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October 26, 2012
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カテゴリ: ミステリ(日本)

【送料無料】BT ’63(上) [ 池井戸潤 ]

BT '63 下 講談社文庫 / 池井戸潤 イケイドジュン 【文庫】
池井戸潤
講談社文庫
☆☆☆☆☆
 この人の小説には失業経験が出てくることが多いのだが、どうもそのあたりが身につまされる。この小説も精神を患い、失業・離婚した主人公がひょんなことから父の記憶を覗いてしまうことから始まる。主人公、大間木琢磨が見たのは、父史郎が彼の母と結婚する前のことだ。東京オリンピックを翌年に控えた、昭和38年の大田区の工業地帯。父はそこで斜陽の運送会社に総務課長として勤めていた。
 総務とはいっても経理も見ているし、彼が銀行に融資を依頼する銀行の担当者もストーリーの中で重要な役割を果たすのは、この人の小説らしい。しかし、この時代、まだ戦後の闇も残っている。終戦から18年、終戦時20歳だった人間はまだ38歳の働き盛りなのだ。そして、まだあちこちに、街灯もない「闇」が残っている。そんな時代を背景に、琢磨が見た父史郎は、その頃には先駆けとなく事業を起こそうとする。だが、彼の勤めている相馬運送には、とんでもない人物が紛れ込んでいたのだ。彼らに足を引っ張られるような形で新事業は頓挫。しかも、いい感じになっていた女性もとんでもない過去を背負っていた。ストーリーの後半は本当に坂道を転げ落ちるようで、読んでいてハラハラした。この史郎が恋心を抱く女性は幼い娘と暴力亭主を逃れてきたのだが、彼女の身の上は悲劇としかいいようがない。他の人物トラックの運転手達、に関しては自業自得の面が沢山あるのだが。さらにクライマックスになってくると、その幼い娘も重病になっているのではないか、ということが読者には暗示されているのだ。そして、琢磨の周囲でも元妻が事件に巻き込まれていることが判明する。
 さまざまな事件が織り込まれ、特に昭和38年の方は陰惨なものが多く描写もかなり血腥い。でも、最後に琢磨は上記の幼い娘を探し当てる。さらに、このストーリーの中で重要な役割を果たすトラックも見つけ出すのだ。このあたりは結構感動的だった。だが、ちょっと思ったのは、この時代のトラックってパワステでもないし、ATでもないし、ものすごく運転が難しそうなのだが、琢磨が結構何とか運転していること。そんなにいきなり運転できるものなんだろうか?それに、琢磨は母に気を遣って自分で色々調べているが、彼の母親に話を訊いていたら、もっと早く分かったことも多かったような気がする。
 とはいえ、登場人物の描写も細かく、かなり読み応えがあり、琢磨と史郎の間で視点が入れ替わるのもさほど読みにくくなかった。長期のドラマ化なんかしたら面白そうな内容だ。あ、でもちょっと残酷なシーンが多いか。





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Last updated  October 29, 2012 02:54:53 AM
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