちを抑えているふう。

「僕は異性がずっと恐かったのです。

普段話しているときは分からないのですが、

いざベッドに入ると凄く恐くなって僕のものは役に立たないのです」

「ちょ、ちょっと待って。それ以上は言わないで」

ヨーコはたまらず、声を出した。

「ヨーコさん、黙って聞いてあげてください」

エヴァさんがいましめる。

「実は、ヨーコはなんとかぼくの機能が回復するように

といろんな情報を集めてくれて、

病院やカウンセラーの情報を集めてくれました。

この会にぼくがきた理由は本当言うとそのためなんです。

何かのきっかけになれば、

と思ってヨーコは藁をもすがるつもりでぼくを誘ったのです」

そこでいったん、間をあけるように

バード君はテーブルの上のオレンジジュースを飲んだ。

「ぼくはここに来てとてもよかったと思います。

節子さんや恵子さんにはレンタルパートナーとして

お付き合いいただいたのに申し訳ありませんが、

シホさんといるときだけが気が落ち着いたんです。よかったんです。

ぼくの男性としての機能も可能になった。

あまり詳しくはシホさんの気持ちもありますので言いたくはありませんが、

向かいの島に二人だけでこっそり行ったとき、

それこそ予期しないで宇宙から流星がやってきたみたいに

ぼくの身体の力が蘇った。

そしたら、シホさんのことがいっそう好きになって……。

ヨーコ、ごめん。そしてありがとう」

そう言って、バード君は席に座った。

ヨーコの目は潤んでいる。

シホさんはバード君の顔をじっと見たままだ。

ヨーコが指名された。

しばらく考えてから立ち上がった。

「エヴァさん、皆さん、ありがとうございます。

私個人としては、こういう結果になったのはとても残念ですが、

でも、バード君にはいい結果なのだろうと思います。

私達は、恋人同士といっったって、

セックスレスで、考えようによってはただの友達。

バード君の民族音楽演奏の姿にひかれて、

それがとても素敵で・・・、それに惹かれて私がバード君を追いかけていた。

無理やりしばっていたのは私で、

バード君はいつも別の何かを求めている気がしてた。

それが何か分からず、ずるずると私達の関係は続いた。

くやしいけれど、きっとシホさんには私にはない何かがあって、

それがバード君に力を与えている。

だとしたら、バード君にふさわしいのはシホさんです。

シホさん、バード君をよろしく、と私からいうのもへんですが、

二人、幸せになってください」

ヨーコは、そう言ってシホさんに頭を下げた。

マザコンとは言え、バード君を愛していたことは事実のはずなのに、

そう言えるヨーコが不思議だった。

ヨーコの意地なのだろうか。

座は静まりかえっている。(つづく)






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最終更新日  2006年09月09日 20時19分49秒
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