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January 15, 2009
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テーマ: 本日の1冊(3712)
宇月原晴明
新潮文庫
☆☆☆☆☆◎
 日本ファンタジー小説大賞受賞作。この大賞の第一回の受賞作品は酒見賢一さんの「後宮小説」だ。
 この小説が大きな影響を受けているのは、フランスのシュールレアリズム作家アントナン・アルトーの「ヘリオガバルスあるいは戴冠せるアナーキスト」(白水社、多田智満子訳)だ。私はもう10年ほど前になると思うが、この小説を読んだことがある。ただ、今まで読んだうちでも難解さでは1・2を争う。そして今となってはロクにストーリーも覚えていない。また、この小説が単行本で発刊されたときも手にした記憶があるのだが、その時はアルトーの小説の焼き直しのような気がして興味を覚えなかったのだが…。
 改めて図書館で冒頭を拾い読みしてみて、小説全体を流れる妖しい雰囲気がすっかり気に入って読み始めたら、止まらなくなった。
 日本で誰か一人「戦国武将」を挙げろといわれたら、多くの人がこの織田信長を挙げると思う。しかし、この小説ではその信長が両性具有として描かれている。そして、古代ローマ帝国でも有数の悪帝、ヘリオガバルスの両性具有への嗜好をからめ、さらにその奥に潜むものとしてキリスト教社会では邪教として悪魔におとされたシリアの太陽神と日本の天照やスサノオ、牛頭信仰、更には神農を絡め、そこに信長とその家臣団、そして敵だった今川の軍師雪斎とその諜報部隊、武田信玄と勝頼とその宿老達、上杉謙信など戦国時代のドラマも繰り広げられる。そして、信長とヘリオガバルスの繋がりをアルトーに語って聞かせるのは、総見寺という名の仏語だけでなく独語も操る日本人であり、彼の背後からはナチスまでも顔をのぞかせる…というとてつもなく複雑なプロットが展開される。
 アルトーと総見寺、信長と光秀、秀吉の絡み方もかなり妖しい。そして、雪斎と彼の配下である引退した老忍びの一群とのやりとりもスパイ映画と歴史映画を絡めたようで読んでいて楽しかった。
 様々な歴史的な事実を絡めて妖しく耽美に解釈(この妖しさと耽美も新しい)し、ストーリーを広げていく大人向きのファンタジーである。正直、今まではオコサマ向きのファンタジーか、大御所の手になる歴史小説に毛が生えたようなお堅いファンタジー、あるいは忍法帖シリーズのような路線のファンタジーしか日本にはないと思っていたが、こんなのもあると思うと嬉しくなった。





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Last updated  January 15, 2009 02:46:56 PM
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