
春になると、
優しく淡いピンクの花びらをいっぱいに広げて
みんなの心を和ませてくれたね。
校庭の端から端まで
やわらかい君たちの桜色が広がって。
運動会では
残暑の日ざしをよけて
涼しい木陰を作ってくれたね。
君たちの根元のあたりだけ
どうして一段高くなっているのだろう、
と思ったものだけど、
ちょうどその辺りから
道路になるのかな?
校庭で咲くのは今年最後。
来年からは街路樹になって、
道ゆく人たちを見守ってくれるんだね。
娘が一生懸命逆上がりに挑戦した鉄棒も、
初めて飛び越せるようになったタイヤの列も
花びらが降りかかるほど
君たちの間近にあるけれど、
“体育小屋はつぶされる”と聞いたから
どんな風に様変わりしてしまうのだろう?
都市計画が進んで便利になるのもいいけれど
当初は君たちまで切られてしまう計画だったと聞いたときには
本当に驚いた。
こんなにも大きくなった君たちを
毎年素晴らしい花を見せてくれる君たちを
周り中のみんなから愛されている君たちを、
どうして
いとも簡単に切ってしまおうなどと考えることができたのだろうか。
でも・・・
校長先生をはじめとして、
おそらくは地域の方たちの尽力によって
君たちの安全が保証された。
校庭が削られて道路ができるけれども、
君たちは今までどおりここにいていいんだよ。
今年は
満開になる日を遅らせて、遅らせて
入学式まで咲いていてくれたね。
工事のこと、
君たちにも気づいていたのかな?
この先ちょっぴり心配なのは、
上や横に枝を張ると、
切られてしまうのではないかということ。
好きなだけ枝を伸ばせなくなってしまうのではないかということ。
桜色のトンネルを形作るかのように
枝をめいっぱい横に伸ばす君たちの姿。
はらはら、はらはらと、
舞い散る花びらは
まるで桜色の絨毯を敷きつめたかのよう。
来年は
君たちの下を歩くとき
凸凹だけど優しい曲線で囲まれたその幹に
そっと触れさせてね