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April 21, 2011
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カテゴリ: 海外の小説

【送料無料選択可!】バウドリーノ 上 (単行本・ムック) / U.エーコ 堤 康徳 訳

【送料無料】バウドリーノ(下)
ウンベルト・エーコ
岩波書店 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 2000年にイタリア語版が出版されてから、日本語版が出たのは2010年。邦訳が出るのを待つのは長かった……。著者の小説デビュー作「薔薇の名前」についで中世を舞台にした小説だ。
 主人公バウドリーノは、北イタリアの貧しい農民の子だが、口が達者で機転が利き、平和主義者。神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ・バルバロッサ(赤髭王)に気に入られ、彼の養子となる。彼に学問を教えたのがフライジングのオットー。
 上巻は、まだ若いバウドリーノがヨーロッパで大学生(遊歴学生)をしながら、フリードリヒの皇妃ベアトリスに恋心を抱いたり、宮廷や国際問題のいざこざに関わったり、中世の歴史小説の体だ。赤髭王に対向するイタリア都市連合が、彼らが奉じる(赤髭王に対立する)法王の名前をつけて建設した町の名前が、アレッサンドリア。バウドリーノの故郷になる町の名であり、エーコの故郷でもある。この町に伝わる牝牛が食べたえさから食糧事情を推し量る伝説が作中にも採用され、バウドリーノの父親がやったことになっている。ここで司祭ヨハネという東方のキリスト教国を統べる王の手紙というのが出てくるが、史実でもこの手紙などに最初に言及したのはフライジングのオットーだという。オットーが書いた年代記の出だしの羊皮紙を内緒で削って、自分の自伝を書いたという設定がこの小説の書き出しでもある。
 下巻はフリードリヒの謎めいた死を境に、バウドリーノは仲間たちと司祭ヨハネの国を探しに出発し、ブンダペッツィムという助祭ヨハネが支配する国にまでたどり着き、そこでスキアポデス族だのポンチ族だのという奇想天外な種族とともに奇想天外な生活を送り、その中でヒュパテイアという女だけのコミュニティの中のヒュパテイアという名の美女とねんごろになる。そしてこのヒュパテイアは(巻末の解説によると)グノーシスを信奉する女性として描かれていて、バウドリーノにも彼女の神学を語ったりする。(でも私にはよく分からん)しかし、助祭ヨハネも不治の病に犯されており、実際に国を支配しているのは宦官。しかも司祭ヨハネの国はここから行っても何年もかかるというという。バウドリーノたちは司祭ヨハネの国に行くのはあきらめるが、このブンダペッツィムにも白フン族が侵入してくる。ここで仲間を失い、この国を逃げて、山の老人のことだと思しき岩山に捕らわれるが、そこをロック鳥(アラビアンナイトに出て来るそうだ)につかまって脱出、ようやくコンスタンチノープルにまでたどり着く。しかしそのコンスタンチノープルは、第四回十字軍の戦火の只中……。
 しかし、ついに赤髭王死去以来のすべての事柄に決着がつく。この直後にバウドリーノは、彼の物語の筆記者とされるニケタス(ニケタス・コニアデス、実在の人物)と知り合うのだ。 そして、ニケタスの知り合いパフヌティウスが言う赤髭王の死の原因は、自分が王の体を死んだものと思って川に投げ込んせいだったことにバウドリーノは打ちひしがれ、再びヒュパティアと出会うため、司祭ヨハネの国を探しに出発するのだ。
 司祭ヨハネ(プレスター・ジョン)、聖杯、聖遺物、グノーシス、山の老人などなど、物語の中の中世には欠かせない素材がてんこもり。カバーの折り返しに「ピカレスク」と書いてあったので、悪人を予想していたが、登場人物に本当の悪人は出てこなかった。赤髭王もいい人だったし、バウドリーノもしかり。他にも悪い人間は出てくるがみな、憎めない。バウドリーノの十代はじめから六十代はじめくらいまでの50年にもなる年数の小説で、「薔薇の名前」よりも空想力を広げた奔放な楽しさを味わえる。私はこの小説で司祭ヨハネの国、プレスター・ジョンのことを初めて知った。この時代の知識があればあるほど、この場面はアレだ、とニンマリできるに違いないが、私は残念ながら、デミウルゴス?どっかで聞いたな、と思いつつ、巻末の解説でグノーシスか、という程度。ロック鳥も読書サイトの感想を読んでいて分かったくらい。強いていうなら山の老人の記述くらいだろうか。エーコは自分が仕掛けたこういう仄めかしを読者がどこまで察知できるかも想像しているのかもしれない。





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Last updated  April 21, 2011 01:20:22 PM
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