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January 18, 2009
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天平冥所図会
山之口洋
文藝春秋社 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 カバーの可愛らしい絵と天平という時代設定からずっと気になっていた本。だが、著者が日本ファンタジー小説大賞受賞の「オルガニスト」の著者だとは思わなかった。あの話とは随分雰囲気が違うぞ…。
 主人公は葛木連戸主と藤野別真人(和気)広虫。ちなみに広虫は女性。第二章からは戸主の奥さんになる。そして広虫の弟が藤野別真人(和気)清麻呂。そう、この広虫と清麻呂の姉弟の名前から、宇佐八幡宮神託事件を思い出したし、登場人物には光明皇后、吉備真備なんかも出てくる。三笠山、正倉院、勢多大橋、宇佐八幡の四章からなる。三笠山は書き下ろしだそうで、これだけ広虫と戸主のなれそめみたいな話になっている。
 奈良古代史好きにはかなり楽しめる一冊。というか、私、阿倍仲麻呂の歌に出てきた「三笠山」が今の大仏や奈良公園のあたりだと思わなかったよ…。確かにあそこはず~っと緩い登り坂で、正倉院展に行く時、自転車で行くの後悔したけど…。三笠山は大仏鋳造の時の話、そして、正倉院では宝物を収めるときの話。国家珍宝帖(これが初出時のこの章のタイトルでもある)というのがその目録だけど、その目録を作るときの苦労話だ。正倉院展の時にこの珍宝帖もよく見るけど、その時の状況が小説になっている。藤原仲麻呂、恵美押勝の乱がネタなのが勢多大橋。この勢多大橋も武田信玄の「明日は瀬田に旗を立てよ」の瀬田なので行ったことがあるのだ。そして宇佐八幡が勿論、宇佐八幡神託事件を扱っている。
 この小説、最初の「三笠山」と「正倉院」の章では、割と当時の生活を描写する感じで、あまりこの世とあの世をまたにかけて…という内容ではないのだが、「勢多大橋」で主人公の一人戸主が死んでしまい、幽霊になって広虫の元に表れるにいたり、いよいよこの世とあの世のごちゃ混ぜになり、ストーリーは佳境になる。そして宇佐八幡で、この世とあの世から色々あって…。だが、法華寺が光明皇后の御所でそこと平城宮をいったりきたり、さらに海龍王寺も出てきたり…場所の記述も楽しめたし、遣唐使経験のある吉備真備の娘の一人は中国に残り、さらに後宮に入った挙句反乱で殺された…という面白い記述もある。思わず、天平の奈良に観光旅行にいった気分になれる。 





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Last updated  January 18, 2009 05:35:40 PM
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