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November 10, 2009
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カテゴリ: 日本の小説


中公文庫
☆☆☆☆☆

以下では物語の結末や展開に触れています。

 東大寺大仏造顕にかかわった人々の哀感をつづった小説。
 主人公の天国(あまくに)は秦氏の氏寺蜂岡寺(今の太秦の広隆寺だと思われる)で重要な役割を果たしていた造仏師。しかし、彼は良民ではなく金銭で売買される奴だった。彼の主、秦百嶋は自身は高齢を理由に国家事業として行われる大仏造顕に携わることは断るのだが、代わりに片腕である天国と天国の弟子のような立場である当麻呂を推薦する。
 天国や当麻呂、他の大仏造顕に関わる人々は奴婢の身分から解放され、完成の暁には他の良民たちと同様口分田も与えられる、と言われ、希望に燃えて辛い工事に当たる。以前読んだ、天平冥所図会も同時代を舞台にした作品だが、こちらは主人公がより庶民。天国は職人気質で政治的駆け引きなどには全く無関心、ひたすら前例のない大工事を遂行するために、悲惨な目にあっても必死で仕事に取り組んでいく。彼の粉骨砕身も技術者としては一癖も二癖もある上役にも評価されるのだが、ひたすら仕事に没頭する彼は時に周囲に厳しく不器用で、当麻呂はやがて彼から離れていく。さらに、大仏が完成した時、時の権力者藤原仲麻呂は非道ともいえる手段をとる。
 物語のラストシーンは大仏開眼会の様子とそれを耳にしながら奈良坂(京都へ向かう今でも使用されている道路)を登る天国達。その姿はとてもやりきれない。大仏が造顕された時、水銀が大量に用いられたこともあり多くの人が犠牲になった、みたいなことは聞いていたが、藤原仲麻呂が行った政策改変は過酷な労働に酷使した人々を良民にすると言っておいて、また奴婢にもどしてしまうというのは本当に酷い。後に彼が謀反を企て家族ともども無残に殺されても自業自得かと思う。
 正倉院展と法隆寺を見学した後、近鉄筒井駅そばの書店でこの本を買ったのだが、今後、正倉院展に数多く出展されている大仏開眼会の時用いられた祭具・法具を見る目が変わると思う。





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Last updated  November 11, 2009 03:03:48 AM
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