kanabaaのイタリアciclismo見聞録

kanabaaのイタリアciclismo見聞録

2016.09.20
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カテゴリ: イタリア社会
「イタリアにおける児童相談所と養育里親の連携による、家庭生活が困難な児童及びその保護者に対する支援のありかたについて」(その2)は、実際のケアが行われている現場からのレポート第1弾です。
まずは首都ローマの模様から。
圧倒的な人口と多様な人種を抱えるイタリアの首都では、民間機関の共働による取り組みが印象的でした。

ローマ市の現状
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ローマ市の里親・養子および遠距離支援のためのセンター「ポリチーノ」

イタリアの首都であり、ラツィオ州の州都であるローマ市には19の区が行政単位として設置されており、区の福祉担当部署に人口1万人に対して1人のケースワーカーが配置されている。児童担当のケースワーカーは、生活保護や薬物など、他部門を担当するケースワーカーと連働しながら家庭支援にあたり、在宅での支援が限界になった場合に、児童の保護を行う手続きに入る。

近年、近隣の外国からの流入人口が増加する中で、養育困難に陥った人々への支援や、貧困、麻薬など、市として対応しなくてはならない問題が深刻化を極めたため、ローマ市では、「チェントロ・ポリチーノ」(Centro per L’afiddo l’adozione ed il sostegno a distanza)という里親・養子制度を支援するためのセンターを設立した。元々は養子制度を支援するためのセンターとしての設立が考案されていたが、実働部隊である各区の業務の調整や、民間団体とのコーディネート、里親制度の啓発、専門職の資質向上のための研修などを担うためのセンター機能を持たせることに重きを置くこととなった。従って、「チェントロ・ポリチーノ」は、従来の機能の他に、ローマにある全センターのスーパーバイザー的役目も果たしていることになる。
虐待の予防につながる妊娠・出産、医療・保健等の相談を行う家庭相談所(consultorio familiare)は、別組織として機能をしている。
なお、ローマ市では、国に先立ち本年2004年には旧来の大規模施設は全廃されるとのことである。

民間の親業支援団体 「ラ・ブッソラ」の行なう支援

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ローマ市19区にある、親業支援のための民間団体、「ラ・ブッソラ」


1999年に、里親制度などの充実(元の家族と里親家族の支援、問題を抱えている家
族の支援)のためには、区役所の中に従来から配置されているケースワーカーだけではなく、精神面のケアを担う心理職の配置が必須である、と要求をあげたことが設立の起源となった。 
19区のゾーンは人口20万人。ローマ市のはずれの方にあり、低所得、外国人の居住な
ど問題を抱える家族が多い。区役所としても、あまりのケースの多さ、深刻さに、もとも
と里親制度を担当していた部署が対応しきれなくなり1997年に、資金を出してプロジ
ェクトを組み、組織再編を検討した経緯がある。
従ってセンターが機能するにつれて、区役所とのネットワークが単にケースに関するイ
ンフォメーションのやりとりだけではなく、ケース処理のためのミーティングや提案作業を通じて、共同して問題解決にあたっていく、というスタイルが確立されていった。

「ラ ブッソラ」のスタッフは以下のとおりである。
1名 責任者(心理職・心理治療士)
1名 プロジェクト指導者(ケースワーカー、心理職、心理治療士)

1名 ケースワーカー
1名 文化の調停者
1名 法律相談者。弁護士
2名 スーパーバイザー

特筆すべきは、心理スタッフの数の多さであるが、これらのメンバーによって、地域に対する情報提供や、家族支援、里親委託に際するマッチング、里親への支援など、区との連携のもとに、多彩な取り組みが実施されている。

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LA BUSOLLAのメンバーとともに

なお、2001年に、里親制度の啓発のためにローマ市が「チェントロ・ポリチーノ」を中心に、大キャンペーンを実施している。キャンペーンの内容は広告を描いたバスを走らせたり、地下鉄など、色々な場所にポスターを貼り、コールセンターを設置して、所管している地区を問い合わせてきた人に教える、とうような内容で、1000人以上が応募してきた。里親になってもらう前に、応募してきた人に講習を受けてもらい、講習終了後に、里親になる意思の再確認を行い、新たに40組の里親が誕生している。

