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February 23, 2012
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カテゴリ: 歴史・地誌・旅行

【送料無料】昭和の奈良大和路
入江泰吉/奈良市写真美術館
光村推古書院
☆☆☆☆☆☆
 昭和20年代・30年代の奈良・大和路の写真。しかも、入江氏が「作品」として発表したものではなく、スナップショットがほとんどのようだ。写真美術館の刊行らしく、使用機材も記載されている。当たり前だが、全てクラシックカメラ。写真も全てモノクロである。
 奈良は戦災を免れた。入江氏が撮影した風景は本当に日本の田園風景。今はコンクリートのマンションや住宅が立ち並び、舗装道路が張り巡らされているあたりが、でこぼこの埃っぽそうな道で、延々と田んぼがひろがっている。その田んぼで農作業に勤しんでいるのは人だけではなく、牛もなのだ。そして、今は高い(といってもたいして高層なワケじゃない)建物で見えなくなっているが、かつてはそこに二上山や興福寺の塔が見えていた風景。そして、今は立ち入り禁止の塔の中から一望する写真。石舞台の上には子供が登っている。保存を考えたらもう不可能なことは理解しているが、人々の生活の中に千年以上前の遺跡がごく自然に溶け込んでいる光景はやっぱり私の好きな奈良の風景だ。あと、意図的なのかもしれないが、僧侶がよく画面に写っている。
 各写真には説明がつけられ、いくつかの場所は今でもその面影を伝えているし、他の場所は今はもう見る影もない。近鉄奈良駅は地上にあるが、三条通りからもちいどのへの入り口にあるお土産物屋さんには今でもここの写真の面影がある。でももちいどのの賑わいは往時とは比べるべくもない。崩れかけた土塀や山門も今は綺麗に補修されているが、水草がたなびいていた小川はコンクリートに固められていたり、暗渠となっている。でもその傍らの祠は今でもあって、傍を通った記憶があるのだ。
 そして、今はもう無くなってしまった貴重な文化財の写真があった。入江氏が作品を撮影する直前に焼失してしまった、法隆寺金堂壁画だ。当時、壁画は修復作業中であり、その作業者の向こうに仏の姿が残っているのが写し出されていた。
 この本の写真は第二次世界大戦終戦の直後、物資が乏しくフィルムさえ不足しがちな時代に撮影されたものもあるそうだ。そこに写し出されている風景は、まるでどこかアジアの発展途上国の田園風景のようでもある。けれど、作品ではなかったものの、これほど生き生きとしたスナップショットの数々は今となっては資料的価値も高い。が、今と違い、フルマニュアルの銀塩カメラで名匠の手により撮影された写真だ。今のデジタルカメラはフルオートでカメラにお任せ、手ぶれは連続シャッターでごまかす、という彼の写真撮影時とは正反対の手法である。一枚一枚が今の写真とは比べ物にならないくらい強い吸引力を持っているように感じるのは私だけだろうか。





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Last updated  February 23, 2012 01:17:27 PM
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