醍醐山と下部(しもべ)温泉

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ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ Re:初夏の田園風景(2)「こころ」萩原朔太郎(06/16) こころをばなににたとへん こころは数の…
Tenkoro @ Re:あらためて100万アクセスおめでとうございます(10/26) 二代目館長さん、ありがとうございます。…
bnvn05 @ あらためて100万アクセスおめでとうございます やったね。 重ねてのコメントですみませ…

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ナツツバキや朝顔 やまつり023さん

二代目館長日記 bnvn05さん
2022.02.17
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カテゴリ: 醍醐山を愛する会
(三)
さてその夜半、夫婦は娘の枕辺で、風雨の吹きつける戸をトントンと叩く音と、「頼もう、頼もう」と言う、嵐に消されぬさわやかな声を聞いた。夫婦は怪訝な顔を見合わせたが、再び戸をたたく音とその声を聞いた。急ぎ立って大戸のくぐり戸を開けた長者は、そこに立つ凛々しい顔に微笑みを浮かべた若者と目を合わせた。
 見れば、ずぶぬれの旅姿である。とっさに長者は「さあさあ、お入りなすって」と若者を中へ誘った。
 土間へ立った若者は、「諸国見聞の旅をしている者ですが、この嵐で道に迷いました。この夜更けご迷惑をおかけ申すが、厄介ながらお願い申します」と明るい口調で言った。
 長者は「それは難儀な目にあいやしたな、気遣いご無用。ゆっくりご逗留なされや」と言い、若者を自分の衣類に着替えさせ座敷に通し、腹も空いていようと、夫婦で心尽くしの膳を供しながら、一人娘が数日来の得体のしれぬ重い病で困っているのだが、諸国の旅でよい医者をご存じならば教えてもらいたいと、若者に語った。
 すると若者は、「知らぬでもないが、明日夕方まで待ってみてください」と言い、食事を済ませ床についた。

(四)
 嵐の音を聞きながら眠りに落ちた長者は、耳元で誰かが「長者殿、長者殿」と呼ぶ声に目を覚まし身を起こすと、寝ているはずの若者が枕元に座っていた。はてなと思った長者に若者は、「私は、実はここから見える入日山の東雲の滝に棲む龍です。おまえ様が大子の里をはじめ、この山を取りめぐるふもとの里人に、日頃慈悲を施していることを、よく知っています。娘子の病を救えとの、私への呼び声を聞いて、人間に化身して滝を出て来ました。娘子の病は明日から回復に向かいましょう」と言った。
 思いもよらぬ若者の言葉に、はっと我に返った長者の目に、若者の姿はなかった。


~明日に続きます~

大子集落跡(2015年)







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Last updated  2022.02.17 06:00:10
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