実際の里親制度を利用して親子のケアについては、以下のとおりである。

「ラ・ブッソラ(親業支援センター)」は子どものケアを中心に行うが、区役所の方が、各種の福祉施策も講じながら元の家族の支援を行い、連携を図っていく。
諸般の事情で子どもが元の家庭に戻れない、という事態が生じた場合は、裁判所がケースワーカーから情報を受けて、養子縁組を行うこともあるが、担当者はあくまで、養子縁組と里親家庭は別のもの、という意識をもってのぞむこととなっている。
子どもを家庭から切り離した際に、家庭復帰を誰がどのような基準で判断をするのか、という当方からの質問に対しては、ケースワークの流れの中で、ケースバイケースで判断されていくものであるので、論理上で決めていくことはしていない。家庭復帰のためのマニュアルは無く、元の家族の状況と気持ちを第一に判断していく、との答えであった。
また、親のケアに関わる心理職(セラピスト)の存在が、親業支援のためには重要であり、心理職が最も心がけていることは、親との信頼関係を築くことである。里親に預けたい、と言ってくる家庭の問題を受け止め、セラピーを行っていくことが重要であり、家庭環境が混乱している中では、子どもにも色々な症状が出ているので、子どもの状況から、その裏にどのような家族の問題があるのか、ということを常に念頭に置いて対応している、とのことであった。
里親制度が機能し、家族の再統合がうまくいくのは、里親家族と元の家族のコミュニケーションが図られたケースであり、そのためにケースワーカーとセンターの協力は避けて通れない。 
面談の中で再三聞かれたsostegno(支援)という言葉であったが、親子の心に寄り沿い、まずは家庭支援を基本に家族に介入していく、という姿勢は、日本の児童福祉の考え方からも、非常に参考になるものである、との当方からの感想に対して、対応したスタッフ一同、共感の意を示してくださったことが、印象的であった。

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LA BUSOLLAの親子カウンセリングルーム

グループホーム「ドン・ボスコ」の取り組み

一方、ローマ市では諸般の事情で里親委託が困難な児童に対しても、大規模施設に代わるものとして、グループホームのネットワークを構築し、永続的なケア実施している。
里親とも連携をしながら、地域に根ざした取り組みを行なっている事例としてグループホーム「ドン・ボスコ」の視察を行なった。

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グループホーム「ドン・ボスコ」の入り口

少年たちのためのグループホーム「ドン・ボスコ」(“una casa famiglia al borgo ragazzi don bosco” )は、ローマ市の7区にあり、元はサレジオ会派の経営する施設であったが、現在は男女それぞれのために8人用のグループホームを一つずつ有し、14歳~18歳までの児童が生活している。
各グループホームには、6人(男性3+女性3)のケア職員(educatori)がいるが、アットホームな雰囲気を作るための、専門職の養成をしていくことが急務であると考えている。

地域における認知度は高く、区とボランティアや里親との連携・調整や、里親家族に講習をするなど、区のセンター機能も持っている。また、地域の児童がスポーツなどを通じて交流できるスペースの提供も行われている。(17時頃の訪問であったが、グラウンドでは子どもたちがサッカーに興じていた)

グループホーム入所の経緯としては、区役所から、ケースの連絡とリポートがあり、それぞれの児童の実状を把握したうえで、入所となる。
入所児童の特徴としては、両親がいない、外国人である、などの問題を抱えている場合がほとんどである。また、思春期になると、里親との濃い関係をいやがる児童もおり、実態として、里親家庭での不適応により入所に至ったケースもある。現在入所している児童全員が学校へ行けていない状態であるため、18歳で自立をするまでの間に、どう力を蓄えていくかが課題で、地域のボランティアネットワークに依頼して、公園の清掃やパン屋の配達など、将来的な就職につながる職探しにも協力をしてもらっている。

また、里親との連携により週末里親や、短時間里親などの制度により、グループホームの子どもや、ホームから地域に出た後の家族支援を行っている。
やがては自分自身の家庭を持つようになる子どもたちであるが、一つの家庭に入ったときに、なかなか落ち着けない事例が見られたことから、グループホームの専門職の意見も聞いて、退所後の家庭支援の方策を考えた。

ドン・ボスコとしては3つのタイプの里親を考え、実行している。
一つは、週末や長期休みの時に2~3人の児童が帰省できず、ホームに残された時に家庭体験をさせる里親。(高知県で本年度より実施を始めたフレンドシップファミリーと同様の考え方によっていると思われる)
二つ目には、その子どもが18歳になった後も中心的に関わってくれる里親。
三つ目に、子どもは元の家庭で生活をしているのであるが、日中など、2~3時間預る
短時間の里親で、親が共働きや長時間労働、精神的な問題などを抱えている場合に、提供されるというものである。
区役所のソーシャルワーカーから子どものケアについての要請があれば、ドン・ボスコとして提供できる方法で援助を行っていく。
里親に求められているのは、家族内のもう一人の父親、母親としての存在であり、例えば育児困難に陥っている若いカップルや、たくさんの子どもを抱えながらも働かなければならない家族を他の家族が支援する、というイメージであるため、そうした里親は近所の人であることが好ましいとのことであった。

ドン・ボスコには、同じ地域に住む里親7~8家族で家庭支援をコーディネートするグループを形成しており、年の初めにプログラムを作って対応している。また、里親として登録をしている家庭は、元々は若い人たちとの関わりを行うボランティア活動をしていた人たちであるため、徐々に子どもたちとの信頼関係を築きながら、現在の形に近づいてきたものである、とのことであった。

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Don bosco のスタッフのみなさんと

ローマ市少年裁判所と福祉職の連携
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今回の児童虐待防止法改正の中に、要保護児童の措置に関する司法関与の見直しが盛り込まれている。
本研修において、裁判所の決定による里親委託が全体の7割以上を占める、イタリアにおける司法と福祉の関与の状況を学ぶため、ローマ市少年裁判所の視察を申請していたが、ローマ市福祉部署の尽力により特別に認められることとなった。

イタリアの少年裁判所においては、法律に対する尊厳を持ちつつも、事務的な処理に流れない、という精神に則って、児童のケースや少年犯罪に対する取り扱いが行われている。結婚をしていないカップルがつぶれたときの結びつきの仲介役としの機能を果たす場合もある。14歳~18歳の少年の犯罪については、日本の少年法にあたる法律を適用している。
歴史的に見て、少年裁判所の裁判官の大半は女性である。今回面談を行ったローマ市少年裁判所の副会長Isabella Foschini氏も女性であったが、会長も女性とのことである。そのため、少年事件の辞令を出す場合も、単に裁く、というのではなく、子どもを護り育てる、という精神が尊重されてきた経緯がある。
ローマ市少年裁判所においても、4人の裁判官制を採用している。現在ローマ市の少年裁判所には15名のプロの裁判官と、15名の一般から選出された特別裁判官がおり、特別裁判官は6人が男性で9人が女性である。また、54人のソーシャルワーカーなどのグループがおり、特別裁判官はこのメンバーから選出される。

ケースワーカーが通報を受けて児童を緊急保護した場合、その行為を行ってから10日以内に裁判官に報告を行い、裁判官が30日以内に実行された行動を認めることとなる。従って、認められない場合は、元の家に帰るというケースも存在する。ケースワーカーが家族支援をしている段階で、状態が悪化した場合に、裁判所にレポートを提出して、家庭からの切り離しの判断とその後の支援策を示してもらう、ということも可能である。

少年裁判所とケースワーカー等福祉職が集まって、ケースを通じて講習を行う、という連携も行われているが、この4年間に法律が2つ改善されるという成果もあり、互いに理解しあい、説明しあうことを継続している。今回の研修に際して、少年裁判所への橋渡しに尽力をいただいた「チェントロ・ポリチーノ」 の責任者である、Stefano Vicini 氏はローマ市の公務員であり、心理職であるが、同時に少年裁判所の特別裁判官の職を有している。Vicini氏の存在からも分かるように、裁判所と福祉職が集まって会を持つことは、この特別裁判官制度に依るところが大きい。
裁判官にとっては、ケースワーカーの書いたことは良く理解できる、とのことで、児童虐待の場合も、どのようにアドバイスをしていくか、という視点で見ていくこととなる。4人の裁判官のミーティングは、ごく普通のテーブルで行われる。一方で、家族、子どもの支援を行うための辞令の決定がケースワーカー不在で行われることへの指摘や、イタリアの法律は、親を守りすぎている、という声が、弁護士サイドから上がっている。

裁判官の決定する元の親への改善命令の辞令は、期間を定めてなされる。ケースワーカーは、辞令に基づいての指導が可能であり、保護者が指導に乗らない場合は、再審査と再度の裁判も実施されるが、再審査は別の4人の裁判官によって行われる。また、支援策を講じても家庭復帰が不可能である場合には、養子縁組も検討されるが、その際4人の裁判官の中には会長が含まれる。


(その3)に続きます↓
http://plaza.rakuten.co.jp/ciclismofelice/diary/201609210000/





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Last updated  2016.09.22 00:12:40
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